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    かけはし2015.年1月12日号

農業労働法では存在を認められず


安全な食卓を支えている裏側と現実

農業移住労働者の実態を把握せず

 「ハンギョレ21」第1025号の企画記事は「涙の食卓」だった。
 雇用許可制の導入(2004年8月17日)から10年を迎え、10年前と変わらない環境で我々の食卓を準備してきた農・畜産・漁業の移住(外国人)労働者たちの涙を見つけ出した。
 「安全な食卓」が我々の関心を集めている時、「ハンギョレ21」はその食卓を用意している人が誰なのか喚起してみることを提案した。そして問うた。
 我々の安全な食卓は人間らしいのか、と。
 質問に応じて反応する声が予想外に多かった。「食卓の根源、その涙のルーツ」を考えてみるという誓いもあったし、我々の身土不二(体と大地は一体で、自らが暮らしている土地で産する農産物が体質に適しているという意味)の食卓を外国人たちが支えているという事実に遅ればせながら驚いている読者もいた。全国の田畑が我々の食卓に上るまで汗よりも多く流した「涙の過程」に衝撃を受けたという反応も多かった。「一部」の雇用主らの問題を「全部」であるかのように見せたという批判や、移住労働者と雇用主を善と悪に2分化したのではないのかとの指摘もあった。そして2カ月が過ぎた。その間に国連人種差別特別保護官(ムティマ・ルティエレ)が訪韓し国内の農・畜産移住労働者たちの現実に憂慮を表した。国内アムネスティは韓国の農・畜産移住労働報告書を発表し国際社会に訴えた。
 「ハンギョレ21」は人権(国際アムネスティ)、移住労働(移住共同行動、移住人権連帯、外国人移住労働運動協議会)、モッコリ(食材の意)正義(ハンサルリム、アイクブ、国際スローフード韓国協会、国際食品連盟・IUF)分野の8団体と「人権の食卓」キャンペーンに踏み出す。
 「我々の食卓は人間らしいのか」という質問を超え「人間らしい食卓はどのように可能なのか」を模索する試図だ。韓国農・畜産移住労働の現場が人身売買状況におかれているという論争的解釈(アムネスティ)から始まり、移住労働者たちの暮らしを締めつけている構造に対する解剖も続く。日常の食卓と結びついた歪んだ流通構造が農・畜産従事者たちと移住労働者たちをどのように駆り立てているのかも探る計画だ。「涙の食卓」が「幸せの食卓」になるように心を込めて連帯している人々の現場を訪れ農・畜産業従事者たちと移住労働者たちが出会える地点も探求する。読者・市民の声を集め、政府の責任ある態度と制度改善も追求するだろう。キャンペーンは12月18日の「世界移住の日」まで続けられる。(「ハンギョレ21」第1033号、10月27日付、連載企画のリードより。イ・ムニョン記者)以下の記事は、上記連載企画Cの部分である。(「かけはし」編集部)


存在することを認定されない存在が権利の所有権を認定される訳がない。
韓国農業は影の領域だ。国家の政策から押し出された農業は法の世界でも「関心外の領土」だ。韓国の法体系は農業分野に「労働者がいる」という事実を声明できない。「存在」を証明できない者は「存在していないこと」に属する。農業労働者が見えないことによって農業労働を支えている移住(外国人)労働者も透明人間となる。

基準となる法自体が存在せず


韓国農業と農業移住労働者の「法的処置」は雇用労働部(省)が国際労働機構(ILO)に提出した「未批准協約報告書」を見ると分かる。ILOは現在「農業労働者の結社の自由契約」(11号、1921年制定)と「農村労働者の組織協約」(141号、1975年制定)の改正を推進している。制定以降に変化した農業の現実を反映しなければならないという必要性が提起されるとともに、だ。両協約はそれぞれ90余年および40余年前に作られた。ILOは昨年、全世界の加盟国政府に農業(村)労働者らの現実を問う質疑書を送った。国際基準と各国の法・制度の衝突を把握して反映しようとする措置だ。雇用労働部は今年初めに使用者(韓国経営者総協会)と労働者(民主労総・韓国労総)団体に答弁内容を回復した後、ILOに送った。2大労総は移住民と共に、国際食品労連(IUF)、公益人権法財団「共感」などと政府報告書の問題点を分析し、別途意見書を作成した。
「農村勤労者の範疇を別に規定している法令は存在しない」。
ILOの質疑(「貴国の農村労働者の範疇を具体的に明示」し、「農村労働者たちの組織設立を規定する法律および行政的規制条項を提供せよ」)に対する政府の回答だ。国内農業(村)労働者たちは法の言語によって定義できない存在だ。
ILOは農業分野の労働者を2つの概念によって解釈する。農「業」労働者(Agricu Ltural Worker、11号協約に該当)は農業の側で働いている賃金労働者を意味する。農「村」労働者(Rural Worker、141号協約に該当)は農村の賃金労働者だけではなく借地人や小作農および小規模自作農を含む。2つの概念のいずれも韓国の法には存在していない。
「概念不在」の状況にあって政府は施行令が規定している「農業人」の定義を引いてきて説明を代替する。?1千u以上の農地を経営したり耕作している人?農業経営を通じた農産物の年間販売額が120万ウォン以上の人?1年のうち90日以上、農業に従事している人?営農組合法人の農産物出荷、流通、加工、輸出活動に1年以上、継続して雇用された人?農業会社法人の農産物流通、加工、販売活動に1年以上、継続して雇用された人。
雇用人と被雇用人の概念が混在している。被雇用人が誰なのかも仔細に調べなければならない。田畑で働いている韓国人労働者は日雇い労働など短期雇用が多数だ。「1年以上継続して雇用された」ケースは極めてまれだ。韓国農業(村)労働者たちも「農業人」たりがたいということだ。労働者を説明しようとして動員した概念が、むしろ労働者を追い出す形勢だ。現実の変化を反映できない「法の言語」の力だ。
ILOの定義とも明らかな違いを示す。ILO141号協約が規定する農村労働者は、その範囲から雇用人(「労働者を常時雇用する者」と「相当な数の季節労働者を雇用する者)」または「小作農や借地が耕作する土地を所有する者」)を明確に除外する。

「農業人」とは韓国人と雇用主


「農民」と「農業人」は職業だけれども「労働者」あるいは「勤労者」は地位だ。韓国の農業関連法には雇用人に近い「農業人」だけがあるばかりで、法によって地位や権利を保障されなければならない「労働者」は存在していない。
「法は農業(村)労働者の存在自体を認識できず、彼らの権利を扱う規定もない。ILOは韓国が基準を守っているかと聞いているのに、基準となる法自体がない状況だ」(リュ・ミギョン民主労総国際局長)。
農業(村)労働者の正確な統計も分かりようがない。統計庁の経済活動人口調査(毎月実施)は農業従事者数は提示するものの、彼らが雇用人なのか被雇用人なのかは告げてはくれない。農林漁業総調査(5年単位)も労働者を雇用している農場数は集計するが労働者数は把握していない。「農村労働者について何も調査されたことがないので、政府がILOに提出した報告書は彼らが直面した現実を反映できていない」と2大労総の意見書は評した。
だからだ。政府報告書では農業移住労働者の存在が表れない。農業(村)労働者が把握されない法のシステムでは農業労働者を支えている移住労働者たちも未確認の存在とならざるをえない。
「政府報告書は農業(村)労働者を韓国人としてのみ想定している印象が色濃い。移住労働者に対する言及が、はなからない。長期賃金労働者の多数(2014年8月、法務部の集計は2万3996人だが、未登録労働者などを含めれば2万5千人以上と推定)を移住労働者が占めているが、あたかも見えない存在のように取り扱っている」(チョン・オクスンIUF韓国支部事務局長)。
批判には理由がある。政府が「農業人たちは民法などを土台として農民団体を自由に組織し、自らの利益、福祉などを代弁している」と語る時、「農業人たち」に移住労働者が入り込む余地はない。「分野別に様々な育成や支援関連の法令があり、所得安定のための補助金の支給、農業人団体などの教育運営の支援など」を受ける「農業人(あるいは農業経営体)」も韓国人と雇用主にのみ該当するという説明だ。
国内農業労働者の結社ならびに農村労働者の組織の自由を問うILOの質問に政府は「法的権利が保障されている」と繰り返し強調した。雇用労働部は「勤労者は勤労条件の向上のために自主的な団結権、団体交渉権および団体行動権を有する」(憲法第33条、第1項)とし、「農業に従事している賃金勤労者たちは他の産業に従事している賃金勤労者たちと同一の権利を有している」と語った。農業移住労働者たちの現実とは、およそ程遠い。政府が「農業賃金勤労者たち」の範疇に移住労働者まで含めさせたのであれば事実とは異なる虚偽の報告書を書いた、という意味になる。

労組がない移住労働者

 法規上では移住労働者もまた労働組合法および労働関係調整法の適用を受けるけれども現在、政府はソウル・京畿・仁川移住労働者労働組合(移住労組)を認定せずにいる。2005年5月、労働部は移住労組の設立申告を返戻した。組合員に未登録労働者が含まれているという理由だった。移住労組は裁判所に設立申告返戻取消訴訟を提起した。1審(労働部勝訴)と2審(移住労組勝訴)を経て労働部の上告(2007年2月)を受け付けた大法院(最高裁)は、7年を経過した今日まで判決を引きのばしている。ユン・ジヨン「共感」弁護士は「現実的弾圧が存在している状況にあって、法規上の制限なく移住労働者の権利が保障されると言うことはできない」と語った。韓国人であれ移住労働者であれ、農業労働者たちが組合員として加入した労働組合は現在のところ皆無だ。
農業移住労働者たちが過度な労働(第1034号、特別企画「約束に反する非情な契約など」参照――略)などを理由として団体行動をしているケースもある。キム・サガン移住と人権研究所研究委員は2013年国家人権委員会の「農・畜産業移住労働者の人権状況実態調査」報告書の作成に参加した。彼は江原道春川のあるパプリカ農場主の言葉を紹介した。
「初めは同じ国籍の2〜3人を使った。そうしたら一緒にデモをしたのだ。それで今度はネパール人を1人、ミャンマー人2人を申請した。違う国籍を雇うとデモはしないようだから。デモをやられると頭が痛いから、デモの主導者は最初から我々が(母国に)送ってしまう」。
政府報告書は実際との食い違いの連続だ。農業移住労働者たちは入国後、2泊3日間の教育を受ける。労働者たちは自身の権利や問題提起の方法を学ぶのではなく、雇用主に不満があっても耐えて、いつも感謝の気持ちを持つことを「学ぶ」(国家人権委報告書)。
ILO11号協約(「農業に従事するすべての者に対して工業勤労者に対するものと同一の結社および組合の権利を確保し、そのような権利を制限するすべての法律その他の規定を廃止することを約束する」)は1921年に制定された。既に100年を経過している協約さえ韓国では「今なお道遠し」という証拠だ。「ILOの11号、141号協約の改正は、あまりにも古くなって時代に立ち遅れた内容を現実に合うように変えようという作業だ。雇用許可制によって農業への移住労働者が大挙流入している韓国では93年前の協約内容でさえ、うらやましい限りだ」(チョン・オクスン事務局長)。
政府の答弁を見ると、農業現場の変化を法や制度に反映させていくという意志もないようだ。2大労総は韓国政府が農業(村)労働者の存在を認定する立法化に乗り出すようにILOが手助けしてくれることを求めた。ILOも農業(村)労働者の結社の自由のために政策的支援を要請したことはあるのか、と政府に質問した。雇用労働部は「ない」と答えた。今後、政策的助言や技術協力が必要かという質問には「必要な時には要請する」と話した。韓国がILOに提案する内容を問う質疑にも政府の答えは「なし」だった。勧告を履行するために韓国の法律や慣行を修正したことも「現在のところはない」と答えた。韓国農業は政府の産業政策からだけではなく、その意志からも無視されている。

農業の変化を反映しない法体系


この「事態」は単純に「法の遅滞」だけを意味しているのではない。現実と遊離した法は「法治」の根拠ではなく「苦痛の産室」となる。小農が没落する韓国の農業は、規模を大きくした企業農の形態によって生存を模索している。家族が中心だった農業労働力も近代的賃金労働の形態へと再編されている。「広義の農業人」ではなく「狭義の労働者」なしには農業が不可能になった。激浪に乗った農業の変化を法体系が反映できない時、国家や国民から捨てられた農業は「2度死ぬ」ことになりかねない。
2大労総の意見書は10月20日、「人権の食卓」キャンペーン(「ハンギョレ21」とアムネスティインターナショナルなど8団体が共同進行)の開始に合わせてILOに発送された。ILO専門家委員会は2015年2月、各国政府の答弁書と労使の意見書を総合し、6月総会に報告書を提出する。総会に提出された報告書は基準適用委員会が検討して11号、141号の協約改正の是非を決定する。(「ハンギョレ21」第1036号、14年11月17日付、イ・ムニョン記者)

 

国際社会が注目したアムネスティ報告書
「韓国の隠されていた虐待と搾取を暴露した」

韓国農業を支える
カンボジア労働者

 韓国農・畜産移住労働を人身売買と解釈した国際アムネスティ報告書(「苦痛を収穫する:韓国農・畜産業移住労働者への搾取と強制労働」)を国際社会が注目している。国内メディアの多くが報告書の発表に無関心な間に、主要外信は重みをもって報道し、イシューを伝播している形だ。
国内農・畜産移住労働者の最大の送り出し国であるカンボジアの「プノンペン・ポスト」は「韓国が自国農業を支えてくれている移住労働者たちを虐待して批判を受けている」と書いた。カンボジア労働省の統計を引用して、昨年8800人のカンボジア労働者たちが韓国に移住労働をしに旅立ったとの消息を伝えた。「万一、韓国人が同じ虐待のわなにかかっていたら当然にも社会的憤怒が起こるだろう」というノマ・カン・ムイッコ・アジア太平洋移住人権捜査官の言葉を打電した。

各国のマスコミが
虐待の実態を報道


米国の時事週刊誌「タイム」は「ソウルの華麗さの底辺で移住民下層階級がむごい虐待に耐えている」という文章で記事をつづり始めた。「タイム」は韓国政府が雇用許可制を通じて持続的な虐待にかかわっているというアムネスティの主張を引用した。「ウォールストリート・ジャーナル」と「米国の声」、ドイツのメディア「ドイッチェベレ」も、雇用許可制が問題の根底にあることを指摘した。韓国の農・畜産移住労働者の送出特化国家のうちの1つであるネパールの「マイ・リパブリカ」はアムネスティ・ネパール支部関係者の言葉を補充した。「アムネスティ報告書は韓国の隠されていた虐待と搾取をあらわにした」「韓国政府は強制労働や搾取を終わらせる措置を取らなければならないという催促」だと評した。
アムネスティは国際社会を対象にイシュー・ファイティングを強化する、との方針だ。(「ハンギョレ21」第1034号、14年11月3日付)



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