打ち破れ「慰安婦」報道バッシング
2.23関西共同行動 戦後70年連続講座 A
植村隆さんが不屈の決意
デッチ上げているのは彼らだ
|
【大阪】関西共同行動の「戦後七〇年を問う」連続講演会の二回目が、二月二三日エルおおさか南館大ホールで開かれ、一五〇人以上の市民が参加した。
中北龍太郎さん(関西共同行動共同代表)は主催者あいさつで、「植村さんに対するバッシングは、歴史の抹殺・記憶の暗殺と表現できる。この記憶の暗殺者の代表が安倍首相ではないか。『従軍慰安婦』についての記述は今は教科書から消えている。二〇〇〇年には、『従軍慰安婦』制度を裁く国際民衆法廷が開かれたが、これを報じるNHKの番組は安倍首相によって大きく改ざんされた。今また朝日新聞に対して大きな圧力がかかり検証記事が掲載されたが、本当の検証こそ求められている」、と語った。
続いて、植村隆さん(元朝日新聞記者・北星学園大学非常勤講師)が、『私は屈せず闘う』と題して講演をした。
「私は、二四年前の朝日新聞大阪本社社会部時代に、慰安婦と名乗り出た韓国のおばあさんのつらい体験の記事を署名入りで二本書きました。この記事が原因で、二三年間ずっとバッシングを受けています。この記事で私が報じたのは金学順さんという人で、韓国でカミングアウトした最初の人です。彼女の勇気ある証言で、慰安婦の生の証言が世界に伝わって、たくさんの被害者が名乗り出るようになりました。私は『捏造記者』ではありません。不当なバッシングには屈しません。(植村さんのアピール)」。
植村さんは講演の中で、自分が「捏造記者」ではないということを、事実に即し具体的に立証した。
被害者に寄り添
いながら取材
植村さんが最初に書いた一九九一年八月一一日付の記事は、韓国挺身隊協議会を訪れた金学順さんに同協議会が聞き取りをしたときの録音テープを、同協議会が植村さんに公開し、それをもとに書かれたものだった。その記事は、リードの部分に「女子挺身隊の名で戦場に連行され……」とあり、本文に「だまされて慰安婦にされた……」とある。この記事の四日後に、金学順さんが名乗り出たが、それを報じたのは北海道新聞のみで、日本の全国紙はどれも報じなかった。
植村さんの二本目の記事は、同じ年の一二月二五日付の記事だ。韓国人「慰安婦」三人(うち二人は匿名)が来日し、日本政府を相手に戦後補償を求める裁判を一二月六日に東京地裁に起こしたのだが、植村さんは裁判の準備で訪韓する弁護団と「日本の戦後責任をハッキリさせる会」に同行し、金学順さんに詳しく話を聞いて、記事を書いた。
この記事は、ほとんど全文が彼女の証言だ。日本政府は一九九〇年六月の国会で「従軍慰安婦は民間業者が連れ歩いた」などと軍や政府の関与を否定する答弁をし、その後も「資料がない」などと繰り返してきた。こうしたニュースを聞いた金学順さんが、自分が生き証人だと名乗り出た動機も書かれている。
「国家・軍の誇
り」を傷つけた
植村さんをバッシングしてきた連中は、一本目の記事で植村さんが「強制連行」の記事を書いた、吉田清治証言に基づいて記事を書いたという。二本目の記事では触れられていない事実(金学順さんがキーセンを養成する家に養女に出されていたこと)があることを問題にしている。植村さんが「日本軍に強制連行されて慰安婦にされた女性」という虚構を作りあげたというのだ。これが、「捏造」したと彼らが言う根拠とされるものである。
しかし、植村さんは「強制連行」とは書いていない。吉田さんには会っていない。キーセン養成の家の養女になったという件は、その後の裁判の訴状の中に出てくるもので、朝日新聞も植村さんも関係ない。
西岡力(東京基督教大学教授)は、九二年から執拗に攻撃している、曰く、「キーセンのことに触れず、女子挺身隊は慰安婦とは関係がないのに、挺身隊の名で強制連行があったかのように記事を書いた」と。挺身隊という言葉は当時の朝鮮では従軍慰安婦の意味で使われており、韓国挺身隊協議会という名称が示すとおりだ。そして、日本のすべての全国紙もそれを同じ意味で使っていた。
バッシングした連中の言いたいことは、植村さんや朝日新聞の記事により、日本国家・日本軍の誇りが傷つけられたということだ。彼らは、植村さんの妻が韓国人で、その母親は慰安婦支援団体の幹部を務めていた(これは事実の誤認で、遺族会の幹部である)ことが、植村さんの「捏造」記事と重要な関連があると思っている。つまり、事実を捏造したい連中が、植村さんに「捏造記者」というレッテルを貼って攻撃しているのである。
市民に支え
られながら
二三年間孤立して闘い、一四年三月に朝日新聞を早期退職し、一四年四月から神戸松蔭女子大学の教授になるはずだった植村さんは、神戸松蔭に対する右翼の圧力で就職先を奪われた。非常勤講師(週一コマ)をしている北星学園大学でも同じような被害に追い込まれようとしたが、「負けるな北星!の会」の発足で、反転攻勢が始まった。
植村さんは今年一月、西岡力と『文藝春秋』を相手に損害賠償請求の訴訟を東京地裁に起こし、二月には、櫻井よし子と新潮社ら三社を相手に札幌地裁に名誉毀損の裁判を起こした。植村さんの家族や北星学園の学生たちをも巻き込んだ攻撃が続いている。
彼らは、普通の市民なら恥ずかしくて言えない悪辣な言動を、これでもかこれでもかと繰り返す。二月一九日には、昨年一二月につくられた「朝日新聞慰安婦報道に対する独立検証委員会」の報告書がでた。茶番この上ないが、その副委員長は西岡力だ。一つだけおもしろいことがある。そこには、捏造という言葉がないそうだ。もう捏造記者と呼ばないでほしい、と植村さんは言う。
なぜ植村さんが標的になったのか。その理由を植村さんは三点をあげた、@自分が朝日新聞の記者であり、実名で記事を書いたことA朝日新聞が歴史の掘り起こしをやっており、リベラリズムの代表のように思われていたことB妻が韓国人で、その母親が遺族会の幹部だったこと。
バッシング連中は、植村さんの娘さんに対して「自殺するまで追いこむしかない」とまでエスカレートしている。植村さんは最後に、「まるで、白いシーツに黒いシミが広がるようだ。私は捏造記者ではない。不当なやり方には絶対に屈しません。皆さんお力をお貸しください」と訴え、拍手がわき起こった。
人権こそが
物を書く基準
植村さんの講演の後、質疑応答なしで、準備されていた四名からの発言があった。
方清子さん(日本軍「慰安婦」問題・関西ネットワーク共同代表、日本軍「慰安婦」問題解決全国行動事務局長)。
「植村さんや大学の学生たちへの攻撃はテロではないのか。後藤さんが人質になった件で、安倍首相はテロには屈しないといった。警察当局は本気で捜査する気があるのか。このような動きの後ろに安倍首相の加担があると思う。安倍首相は、金学順さんが名乗り出たことをなかったことにしようとさまざまな手を使ってきた。戦争の歴史、侵略の歴史を否定したいというのが安倍首相の本音だ。
第一次安倍政権の時に狭義の強制性はなかったと発言し、国際社会から大きな非難を浴びた。ワシントンポストに慰安婦はウソだという広告を出したとき、安倍さんの仲間の多くが名前を出した。国連の人権委員会からも勧告されているが、未だにそれに従おうとしていない。強制連行がなかったのなら、軍が慰安婦の女性たちの生活を管理・強制したことは許されるのか。国際社会では通用しない。その女性たちの出身がどうであれ、受けた性暴力に対しては、きちんと罪が問われるべきだ」。
「安倍政権は、国際社会では極右政権と見られている。日本はすでに曲がり角を曲がったのではないか。安部首相は戦後七〇年談話を出して、河野談話や村山談話を否定しようとしているのではないか。戦後七〇年は、非常に深刻に受け止めるべきだ。この七〇年をわたしたちの未来への年にしよう」。このように方さんは語った。
波佐場清さん(元朝日新聞ソウル支局長、植村さんの直属上司)。「植村君が捏造記者でないことは十分おわかりいただけたと思う。一つつけ加えたい。ソウル支局があるのに、わざわざ大阪から記者を九一、九二年に短期間ソウルに出張させ、慰安婦の記事を書かせた。これには裏の関係があるのでは、という言いがかりを付けられている。実は、当時は冷戦構造が崩壊し、冷戦の最前線であった韓国はとても慰安婦問題に気を回す余裕はなかったといのが正直なところだ。だから、植村君がきてくれて本当にうれしかった。今の社会状況は本当におかしい。私も三四年間記事を書いてきたが、新聞記者は国益や国の名誉のために記事を書くのではない。ジャーナリズムとはそういうものだと思っている。安倍さんは、国益とか国の名誉とよく言うが、そういうことを超えた人権の物差しで書いている。植村君は捏造記者ではない」。波佐場さんはそのように語った。
小山帥人さん(元NHK職員、自由ジャーナリストクラブ世話人)。
「籾井会長は先日、従軍慰安婦問題を質問され、政府の正式なスタンスがまだわからないので、放送するのが妥当かどうか考えたい、と答弁した。この会長は政府のいうとおりにするのがいいと思っている。NHKは最近まで右から攻撃されていたが、今はその方向に流れていっている。なぜ、NHKや朝日が批判されるのか。一つは世論形成に大きな影響力を持っているからだ。エリート意識もあり、批判に弱い」と小山さんは語り、白虹事件(当時、大阪朝日新聞は大正デモクラシーの先頭に立って言論活動を展開し、特にシベリア出兵や米騒動に関連して寺内正毅内閣を激しく批判していた。一九一八年米騒動問題に関して関西新聞社通信大会が開かれ、各社から寺内内閣への批判が巻き起こった。それを伝える朝日新聞記事に、「白虹日を貫けり」、とあり右翼がこれを攻撃。村山朝日新聞社社長が人力車で通るのを右翼が見つけて、社長を全裸で電柱に縛り付けた。この事件により、朝日新聞は戦争に協力するように変わっていく)の話をした。
そして、「今、朝日新聞が攻められているのは、ある意味で朝日新聞が戦後民主主義のシンボル的存在であり、戦後レジームからの脱却とのせめぎ合いの中心に朝日があり、そこに植村さんが立たされているという構造だ。植村さんを守るのは、戦後民主主義を守る市民の責任だ」と述べた。
西村秀樹さん(元毎日放送記者、近畿大学人権問題研究所客員教授、植村応援隊呼びかけ人)。「九〇年の国会での政府答弁の頃に私も慰安婦問題の取材を始めた。当時は、慰安婦問題に関心を持っている記者は全国で一〇人もいなかった。慰安婦問題の解決には、事実確認・政府の謝罪・責任者の処罰・国家賠償・教科書への記載の五点が必要だ。この方向への解決を全てひっくり返してしまうのが安倍政権だ。フランスのシャルリー・エブドへのテロ攻撃に反対するスローガンにならっていうと、私は隆だ。どうか、植村応援隊に入ってください。そして活動のためのカンパをください」と訴えた。
(T・T)
植村応援隊へのメール宛先:
makerunauemura3@gmail.com メール内容:@氏名・ふりがな A郵便番号・住所 B電話番号/送信アドレスと別のアドレス登録を希望の場合はそのアドレス/メールの件名:「応援隊参加」/カンパ受け入れ口座:ゆうちょ銀行振替口座/記号番号:02760―0―101987 植村応援隊/(他行からの場合)ゆうちょ銀行 279店 0101987 |