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    かけはし2014.年6月2日号

報復は新しい犠牲者を生み出す


ウクライナ

オデッサの悲劇的できごとを経て

政治的綱領としての「人間性の保持」

わずか数日のうちに「絶対的獣」となる

イリヤ・ブルドレツキス

 

 五月二日、ウクライナの黒海に臨むオデッサで親マイダン派と反マイダン派が衝突し、四〇余人にも及ぶ犠牲者がでた。このオデッサの虐殺事件をどう考えるべきなのか。以下はロシアの同志からの報告。({「かけはし」編集部)


犯人捜しでは
真実は見えない
 オデッサの悲劇的できごとが過ぎた二日の間に、われわれは、何が起きたかについて、数十通りにもなる説明を聞いてきた。そしてそれらの説明すべては、いずれにしろ、「隠された黒幕」探し、つまり互いの衝突をつくり出すために二つの武装デモグループを送り込み、その一つを労働組合会館の畜殺場へと押しやった者たち捜しに結びついていた。
 これらの説明のほとんど――公的なキエフ政府のそれからロシアの宣伝機関のそれまで――は、当地の警察が意識的かつ組織的なやり方で、暴力の開始を妨げるための試みを何であれ一切控えた、ということを指摘している。
 次いでこれらのできごとに関する説明は通例、説明に役立ついわば「シナリオ」を提供している。そのシナリオは、一方のあるいは他方の陣営に有利に働くものであり、それは以下のようなものだ。たとえば、ユリア・ティモシェンコ(元ウクライナ首相)は、将来の彼女自身の勝利を確実にする目的で、五月二五日の大統領選挙を妨害するだろう。あるいは、キエフの政府は「分離主義者」を脅し、その支持者に血の海の責任を帰せるだろう。またあるいは、ロシア政府は、キエフの「軍事独裁」支持者の信用を失墜させる議論にもっと説得力を持たせるようになるだろう。さらに、前ウクライナ大統領のヤヌコビッチ一派は、ロシアを公然たる軍事介入へと押しやるだろう、といった類だ。
 これらの説明の各々はある意味で、われわれ――ロシアとウクライナの民衆――になるほどと思わせるように聞こえる。なぜならばわれわれは、言及された勢力のどれもが、彼らの目的を遂げる目的であらゆる犯罪をやり抜くことをやめそうにない、ということを知っているからだ。
 彼ら自身の市民たちから犠牲者をつくり出すこの準備は、ポストソビエトエリートのメンバーを選び出すための、常に必要条件だった。そのエリートの中には、大量虐殺を道義上できないなどと言う者は誰一人、まったく誰一人いないのだ。
 しかしオデッサの悲劇を組織した者が誰であれ、そしてその当初の意図と思われるものが何であれ、そこからはもう一つの結果が出てくることになるだろう―――あるいはかなりおそらく、またすでに――。つまり、内戦の論理が枷を外されるままにされてしまい、そしてそれを止めるということは、今やほとんどありそうになくなっている。
 先月中は――軍事作戦、諸々の建物の占拠、人質の確保、ドンバスでの地方的小競り合いを伴ってだが――、多くの人々はそれでも、過程全体は何らかの方法で誰かが管理しつつあり、それは内戦の論理が止められる可能性があることを意味している、というわずかの希望を保持していた。そのような期待の基本的な基礎は、プーチン、西側大国あるいはキエフ政権の意志だけではなく、ウクライナ人の多数には互いに殺し合う準備など単純にない、という事実だった。

友人的な隣人は
突然対立に発展
しかしわれわれは、一つの境目をおそろしい勢いで越え渡るという感情が巻き起こった、一九九〇年代のそう遠くない歴史を思い出す必要がある。つまり、何十年間もどのようにすれば「敵」と「友」へと互いに分かれるのかを忘れてきた友好的な隣人、「ソビエト市民」が突然、わずかの日数で、あらゆる人間的特質を失い、絶対的獣となってしまうというできごとであり、そのあり得る存在については、ファシストの侵攻に関する愛国主義的映像からのみ知られていたのだった。
それは、トランスドニエストル(モルドバ共和国とウクライナの国境に沿う回廊地帯、ロシア系住民が一方的に独立を宣言し、モルドバ政府と抗争中:訳者)での戦争が「国家言語」問題が持ち上がってからどのように始まったのか、ということだった。それはまた、クロアチアの都市であるスプリトでの悪名高いサッカー試合で、セルビアとクロアチアがどのように後戻りのできない地点に達したのか、という問題だった。
このすべてはあまりによく知られているが、これらの戦争の敗者は例外なく、そこに関与した全員である、ということへの理解はない。最初の犠牲者に対する報復はまさに新しい犠牲者を生み出す――そして新たなかつ正当な報復行為への基礎を提供する――。これがオデッサのできごとのもっともぎょっとする結果だ。彼らは双方の側に対して、もっとも残酷でさえある、正当化されて当然の、あらゆる復讐を行った。
労働組合会館で吹き出した炎の中に、ウクライナ人が容易に沈められる未開状態の深みを見ることは難しくない。その範囲、深みは、五月二日に起きた衝突の振り付けを行った非道な者たちのたった一人によってであれ、十分に理解されていない。
それほどの昔ではなくても、「人間性を保て」との要求は、完全に抽象的な願いとして響いたと思われる。今、オデッサの虐殺を経た後では、それは一つの政治的な綱領となった。

▼筆者は、第四インターナショナルロシア支部である「フペリョード(前進)」の指導者。「フペリョード」は「ロシア社会主義運動(RSD)」の創立に参加した。(「インターナショナルビューポイント」二〇一四年五月号)

スペイン

ポデモス、EU議会選に挑戦

新自由主義を終わらせる闘い

アンダルシアでは若者の半数が失業中

 スペインのアンダルシアでは若者の半数が失業に追い込まれている。この若者が中心となって形成されているのが「ポデモス運動」であり、経済危機の要因である新自由主義と闘うためにEU議会選に挑戦しようとしている。(「かけはし」編集部)

 来るEU議会選にはスペインで、左翼の反資本主義活動家と新しい世代を結集する新しい運動が、「ポデモス」という選挙リストで登場するだろう。フランス反資本主義新党(NPA)のミゲル・セギが、ポデモスリストの候補者となる予定の活動家二人に会った。

私も若者と
同様に失業中


――自己紹介をお願いできますか?
テレサ・ロドリゲス(T・R):私は「反資本主義左翼」の活動家ですが、教育分野の労組活動家であると共に、公教育防衛の運動「マレア・ベルデ」の中でも活動しています。私はEU議会選に向けたポデモスリストの二番目にいます。
ヘスス・フラド(J・J):私は二七歳で政治学の研究者ですが、現在は、アンダルシアの若者たちの半数以上と同じく失業中です。私は「企業債務監査プラットホーム」とセビリアの住民運動の中で活動していて、私もポデモスリストの候補者です。

新しい政治的
枠組みの実現


――ポデモス運動を紹介できますか?

J・J:それは、社会運動、反資本主義の諸政治組織、さらに知識人の結集から生まれた、建設途上の政治的構想です。われわれは、われわれの諸権利と自由を破壊する現在の動きを止める新たな政治的枠組みを築き上げるために団結しています。これは、「移行体制」(注)から引き継がれた政治モデルの枯渇局面で登場しているものです。枯渇しているものは、社会レベルに関しては上から解体され、その民主的側面の諸限界によって疑問に付されているモデルです。
ポデモスは、これを背景に自身を幅広い運動として押し出しています。それは、人々の急を要する社会的な必要に対応する現体制の能力のなさを強調しながら、あいまいさを残しているとはいえ、既成秩序との絶縁をはっきり明らかにしています。
T・R:それは、社会的諸権利に対する積み重なる暴力的な攻撃、オルタナティブの危機、さらに展望の不在に対応する意図の基に、四カ月前に生み出された選挙構想です。こうして、二大政党制の危機という情勢に対応することが必要になっています。
この危機が、たちの悪い堂々巡りを打ち破ることをわれわれに可能とする空間、並びに好機に向け、われわれに扉を開いています。その堂々巡りとは、その社会的基盤を系統的にうんざりさせているPSOE(社会労働党)を巡るものであり、こうしてこの党はPP(国民党)にいたる道をつけ……、それに反対する人々が再び、さらにもっと防衛的になっているPSOEに投票し、こうしてその一連が再度始まる、といったことです。
われわれの役割は何よりも、政治的解凍の要素として、加えて怒れる者たちの運動に政治的に対応することに役立つことです。

既得権益を
取り返す闘い


――主な要求は何ですか?

T・R:それは主権の取り戻しです。われわれの未来を決めている者たちは選挙では選ばれていない、あるいは誰の統制も受けていない、このことをもはや誰一人疑っていません。制度的な権力や特権的少数は、われわれの人生を決して支配してはなりません。今日君臨している唯一のものがわれわれを窒息させているまさに正統性のない債務である、などということはあり得ないのです!
また要求は、市場の供物台に向けた犠牲とされている社会的、民主的さらに環境上の諸権利の問題です。つまり、住宅、雇用、医療、教育、社会的サービス、民衆と地球に対するケアです。
現在これらの権利を要求するためには、われわれを行き止まりに追い込んでいる特権的少数がもつ既得権益を、根こそぎにする必要があります。これらの権利を保障しない者たちはまったくの役立たずです。
結論的にわれわれは、もう一つのやり方で政治を実践し、新しい政治的倫理を築き上げる必要があります。それは専門家支配のない、特権のない、公開された形でわれわれを代表する者たちの集団的統制を保障するものです。われわれは、多数の新たな民衆権力を築き上げ、統治のあり方としての腐敗を公然と非難する必要があります。
J・J:われわれの綱領は、全員の開かれた参加をもって、二段階で構築されてきました。一つはバーチャルなもの、もう一つは実体的なものです。この展開の結果は、怒れる者たちの運動の考え方の二つ、新自由主義政策を終わらせること、そして民主的急進主義、これから影響を受けた一つの綱領の採択となりました。私は、われわれの綱領の主要二要求は債務の公開監査と憲法制定過程の開始、だと信じています。

政治的自由や活
動の自由が重要


――ポデモスはどのように構築されたのですか?
T・R:われわれは三〇〇以上の「サークル」をもっています。これらは、集団的政治権力の行使を可能とする開かれた空間です。そこでは厳密に引かれた政治的立場を誰も求められません。また人々は彼らの社会的あるいは政治的選択や活動の放棄を求められず、われわれはそこでは、政治的帰属をまったくもっていない人々と対等に参加しています。
J・J:一月以来これらのサークルは、この種の政治的働きかけとは伝統的に距離を置いてきた地方を含めて、全土に広がってきました。しかしながら総会という形で自己管理されてきたこの組織は、そこに参加する人々のほとんどが政治経験を欠いていることによって弱体です。選挙が終わるまでの「暫定理事会」としてわれわれが「スポンサー」グループを設立したのは、こうしたことを背景にしたものです。われわれは六月に、われわれの新組織の規約を確定できる第一回全体総会を開催するつもりです。決定と統制の主要機関である諸サークルの協調を生み出すことによって、この総会が内部民主主義の強化をわれわれに可能とすることが重要です。

NPAとの協力
も必要である


NPAはあなた方を助けることができますか?

T・R:われわれはNPAと共通する多くの綱領的要求と政治的目標をもっています。われわれは柔軟かつ固定されない関係をもつべきです。これはまた、フランスに暮らすスペイン人移民の中にポデモス「サークル」を作り上げることも可能にします。われわれは、欧州民衆のためのもう一つの未来を築く点でわれわれを助ける統一的な論争サイトを組織し、今日危機に苦しんでいる社会的多数の統一を可能にする戦略に関し意見交換し前進することを可能にすべきです。
J・J:ポデモスにとってもっとも重要な社会的グループの一つは、仕事、並びに学問や研究やその他のための資金を見つけるために、この国を離れざるを得ない若い移民のグループです。連携する諸組織の支援は、スペイン人移民の決起に活気を与える上で、またより幅広い尺度でわれわれの闘いを協調させる上で決定的です。市場の欧州を解体するために、われわれはわが民衆間の連帯を強化しなければなりません。
注)一九三九年から一九七六年までスペインを独裁の下に支配したフランシスコ・フランコ将軍の死後、議会制へ移行。(「インターナショナルビューポイント」二〇一四年五月号)


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