2月9日はセウォル号の惨事が起きてから300日になる日だ。海中での捜査活動は既に昨年11月11日に打ち切られたものの依然として行方不明者は存在している。一方では、真相を糾明するための証拠としての船体の引き揚げをめぐって、他方では真相を明らかにしようとする民官合同調査委員会の発足をめぐって、政府・与党の必死のあがきが続いている。そしてまもなく事故から1周年を迎えようとしている。
「引き揚げ」ではなく「処理」と表現
政府は2014年11月11日にセウォル号の水中捜査を終了するとともに、こう発表した。これについて技術的検討を担当したタスク・フォース(TF)が民間の専門家18人を含めて11月27日、海洋水産部(省)に編成された。この組織の名称は「セウォル号船体処理関連検討TF」だ。セウォル号の「引き揚げ」ではなく「処理」と表現したのは、引き揚げない可能性も残されているという意味だ。少なくとも1千億ウォンに達するといわれる費用や引き揚げの過程でさらに犠牲者が発生しかねないとの憂慮があるからだ。
檀園高2年5組の故イ・チャンヒョン君のアボジ(父)イ・ナムソク氏(50)は「引き揚げを公式化せず、政府が事前調査をするとしつつ時間稼ぎをしているので、はらわたが煮えくりかえる」と語った。セウォル号惨事の犠牲者、行方不明者、生存者の家族らが1月26日から19泊20日間の日程で京畿道安山の政府合同焼香所から全羅南道の彭木港までの450q徒歩巡礼に乗り出した理由だ。
セウォル号の船体引き揚げの可否を決める事前調査は今年の3月まで3段階に分けて進められる。1月10日から5日間にわたって進められた韓国海洋科学技術院所属の多目的海洋研究船イオド号(357t級)の海底地形探査が第1段階だった。セウォル号は左舷が下に向かったまま水深37m下(海底面基準)にあり、船体の一部は海底に埋まった状態だ。探査チームは全南・珍島郡鳥島面屏風島北側3・3qのセウォル号の事故地点周辺の精密な海底の地形と海底面の堆積物の構成および下部の地層構造などなど、海底環境の情報を調査した。その結果、海底の地形は平坦で岩石がほとんどないことが把握された。引き揚げに大きな問題はないという意味だ。
第2段階は船体の状態を調べてみることだ。1月24日午前、セウォル号沈没地点に2千t級の「現代ポリョン号」が再び投入された。現代ポリョン号は昨年11月まで潜水士が水中捜索活動を展開する際にベース・キャンプの役割をしていたバージ船(船底が平らな貨物船)だ。今回は海洋科学技術院海洋防衛研究センターの専門家10人が、高さ24m、直径30pの円柱形測定機器である多重ビーム音響測信機(MBES)を装着した。MBESは海底にあるセウォル号の外部船体を撮影して3次元(3D)の映像に作る作業を行う。探査隊を率いる海洋科学技術院イ・ヨングク博士は「収集したデータを総合すればセウォル号についての極めて精密な立体3D映像をタテ・ヨコ10pの形で手にすることができる」と語った。これまでは潜水士たちの視界が20pにすぎず、感触でセウォル号の状態を想定してきた。
3D映像を収集してから1日後、セウォル号の輪郭の一部が明らかになった。ひっくり返ったセウォル号の船首の甲板と操舵室の窓、船体の船尾部分のレーダーなどの構造物が確認された。調査に参加した英国の海洋調査専門企業エイダス(ADUS)のマーク・ロレンス専任研究員は「時間と資材などを充分に投入すれば引き揚げは可能だろう」と判断した。第2段階の調査が終了する以前の1月26日から探査チームは沈没現場の流速と水の方向を探る第3段階の調査に入った。引き揚げの過程で潜水士の危険を予測するための手続きだ。
真相糾明のための証拠のはず
1、2、3段階の調査が終われば、これを総合した検討報告書が3月頃に出てくる。パク・ジュンクォン海洋水産部港湾局長は「国民的合意を導き出す公論化の過程を経て4月の初旬か中旬頃に引き揚げについての可否を最終決定することになるだろう」と語った。檀園高の故キム・ドオン君のオモニ(母)イ・ジソン氏は「セウォル号の被害者も大韓民国の国民だ。その国民がこのうえなく冷たい海底に水葬されて待っているのに、当然にも引き揚げて家族の懐に帰してやらなければならない。それに船そのものが(事件の真相糾明のための)証拠なのだから完全に引き揚げなければならない」と強調した。(「ハンギョレ21」第1048号、15年2月9日付、チョン・ウンジュ記者、キム・エスル・インターン記者)
予算・人力で政治攻勢、お先まっくら
民官合同調査委の発足に抵抗
一方的に準備団の公務員を撤収
単に意志がないのだろうか、それとも出しておいて妨害をしようというのだろうか。
セウォル号惨事の真相を明らかにするための民官合同調査委員会がまだ発足もしないうちから政府・与党のモタモタによって、ぎいぎいときしんでいる。1月16日、与党セヌリ党が調査委の規模に関連して「税金ドロボー」だとして常識はずれの主張をしていたかと思えば、それから何日もたたずに政府が調査委設立準備団への派遣公務員らを一方的に撤収させた事実などが伝えられ、政府・与党にセウォル号の惨事真相調査にむけた意志があるのかとの批判があびせられている。
撤収理由は「法
的根拠が不充分」
4・16セウォル号惨事特別調査委員会の関係者らの説明を聞いてみると、海洋水産部(省)と行政自治部(省)は1月23日、調査委設立準備団として派遣していた職員4人を復帰させた。これと共に、与党から推薦された民間人の職員3人も撤収し、本来14人だった設立準備団の職員のうち野党などの推薦で活動中の7人だけが残った。2月中の調査委発足を準備していた状況にあって、大きなつまずきが生じたのだ。
調査委所属公務員らの部署復帰はチョ・デファン副委員長ら与党推薦調査委員らの要請に従ったものだというのが、調査委側の説明だ。調査委の代弁人を務めているパク・ジョンウン弁護士は「1月21日に開かれた調査委員内定者の全員懇談会で、一部のセヌリ党が推薦した方々が設立準備団の活動の根拠を認定しがたいとの主張を行い、調査委員の中で多数を占めている法律家たちが『問題はないので活動を認定する』との結論を下した。さらに事務処長兼副委員長を担っているチョ・デフォン弁護士が設立準備団解散の案件を発議した。これもまた否決された」と説明した。
さらにチョ副委員長は前日の1月22日、海洋水産部に連絡し、「準備団の法的根拠が不充分だから撤収させろ」と語ったことが明らかになった。セウォル号特別法上、公務員派遣の権限は委員長が持っており、事務処長は委員長の指示を受け指揮・監督をすることができる。従ってチョ副委員長の一方的な公務員撤収命令は越権にも等しい。チョ弁護士はパク・クネ大統領の大選(大統領選挙)キャンプのシンクタンクである国家未来研究院の発起人として、大統領取引受(引き継ぎ)委員会で法秩序、社会安全の専門委員としても活動した。
このために一部からは与党推薦調査委員らが党・省庁との合意の上でこのような強引な手を使ったのではないのかとの観測が出てくる。これに先立ち1月16日、キム・ジェウォン・セヌリ党院内首席副代表は国会で開かれた院内懸案対策会議で、調査委設立準備団の職制や予算案をめぐって「こんな形式の税金ドロボー的やり方について絶対に許してはならない」と主張した。キム議員は「特別法では事務処の定員を120人以下と規定していたのに、調査委の事務処構成の過程で定員を125人にしている。女性家族部、放送通信委員会よりもさらに大きな部署、部処(日本の省、局にあたる)を作ることになると根拠を付け加えた。直接、記者たちに資料も出した。
副代表「税金ドロ
ボー的やり方だ」
さらに与党が指名したファン・ジョンウォン調査委員は1月18日、国会の正論館で記者会見を開き、「特委設立準備団が政府に要求した予算額は241億ウォンだという。セウォル号特委の委員さえ見ても聞いてもいない金額で、荒唐無稽でとんでもない」とし、キム議員の調査委についてのあらさがしに加勢した。調査委の独立性のために、政治的中立性と業務の独立性、客観性維持を法的に明文化したものだけれども、委員会が発足もしていないうちに政治圏の攻撃が何をねらっているのか、1年9カ月間の調査委活動は、すでに今から心配される。(「ハンギョレ21」第1048号、15年2月9日付、オム・ジウォン記者)
再び路上から人びとにアピール
真相糾明を訴えて巡礼の旅
犠牲者家族450qの道 19泊20日
「4・16セウォル号惨事の真相糾明および安全社会の建設などのための被害者家族協議会」が再び京畿道安山から全羅南道・珍島彭木港まで450qの道を歩く。19泊20日の間、路上で犠牲者の家族や参加者たちは完全な船体の引き揚げと沈没事故の真相糾明を訴える。
行進15日目の2月9日には全南・羅州でセウォル号惨事300日の文化祭を開く予定だ。そして珍島郡庁から彭木港に向かう最後の日程にはすべての遺家族らが共に歩く。1日30人余ずつで25qをリレーで歩き大田、全北・益山、光州などを経つつ各地域で希望する市民らは行進に参加することができる。
写真は、「完全なセウォル号の引き揚げと行方不明者の収拾および真相糾明を求めるための安山〜珍島・彭木港徒歩行進」に乗り出した参加者たちが1月26日午前、京畿道安山のセウォル号犠牲者政府合同焼香所前を出発している。(「ハンギョレ21」第1048号、15年2月9日付、キム・ジンス記者)
【訂正】本紙前号(3月2日付)1面下から3段目左から10〜11行目の「福島研修会」を「福島県集会」に、3面朝鮮学校記事の下から1段目右から6行目の「二〇一〇月」を「二〇一〇年」に、4面秘密保護法廃止シンポの下から2段目右から7行目の「によよって」を「によって」に訂正します。
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