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    かけはし2014.年8月4日号

政治指導性創出への動きは未だ


ブラジル

新しい情勢の幕開け

旧と新の深い断絶と多くの不確実性

フェルナンド・シルバ/ジョアオ・マチャド


 サッカーのワールドカップを前に、またその期間中も、ブラジルでは、人びとの生活に起きている諸問題を後回しにする政府の政治に対する、民衆の大きな抗議行動がいくつも続いた。以下はこの新しい民衆反乱に対する政治的評価と左翼に必要とされる対応について論じている。現在の政権党であるブラジル労働者党(PT)の左に位置するPSOL(社会主義自由党)の現書記長であり、「インサージェンシア」(PSOL内の一潮流)の全国調整委員会メンバーであるフェルナンド・シルバにジョアオ・マチャドがインタビューした。同インタビューはフランスNPAの機関紙「ル・アンチカピタリスト」に掲載された。なおこのインタビューは、ワールドカップ開幕直前に行われた。(「かけはし」編集部)

大規模な社会闘争が再開した

――ワールドカップのコストに反対するブラジルの諸決起に関する情勢は今どんなものか?

 現にある事実として、ブラジルで現在起きている諸決起は、ワールドカップ反対の抗議、というよりももっとはるかに幅広い。数十万人が五〇〇を超える都市でデモのために街頭に出た二〇一三年六月以後、大規模な社会闘争の再開という姿で、新しい情勢が幕を開けた。たとえば、賃上げを求める多くのストライキがあり、その多くは、官僚的な組合指導部の意志に逆らうものだ。住居を求め闘っている都会の土地占拠、そして諸運動による道路封鎖がある。警察の弾圧に対決する学生ストライキや大学周辺部での闘争、産業化された農業の拡張によって脅かされている先住諸民衆の闘争がある。その上にもちろん、ワールドカップに費やされた費用やそれをめぐる犯罪に反対する、様々な都市でのデモがある。
ワールドカップ前夜の現時点で、最も重大な闘争は交通と教育分野での諸々のストライキ、並びに住居を求める民衆的闘争だ。これらは極めて大衆的な闘争であり、急進化著しい戦闘であり、都市の移動問題が非常に深刻となっている、また地下鉄やバスのストライキが経済の他の分野における生産に問題を引き起こすに十分な効果をもつ可能性がある、そうした諸々が大都市を麻痺させている。
ワールドカップはほとんど完全に公的な資金(スタジアム建設からその周辺や空港などに関する仕事まで、二六〇億レアル〈日本円では約一兆三〇〇〇億円:訳者〉以上)で組織されてきた。この事業の大多数は完成していない。そしてそのことは、金銭が腐敗の掃きだめへと向きを変えられた、ということを示している。何十億レアルもがスタジアムに費やされたが、インフラや都市移動に関する進歩を導くことはまったくなかった。
その上に、われわれは公的保健システムが崩壊の瀬戸際に向かおうとしている国にいる、またすべての者にとっての基本である住宅問題や基礎的な公衆衛生問題が未だ解決を見ていない国にいる、という事実を加えることで、ワールドカップに向けられた費用は、不必要な贅沢、浪費、住民多数の状況を重視する意志の欠如、と考えられてきた。試合の観戦チケットが高いこと、FIFAが「カップ総合法」を基にある種実体的な非常事態を強要したこと、もまた考慮されるべきだ。
この結果として、ブラジルがサッカーとの間で保持している関係を考えた場合驚くべきことだが、カップ組織化遂行に向けられた批判的姿勢がある。もっとも最新の世論調査では、ブラジルでのワールドカップ組織化を支持する者は住民の半数以下だ。これは、サッカーが国民文化の一部である国では極めて印象に残ることだ。

PT政権は社会自由主義の政権


――現PT政権はこの運動にどう対応しているか?

 基本的には次の三つの方向だ。つまり
a)政権は、労働者階級の最貧困層に対する小規模な譲歩政策の強化(なんとインフレ率よりも低い「家族助成金」の小規模な再調整、必要と思われる額以下の最低賃金引き上げ)、投資(教育と都市移動向け)の部分的引き上げの公表を試みてきた。
b)政権は、ワールドカップ期間中のデモを抑制するための巨大な弾圧機構を組織し、抗議活動を法的観点から犯罪とする強硬な政策を採用してきた。理解を助けるための参考だが、連邦政府は、ワールドカップ向けの治安に五億レアルを費やした(武器類、統制のハイテク化とスパイ活動)。サンパウロとリオデジャネイロの街頭にはカップ期間中、軍が配置されることになるだろう。
c)政権は今、幅広い民族主義的宣伝とカップ支持の興奮盛り上げに取りかかっている。国のために骨を折る時が、偉大なワールドカップにする時が来た、等々と人びとを納得させるためだ。何人かのメディアのパーソナリティーは、デモはワールドカップの後まで延期されるべきだ、と語った。
国のこの情勢は極めて矛盾している。なぜならば、ブラジルでのサッカー、特にワールドカップに対する巨大な関心を前提とすれば住民は試合を注視するだろうが、今現在興奮などまったくないからだ。つまり、精神の非常に批判的な状態、抗議と要求に向けた大きな準備があるのだ。ワールドカップ開幕まで七日に満たない中でインタビューを受けているこの時にも、地下鉄労働者のストライキがサンパウロの公共交通と通行を大きく麻痺させている。そしておよそ二万人のホームレスの人びとが、カップの開会儀式が予定されているスタジアムの入り口で抗議活動を組織した。

――ここフランスの急進左翼は、ブラジルでの民衆の決起をどのように伝えることができるか?

 ブラジルでの社会闘争に関する情報を広げることによって、ワールドカップ期間中諸都市で実体的な非常事態令を実行する準備に入っている抑圧を強く非難することによってだ。そして、今月のワールドカップを、PTの社会自由主義政権は労働者階級の闘争の同盟者ではない、ということを説明するために利用することによってだ。なぜならばブラジルで彼らが今やっていることは、金融資本との、公共事業の大受注者との、さらにアグリビジネス事業者との連携の下に統治することなのだ。ブラジルで権力に着いている者は本物の左翼ではないということ、PT政権は欧州における社会主義者諸政権と同類のものだということ、ここでの政権は金融資本にもっと依存し従属しているがゆえに、また他の悲劇の中でも、アグリビジネスに非常な程度関与しているがゆえに、もっと悪いということ、これらを説明することが非常に重要だ。何しろここで挙げたアグリビジネスは、森林破壊、水の汚染、温室効果ガスの増大に今なお力を貸し続けている。

新たな政治構想はばむ世代断絶

――ブラジルでここ何カ月、特に暮らしの高コストに反対して、はっきり表現されてきた社会的急進化に政治的表現はあるのか?

 これこそ、この進展にある非常に鋭い矛盾だ。二〇一三年の六月の日々は、伝統的な政治的代表に対する民衆的支持の巨大な腐食、並びにその危機をはっきり示した。そしてこの代表の中には、最弱な機関の一部である労働組合が含まれている。しかしこの日々はさしあたり、全国的指導部あるいは新たな大衆諸組織、また新たな政治構想に向けた志を築く歩みを、発展させるまでにいたっていない。
「『パス券』(無料交通)運動」(MPL)のような分野的、部分的表現はある。この運動は、交通のための闘争、サンパウロにおけるバス、列車、地下鉄運賃引き下げを求める闘争の頂点にあったがゆえに、二〇一三年六月に非常に重要となった。現在MTST(家なき労働者の運動)は、多くの尊敬を勝ち取り、サンパウロでの強さがより大きいとはいえ、自身を全国レベルでの参照点として築き上げた。
しかしこれらの運動は分野ごとのものであり、そして彼らは、総合的指導部の新たな構造形成という問題を持ち出していない、あるいはその軸になるという意向を見せていない。PSOLは政治的領域で、これらの運動から敬意をもたれている。そして急進的な政党の中では、街頭の要求にもっとも前向きに取り組むことのできる政党の一つだ。
しかし党はまだ非常に脆弱であり、党に関するますます両立しがたくなっている考え方の間の内部対立で引き裂かれている。一つの部分(現在指導部の多数派を確保している)は、ますます公然と改良主義に傾き、古い左翼の官僚的実践手法に染まっている。それに対立する形で、幅広い左翼ブロックがある。そこには、ブラジルの革命派左翼の様々な勢力が含まれている。これが党の半分を構成している。
これらの勢力は、街頭の要求に通常はるかにより開かれていて、同調している。新たな諸々の進展によりよく適合でき、諸々のデモがもつ「自律主義的」考えや不信との対話すらも行うことができているのは、PSOLの左派部分が率いる若者たちの潮流だが、それが前述したことの証拠だ。
基本的な問題は、古い左翼と新しい左翼の間にある種の世代ギャップと言ってもよい深い溝がある、ということだ。若者たち、人口のより若い諸部分が、二〇一三年六月の抗議の軸だった。特に、決起のその後に続く進展の推進力となってきたのも彼らだ。この世代は街頭を学校として、また権力の座にあるPTを見ることによって政治の舞台に入ってきた。つまり、若者たちから見て、権力の座にある者が左翼なのだ。それゆえ、極めて強い否認の進展があり、党や労組のような伝統的な道具に対する、またまさに社会主義とされているものに関する多くの不信がある。
われわれは依然、ブラジルにおける運動の再活性化の始まりにいる。そこには旧と新の間の断絶が伴われ、しかし多くの不確実性もある。なぜならば、この歩みの発展と急進的な反資本主義左翼の健全な参加(教条的でなく、機構に集中されない)だけが、新たな道具と新たな政治的指導性に形を与え始める可能性をもつからだ。そしてそこでの指導性とは、大衆的支持を備え、現行システムとの体系的断絶の政治構想を再出発させることを可能にする指導性だ。

PTの左の確立に可能性と限界

――特に一〇月に予定されている諸選挙を含めて、ブラジル左翼にとっての展望とはどのようなものか?

 それを予測することはまだ困難だ。一般論として、諸選挙におけるより大きな可視性を達成できるという点で、情勢は反資本主義左翼にとってはるかによりよい。PTの左にある空間は開けた空間だが、幅の大きな並木道ではない。
民衆多数にとってPTは、ほとんどの人びとから見て右翼や中道派に向かう代わりとなる策は有効性がなく悲惨だという事実を前提に、より小さな悪と考えられている。他方で、諸政党と選挙に関する不信、あるいは疑惑があり、これは若い人びとの間で非常に強い。諸々の調査や分析は、来る選挙は棄権(ブラジルでは投票が義務的であるがそうであっても)や白票、また無効票の重要な意味をもつ上昇を特徴とするだろう、ということを示してきた。
その上、急進左翼諸政党の単一候補ということも決してないだろう。また、PSOLが極めて制度に順応した選挙運動を行うという危険もある(現多数派の大統領候補者の路線に変わりがなければ、そしてこの路線は、私が上で呼んだ、新しい政治の中の旧の表現となっている)。
これらの問題があるとしても、二〇一〇年以後、選挙のレベルを含んで、成長を続けてきたものはPSOLだ。それは、この新たな情勢と社会内の左翼的批判に向け開かれた空間を活用する上で、最良の位置を占めている政党であり、こうした可能性は四年前よりももっと大きい。それは、全国レベルではそれほどではなくても(大統領選)、州議会選や連邦議会選ではより大きい。

▼ジョアオ・マチャドは、PSOLの指導部メンバーであると共に、その中に第四インターナショナルメンバーが結集している「インサージェンシア」潮流メンバー。(「インターナショナルビューポイント」二〇一四年七月号)

フランス

オランド政府、ガザ民衆への連帯表明を禁止

ペネロペ・ドゥガン

 イスラエルの攻撃に反対しガザの民衆への連帯を示すとして、「永続的かつ公正な平和を求める共同会議」が呼びかけた七月一九日のパリでのデモは、警察によって禁止された。フランソワ・オランド大統領は「対立はフランスの街頭に持ち込まれるべきではない」と語り、この禁令を正当化した。社会党のパリ市長であるアンネ・ヒダルゴもまた、この禁令を擁護した。
 しかしこの禁令があろうとも、NPAと当初のアピールに名を連ねたいくつかの他の市民団体は、彼らの呼びかけを維持した。むしろこの禁令のゆえに出かける気になった多くの者を含んで、数千人の参加者がパリの北でデモに合流した。しかし彼らは、デモを解散させるために催涙ガスの使用をためらわなかった警察によって、道があっという間にふさがれるのを見ることになった。ガザ民衆との連帯デモ――いくつかは禁止され、いくつかはそうでなかった――は、フランス中の諸都市、マルセイユ、トゥルーズ、ナント、ルアーブル……でも行われた。ロンドン、ダブリン、ブリュッセルでも数千人がデモに繰り出した。

NPA声明
政府は敗北し、パレスチナ
民衆との連帯が勝利した!


パレスチナ民衆と連帯するデモを禁圧することによってオランドとヴァルスの政権は、強さの見せかけを挑発的に突き付けたが、彼らは結局敗北した。今日フランス中で何千人というデモに決起した人びとは、ガザに対するイスラエル軍の軍事介入を終わらせることを求め、三〇〇人以上のパレスチナ人の死に嫌悪を示すために、街頭に繰り出した。パリでは特に、これ見よがしの警察の存在にもかかわらず、数千人のデモ参加者は政権の禁令に限界があることを示した。警察当局と政権による数多くの脅迫を前提とした時、これは一つの成功だ。デモの終了時点では、デモ参加者と警察との間でいくつかの小競り合いがあった。イスラエル国家が乗り出した戦争への政権の支持に対する反対を黙らせようとの政権が抱く切望と警察の出動を前提とすれば、他にどのようなことが可能だっただろうか。
NPAは、バルベ(注1)でこの夜起きた警察の暴力を強く非難する。そして今日の成功に続く追い打ちが行われることを誓う。公正かつ永続的平和を求める全国共同会議の呼びかけの下に、水曜日には次のデモが行われるだろう(上で予告された七月二三日、パリで二万五〇〇〇人が結集するデモが行われた:訳者)。パレスチナ民衆の諸権利を求める闘いは続く。
NPAは、すべての左翼と民主的な労働組合、キャンペーン、政治諸勢力に、抑圧の拒絶、およびパレスチナ民衆の闘争との連帯を宣言するよう訴える。
モントレーユ、二〇一四年七月一九日
▼筆者は第四インターナショナルのビューローメンバーであると共に、IVの編集者。フランスNPAの活動家でもあり、地方選や全国選挙ではいつも候補者になっている。アムステルダムのIIREでは女性と青年に関するプログラムに責任を負うスタッフもつとめている。
(注1)パリ北部のデモ集合地(「インターナショナルビューポイント」二〇一四年七月号)


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