臨時国会「所信表明」演説を批判する
隠せない格差・貧困・差別の拡大
「地方創生」「女性が輝く社会」を掲げて
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改造内閣人事のねらいは
九月二九日の臨時国会開会日に行われた安倍首相の所信表明演説は、「地方創生」と「成長戦略の実行」、とりわけ「女性が輝く社会」を前面に押し出したものとなった。通常国会後に強行された「集団的自衛権」の行使を「合憲」と解釈替えして容認する閣議決定や、それに伴って臨時国会開会後の一二月に閣議決定が予定されている日米ガイドライン(防衛協力指針)改定問題については、文字通り一言も触れることがなかった。
もちろんその一方で「積極的平和主義」を振りかざし、「いかなる事態にあっても、国民の命と平和な暮らしは守り抜く、その決意の下、切れ目のない安全保障法制の整備に向けた準備を進めてまいります」と、「衣の下の鎧」を自ら見せつけている。それは、一一月に北京で開催されるAPECでの日中首脳会談や、日韓首脳会談、あるいは朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)との「拉致犯罪」解決をも見据えた交渉ともからみあった「駆け引き」を想定したものだろう。
だが今回の臨時国会の重点が、「地方創生」と「女性が輝く社会」を看板にした「成長戦略の実行」に置かれていることは事実であり、それは安倍の次期対抗馬と目されている石破前自民党幹事長を地方担当相にすえ、史上最多タイとなる五人の女性を閣僚に起用した改造内閣人事からも見てとれる。われわれはこうした「成長戦略」の点からも、安倍政権の路線をトータルに批判し、それと対決することがますます求められている。
「地方創生」と地域社会崩壊
「地方創生」の中心は外国人観光客の招致を軸とした「観光立国」とそのための「特区」制の導入、地域も個性を生かした商品の開発、そのための若者の創意の促進などである。ここには大都市への一極集中とセットの関係で「人口減少」「超高齢化」が地域社会・経済の崩壊を加速させていることへの危機感が見られることは確かである。「伝統ある故郷を守り、美しい日本を支えているのは中山間地や離島を始め、地方にお住まいの皆さんです。そうした故郷を、消滅させてはならない。もはや時間の猶予はありません」と安倍は危機感を露わにして語っている。
安倍は昨年三月、TPP交渉参加にあたって次のように述べた。「最も大切な国益とは何か。日本には世界に誇るべき国柄がある。息を飲むほど美しい田園風景。日本には朝早く起きて汗を流して田畑を耕し、水を分かち合いながら五穀豊穣を祈る伝統がある。自助自立を基本としながら不幸にして誰かが病に倒れれば、村の人たちがみんなで助け合う農村文化。その中から生まれた世界に誇る国民皆保険制度を基礎とした社会保障制度。これらの国がらを断固として守る」(本紙、二〇一三年三月二五日号参照)。
一見、この二つの発言は似通っているように見えるが、昨年のTPP参加に当たっての発言が「瑞穂の国=日本」を守るというところに力点が置かれているのに対し、今年の「地方創生」演説の場合は、若者を主体に据えた「観光誘致」「地方特産品商品化・販路開拓」のイニシアティブという「競争に勝つ」ことを主眼に据えたものになっている。
ここにはTPP交渉妥結を見据えた「農漁業・農漁村」切り捨てにいっそうの舵を切る方向が透けて見える。すなわち「地方創生」とは、小規模自営農漁民・商工業者にささえられた地域社会のあり方に最後通牒を突きつけるものとなっているのだ。
ジェンダー不平等社会
「成長戦略の実行」の項で第一に取り上げられているのは「女性が輝く社会」であり、次に「岩盤規制改革」である。安倍政権は、今回の臨時国会で「女性健康支援法案」「女性活躍推進法案」「女性が活躍できる社会環境整備推進法案」を提出・成立させる方針である。「女性健康支援法案」には「出産に必要な医療施設の確保」が盛り込まれており、これには「少子化対策」として女性を「産む道具」にさせるのか、という批判の声が上がっている。また「女性活躍推進法案」は従業員三〇一人以上の企業に女性管理職を増やす目標の設定・取り組みを明記するとしている。
次の批判はまさに的確なものだろう。
「安倍内閣の掲げる『女性が輝く社会』や『女性の活躍推進』という言葉を聞いて、女性たちは解放感を感じられるのだろうか。むしろ、今まで以上に長時間働かされ、家事労働も軽減されず、さらには早期に結婚し産むことを奨励される社会の重圧を感じ取り、脱力、憂鬱、疲労困憊、あるいは怒りさえ感じるのではないだろうか」。
「『女性の活躍』推進政策がもっぱら幹部候補のエリート女性に重点を置き、女性の貧困問題を置き去りにしていることは、エンパワメントとは真逆だ。ましてや、官邸が応援する『輝く女性の活躍を加速する男性リーダーの会』の結成は、まさに上から目線で女性を応援するものである。男性優位の構造は温存したまま、都合良く女性を登用しようという発想そのものであり、性差別の根深さを逆に印象づける」(三浦まり「女性『活躍』推進の罠」、『世界』二〇一四年一一月号)。
他方、今国会で提出される労働者派遣法改悪案とセットでこの「女性活躍推進法案」を考えれば、エリート幹部候補生と低賃金の「派遣」でしか雇用の可能性がない多くの女性との間での格差・競争をいっそう拡大するものにしかならない。
さらに今回の安倍改造内閣で登用された五人の女性閣僚のうち、有村治子女性活躍・行政改革・消費者担当相、高市早苗総務相、山谷えり子国家公安・拉致・防災担当相の三人は、一〇月一八日、靖国神社の秋季例大祭にそろって参拝したことに示されるように、確信的な極右国家主義思想の持ち主であり、有村女性活躍相に至っては「国政の決断で迷いのある時など、一人で靖国神社にお詣りして、英霊にお尋ねする」と述べており、いずれも「日本会議国会議員懇談会」の一員である。そして三人とも「選択的夫婦別姓に反対」であり、ジェンダーフリー教育への批判を続けている。これは言うまでもなく「男女共同参画」の理念への真っ向からの敵対である。女性差別に貫かれた伝統的家族イデオロギーを持ちあげながら「女性が輝く社会」を語ることは、多くの女性たちの平等・人権のための努力に唾をはくものでしかない。
「一見リベラルな女性の積極的登用政策と伝統的家族政策は矛盾しているようにも見えるかもしれない。しかし、女性を客体として扱っている点では共振する。ともに女性客体化政策だからこそ、ここまで熱心に安倍内閣が取り組んでいるとも言えるのだ」(三浦まり・前掲論文)。
そして三人以外の二人、「日本会議」には属していない小渕優子経産相と松島みどり法相はいずれも政治資金、「うちわ」配布問題などのスキャンダルを批判され、小渕と松島は辞任を余儀なくされた。小渕・松島辞任が安倍の「女性が輝く社会」政策にどういう影響をもたらすかは即断できないが、安倍政権にとって、それが「逆コース」への口実に利用されることに注意を払うべきだろう。
「国家戦略特区」に賭ける安倍
安倍所信表明演説における「成長戦略の実行」の第二の柱は「岩盤規制改革」であり、その突破口としての「国家戦略特区」である。
安倍は述べる。
「民間のダイナミックなイノベーションの中から、多様性あふれる新たなビジネスが生まれる。大胆な規制改革なくして、成長戦略の成功はありません。農業・雇用・医療・エネルギーなど、岩盤のように固い規制に、これからも果敢に挑戦してまいります」。
「その突破口が、国家戦略特区です。今月、本格スタートしたばかりですが、更に改革メニューを充実します」「安倍内閣の規制改革に終わりはありません。この二年間で、あらゆる岩盤規制を打ち抜いていく。その決意を新たに、次の国会も、更にその次も、今後、国会が開かれるたびに、特区制度の更なる拡充を、矢継ぎ早に提案させていただきたいと考えてもらいます」。
この異様なまでの「決意」をこれみよがしにした「岩盤規制改革」の核心の一つが、労働市場の全面的な流動化、すなわち派遣労働の期限と職種の限定の撤廃、限定正社員制度の導入、正社員の解雇規制を緩和・撤廃すること、時間ではなく「成果」で評価される賃金など、最低限の権利すら剥奪して低賃金・長時間労働のいっそうの拡大である。
さらに「医療改革」の名の下での「混合診療」(保険外診療の全額自己負担)の導入(患者申し出療養制度)が進められる。それはTPP参加の一環として、高額な保険外診療の範囲が拡大し、「国民皆保険制度」を実質的に空洞化させることになる。
農業ではJA全中の権限が大幅に縮小され、収益が見込まれる大規模農家だけを生き残らせ、減反による価格維持政策は廃止される。それによって全農家の四〇%を占める中山間地の小規模農家が存続できる余地は奪われることになる。冒頭に述べた安倍が語る「息をのむほど美しい」農村風景は消えてしまうのである。
「岩盤規制改革」が導くところは「大企業が最も活動しやすい特区」の全国化であり、失業・格差・貧困の一層の拡大だ。
安倍は「アベノミクス」効果による景気回復・経済成長・賃上げをしきりに吹聴している。しかし、今や「景気回復ムード」の先行きはいっそう不透明になっており、輸出は伸びていない。労働者の「賃上げ」は決して物価上昇に追い付かず、実質賃金は低下している。こうした中で法人税の引き下げと消費税率の引き上げが強行されようとしている。
安倍は「日本の中に眠る、ありとあらゆる可能性を開花させることで、まだまだ成長できる。日本の未来は、今、何を為すか、にかかっています。/悲観して立ち止まるのではなく、可能性を信じて、前に進もうではありませんか」と所信表明でアジりこんだ。
日本の労働者・市民、青年・学生は、欺瞞と憎悪に覆われた安倍政権の攻撃に立ち向かい、沖縄の反基地闘争や香港や台湾に示されるアジアの新しい民衆闘争の息吹と結びつきながら、あらゆる分野から闘いをねばり強く掘り起こし、安倍政権打倒に向けた共同の行動を着実に編み上げていこう。 (平井純一)
10.11岐阜市で「黙っとれん」パレード
声を上げよう!倒せ安倍
集団的自衛権反対!原発再稼働阻止
【愛知】一〇月一一日、岐阜市の金(こがね)公園で集団的自衛権、秘密保護法反対、原発再稼働反対、憲法9条を守ろう!を掲げて「もう黙っとれん10・11パレード@ぎふ」が開催され三〇〇人の労働者、市民が参加して成功した。主催は「平和・自由・いのちを守る、もう黙っとられんアクション実行委員会」で日本共産党を主流とする人たちと少数ではあるが非共産党系の人たちとの共同で構成されている。また、集会には「戦争をさせない一〇〇〇人委員会」の、のぼり旗や「自治労岐阜」「平和フォーラム」の旗も見られ、こられの人々も参加し発言もするなど幅広い共同行動としてこの集会は勝ち取られた。
声を上げること
が何よりも大事
午後二時ちょうど、主催者あいさつを実行委員長の河合良戻さん(弁護士)が行った。
「私たちは六月二一日にも同じ集会『一〇〇〇人パレード』を行い安倍の政治を止めさせようとしました。しかし七月一日には集団的自衛権の行使容認を閣議決定してしまいました。その後、秘密保護法の運用基準の設定、川内原発再稼働を認めました。一〇月八日に発表された日米安保ガイドラインの中間報告は七月一日に閣議決定された集団的自衛権にそって自衛隊を動かし地理的条件を取っ払って日米共同で戦争拡大の道を進む内容になっています。もう私たちは黙っとれん!という思いが強くなっていると思います。私たちは大きな声を上げることが世の中を悪い方向へ向かわせない大きな力になると思っています」。
「憲法九条はノーベル平和賞を受賞することはできなかったけれど世界的に注目されています。来年、必ず受賞させるための運動も続けていきましょう。平和・自由・いのちを守るために、安倍政権をやめさせるために共にがんばりましょう」。
次に、呼びかけ人の杉山三四郎さんが平和への思いを込めた歌を二曲演奏した。主催団体による来年二月開催予定の「暴走安倍首相を裁く市民法廷劇」のグループは予告劇を行い、参加と成功を呼びかけた。メインの参加者によるシャウトリレーでは、「岐阜9条の会」「秘密保護法反対女性の会」「岐阜県弁護士会」若者の音楽グループが発言し、飛び入り参加の名古屋のミュージシャンは「秘密で逮捕はヤダ」を歌い共に頑張ろうと発言した。
「一〇〇〇人委員会」は、安倍首相が「積極的平和主義」という言葉を歪曲して武器を持たなければ平和は守れないというような形にしてしまったことを批判し、「日本国憲法と平和主義を自分の命と同じくらいに大事にしながら、同時に世界に広げなければいけないと思います。原点に戻って闘いたいと思います。」と発言した。
新しい共同戦線
を東海の地にも
すべての発言が終わり、集会宣言を読み上げて全員の拍手で採択し、パレードに出発。「憲法壊す総理は辞めろ」「平和を壊す安倍は辞めろ」「暮らしを壊す内閣倒せ」「みんなの力で安倍を倒そう」と元気よくコールを上げ、JR岐阜駅、商店街の買い物客や市民から注目されながら岐阜市内を行進した。始まった岐阜県における統一戦線、共同行動の陣形を防衛、発展させ全東海―全国に強大な反戦・反安保の潮流を構築しよう。
なお、一〇月一三日、愛知県名古屋で開催予定だった「戦争をさせない一〇〇〇人委員会東海ブロック集会」は台風のため中止となった。
(杉田)
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