アジアインフラ投資銀行の背景にあるグレート・ヒストリー
中国の対外経済進出の三つの段階
區 龍宇
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解説
AIIBは世銀やADB
と補完・協調関係である
右の論文はウェブメディア『立場新聞』に掲載された區龍宇氏の論考である。中国は日米欧の国際金融秩序を凌駕するほどには強力ではないが、官僚資本主義の行き詰まりを国際的に突破してよりグローバルに展開するための金融ツールを作り出し、コントロールするくらいの実力はすでにもっている。アジアインフラ投資銀行(AIIB)はそのように見るべきだろう。
中国が二〇一五年に発足を目指すAIIBへの参加を巡って、「安倍外交の失敗」の大合唱が資本家団体や商業紙だけでなく、一部の左派メディアや運動体を巻き込んだ形で奏でられている。世界銀行やアジア開発銀行(ADB)など日米主導の国際金融機関が作り出している国際金融秩序にかわるものとしてのAIIBへの幻想がそうさせている。AIIBは現在の国際金融秩序に代わるものではない。それは世銀やADBの補完と協調が基調となる。そもそも世銀やADBにおける中国の地位は米国に次いで日本や欧州の大国と肩を並べるほどの影響力をもっているのである。AIIBはグローバル経済とつながった中国資本のさらなる国際的展開をささえるための金融機関としての役割をはたすことが最大の目的である。つまり日本資本におけるADBや国際協力銀行などとおなじ役割を果たすに過ぎないのであり、資金調達の方法なども世界銀行やADBなどと同じく国際市場からの調達を基調とするものになる。日米は「ガバナンスが不透明」と批判しているが、中国資本のさらなるグローバルな展開を下支えするためのAIIBにおける最大のガバナンスは中国共産党一党独裁体制そのものであり、それ以外にあり得ないのであり、それこそが市場が求める最大のガバナンスなのである。このような金融機関への参加を巡って左派メディアや運動体が「成功」や「失敗」を騒ぎ立てること自体が安倍政権批判における「失敗」である。
中国経済のグローバルな展開については、『台頭する中国 その強靭性と脆弱性』(つげ書房新社、二〇一四年)に収録されている「中国の対外経済進出」のなかで區龍宇氏が「三つの段階」として、八〇年代末から現在までの経過を素描している。また中国金融の国際化については『チャイナズ・スーパーバンク』(H・サンダースン、M・フォーサイス著、築地正登訳、原書房、二〇一四年)が、中国開発銀行に焦点を当てた形で、国内経済から国際経済に展開する過程を丹念に描き出しており、まさに「官僚金融資本」としての中国国際金融秩序の歴史を顧みることに成功している。
今後、AIIBが本格的に始動するなかで、日本資本主導の国際金融機関や日本企業そのものがAIIBとの競争と共同を繰り返しながら二一世紀の資本主義の新たな国際的金融秩序を作り出そうとするだろう。レーニンの『帝国主義論』の時代のように国際金融の展開が大陸規模での戦争と革命を誘発する事態になることはそうすぐ出現することはないだろう。しかしわれわれは、国際金融機関の監督組織であるバーゼル銀行監督委員会などが置かれ、いまや国際金融資本の砦となった感のあるスイス・バーゼルにおいて一〇〇年以上前の一九一二年一一月末、迫りくる帝国主義戦争に反対する社会主義者たちが発した次の宣言を記憶しておく必要がある。「万国の労働者にむかって、資本家の帝国主義にプロレタリアートの国際連帯の力を対置するよう要求する」(バーゼルにおける国際社会党臨時大会の宣言)。レーニンはこの宣言に最後まで忠実に行動した。中国をふくむ現代の多国籍金融資本に対する闘いにおいても、このスローガンは依然として有効である。
二〇一五年四月二〇日
(早野 一)
国内経済構造の深刻なアンバランス
アジアインフラ投資銀行の背景にあるグレート・ヒストリー
中国の対外経済進出の三つの段階
區 龍宇
中国の対外経済進出の三つの段階が、現在のアジアインフラ投資銀行の大きな背景としてある。
不平等貿易
胡錦濤が指導者に就任した当初(二〇〇四年:訳注)、中国の対外直接投資はほとんど無視できる程度だった。二〇一二年に彼が退任するときには直接投資残高は世界一三位(注一)となっていた。これには対外証券投資(債券と株式)は含まれていない。中国が保有する二億ドルの債券は、アメリカをけん制する重要なツールになっている。このほかにも、対外援助という名の対外借款がある。
強国が小国を支配する最初のルートは貿易である。世界貿易はそもそも不平等である。なぜなら強国の多国籍企業は、技術と市場の力を借りて、不等価交換(unequal exchange)によって小国の資源と労働を交換することができるからだ。中国はiPoneをアメリカに輸出しているが、それはアップル社らの搾取ということである。しかし、中国がほかの小国と違うのは、あまりに巨大であり、貿易では一方で強者から搾取されるが、また一方でそのやり方をそっくり模倣し、同じように不等価交換で他の後進国を搾取する。
これまで中国は多額の外国投資を受け入れてきたが、十分な外貨と国内資本を蓄積した現在、大量の資本輸出を開始することになったのである。
貧困国への資本輸出の意味は?
資本輸出は貿易と通じた支配よりもさらに強力である。資本輸出にはいくつかの種類がある。
1、工場設立、鉱山開発、インフラ建設などの直接投資。現地の労働力及び天然資源を利用して、投資を上回る利益を上げる。もし地元政府と結託すれば、現地の労働者や環境を保護するための法律を回避してコストをさらに圧縮することができる。
2、株式市場、通貨市場、債券市場への投資
3、外国の企業あるいは政府への借款
現在の中国はこれらすべてを行っている。中国の台頭によってもう一つの資本主義的覇権が実現した。米国債への投資だけを見ても、中国の投資は一兆ドルを超えている。もし中国が突如として米国債を投げ売りしたら、アメリカは困難に直面するだろう。
もしアメリカでさえ中国の動きに警戒しているのに、いわゆる「バナナ共和国」(一次産品輸出に特化して米国企業にコントロールされる中南米諸国の蔑称)がそれに脅威を抱かないことがあろうか。対外借款にいたっては、外国の債権者となることであり、覇権主義国家の奥義ともいえるのである。
しかし中国はグローバル・エコノミーの覇権国家の一員となったばかりである。世界規模での政治および軍事な覇権クラブの一員にのし上がるにはまださらなる努力が必要である。とはいえアジアにおける中国の位置は、もちろん相対的に巨大になる。つまりアメリカやEUなどとの比較においてはまだ同等とみなすには早すぎるということである。
資本主義的覇権における中国資本は、欧米の企業に比べてひどすぎるというわけでないが、かといってそれほどましというわけでもない。稼げるときに稼ぎ、利用できる権力は行使するという、きわめて当然の行動原理で動いている。
干渉主義の誘惑
中国政府は、資本輸出が投資先国の政治に干渉することは絶対にありえないと繰り返し強調している。干渉しない? ある国から大量の資本が輸出されれば、早晩それは干渉せざるを得なくなる。証券の対外投資はまだ影響はそう大きくないだろう。いつでも撤退が可能であり、干渉するほどの問題にはならないからだ。だが直接投資となればそうはいかない。貧困国への直接投資とは、その国を長期的に搾取することに他ならない。この目的を達成するために、現地政権および現状の「安定」を維持する必要があるのだ。選挙に干渉もせず、政治家を買収もしないで、いかにして長期的な安定が確保できるのであろうか。
去年九月、中国は国連の平和維持軍として南スーダンに八〇〇人の地上部隊を派遣して、油田や掘削設備、そして中国人労働者の保護の任務にあたった。これまでも中国は平和維持軍に参加してきたが、そのほとんどが工兵や兵站、あるいは衛生兵の部隊であった。しかしこの南スーダン派兵からは、大量の戦闘部隊を派遣するようになっている。それはほかでもなく、中国が南スーダンへの最大の投資国家であったからで、なんとしても保護しなければならなかったのだ。
毛沢東の時代との比較をしてみよう。当時の中国は、冷戦の対峙国からは「革命を輸出している」と批判された。この批判は大袈裟にすぎるが、とはいえ当時の中国共産党は各国民族解放運動を支援し、対外援助においても典型的なケースがあった。たとえば一九七〇年代に建設されたタンザニア鉄道がそれである。
資本輸出の奥義
毛沢東による中国共産党への貢献は、個人独裁の強化を前提とした党官僚に独断権力を付与したことである。ケ小平による中国共産党への貢献は、官僚特権を官僚資本に転化させたことである。そして現在、大量の資本輸出によって独裁政権は「如虎添翼」(羽根の生えた虎:鬼に金棒)の如しである。
問題は、中国の資本輸出は、一方で中国の台頭を示すものであるが、一方ではその重大な弱点をも示すものだということである。中国における過剰資本の理由は、まさに中国には経済危機が存在しているからである。これは長期的な過剰生産として現れる。過剰生産とはなにか。それは国内の需要不足に他ならない。なぜそうなるのか。それは農産物の政府買い取り価格があまりに低く、賃金があまりに低いことから、労働者や農民が国内企業が生産する商品を買うことができないからだ。別な言い方をすれば、中国の大量の資本輸出は、国内の経済構造の深刻なアンバランスが理由だということである。そして資本輸出は、実際には経済危機の輸出でもある。外国の市場によって自国の需要不足を補うものだからである。
しかしこの方法もすでにボトルネックに達している。二〇〇八年以降、主要国で発生した景気後退は、中国が自らの経済危機を輸出し続ける状況に対して厳しい制限を課すことになった。現在の情勢は、一方で国内における深刻な貧富の格差による社会矛盾の深化があり、一方で資本輸出が国際的な経済危機に直面し、中国と各国の矛盾もさらに深まっている。
アジアインフラ投資銀行の行く末も、この今後の大状況の局面から見る必要があるだろう。
注1:China's Outward FDI in 2012
パキスタン
農民、労働者数千人が結集
軍による農地横領を糾弾
アワミ労働者党の政治的力示す
左翼のアワミ労働者党(AWP)による政治的強さを示す大規模な催しにカイベル・パクトゥンクワ州(KP)中から数千人の農民と労働者がマルダンの鉄道グラウンドに結集し、州借地法に計画された修正をKP政府が取り消すよう要求、軍経営の住宅開発による農地横領というますます普通となっている行為を糾弾した。
第二回定期連邦委員会の閉幕に合わせて開催された「キッサン・カシュトカル」大会は、党指導部全体にとって全州委員会代表に加えKPの党員多数に語る一つの機会となった。発言者の中では、党代表のアビド・ハサン・ミント、議長のファノス・グッジャル、書記長のファルーク・タリク、アクタル・フセイン、ファルザナ・バリ、ユニス・ラホ、アシム・サッジャド、バクシャル・タルホ、などが目立っていた。
数百人の女性が
行動に参加した
農民と労働者たちはこの大会に参加するためにブネル、スワト、ディル、チャルサッダ、スワビ、またマルダンから遠出し、この大会の目立った特徴は、数百人の女性の参加を含んでいたことだ。トバ・テク・シン、ラホール、ファイサラバード、ラワルピンジの党活動家もまた参加した。参加者の中にはアンジュマン・マザライン(AMP)やパクトゥンクワ・ウルシ・テルクのような連携組織も含まれていた。
意気上がる発言の他にも、KPとパンジャブで党と協力しているアーティストたちによる文化的な出し物も数多くあった。
党指導部はまたこの機会を利用し、あらゆる州での来る地方機関選挙に参加する計画を発表し、マネーと影響力で選挙結果を左右させないような、革命的諸政策の新たなひとそろいを前面に持ち出した。
パキスタンの現在の政治システムはほとんど手続き民主主義でしかない、そのようなシステムの中では実際には貧しい者たちと虐げられた者たちには、政治的な声を届かせる可能性は事実上まったくない、彼らはこのように語った。彼らは、PTI(パキスタン正義運動)のような「変革」のチャンピオンと言われる「革命派」をこき下ろした。ちなみにPTIは自らKP政府で行政を執行中であり、それが反対していると主張する他のブルジョア政党と質的に変わるものは何もない。
この点に関し、KP借地法に対し計画されている修正は、土地なし農民が実際には所有している限定された諸権利をも完全に取り上げるものとして、厳しく批判された。党指導部はより全般的なものとして、広範な土地改革、並びに企業農業とアラブの族長のような外国人と多国籍企業を有利にするよう設計された他の資本主義的諸政策の廃止を強調しつつ、農業部門の首尾一貫した変革に対する全体的計画をも概括した。(「インターナショナルビューポイント」二〇一五年四月号)
パキスタン
高裁が反テロ法廷で判決を取り消し
AWP活動家6人の釈放かちとる
ババ・ジャンら4人は依然獄中に
四月一〇日、六人のパキスタンAWP(アワミ労働党)活動家が釈放され、出迎えた多くの人々の歓迎を受けた。彼らは昨年九月二五日、ギルギットの反テロ法廷で終身刑が言い渡されていたが、高等裁判所が反テロ法廷で判決を取り消したため、釈放されたのである。同志ババ・ジャンはじめ四人に対する終身刑も取り消されたが、別の事案でも有罪とされているため、この四人はいまだ獄中にある。(「かけはし」14年11月17日号既報)
今回取り消された終身刑は、二〇一〇年一月に起こったフンザ峡谷地方の地滑りで大きな被害を受けて家屋や土地を失った住民の運動を支援して闘った同志たちへの報復弾圧であった。AWPとPYF(進歩的青年戦線)の指導的メンバーであるババ・ジャンが現在も牢獄にとらえられているのは、刑務所の囚人たちの待遇改善を要求して立ち上がったことへの弾圧として、昨年一〇月二九日に終身刑の判決を受けたからである。AWPは、高等裁判所による次回審問には、著名な弁護士三人をギルギットに派遣して、反テロ法廷の決定を再考するよう求めるとしている。
釈放された六人の同志たちは、フンザ渓谷に通じるナシール・アバッド橋でAWPやPYFのメンバーをはじめ多くの人々に迎えられた。フンザ渓谷へは、三五〇台の車列を連ねて、彼らを送り届けた。
引き続き、同志ババ・ジャンをはじめすべての政治犯釈放に向け、闘っているパキスタンの仲間たちを支援しよう。 (O)
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