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    かけはし2014.年11月17日号

露骨な国家主義の注入だ


中教審「道徳の教科化」答申批判

「戦争する体制」へのイデオロギー動員

極右人脈で固めた再生会議

 文科省の諮問機関である中央教育審議会(安西祐一郎会長)は、一〇月二一日、安倍政権のグローバル派兵国家建設の一環である新自由主義教育政策と愛国心教育の徹底に向けた教育再生実行会議路線の具体化である、小中学校の「道徳の時間」の教科化強行にむけて「道徳に係る教育課程の改善等について」を答申した。
中教審の「道徳の教科化」答申に至る経過はこうだ。
安倍首相は、第一次安倍政権(二〇〇七年)時に道徳の教科化を策動したが中教審、文科省官僚の抵抗によって頓挫したことを踏まえ、人事配置から着手した。
下村博文文科相、副大臣に藤井基之、丹羽秀樹、政務官に赤池誠章、山本ともひろなどの天皇主義右翼、日本会議に加盟する自民党議員を文科省の役職につかせた。
それに先行して安倍の極右思想と国家主義を実現していく演出装置である教育再生実行会議にも佃和夫(原発・兵器産業の三菱重工業会長)、加戸守行(「新しい歴史教科書をつくる会」、前愛媛県知事)、河野達信(「日の丸・君が代」教育推進の全日本教職員連盟委員長)、曽野綾子(歴史偽造・右翼作家)、八木秀次(日本教育再生機構)など札つきの右翼を配置していた。
再生会議は、「いじめの問題等への対応について」(第一次提言)(一三年二月二六日)で「改正された教育基本法の理念が十分に実現して」いないと称して「道徳の教科化」が必要だと強調した。それは「心のノート」を使った「規範意識」「道徳」の押し付け、学習指導要領で事例を列挙し、成績をつけるというものだった。委員の加戸は「戦前の修身教育を思い出させるなどと批判はあるが、今はそんな時代ではない。文科省にはできない道徳の教科化を、政治主導で方向づけできる」と居直っていたほどだ。

現代版「修身教育」許すな


この教育再生実行会議路線を踏襲する形で文科省は、「道徳教育の充実に関する懇談会」を設置した。最終的な報告書案(一三年一二月二日)も「規範意識」「道徳」の押しつけの姿勢を維持して@小中学校の「道徳の時間」の教科への格上げA評価は数値ではなく記述式B教材は検定教科書C授業は学級担任が受け持つD「道徳教育推進リーダー教師」を指定することを提言した。要するに「我が国と郷土を愛する」という「愛国心条項」を盛り込んだ改悪教育基本法の理念を押しつけ、強要していくために道徳の教科化を実現していくことにある。
すでに文部科学省は、道徳教育用教材「心のノート」を全面改訂し、「私たちの道徳」を完成させ、四月からばらまいている。
小学校五、六年の「私たちの道徳」は、 「4みんなとつながって?法やきまりを守って ?公正、公平な態度で ?自分の役割を自覚して ?公共のために役立つことを ?家族の幸せを求めて ?より良い校風を求めて ?郷土や国を愛する心を ?世界の人々とつながって」、同様に中学の「私たちの道徳」でも「4社会に生きる一員として ?法やきまりを守り社会で共に生きる ?つながりをもち住みよい社会に ?正義を重んじ公正・公平な社会を ?役割と責任を自覚し集団生活の向上を ?勤労や奉仕を通して社会に貢献する ?家族の一員としての自覚を ?学校や仲間に誇りをもつ  ?ふるさとの発展のために ?国を愛し、伝統の継承と文化の創造を ?日本人の自覚をもち世界に貢献する」という項目を立てて愛国心と国家主義を巧妙に注入しようとねらっている。
安倍は、「教育基本法を改正し、教育の目標に伝統文化の尊重や愛国心や郷土心も書いたが、検定基準では改正基本法の精神が生かされていない」(一三年四月一〇日)とどう喝しながら、中国や韓国などのアジア諸国に配慮するよう求める「近隣諸国条項」の撤廃を主張してきた。
文科省は、道徳の教科化によって検定教科書として改悪教基法下の道徳教科書を作り上げていく魂胆だ。しかも安倍政権が求めるグローバル資本主義と戦争国家を担う人材育成にむけた現代版「修身科」と国定教科書の再現である。

国家が必要な人材育成

 中教審答申は、基本的に自民党「教育再生実行本部」、安倍政権の「教育再生実行会議」、文科省の「道徳教育の充実に関する懇談会」の提言を集約したものでしかない。
答申の「1 道徳教育の改善の方向性」の「(1)道徳教育の使命」において「道徳教育は、人が一生を通じて追求すべき人格形成の根幹に関わるものであり、同時に、民主的な国家・社会の持続的発展を根底で支えるものでもある」と規定し、国家建設を担うための規範意識の形成として位置づけるのだ。
ここを基準とし、前提にしているから小学生、中学生に対する道徳教育は、「社会を構成する主体である一人一人が、高い倫理観をもち、人としての生き方や社会の在り方について、多様な価値観の存在を認識しつつ、自ら感じ、考え、他者と対話し協働しながら、よりよい方向を目指す資質・能力を備えることがこれまで以上に重要であり、こうした資質・能力の育成に向け、道徳教育は、大きな役割を果たす必要がある」などと高圧的な姿勢で国家建設にとって有効な価値観、倫理観をでっち上げ、押し付け、国家に忠実な人間育成を推し進めるものになっている。どのような社会なのかという分析も総括もなく、グローバル資本主義と新自由主義による競争主義、弱肉強食、格差拡大と貧困化の社会を批判していく回路の重要性に触れることもない。
しかも「特別の教科 道徳」(仮称)として新たに位置付けているが道徳の教科化の根拠が薄弱なままだ。強引に「学校教育の中核として位置付けられるべきもの」と押し出し、「道徳教育の要である道徳の時間において、その特質を生かした授業が行われていない場合があることや、発達の段階が上がるにつれ、授業に対する児童生徒の受け止めがよくない状況にあること、学校や教員によって指導の格差が大きいことなど多くの課題が指摘されており、全体としては、いまだ不十分な状況にある。こうした実態も真摯に受け止めつつ、早急に改善に取り組む必要がある」から「道徳の教科化」が必要だと恫喝するだけだ。
結局は、安倍政権がめざすグローバル派兵国家構築にむけて「学校における道徳教育全体の充実を図ることは、教育基本法に定める『人格の完成』や『平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質』の育成など教育の根本的な理念の実現にとっても極めて大きな意義をもつものと考える」と結論づけるのだ(答申「2 道徳に係る教育課程の改善方策」)。

矛盾に満ちた弁明

 あげくのはてに答申は、わざわざ「なお、道徳教育をめぐっては、児童生徒に特定の価値観を押し付けようとするものではないかなどの批判が一部にある」と触れざるをえないほど社会的批判を気にしているポーズをとりながら、「しかしながら、道徳教育の本来の使命に鑑みれば、特定の価値観を押し付けたり、主体性をもたず言われるままに行動するよう指導したりすることは、道徳教育が目指す方向の対極にあるものと言わなければならない」と答申の基本性格と矛盾、整合性がないことを表面化する欠陥を露呈している。
「道徳の視点の順序」において「3 主として自然や崇高なものとの関わりに関すること」と「4 主として集団や社会との関わりに関すること」を取り上げ、天皇制と「日の丸・君が代」教育を射程にしたイデオロギー注入を指摘している。
「3 その他改善が求められる事項」では、「道徳教育は、人の一生涯にわたる人格形成に関わる課題であって、就学前の幼児期、高等学校、特別支援学校などにおける道徳教育についても、一貫した理念に基づき、改善を図っていく必要がある」と明記し、「幼稚園や高等学校における道徳教育の充実に関しては、学習指導要領の総則に関わる部分を除き、主に次期全面改訂に際し、本格的に検討を行うべき事柄である」と強調している。
とりわけ高等学校を対象にした道徳教科化導入策動は、「道徳教育推進教師のリーダー役として助言等を行う『道徳教育推進リーダー教師』(仮称)の設置の促進や、道徳教育を専門に担当する指導主事の配置、道徳教育に優れた経験を有する退職教員や民間人材の活用など、教員の指導力向上を推進するためのスタッフの充実も必要である」と合わせて提示していることに注意しなければならない。
この提起は、すでに愛国心教育と新自由主義教育を先取りしてきた東京都教育委員会の取り組みを先行事例として組み込んでいく危険性がある。
都教委は、「東京都教育ビジョン(三次)」で「防災教育と自衛隊と連携」する「防災教育推進校」、「道徳教育先行実施校」、「規範意識向上先行実施校」を設置した。さらに「道徳授業地区公開講座」を行い、八月に都内全公立小・中学校の道徳教育推進教師を対象にした養成講座を行った。「東京都道徳教育教材集」をベースにしながら都教委に忠実な教師作りを強化してきた。
「ボランティア活動での活用事例」には「東京消防庁の防災訓練の写真」を見せ、「防災訓練」も地域にとって大切な活動である」と取り上げている。この位置づけのもとに生徒たちを防災訓練に動員している。
すでに「防災教育推進校」の田無工業高校では陸上自衛隊朝霞自衛隊基地での宿泊防災訓練(二〇一三年七月二六日〜二八日)、自衛隊リクルーターが指導する夢の島防災訓練を強行した(一四年二月三日〜五日)。社会的批判が強まるなか、一一月二六日〜二八日にも大島高校の自衛隊武山駐屯地での宿泊訓練を再度強行しようとしている。高校生を国防訓練に動員し、自衛隊入隊を応援する始末だ。都教委のように道徳授業、軍隊の一体化に結びつく危険性を厳しく批判しなければならない。
安倍政権が「国家安全保障戦略(NSS)」の基本方針(一三年一二月一七日)で「我が国と郷土を愛する心を養う」を明記したことと連動した動きだ。NSSは、「国家安全保障を身近な問題として捉え、その重要性や複雑性を深く認識することが不可欠」だとして位置づけていることに現れている。
「特別の教科 道徳」は、「日の丸・君が代」強制に続く国家による思想統制であり、戦前の戦争動員のための皇民化教育の「修身科」の復活と言える。安倍政権・自民党・日本会議など右翼勢力の悲願であった「道徳の時間」教科化に反対していこう。   (遠山裕樹)


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