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    かけはし2015.年2月2日号

軍事・公共事業・原発・五輪関連増額


二〇一五年度予算案批判

統一地方選をにらんだばらまき予算反対

財政健全化とは名ばかり

 安倍政権は、二〇一五年度予算案を決定した(一月一四日)。一般会計の総額は、一四年度当初予算に比べ四六〇〇億円増え九六兆三四二〇億円に膨らみ過去最高になった。予算案の基本性格は、グローバル派兵国家建設の一環である「日本再興戦略二〇一四」と「成長戦略」を土台にし、春の統一地方
選をにらんだ「地方の創生」、大企業・ゼネコン・軍需・IT関連産業のためのカネばらまき予算である。
同時に、八%消費増税(一四年四月)後による実質賃金連続マイナスと消費者物価上昇による消費低下傾向、実質国内総生産(GDP)のマイナス〇・五%によってアベノミクスの破産が明白となり政権危機に追い込まれた安倍政権は、延命のために消費増税派を抑えて一五年一〇月の消費税率一〇%への再引き上げを先送り(二〇一七年四月実施)にせざるをえなかった。一〇兆円近くの税収増を前提にして一五年度概算要求に各省庁が群がったが、予定していた税収増がなくなったためそのしわ寄せを民衆の生活関連予算に押しつける民衆の生活破壊と犠牲を強要した予算を作り上げた。
消費増税強行によって税収は五四兆五二五〇億円となり、一四年度当初を四・五兆円(九%)上回った。新規国債は三六兆八六〇〇
億円と一四年度当初に比べ四兆三九〇〇億円減、歳出
を国債にどの程度頼っているかを示す国債依存度は三八・三%に減少した。だが、国と地方を合わせた長期債務(借金)の残高が、二〇一五年度末に一〇三五
兆円に達し、民衆一人あたり約八一五万円の借金に達している。
それにもかかわらず安倍晋三首相は、「経済再生、財政健全化を同時に達成するのに資する予算になった。地方創生や社会保障の充実に最大限取り組むとともに、国債発行額は減額し、六年ぶりに四〇兆円を切ることができた。過去三番目の削減幅だ」などと平気で自慢するのだ。だが政府は消費税増税による消費下降に危機感を露わにし、あわてて「個人消費の喚起と地方の産業振興」を看板にした一四年度補正予算案(総額三兆一一八〇億円/一月九日)を決めざるをえなかった。一五年度予算と切り離していながらもその実態は一体だ。一四年度補正予算と一五年度予算案を合わせれば、とんでもない巨額な予算に作り上げているのが真実の姿であり、「財政の健全化」などよく言えたものだ。
麻生太郎財務・金融相も「一五年度に基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB/新たな借金をしないで政策に充てる経費)の赤字を一〇年度比で半減する目標達成を見込む予算を策定した」と表向き触れたが、その根拠が希薄なためただちに「二〇年度のPB黒字化達成は引き続き難しいから、社会保障の自然増を含め歳出の徹底的な重点化、効率化を図った」と恫喝し、一〇%消費税増税を前提にしていることを明白にした。その道筋として「経済再生と財政健全化の計画」を上半期にまとめ、社会保障給付の「効率化・適正化」と称するという削減・抑制政策によって民衆の生活関連支出の見直しをねらっている。

医療・生活保護予算の削減

 民衆生活破壊予算の第一は、社会保障関係予算をターゲットにした削減、抑
制圧力を強めていることだ。社会保障費は、三一兆
五二九七億円(一四年度当初から三・三%増)。政府は「社会保障費が他の予算を圧迫する構図だ。聖域化しない」と繰り返し、介護、医療、年金、生活保護の負担増と給付削減へと踏み込んでいる。
介護事業者に支払われる介護報酬を二・二七%に引き下げた。財務省は、特別養護老人ホーム一施設あたり平均三億円の内部留保を確認しているから、介護報酬を下げても職員の待遇改善にむけた加算措置によって職員の給与は下がらないという手前勝手な主張をしている。これでは事業者は、経営防衛のために職員賃金をカットしていくのが必然だ。低賃金・重労働の介護職の有効求人倍率は二・四二倍(一四年一〇月)で慢性的な人手不足なのに、これでは事業者の経営破綻が膨らみ介護崩壊の促進でしかない。
そもそも特養は非営利法人であり、多くの経営難の特養も含めて一緒くたにし、民間企業がため込む内部留保と同じ扱いにしていることが間違いだ。特養の内部留保は、施設維持費、人件費などに使われているが、それでも厳しい経営状態にある。財務省の介護報酬引き下げ強行のためのデッチあげであり、介護の要支援者向けサービスを切り捨てに抗議し、介護報酬の引き上げ、介護労働者の大幅な賃上げ・諸権利を実現していかなければならない。
医療予算削減は、医療・介護総合推進法(一四年六月)にもとづいて病床機能分化による医療病床削減、各県ごとに医療費の上限目標を決めさせ、次々と抑制政策を押し進めた。七〇歳以上の高齢者の外来医療費の自己負担の月額上限額引き上げ、紹介状なしの外来患者に定率の自己負担(一〜三割)に加えて定額の負担増、入院給食費の自己負担二〇〇円の値上げで四六〇円増となる。さらに来年度以降、後期高齢者の保険料「特例軽減」の廃止で二〜一〇倍の値上げを準備している。深刻な総貧困化のなかで医療の本人負担増はこれ以上限界だ。安倍政権の人権破壊である医療改悪を許してはならない。
年金改悪は、消費税増税(一〇%)先送りを口実にして年金受給資格を二五年から一〇年に短縮、「年金生活者支援給付金」(低所得年金者に月最大五〇〇〇円支給)を延期した。年金改悪として「マクロ経済スライド」(年金の伸びを物価の伸びより低く抑える制度)を初めて発動する。さらに厚生労働省の社会保障審議会年金部会(一月二一日)は、物価が下がるデフレ下でも適応していくことを示した。年金抑制ありきで論議が押し進められている。年金生活者に対する生活打撃の無視だ。
生活保護費は二兆八六三
五億円で、一四年度当初に比べて一八八億円も削減した。すでに生活保護世帯は一六一万五二四〇世帯(一四年一〇月/六カ月連続)に達している。しかし家賃などの住宅扶助費、冬場の光熱費に充てる冬季加算を減額した。つまり、最低限の住宅に住めと押し付け、厳冬地も一緒くたにした冬期加算減額は人権無視もはなはだしい。憲法二五条生存権を否定する生活保護基準の引き下げを強行し、生活保護利用者への不利益待遇の強要だ。生活保護予算削減をやめ、増額していくことが国の責務なのである。

後退し続ける復興事業


子ども・子育て支援関連として五一八九億円、「待機児童解消加速化プラン」などに八九二億円を計上した。かろうじて施設数の増加や小規模保育増で対処したが、受け入れ児童数に間に合っていない。しかも保育認可基準・認可要件の引き下げをしながら、あいかわらず保育労働者の重労働・低賃金改善にむけた規制強化にほど遠い。保育士の賃金を三%引き上げると言っているが、その根拠は不明だ。公的保育制度の後退に歯止めが必要だ。
雇用関連予算は、前年度比七・九%減の一六七九億円。労働移動支援助成金に三四九億円計上し一四年度比で四八億円も増額した。この制度は、労働者の解雇とセットで再就職支援会社を紹介すれば国が一部負担するというシステムだからリストラに貢献するから財界は大喜びだ。
逆に雇用調整調整助成金は前年度よりも三五二億円も削減し一九三億円だ。制度は、事業縮小などに追い込まれた企業が労働者を解雇せず一時的な休業、教育訓練などによって国が休業手当や賃金などの一部を助成してきた。労働移動支援助成金の増額と雇用調整調整助成金削減は、いずれも財界の労働規制緩和・雇用の流動化路線を反映した予算だ。
東日本大震災の復興特別会計は三兆九〇八七億円(一四年度当初費七・二%増)。集中復興期間は一五年度までであり、財源も一三年度に使い切れなかった決算余剰金(一兆三〇〇〇億円)を活用する事態になっている。無駄遣いの二〇二〇年東京五輪やゼネコンのための公共事業増による乱開発、アベノミクスによる円安などによって建設業者の人件費や建設資材費が高騰し、被災三県の住宅再建、災害公営住宅整備、市街地再生、防災集団移転が遅れている。しかも復興交付金は三一七三億円で一二・八%減にしてしまった。自治体に配分した交付金が基金として積み立てられているということを根拠にしている。被災者の諸ニーズに基づく丁寧な予算化が求められているにもかかわらず、支援を後退させていく流れが作り出されてしまう。集中復興期間を延長し継続した財政支援を行い、諸工事遅滞を検証し、新たな復興事業計画を提示するために軌道修正を行うことが早急に求められている。

沖縄振興予算を大幅削減

 民衆の生活関連予算の削減をしながら軍事、公共事業、原発関連、東京オリンピック関連予算はいずれも増額となった。
軍拡費は三年連続増加で四兆九八〇一億円(SACO=沖縄に関する日米特別行動委員会=米軍再編関係経費含む)。一四年度補正予算案の軍拡費(二一一〇億円)と合わすと約五兆一九一一億円の大軍拡予算に達している。
当面、集団的自衛権容認にもとづくグローバル派兵体制を構築しながら対中国シフトを強めていくために主なものだけでも次々と巨額な軍拡予算を計上している。九州・南西諸島方面の軍備強化のためにイージス艦建造(一六八〇億円)、海空域情報収集のために哨戒機(二〇機/三五〇四億円)。垂直離着陸輸送機オスプレイ(五機/五一六億円)を購入し、佐賀空港のオスプレイ軍事拠点化のために約一〇六億円を計上した。自衛隊の「海兵隊化」にむけて水陸両用車(三〇両/二〇三億円)、陸自水陸機動団関連施設の整備・拡張する。さらに東シナ海での監視や偵察強化にむけて無人偵察機「グローバルホーク」を三機(地上施設整備も含めた費用は一〇〇〇億円前後)、F35戦闘機 (六機/一〇三二億円)も購入する。
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設工事の強化にむけて埋め立て関連一五四八・五億円、既存施設再編一八五・九億円を計上した。前年度比八〇倍以上の額になっている。なお安倍政権は、辺野古新基地建設に反対を掲げて当選した翁長新知事への圧力として沖縄振興予算を当初予算より一六二億円少ない三三四〇億円に減額した。
このような戦争のための軍拡費の聖域化を許してはならない。真っ先に圧縮・削減し、民衆生活拡充予算のために配分させなければならない。
公共事業関連予算も五兆
九七一一億円と巨額な予算となっている。国土強靭化
路線の充実化などと言っているが、国交省管轄のインフラの修繕・維持・管理費は一・六兆円程度にすぎない。実態はゼネコンのための大型事業の予算に満ちている。主なだけでも三大都市圏環状道路建設(二三七九億円)、国際コンテナ戦略港湾強化(六八七億円)、整備新幹線(七五五億円)、首都圏空港・航空関連(三六五六億円)などとなっている。安倍政権は春の統一地方選を見すえて、公共事業を通した族議員―ゼネコン―地域買収構造の構築にねらいがある。土木建設業と地域ボスの集票マシーンへの育成だ。乱開発・環境破壊型の事業を圧縮し、インフラ整備・耐震工事・防災関連予算の増額を優先し、無駄な公共事業費は削減だ。
原発関連予算は八九八五
億円(一四年度比六・八%減)。民衆の脱原発要求に対して真っ向から敵対する予算を次々と計上した。再稼働にむけた新規制基準対応費(一〇二億円)、原発立地地域基盤整備(二三億円)、原子炉安全対策高度化事業(四八億円)、原子力海外建設人材育成委託費(四・三億円)、高速増殖炉「もんじゅ」(一九六億円)などだ。川内原発再稼働を突破口にした原発再稼働予算を許さない。
二〇二〇年の東京オリンピックとパラリンピック関連予算は、二九〇億円計上し、なんと前年度比三四億円も増額した。東京五輪での目標が「金メダル数世界三位」とウソぶき、ナショナリズムを煽りながら強引に巨額な予算をもぎとったのが実態だ。競技力向上事業(七四億円)、ナショナルトレーニングセンター拡充(一億円)、スポーツ地域活性化推進事業(三・一億円)、五輪情報通信技術(二一億円)とIT整備(二・八億円)、多言語音声翻訳システム(一三・八億円)など、なんでもありのバラマキ予算となっている。スポーツ族議員とオリンピックマフィアが一体となった国家主義スポーツキャンペーンと工作の「成果」だ。民衆の生活を犠牲にしたオリンピック予算を削減しろと迫っていこう。

民衆の生活破壊予算を許すな!


政府は、厳しい財政状態などと繰り返し主張している。だが一五年度予算の概要点検で明らかなように軍拡と原発再稼働費の削減、大資本のための優遇税制の見直しと予算支出削減、法人税課税の強化、累進課税と最高税率の引き上げなどによって民衆のための予算構築が可能なのだ。民衆の生活に打撃を与え続ける逆進性が強い消費増税を引き下げることは当然である。
予算案は一月二六日召集の通常国会に提出するが、先行して一四年度補正予算案を成立させ、四月の統一地方選を見すえて一五年度予算案は三月末までに成立を強行するつもりだ。日本経済団体連合会は、「『豊かで活力ある日本』の再生」(一月一日)でグローバル経済を勝ち抜いていくため
により新自由主義路線の強化を打ち出し、「補正予算ならびに本予算を早期に成立」させろと安倍政権を「応援」している。しかも法人
実効税率二五%引き下げ、消費税を三〇年までに一九%に上げろと言い出している。すでに一三年度の家計貯蓄率マイナス一・三%(内閣府)、住民税が非課税となる低所得世帯が二四〇〇万人、年収二〇〇万円以下のワーキングプアが一一〇〇万人を超えている。深刻な貧困化が深まっているにもかかわらず打撃を与える民衆生活破壊に満ちた予算に反対していこう。   (遠山裕樹)


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