原子力規制委の「合格証」案はデタラメだ
パブコメで「反対」の声、集中を
新たな「安全神話」を認めない
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「合格証」案にNO!を
七月一六日の定例会で、原子力規制委員会は新規制基準によるはじめての「合格証(審査書)」の案を確認し、現在はパブリックコメントにかけている。この審査書案は、昨年七月八日の新基準の施行日に合わせて提出された四つの電力会社の八機の再稼働申請のうち、九州電力川内原発1・2号機に対するもので、地元自治体の同意等を経て、早ければ「一〇月にも再稼働」などと報じられている。
三・一一後、一つの原発も発電していない夏をはじめて迎えている。
パブコメの意見公募は八月一五日までの三〇日間で、毎週水曜日に開催されるこれ以降の規制委定例会で審査書が正式決定される。このほか、規制委は工事方法や運転や点検手順についての保安規定などの審査を行う。また、設備の点検などの使用前検査があり、地元自治体の最終同意はこれらの規制委の審査完了を待つことになる。
今回のパブコメはいわゆる行政手続法に沿って実施されているものではなく、規制委の独自判断で行っている。「科学的・技術的」な内容に限った意見を求めているが、審査書案じたいは難解な記述ではない。「新基準によるはじめての審査書の完成度を高めるため」という理由で行われている今回のパブコメ以降は意見募集は行わない方針だ。
パブコメに付された審査書案や審議の経過、そして定例会の議事録とその映像や田中俊一委員長自身によるパワーポイントを使った審査内容についてのプレゼンテーションの様子などが規制委HPで閲覧できる。この審査書案を基にした再稼働審査を「新たな安全神話」とさせないために多数の意見をぶつけ、川内原発の再稼働を阻んでいこう。
福島の教訓学ばず、犠牲者選別
規制委定例会のちょうど七年前の二〇〇七年七月一六日、震度6強の中越沖地震が東京電力柏崎刈羽原発を襲った。事務本館一階の緊急時対策室のドアが揺れで変形し、開閉不能となった。東電は中越沖地震で得られた対策の一つとして「免震重要棟」の設置に着手し、福島第一と第二では二〇一〇年七月に運用を開始していた。東日本大震災時にこの免震重要棟がなければ、事故拡大防止に当たった現場労働者に対し大量被ばくをもたらしたばかりではなく、当時の菅首相が指示して作成された「最悪のシナリオ」のように、メルトダウンした三つの原子炉に加えて4号機を含めた使用済み燃料プールも冷却できなくなり、壊滅的な事態に至った可能性が大きい。
この経験をもとに、新規制基準では「緊急時対策所」の設置が定められたが、新規に設置する場合には猶予期間が与えられた。川内原発の対策所の完成は二〇一五年度の計画だが、その代替所を「重大事故対処機能が損なわれる恐れのない地盤に設置する」ので「新基準に適合」と審査書案には記されている。規制委は代替所のまま再稼働を認めてしまった。四国電力伊方原発は中越沖地震後に約六〇〇平方メートルの免震構造の施設をつくり二〇一一年一二月から運用していたが、新基準には適合しないことから約二〇〇平方メートルの対策所を来年一〜二月の完成をめざして新設することになり、年度内の再稼働が絶望視されている。
福島事故は免震重要棟によって事故が最小限におさまったわけではない。冷却できず圧力が高まった原子炉の損傷を避けるためのベント――人為的な放射性ガスの放出の指示を免震重要棟から行った。新基準では、福島原発と同型のBWRに対してはフィルター付ベント施設の設置を義務付けた。いっぽう、川内原発などのPWRに対しては「原子炉の容量がBWRに比べて大きく、破壊までいたる可能性は小さくなる」という理由で猶予期間を与えた。川内のベント施設完成は二〇一六年度中だが、審査書案には「適合」と記してある。
福島事故では、短半減期のヨウ素一三一などによる初期内部被ばくによる線量評価がさだまっていない。「いない」というより、データの不足や観測体制、避難対応の不備(それを隠すためか)により「評価できない」というのが正しいだろう。
事故後しばらくして私たちが目にした汚染マップは長半減期のセシウムの土壌などへの沈着図である。この図は降雨による土壌沈着図は測定データの豊富さにより信頼性はある。いっぽう、晴天時のヨウ素一三一の吸入被ばくなど、初期の内部被ばくの実態を表現できない。事故からしばらくして公表されたSPEEDIによる拡散図は、放射能が事故炉から定常的に拡散することを前提としてプログラミングされているため、放出された総量が「薄め」られている。実際には、風向きを無視して「ベント」を行ったり、2号機の損傷時のように「濃い」放射性物質が断続的に放出されていた。線量評価が評価できないため、健康不安が高まるのは必然である。
福島事故での線量評価ができないまま、福島事故の教訓をいかした防災対策などできるはずもない。IAEAは原発事故対策として「五層の防護」を定めており、四層目の過酷事故対策まで新基準による規制委の審査対象だ。放射性物質が敷地外に漏れ出る「第五層の防災対策は災害対策基本法で自治体任せにされ、規制委の審査対象から外れている」(毎日社説)。川内原発のある鹿児島県は一〇キロ圏内までの避難計画を公表したが、伊藤知事は「三〇キロ圏内までの要支援者の避難計画は現実的ではない」と、弱者切り捨てを明らかにしている。
カルデラ噴火と「文明の断絶」
規制委で川内原発の再稼働が進むと、巨大噴火に関する審査の不十分さが指摘された。九電は過去巨大噴火を起こした三つのカルデラからの火砕流が敷地内に到達した可能性があるとしたが、廃炉までの「原発の運用期間に大噴火が起こる可能性は十分低い」とし、規制委はこれを妥当と判断した。原子力規制を監視する市民の会は、「少なくとも審査を止め、警告を発する火山学者を含めた有識者会議を開催し、立地の可否を改めて問うべき」として、パブコメに対して多くの批判意見を寄せるよう呼びかけている。
日本列島で「これまで平均六〇〇〇年間隔で起こっていたカルデラ噴火が、最近七三〇〇年間は発生していない。カルデラ噴火はもはや、いつ起こっても不思議がない現象」とし、「発生場所によっては、数十万〜数百万人の犠牲者が発生するといわれる」と二〇一三年三月のNHK防災コラムに藤井敏嗣火山噴火予知連絡会会長は記している。そして、さらに広い地域で「航空路を含むすべての交通網はマヒ状態に陥り、物流も人の移動も困難になると予測」「貯水池や水道浄化池では火山灰のために取水不可能となり、広域で断水状態が続き、また送電線の断線、電柱などのがいしに降り積もった火山灰によるショートで大停電が起こります。このように、断水や商用電源の断絶が起これば、原子力発電所の甚大な事故につながる可能性があることは、福島第一原発の事故を見れば明らかといわざるを得ません」と述べている。
田中委員長は定例会後、「縄文前期の鬼界カルデラの噴火(七三〇〇年前)では九州がほぼ全滅」と述べた。また「カルデラ噴火の予測というのは、原子力発電所の安全性だけではなくて、広大な地域の人命にかかわる問題ですから、これは大いにこれから研究を進めるべき」とも述べている。
箕浦幸治東北大学教授は、一九八三年に一〇〇人の津波による死者を出した日本海中部地震で「海が白く濁った」という証言をもとに、十三湖周辺でボーリング調査を行い、文献に残る過去の津波被害と湖底堆積物の年代が一致することを確認した。この手法を仙台平野に広げ、一九八六年に貞観津波(八六七年)の痕跡を確認した。当時はバブル絶頂期で仙台平野に宅地開発の波が押し寄せた時代、箕浦教授は「妨害」によって国内での調査の継続を断念し、研究を海外に移さざるをえなかったという。
箕浦教授の研究成果を東北電力の技術者が知り、女川原発2号機計画に利用し、貞観地震と同規模の津波を想定したおかげで原発は破局を免れたと各界で称賛されるが、女川町の死亡率が東日本震災では最悪クラスであったことを合わせて語られることはほとんどない。貞観津波は福島の浜通りを襲っていた。三・一一前に国や東京電力に警鐘をならしていた研究者の一人が今年九月一八日までに二年間の任期を終える原子力規制委員の島崎邦彦委員長代理である。東北電力や東京電力が貞観地震の知見を地域防災に役立てていれば、どれだけ多くの命が東日本大震災で救われたことであろうか。
再稼働に前のめりの安倍内閣
規制委の田中俊一委員長は定例会後の記者会見で、「安全審査ではなくて基準の適合性を審査」「基準の適合性はみているが、安全だということを私は申し上げませんと国会などでも何度も答えてきた」と述べている。また、「再稼働をするか、しないかという判断についてはコミットしない」「稼働を許可するかどうかは、事業者、地元の住民の方、政府の考えなど、関係者の合意で行われるのであって、そのベースとして審査がある」との考え方を示した。規制委は審査書の正式決定後、求められれば立地地域への説明会を行うと明言してきたが、「まだ来てくれるなという感じで」鹿児島県や薩摩川内市からの要請はないという。
安倍首相は規制委の審査書案確認を受け、「科学的、技術的にしっかり審査し、安全だという結論が出れば再稼働を進めたい」と記者団に語った。翌一八日、九州財界人との会談の際、出席者から川内原発の早期再稼働を要請され、首相は「川内はなんとかしますよ」と応じたという。菅官房長官は「首相や経済産業大臣が(地元自治体に)行くことは全く考えていない。基本的には事業者が行うべきだ」と発言したと東京新聞は報じている。同紙は「急ぐ政権、自ら判断せず」「再稼働、規制委に丸投げ」などを見出しに掲げた。
鹿児島県と薩摩川内市はこの二七日、原発事故時に甲状腺被ばくを防ぐ安定ヨウ素剤を、原発から半径五キロ圏の住民に一斉配布した。まるで再稼働が決まったかのような行動だ。
今回の審査書案は国民の意見を聞く最後の審査書案である。「将来的な原発ゼロ」をめざしていた民主党政権時代の一二年九月一九日に規制委に就任し、推進派からの批判にさらされ続けた島村委員長代理が審査してまとめる最初で最後の審査書案でもある。今回のパブコメでは多数の意見を審査書案にぶつけ、川内原発の再稼働を阻んでいこう。
(七月二七日 斉藤浩二)
報告
7・9第二回横堀現闘本部撤去口頭弁論
空港会社の主張はウソっぱち
三里塚空港に反対する連絡会
七月九日、千葉地裁(金子直史裁判長)で成田国際空港会社が三里塚反対同盟(柳川秀夫代表世話人)に対して横堀現闘本部撤去を求めた第二回口頭弁論(朽廃建物収去土地明渡請求事件)が行われた。
第二回口頭弁論は、反対同盟の「横堀現闘本部の検証申出」に対して空港会社が許しがたい意見書を提出してきた。主張は、過密運行、安全軽視、環境・人権破壊、空港公害を拡大する空港拡張を前提にした本部の鉄板囲い込み、通行・歩行権を剥奪したことを「所有権に基づく妨害排除請求権の行使」などと居直ってきた。しかも横堀現闘本部が「朽廃」状態にあるから「敢えて検証を行ってまで、この点を明らかにする必要性は認められず、速やかに却下されるべきである」と手前勝手なことを再び言い出した。
第一回口頭弁論で反対同盟は、空港会社の(一九九八年)「1月に開催された旗開き以降は一切使用していない」という嘘に対して一九九八年一月以降も諸々の行事や会合で現闘本部を使用していたにもかかわらず、二〇〇六年七月〜八月、空港会社が横堀十字路から本部に至る通路をバリケードを設置して封鎖を強行したために管理・運営が困難になったと主張した。
しかし空港会社は、今回もこの事実を無視し、現闘本部の「朽廃」状態は「誘導路を走行する航空機のジェットブラスト(排気)によって同物件が損壊し、その一部が周囲に飛散する等、航空機の航行の安全に重大な支障を生ずるおそれがあったために本件物件の周囲を鉄板塀で囲ったものであり、本件物件の損壊等の行為は一切行っていない」と平然とインチキなストーリーを作り上げ、「本件物件が、朽廃状態に至ったのは、飽くまでも同物件が長期にわたり使用されず、その間に台風等の強風雨にさらされたためと推認されるものであり原告によって本件物件の朽廃状態が造り出されたものではない」とだめ押しの嘘で結論づけている。
空港会社による通行・歩行権の剥奪が明白であるにもかかわらず、こんなでっち上げを許してはならない。反対同盟は、空港会社の主張を打ち砕くために現闘本部屋根修理、駐車している宣伝カー、餅つき、雪風景、稲荷鳥居完成祝い、現闘本部全景、通路封鎖の状況(一九九二〜二〇〇七年)の各写真を証拠提出した。
また、あらためて「横堀現闘本部の検証」を求め、その理由として「反対同盟や関係者の本件建物の使用や修理を妨げたのは、第一次的には原告が通路を封鎖したことによるが、さらにそれを確固としたのが、鉄板による囲いである。しかし、鉄板による囲いの効果は、それに止まらず囲い内での温気の閉じ込めと、囲い内で発生する自然の強風やジェット噴射による乱気流であり、これらが本件建物の傷みを加速させた疑いが十分ある。ここは建物の傷み具合をつぶさに検証し、その結果を専門家に見て貰う(鑑定して貰う)予定である」と反論した。
千葉地裁は、「横堀現闘本部の検証」の指示を出せ。従来のように空港会社防衛のためにたち振る舞うことをやめろ!
■横堀現闘本部撤去裁判
(朽廃建物収去土地明渡請求事件)
第三回口頭弁論 千葉地裁第601号法廷
九月一七日(水)午前一一時
■裁判闘争費用のカンパ(1口 2000円)を訴えます。/振替口座:00290―1―100426 大地共有委員会〈U〉
三里塚芝山連合空港反対同盟(代表世話人:柳川秀夫)/大地共有委員会U(代表:加瀬 勉)
〒289─1601 千葉県山武郡芝山町香山新田 90─5(案山子亭)/電話&FAX0479─78─8101
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