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    かけはし2015.年3月9日号

差別の許容・拡大許さない


2.21 「ヘイトスピーチ裁判」を支援する東大阪の集い

国家はどう責任を果たすべきか?


 【大阪】在日韓国人のフリーライターである李信恵さんの「ヘイトスピーチ裁判」を支援する東大阪の集いが二月二一日、東大阪市立市民会館で開かれた。
 李信恵さんは、二〇一四年八月一八日、在特会(在日特権を許さない市民の会)と同会会長の桜井誠、書き込みを行ったブログ運営者に損害賠償を求める訴訟を大阪地裁に起こした。

ヘイトスピーチ
をどう定義する
集会では最初に、裁判を担当している上瀧浩子弁護士から裁判についての報告があった。
裁判は、集会の時点では第三回口頭弁論が終わっている。請求内容は、対在特会が五五〇万円と謝罪文掲載。対「保守速報」が二二〇〇万円と謝罪文掲載だ。
在特会は、ニコニコ動画・ツイッター・街頭宣伝で原告の名誉を傷つけ、侮辱し、業務妨害、脅迫となる発言をした。例えば、「ピンクのババア」、「嘘つき」、「反日ライター」、「追い詰めないといけない」などなど。これは、民族差別や女性差別にも該当する。京都の朝鮮学校裁判でもこれは人種差別に当たると認定されている。
もうひとつの請求相手である「保守速報」と題する個人のブログは、主に2チャンネルから、原告に対する誹謗中傷をしている内容の書き込みを選択して掲載している。転載した内容と数は相当数に及ぶが、スレッドへの書き込み、ツイッター、フェイスブック、ブックマーク等によりそれが拡散した規模も含めると膨大な量になる。
ヘイトスピーチの定義は、人種、宗教、性的指向、性別などの要素に対する差別・偏見に基づく憎悪(ヘイト)を表す表現行為であるが、マリ・J・マツダによる次のような定義が具体的でわかりやすい。
@人種的劣等性を主張するメッセージAメッセージの内容が迫害的で、敵意を有し相手を格下げするB歴史的に抑圧されてきたグループに向けられる。

論議を不可能
にさせる作用
ヘイトスピーチは、平等権という人類の普遍的認識に対する侵害だが、個人にとっても社会に対する安心感や自分への信頼感の喪失につながる。個人が属する集団が歴史的に差別を受けてきた場合には、より一層個人の名誉と集団の名誉が密接不可分の関係になる。ヘイトスピーチは、差別の標的になった者が抵抗というよりむしろ沈黙・発言の自粛をするよう強制する。だから、論議に参加することを不可能にする。
ヘイトスピーチは差別を再生産し、差別を許容する社会意識を増長させ、差別を否定する情報は容易に遮断される。従って、人種差別社会では、人種差別的言論は受け入れられやすい。人種差別的言論が公然と行われ、これを国家が閑視することは、人種差別を公然と行ってもいいとの意識を市民に普及させる。
ヘイトスピーチは、それ自体が暴力だが、さらに物理的な暴力につながっていく。以上のことは、女性に対するヘイトスピーチに対してはより一層当てはまる。女性に対する偏見、差別、暴力行為は連続しており、セクハラ、DVなどの暴力は、女性を一段低い者とみなし、女性を性的な者に矮小化してもいいという偏見が基礎になっている。
裁判では、高額な賠償金が一定の抑止力になることをめざす。ヘイトスピーチを禁止する法律がないので、個人が標的とならなければ損害賠償請求はできない。在日一般に対するヘイトスピーチ、ムスリム一般に対するヘイトスピーチをどのように制約していくのか、啓発や教育の課題や刑事規制などは今後の課題として残る。

だまっていては
絶対にダメ!
続いて、安田浩一さん(ジャーナリスト)が「日本における排外主義と人種差別煽動のヘイトスピーチ」と題して講演した。本来の予定では、李信恵さんの講演であったが、都合が悪くなり、安田さんに変わった。安田さんは、安倍首相の国会でのヤジ・曾野綾子の外国人労働者の隔離発言から話し始めた。(要旨別掲)
最後に、金光敏さん(NPO法人 コリアNGOセンター)が、ヘイトスピーチをめぐる最近の大阪の状況を報告した。
来たる統一地方選でも在特会が立候補するところがあるが、ヘイトスピーチに反対している候補者に投票を! メディアがおかしな報道をしたときは、即座に抗議を! 局としてはダメージになる。李信恵さんは、社会の矛盾を一手に引き受けて闘っている。これを座視していてはいけない! 東大阪では、現在中学校公民教科書に育鵬社の教科書が使われている。今年の教科書採択では、絶対にこの状況を変えなければヘイトスピーチはなくならない! 東大阪市は慰安婦像を造った都市(米国カリフォルニア州のグレンデール市)との姉妹都市の関係をやめるべきだと保守系議員が言っているが、それには反対だ!    (T・T)

安田浩一さんの講演から

社会を破壊する言説
を放置できない!


安倍首相の発言はネトウヨそのものだ。他の全国紙からもコメントを求められたが、東京新聞だけがその見解をのせてくれた。安倍首相は、「保守速報」からのものを自分のブログに載せている(なるほどそれならうなずける)。URの住宅の住民の半分は高齢者で、残り半分は外国人だが、ここでいろいろな問題が起きている。「外国人は自治会費を払わない」と高齢者。「一度も取りにきたことがない」、と外国人。「恐いから行けない」と高齢者。要するに、問題はコミュニケーション不足だ。
自分は、外国人労働者の問題に一番関心があったので、それを取材してきた。現在、外国人労働者は中南米からを中心に七〇万人、オーバーステイを含めれば全体で一〇〇万人ぐらいいるだろう。このうち、合法的な労働者(研修生と日系南米人)が六〇万人だ。研修生のほとんどは、中国人だ。地場産業の優れたメイドインジャパンの製品は、誰がつくっているか。それはかなりの場合外国人労働者だ。例えば、今治タオル、広島の牡蠣。メイドインジャパンは外国人労働者がいなかったら不可能だ。

外国人研修生
への人権侵害
岐阜県にある縫製工場を取材したことがある。ここでは、ブラウス一着七〇〇円で縫っている。この商品は、デパートで七五〇〇円で売られている。
縫製の仕事をする労働者の時給は二〇〇円だ。地域最賃は適用されない。労基法違反のように思えるが、外国人研修生の場合は、許されると就業規則に書かれている。もめ事を起こすと、事業所の経営者から直ちに帰国命令が出る。携帯電話の携帯は禁止されている。労働組合には加入できない。賃上げ要求はできない。パスポートは事業所が預かる。
経営者もこれでは利益が出ないから、単価を上げてくれと交渉すると、メーカーの社員は方法は二つしかないという。一つは、事業所の海外移転。もうひとつは廃業。研修生を送り出す国も、それを受け入れる国もそのような実態を黙認している。

中国人研修生
射殺事件から
研修生の契約は三年がリミットだ。ある研修生は、三年たち郷里の国に帰るとき、親方に貯金通帳とパスポートを返してもらった。貯金通帳を見たら、ほとんど金が貯まっていない。研修生になるのに必要な経費を借金して来たのに、これでは借金さえ返せない。
この労働者は即座に逃げて姿をくらました。非合法で働いてお金を貯めようと考えたのだ。その後どこでどうしていたかわからないが、あるとき栃木県の町を歩いていたとき、警官と目が合って、本能的に逃げ出した。警官も追いかけた。民家の庭に逃げたが行き止まりで、この労働者は石灯籠の上の丸い石と棒切れを手にとって警官に対抗しようとした。警官は新米警官で、とっさに威嚇射撃なしで撃ってしまい、労働者は死亡した。
この中国研修生の郷里にも行った。この事件は、宇都宮地裁で裁判になり、傍聴した。外に五〇人ほどのおじさんや若い女の子が集まっていた。その人たちは、2チャンネルを見て集まったという。「栃木県警の外国人犯罪取り締まりを支持する。日本人よ、不逞支那人の横暴に立ち上がれ!」と書かれた横断幕を持っていた。
これは二〇〇七年のことだ。彼らは、その後、在特会に合流する。マスコミが在特会の報道をするのは二〇一三年からで、それまでは、一部の連中がやっている、いずれ消えていく、と見ていた。そのときはそうであったとしても、自分も含めてマスコミ関係者が見落としていたことがある。それは、被害者を見ていないということ。

奪われる被害者
の「表現の自由」
以前、鶴橋で在特会の少女が「鶴橋大虐殺」を叫んだことがあった。その取材のときのこと。ヘイトスピーチはこの少女だけではなかった。それまでに真田山に一〇〇人ほどが集まって、「朝鮮人は呼吸するな」、「朝鮮女はレイプしてもかまわない」、「朝鮮人は殺せ」と口々に叫んでデモをした。
そのとき、李信恵さんに肩をたたかれ、取材をしたいけど、恐いから隠してくれと頼まれた。デモが終わってから、リシネの名前を呼ばれなくてよかったねと言った。李信恵さんは、号泣して私に抗議し、あの言葉は私に言われたことだと言った。
それまで、ヘイトスピーチは犯罪だと思っていたが、理解していなかった。ヘイトスピーチは、言葉の暴力ではなく、暴力そのもので、人と社会を壊す。ルワンダのフツ族とツチ族の間の虐殺事件。あれも、ラジオで繰り返し繰り返し流れる「……族は敵だ」、「……族はゴキブリだ」、「彼らは抹殺しなければいけない」という煽動から始まった。そういうものが、物理的に人々をその方向に走らせることはあり得る。表現の自由は大切だが、表現の自由を奪われているのは被害者の方だ。国連人権規約を批准しておきながら、ヘイトスピーチデモを許していいのか。(講演要旨、文責編集部)

投書

メディアのあり方を考える

川島 透

  『安倍官邸と新聞 「二極化する報道」の危機』(徳山喜雄著、集英社新書)を読んだ。在京紙の論調は、真っ二つに割れる「二極化現象」をおこしている。「朝日・毎日・東京新聞」が一つのグループをつくり、「読売・産経・日経新聞」がもう一つのグループを形成している。ただし、安倍首相の靖国神社参拝については、在京六紙のうち産経新聞がそれに賛同したが、他の五紙はいずれも反対意見を表明した。また、TPP(環太平洋経済連携協定)については、全国紙がその交渉参加を評価し、地方紙は批判するものが多くみられた。放送については、朝日新聞はテレビ朝日、読売新聞は日本テレビ、毎日新聞はTBSテレビ、産経新聞はフジテレビ、日経新聞はテレビ東京と系列関係にある。徳山氏は、そう主張する。徳山氏は、七つの分野で新聞の論調を検証している。具体的にいうと、「『改憲』へのスタンス」、「秘密保護法をめぐる報道」、「二分化する集団的自衛権報道」、「靖国神社参拝とNHK会長騒動」、「原発とどう向き合うか」、「アベノミクスと経済報道」、「外交報道の読み解き方」の七つだ。
 私は、徳山氏が「朝日・毎日・東京新聞」を評価しているというなら分かるが、徳山氏の結論が良く分からなかった。徳山氏は、主張する。「国論を二分するテーマで、両者の主張が鋭く対立、議論が二項対立化し、双方ともにいいっぱなしで終わっているケースがみられた。つまり、深い論議や、第三の可能性を探るといった成熟した言論が成立しにくい状況になっている」。「大きくしかも重要な課題を現在のように二項対立させ、第三の可能性を考える芽をつむことで、最後は『数の論理』で決着させられるということにならないか」。分からない。徳山氏は、「朝日・毎日・東京新聞」にも問題があるといいたいのだろうか。「成熟した言論」「第三の可能性」とは、何をいいたいのだろうか。
 私は、考える。多くの問題で、「朝日・毎日・東京新聞」が一つのグループをつくり、「読売・産経・日経新聞」がもう一つのグループを形成しているかも知れない。しかし、東京新聞と朝日・毎日新聞は、同じではない。多くの問題で、東京新聞は、朝日・毎日新聞よりも進歩的だ。テレビ放送では、NHKと民放が、対立している。「ニュースウォッチ9」「ニュース7」などは、政府寄りだ。民放の各チャンネルは、各新聞と系列関係にある。だが、同じテレビ朝日でも「報道ステーション」などと他の番組(「たけしのTVタックル」など)、同じTBSテレビでも「NEWS23」「サンデーモーニング」などと他の番組(「ひるおび! 」など)では違いがある。同じテレビ局でも、番組によって傾向の違いがある場合がある。また、私の知る範囲では、天皇制、オリンピック、ワールドカップ、スポーツ・ナショナリズム、領土問題などについては、(新聞・テレビにおける)「二極化現象」はおきていない。私の知る範囲では、多くの新聞・テレビが、親天皇制、親オリンピック、親ワールドカップの立場、スポーツ・ナショナリズムを肯定する立場、「問題になっている領土は、日本のものだ」という立場に立っている。『しんぶん赤旗』は、朝日・毎日新聞よりも進歩的であるかも知れない。東京新聞よりも進歩的な場合もあるかも知れない。しかし、『しんぶん赤旗』は、親天皇制ではないが反天皇制でもない。親オリンピック、親ワールドカップの立場、スポーツ・ナショナリズムを肯定する立場に立っている。「問題になっている領土は、日本のものだ」という立場に立っている。新聞・テレビは、これでいいのだろうか。
    (二〇一五年二月)


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