運用基準決定と12月施行に抗議する
強まる治安弾圧をはねかえそう
自由・権利を闘いの中で確立しよう
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ガイドライン改悪とも連動
安倍政権は、一〇月一四日、特定秘密保護法の運用基準と一二月一〇日施行を強行することを決定した。情報保全諮問会議に提示した運用基準の修正案を実質的に追認したものでしかない(九月一〇日)。施行決定は、日米防衛協力のための指針(ガイドライン)の改定に向けた中間報告(一〇月八日)で「周辺事態」を削除して地理的制約をなくし「グローバル(世界規模)な平和と安全」と称して日米グローバル派兵体制を構築していくことを掲げたことと軌を一つにしている。この二つのセットで戦争遂行を支える秘密保護法体制を徹底させていくことをねらっている。
パブリックコメントは二万四〇〇〇件集まり、六〇〇項目に分類したが、半分以上が秘密保護法の廃止や条文見直しだったにもかかわらず秘密保護法の基本骨格を維持し排除した。この延長で閣議決定後でも菅官房長官は、政府御用機関である「内閣保全監視委員会」「独立公文書管理監」の設置をしたから「厳格にチェックできる。二重、三重の仕組みを設けているので、これらが実効的に機能するようにしておけば問題ない」と居直った。グローバル派兵国家建設と一体となった国家機密強化法である特定秘密保護法の施行強行を許さない。
「都合の悪い情報は隠せ!」
特定秘密保護法は、@「防衛」A「外交」B「安全脅威活動の防止」C「テロ活動防止」のうち一九の行政機関の長が「特段の秘匿の必要性」がある機密を「特定秘密」に指定し、特定秘密を漏らした政治家、国家公務員、民間人に最高で懲役一〇年を科すというものだ。要するに国家にとって都合の悪い情報を「特定秘密」に指定して恣意的な運用の拡大へとつながり、民衆の知る権利を制限していくことにある。
運用基準(「特定秘密の指定及びその解除並びに適性評価の実施に関し統一的な運用を図るための基準」)は、指定対象として五五の「細目」を明記している。
「第1号(防衛に関する事項) 」の中で「イ 自衛隊の運用又はこれに関する見積もり若しくは計画若しくは研究」「ニ 防衛力の整備に関する見積もり若しくは計画又は研究」が特定秘密だというのだ。戦争のための兵器などの保有数、詳細費用を隠蔽し、公式発表で逃げ切ろうという魂胆だ。ますます軍拡予算が膨らんでしまう。秘密保護法は、軍拡予算推進法でもある。
「第2号(外交に関する事項) 」では、「イ 外国の政府又は国際機関との交渉又は協力の方針又は内容のうち、国民の生命及び身体の保護、領域の保全その他の安全保障に関する重要なもの」「ハ 安全保障に関し収集した国民の生命及び身体の保護、領域の保全若しくは国際社会の平和と安全に関する重要な情報又は条約その他の国際約束に基づき保護することが必要な情報」などと拡大解釈が可能な文言を押し出しているが、一九の行政機関の長と官僚によってこれらを適用すれば限りなく特定秘密が拡大してしまうのだ。
「第3号(特定有害活動の防止に関する事項)」は、基本的人権、思想信条の自由を破壊するものだ。運用規準は「特定有害活動」について「公になっていない情報のうちその漏えいが我が国の安全保障に支障を与えるおそれがあるものを取得するための活動(いわゆるスパイ活動等)」と規定し、拡大適用を強行していくめに「おそれ」という文言で民衆にとって必要な情報でさえも厳罰主義で情報統制していくことを目指しているのだ。
つまり、国家の違法を厳しく監視し、批判していく活動を「特定有害活動」とレッテル張りし、調査や取材などさえも「イ 特定有害活動の防止のための措置又はこれに関する計画若しくは研究」「ロ 特定有害活動の防止に関し収集した国民の生命及び身体の保護に関する重要な情報又は外国の政府若しくは国際機関からの情報」の漏洩に当たるから検挙していくことが可能となってしまうのだ。まさに「現代版治安維持法」へと「成長」させていく安倍政権の野望を阻止しなければならない。
「第4号(テロリズムの防止に関する事項)」も「テロリズム」について「政治上その他の主義主張に基づき、国家や他人にこれを強要する目的や社会に不安や恐怖を与える目的で、人を殺傷したり、重要な施設その他の物(例えば、国会・政府・裁判所の建物、空港などの交通施設や通信インフラその他の社会インフラ等がこれに当たります)を破壊するための活動をいいます」と手前勝手な規定とストーリーのデッチ挙げで、なんでもありの弾圧が可能な文言だらけだ。
かつて自民党幹事長だった石破茂は、特定秘密保護法案に反対する国会周辺のデモに関して「絶叫戦術はテロ行為とその本質においてあまり変わらない」と放言していたが、「お笑い」ですまされない事態が到来することも含めて反撃態勢を準備しなければならない。なぜならばこの活動分野は公安政治警察が最も得意とする領域であり、数々の不当弾圧、デッチあげ逮捕をくり返してきた成果をフル回転させていこうとしているからだ。
マスメディアに脅し
このように特定秘密保護法は、秘密指定対象を拡大適用し、その延長で「拡大解釈」によって不当な圧力、弾圧強行をセットで構築しているのが核心だ。
わざわざ「特定秘密保護法の運用に当たって留意すべき事項」で「(1)拡張解釈の禁止並びに基本的人権及び報道・取材の自由の尊重」で、「憲法に規定する基本的人権を不当に侵害することのないようにすること」「国民の知る権利は、憲法第21 条の保障する表現の自由や、憲法のよって立つ基盤である民主主義社会の在り方と結び付いたものとして、十分尊重されるべきものであること」などと言っているが、こんな文言は単なるポーズでしかない。
こんな態度を自ら証明しているのが、次の文言だ。(同項目において)「出版又は報道の業務に従事する者の取材行為については、専ら公益を図る目的を有し、かつ、法令違反又は著しく不当な方法によるものと認められない限りは、これを正当な業務による行為とするものとすることを定めている」と恫喝する始末だ。「拡張解釈の禁止」と明記していながら、「法令違反又は著しく不当な方法」を具体的に提示することもなく、漏洩行為とその共謀行為に対して判断するのは当局の裁量なのだと居直っているにすぎない。
秘密保護法の罰則第二五条には、「秘密の保有者の管理を侵害する行為」として「未遂、共謀、教唆、扇動」を含めて罰すると明記している。整合性を追求するならば罰則第二五条の削除は当然であるが、こんなことは一言も触れることはしていない。「留意すべき事項」の欺瞞性は明白であり、欠陥法であることを暴露し、厳しく監視し続け、批判を行っていかなければならない。
でたらめな「チェック機能」
秘密保護法が基本的人権、知る権利などを否定する欠陥法だという多くの批判に対して菅義偉官房長官は、恣意的な運用拡大について「運用基準で隠蔽目的の指定の禁止など適正を確保する仕組みを整備した」と居直った。そのチェック機関は内閣官房に「内閣保全監視委員会」、内閣府に「独立公文書管理監」と「情報保全監察室」を設けたと強調するが、実態は政府内に設置した御用機関である性格はなんら変わっていない。
運用基準は、「指揮監督」を「内閣総理大臣」が行うと規定している。秘密保護法国会審議で特定秘密事項が四二万件もあると答弁しているが、これだけ膨大な事項を首相とチェック機関が行うというが実質的に官僚が提出する書類を追認するだけでしかない。しかも独立公文書管理監は、特定秘密の指定や運用、指定解除、提出を求める権限を持っているるが、行政機関の長が情報開示を拒否すればそれ以上のことは要求できない、いいかげんな機関でしかない。管理監の職員は、諸官庁の官僚であり、出身省庁の利害調整で「活躍」するのが明白である。いずれにしても秘密保護法への批判をかわすためにのみデッチあげた代物だ。
同様の性格で作り上げたのが運用基準「 特定秘密の指定及びその解除並びに特定行政文書ファイル等の管理の適正に関する通報」制度だ。「特定秘密保護法等に従って行われていないと思料するとき」「行政機関の通報窓口に対し、その旨の通報をすることができる」と明記しているが、その通報の仕方が「特定秘密指定管理簿に記述された特定秘密の概要や特定秘密が記録された文書の番号を用いるなどし、特定秘密を漏らしてはならない」と強要する。さらに「特定秘密保護法等に従って行われていない」とは、具体的にどういうことが違法なのかが不明のままだ。こんな手法でいったい誰が「特定秘密」の不当性を通報するというのだ。通報阻止のための制度でしかない。
危険いっぱい「適正評価」
基本的人権とプライバシーの侵害に満ちたものが「適性評価」だ。各行政機関の長が実施権者となって特別秘密を取り扱う職員の思想・生活などを事前にチェックする制度だ。
運用基準は、「(2)調査事項以外の調査の禁止」で「例えば、評価対象者の思想、信条及び信教並びに適法な政治活動、市民活動及び労働組合の活動について調査してはならない」と明記している。調査項目は@人定事項(氏名、生年月日、住所歴、国籍(帰化情報を含む)、本籍、親族等)、A学歴・職歴、B我が国の利益を害する活動(暴力的な政府転覆活動、外国情報機関による情報収集活動、テロリズム等)への関与、C外国への渡航歴、D犯罪歴、E懲戒処分歴、F信用状態、G薬物・アルコールの影響、H精神の問題に係る通院歴、I秘密情報の取扱いに係る非違歴だ。「適性評価」質問票の記述を治安組織による集積データと照合して「ウソ」を摘発していくというシステムだ。
運用基準はこのシステムを隠すこともなく、「公務所又は公私の団体に対する照会 ア 適性評価実施担当者は、評価対象者について保有し、又は調査により収集した情報のみによっては質問票に記載された事項等について疑問点が解消されず、これを確認するなどの必要があるときは、公務所又は公私の団体に照会して必要な報告を求めるものとする。特に、行政機関以外への照会については、調査のための補完的な措置として、必要最小限となるようにしなければならない」と明記しているほどだ。「公務所又は公私の団体に対する照会」とは、警察など治安組織、病院等への問い合わせを行うということだ。
さらに「(3)適性評価の結果の目的外利用の禁止」で「適性評価は、特定秘密の取扱いの業務を行った際に特定秘密を漏らすおそれがないことについての評価であり、人事評価又はその他の能力の実証を行うものではなく、人事評価のために適性評価の結果を利用等してはならない」と言っておきながら、「適性評価」の実施にあたって、「不同意」とした場合のケースとして「取扱業務が予定されていないポストにあなたが配置転換となることなどもあり得ます」と脅迫するのだ。
「テロ」口実の監視網
すでに対テロ治安弾圧体制をめざす警察庁―公安政治警察、公安調査庁、防衛省―自衛隊情報保全隊は、処罰対象に広く網をかけるために、広範な調査活動、スパイ育成、全国各地に防犯協会、自治会を通した草の根の密告通報システムを構築している。とりわけ公安政治警察のI・S(インテリジェンス・サポート/左翼、右翼だけではなく政界、マスコミ関連など幅広情報の収集組織)データと民衆監視データの蓄積を使い切るということなのだ。
警視庁公安部外事3課の「書類」「報告書」等のインターネット流出事件(二〇一〇年一〇月)は、イスラム教徒をテロ犯予備軍として捜査、訊問を繰り返し、国籍、氏名、電話番号、旅券番号、職業、家族構成、交友関係などを一人一人調べ上げていたことを明らかにした。この事件は、公安の日常活動の一端を示しているが、同様のことを各治安組織は秘密保護法をバネにして合法的に拡大していくことを狙っているのは間違いない。
しかも安倍政権は、国連安全保障理事会による「イスラム国」活動封じこめに便乗したグローバル治安弾圧にむけた法整備決議によって犯罪収益移転防止法(マネーロンダリング〈資金洗浄〉)とテロ資金提供処罰法改正の今国会での成立を目指し、テロとテロリストの定義を拡大解釈し、弾圧対象を広げようとしている。安保理制裁委員会が「国際テロリスト」として三六〇人、八九団体を指定しているが、さらに国内の「過激な活動家、テロリスト」の「名簿」作成し、監視態勢を強化していくことを狙っている。秘密保護法とテロ対策法がセットになって日本の治安機関は、「仕事」が増えて大喜びだ。
日本政府は、国連の「国際組織犯罪防止条約」に署名したが、共謀罪新設ができず未加入のままだ。だから国際機関「金融活動作業部会」(FATF)は、〇八年以降、共謀罪、マネーロンダリング対策法、テロ資金凍結法の制定を求めてきた。安倍政権は、秘密保護法施行、犯罪収益移転防止法とテロ資金提供処罰法改正を突破口にして司法改悪法制定(取調べの全面可視化否定、盗聴法改悪、司法取引制度導入)、共謀罪制定を狙ってくることは間違いない。秘密保護法一二月一〇日施行反対の取り組みの中で安倍政権による二〇二〇東京五輪をメルクマールにした対テロ治安弾圧強化をはねかえす陣形を構築していこう。
(遠山裕樹) |