利権に群がるマフィアと地域の破壊
根拠なき「経済効果」の大宣伝
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「今国会で必ず」と躍起
安倍政権と自民党、維新の党、生活の党は、違法な賭博場建設の合法化にむけた「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律」案(IR/カジノ推進法案)の臨時国会成立をめざして動きを加速化させている。法案は、カジノとともにホテル、劇場、イベント会場、国際会議場を併設するとしているが、あくまでも賭博場設置が柱だ。法案推進派は、先の国会会期末直前に審議入りを強行した。その推進役が超党派の国際観光産業振興議員連盟(カジノ議連/二〇一〇年結成、二〇〇人以上の国会議員が参加)だ。議連の会長は細田博之(自・衆)、最高顧問に安倍晋三(自・衆)、麻生太郎(自・衆)、石原慎太郎(次・衆)、小沢一郎(生・衆)、顧問に石井一(民・参)、下村博文(自・衆)、平沼赳夫(次・衆)、茂木敏充(自・衆)が就いている。
議連は二〇二〇年東京五輪とIR施設の建設期間から逆算して「臨時国会でのIR推進法成立がタイムリミット」だと居直り、一〇月前半の衆院通過を目指しているというのだ。公明党は、賛成の集約ができず慎重対応のポーズを示しているが、自民党との連立維持を優先して賛成していく流れを止めることはできない。しかも自民党は、維新の党、生活が相乗りしているから公明党抜きでも成立は可能だと恫喝しているほどだ。IR推進法の反動性を暴露し、制定阻止に向けて国会内外の取組みを強化しなければならない。
「成長戦略」「地方創生」の看板
IR推進法の目的として「第一条 この法律は、特定複合観光施設区域の整備の推進が、観光及び地域経済の振興に寄与するとともに、財政の改善に資するものであることに鑑み、特定複合観光施設区域の整備の推進に関する基本理念及び基本方針の他の基本となる事項を定めるとともに、特定複合観光施設区域整備推進本部を設置することにより、これを総合的かつ集中的に行うことを目的とする」と明記した。冒頭からIR=経済振興、財政改善に直結すると、根拠も、調査も、検証も不十分であるにもかかわらず、とんでもない定義を行っている。
米国ニュージャージー州の大型ホテル「レベル・カジノ・ホテル」(二〇一二年開業)が九月に閉鎖することを発表した(八月二一日)。さらに同州の「アトランティック・クラブ・カジノ」「ショーボート・カジノ」「トランプ・プラザ」が次々と破綻した。「東のラスベガス」としてカジノビジネスで大もうけを企んだが、結局、カジノ乱立とギャンブルをしない観光客が増えたため廃業に追い込まれた。「病的ギャンブラー」(依存症)を多発させ、カジノ関連も含めた大量の労働者解雇を行い、地域経済を破壊しつくした。米国カジノ業界の衰退の流れは止まっていない。
だからラスベガス・カジノ運営企業であるMGMリゾーツ・インターナショナルが八月に来日し、東京都築地の中央卸売市場跡地をIR建設候補地として調査し、約一兆円を投資し、進出する計画を明らかにしている。日本マネーをターゲットにして国際的なカジノ資本が殺到することは間違いない。安倍政権とIR推進派は、米国カジノ業界の経済的社会的犯罪をどれだけ調査し、検証したのか。安倍首相にいたってはわざわざシンガポールのカジノを視察し、IRが「成長戦略の目玉になる」と豪語し(五月三〇日)、中味がなく大風呂敷の「地方創生」路線とIR建設はセットにしながら地域破壊を広げていくことは間違いない。
「ギャンブル依存症」問題
IR推進法は、国にIR設置区域の整備推進の責務を負わせ、民間の賭博事業者が国内に賭博場を開設することを認めるところに最大の獲得目標を置いている。成立後一年以内にIR解禁に伴う「実施法」を制定し、二〇一六年に国が各地方公共団体の申請を受け付け→IR区域を指定→一七年、IR建設地を決定→自治体がIR企業を選定→一八〜一九年、ライセンス(運営許可証)の免許を申請し、取得→二〜三箇所でIR開業というスケジュールだ。
グローバル派兵国家の構築の一環である「日本再興戦略 改訂 2014」(六月)でIR法制定について「統合型リゾートについては、観光振興、地域振興、産業振興等に資することが期待される」と位置づけ、成長戦略の要の一つとして明記していた。この結論ありきの文言をそのままIR推進法に組み込んでしまった。
だが賭博は、刑法で違法(賭博罪)だから「日本再興戦略」でもIR法制定について「犯罪防止・治安維持、青少年の健全育成、依存症防止等の観点から問題を生じさせないための制度上の措置の検討も必要なことから、IR推進法案の状況やIRに関する国民的な議論を踏まえ、関係省庁において検討を進める」と触れざるをえなかった。
IR推進法でも第十条で「政府は、カジノ施設の設置及び運営に関し、カジノ施設における不正行為の防止並びにカジノ施設の設置及び運営に伴う有害な影響の排除を適切に行う観点から、次に掲げる事項について必要な措置を講ずるものとする。
一 カジノ施設において行われるゲームの公正性の確保のために必要な基準の作成に関する事項
二 カジノ施設において用いられるチップその他の金銭の代替物の適正な利用に関する事項
三 カジノ施設関係者及びカジノ施設の入場者から暴力団員その他カジノ施設に対する関与が不適当な者を排除するために必要な規 制に関する事項
四 犯罪の発生の予防 及び通報のためのカジノ施 設の設置及び運営をする者による監視及び防犯に係る設備、組織の他の体制の整 備に関する事項
五 風俗環境の保持等のために必要な規制に関する事項
六 広告及び宣伝の規制に関する事項
七 少年の保護のため必要な知識の普及その他の青少年の健全育成のために必要な措置に関する事項
八 カジノ施設に入場した者がカジノ施設を利用したことに伴い悪影響を受けることを防止するための必要な措置に関する事項」と明記した。
しかしこの一〜八の規制条項について、なんら具体的に検証、論議が煮詰まっていないにもかかわらず、見切り発車でIR推進法の制定ありきで突進している。
とりわけIR推進法でIRによる「有害な影響」と一言触れているが、厚生労働省研究班(研究代表者=樋口進・久里浜医療センター院長)が「病的ギャンブラー」(依存症)に当たる人が推計で成人人口の四・八%、五三六万人(男性四三八万人、女性九八万人)というかなり深刻な数字を明らかにしている(成人約四〇〇〇人に面接調査)。海外での同様の調査では、米国(〇二年)一・五八%、香港(〇一年)一・八%、韓国(〇六年)〇・八%という結果があるが、日本の「病的ギャンブラー」率が突出している。研究班は「パチンコなど身近なギャンブルが、全国どこにでもあることが海外より率が高い原因ではないか」と分析しているが、IR建設によって「病的ギャンブラー」率が高まることは必至だ。
この悪法を葬り去ろう
内閣府の特命担当参事官は「分野は多岐にわたる。関係省庁がそれぞれ行う検討作業を統括するとともに、独自の調査、検討もすることになる」と言いながら、とにかくIR設置の合法化を先に決めて、後で審議会(弁護士、税理士、精神科医、カジノ専門家)をデッチ上げて、賭博場設置による諸弊害の対策と称するガイドラインを策定する狙いだ。IR法案に対しても拙速論議と強引な法案制定という安倍政権の体質をストレートに適用しているのが実態である。
先走っているのは、安倍政権だけではない。誘致を表明しているのは、北海道(釧路、小樽、苫小牧市が誘致立候補)、千葉(成田空港周辺の行政・地域ボスが空港周辺に誘致表明、千葉市幕張への誘致運動)、東京(フジテレビ、三井不動産、鹿島がお台場エリアの建設を狙う)、神奈川(横浜市が山下ふ頭への誘致表明)、和歌山(カジノと複合レジャー産業)、大阪(臨海部の人口島「夢洲」にカジノ建設)、宮崎(観光施設シーガイア〈宮崎市〉へのカジノ誘致)、長崎(大型リゾート施設ハウステンボス〈佐世保市〉を候補地)、沖縄(沖縄カジノ構想を立ち上げている)などだ。
悪のりは、これだけではない。IR関連会社であるセガサミーホールディングス、日本金銭機械(カジノ貨幣処理機)などの株価が上昇しているという。
いずれも各行政、資本、地域利権共同体が一体となって誘致運動を開始し、IR建設が「観光振興の切り札」「外国人観光客の誘致や地域活性化の起爆剤」などと根拠なしの願望を煽りたてている。産経新聞は、「経済効果は最大七兆円強に達するとの試算もある」(一〇・三)と応援しているが、この数字は米国の投資銀行CLSAが日本市場を対象にした金儲けのために積み上げた額であり、実体的根拠がまったくないものだ。
まだ法案が制定されていないにもかかわらず、なにがなんでもIR法案制定を狙っている安倍政権と推進派は、未確定な賭博による金儲け優先主義キャンペーンを強化しながら、先行して内閣官房に推進本部事務局(本部長・安倍首相)を設置し、その下に内閣府、財務、経済産業、総務、法務、国交、厚生労働の各省、金融庁、警察庁の官僚をかき集め、内閣府の外局に民間事業者の許可業務を行うカジノ管理委員会を設置する構想だ。
このようにIR法案は、賭博罪を合法化させ、政官財の利権共同体だけでなくゼネコン、地域ボス、ヤクザ、国際マフィアなどが群がり、地域経済を破壊し、多くのギャンブル依存症を多発させる超悪法だ。賭博促進のカジノ法案に反対していこう。 (遠山裕樹)
コラム
御嶽山の噴火
私に御嶽山のすばらしさを教えてくれたのが次の一節である。冒頭と最後の文節を紹介したい。「かつては東仙道岐蘇路とよばれ、東海道が川の洪水で悩めば、中仙道には、谷深い木曾路をゆくおそろしさもあった。しかし東海道に、富士を眺めるたのしみがあったように、中仙道には、御嶽の懐に抱かれるというよろこびがあった。……木曽御嶽は昭和五十四年(一九七九年)十二月二十八日に、有史以来初めて噴火した。そのニュースほど近ごろ胸をとどろかしたことはない。死火山は死んでいなかったのである」(『花の百名山』田中澄江)。
彼女が語るように東の富士、西の御嶽として日本人に愛され唄にも歌われてきた御嶽山は、古くは富士山、白山などと並ぶ信仰の対象として、また北・中・南アルプスの山頂に立つと富士山にも匹敵する大きさでそびえている。水が豊かで滝が多く、名古屋、大阪方面の人たちにとって最も近い本格的スキー場でもある。
今日(一〇月五日)まで死者は五一人に達し、未だ一〇人を超す人が山に残されているという。おそらく噴火に遭遇した誰一人として御嶽山が爆発するなど考えた人はいなかっただろう。有珠山、雲仙・普賢岳、三原山、三宅島などと比較しても噴火・爆発の規模は決して大きなものではない。しかし「紅葉、晴天の土曜日、山頂での昼食時間」が重なったのが被害を大きくした原因だろう。これが真冬の時期であったならほとんど死傷者は出ていなかったと思う。スキー場のリフトもロープウェイも七合目より上には行っていないから。
安倍首相は一〇月三日の参院本会議で原発と噴火のリスクについて質問されると「御嶽山よりもはるかに大きい規模の噴火を前提に厳格な審査を行っており、安全性は確保されている」と述べた。五輪招致委で「福島第一原発の汚染水は完全にブロックされている」という発言と全く同じレベルの詭弁だ。規制委の田中俊一委員長のコメントも木で鼻をくくったような「いっしょに議論するほうが非科学的」。九州電力も認めているが、川内原発の敷地内では三万年前の姶良大噴火の火砕流が流れ込んだ痕跡が発見されている。カルデラの中心である姶良町は川内原発から三〇〜四〇qの東側に位置し、カルデラの一部である桜島や霧島は今も火や煙を噴き上げ続けている。火山灰の問題も含めると浜岡、泊、東通原発も噴火リスクという点では同じだ。
日本は地震国、火山国と言われ、地球上の八%の火山が集中する。にもかかわらず、歴代政府はその対策にあまり「カネ」を使っていない。例をあげると、イタリアの火山・エトナ山には一三五カ所の火山の観測所があり、一三〇人の専門スタッフがいる。それに対して富士山には気象庁のものも含んで七カ所しかなく、スタッフは四分の一もいない。一九七九年の御嶽山噴火に対して自民党政府は初めて観測のための予算を計上したが、翌年には予算を半減させたという経過が資料に残っている。朝令暮改というが万事は選挙目当て。三・一一も火山の噴火もその場限りの「政治的利用」なのだ。 (武)
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