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    かけはし2014.年5月26日号

自立した労働者の登場に連帯を


ウクライナ

オデッサ事件に対する左翼反対派の声明

独立した社会運動のために!
自由なウクライナのために!


 

 五月二日、黒海に面するウクライナの有名な、また若き日のトロツキーが左翼活動を始めた港町のオデッサで、親マイダン派と反マイダン派が衝突し、数十人の死者を出すという悲劇が起きた。東部におけるウクライナ暫定政府による反テロ作戦開始も含め、ウクライナでの内戦という憶測は、今や可能性というレベルを超えた重大な懸念を呼ぶ地点に達しようとしている。国際的影響も非常に大きいこの事態に対し、ウクライナの左翼勢力から声明が出されている。以下に紹介する。この声明のIV掲載に際しては編集部による「左翼反対派によるこの声明は、ウクライナ語から英訳されウェブサイト『オブザーバー・ウクライナ』に五月七日掲載された」とのことわりが付記されている。(「かけはし」編集部)

民族を二分する
内戦の瀬戸際に


五月二日のオデッサ民衆の大量殺害は、いかなる点でも正当化不可能だ。社会主義派連合の「左翼反対派」は、両陣営で死傷した人々が誰であれ、彼らの多数に対して使われた力は明確に、自衛のために必要とされた行使の程度すべてを超えていた、と確信している。これらのできごとに対しては、すべての関係者が参加する調査を行い、煽動者と殺害者を個人として明らかにすることが必要だ。それらの者たちは、おそらく、という程度以上に衝突の両陣営にいた。
われわれは現時点で、これらの殺人に責任のある者たち、その組織やグループの名を上げることはできない。しかしながらわれわれは、このオデッサの虐殺がはらむ政治的結末を知ることはでき、また、それに政治的責任を負う者たちの中には、左翼政治組織がいることを見ずに済ますことはできない。
一片の疑いもなくこの暴力はまず第一に、人々を完全に意識的に殺害した、そして暴力を伴う民族主義的病的興奮を社会に勢いづけるために、死傷者の血を利用しようと試みた、そのようなウルトラ民族主義者と排外主義者によって組織され方向付けられた。彼らのめざす社会は、彼らの考え方に沿って、「民族の敵」に対し「民族を動員」すべきものなのだ。それは実際、彼らが夢見るナチ独裁、つまり流血と民衆に対する脅迫を通してのみ確立され得る体制、それを達成するおそらく唯一の道だ。
これは、ウクライナにいるロシア人がすべてのウクライナ人の中にバンデラ主義者(西ウクライナのウクライナ民族主義運動指導者だったステパン・バンデラに由来する:訳者)の殺人者を見るのならば、その一方でウクライナ人がすべてのロシア人の中に潜在的な「ロシア軍諜報機関の破壊工作員」を見るならば、その時にのみあり得るものとなるだろう。不幸なことだがわれわれは、これがそれを超えれば本当に起き得る境界まで、まさにギリギリまで近づくことになってしまった。

ウクライナ国家
が最優先課題か


しかしながら五月二日のオデッサでバリケードの両側に現れた人々の中には、左翼諸組織の活動家たちが含まれていた。しかし彼らはほんの一年前、平和的に集会を行う自由への諸制限に反対する、また奴隷化的労働法令の導入に反対する抗議行動では、それを共にする一部を形成していたのだ。
「ボロトバ(闘争)」連合の活動家たちは、「オデッサ・ドゥルチナ(オデッサ防衛隊)」の右翼排外主義者に率いられた側に姿を現した。別のところでは、アナーキストと反ファシストたちが、実際は彼らの敵、特に右翼のサッカー過激ファンによって指揮されていた行動に参加した。この後者の集団は、敵に対する特別な残忍さによって自身を際立たせていた。
左翼諸組織は、独立した、別個の労働者階級の綱領を押し出すことができなかった。大衆運動の指導権をとることができなかったことについては何も言わないとしても、それらは、民族主義的スローガンの下での兄弟殺し的暴力から距離をとることもなく、また多くの人々をそこから何とか後退させることすらしなかった。これらの左翼は最後には、近頃ではほとんど完全に現代の社会・経済秩序から始まりつつも、それをある種の民族主義的主題に変えてしまう、そうした総体的に大規模な運動に対する無批判的支持という落とし穴にはまった。
その時点でオデッサの抗議行動参加者にとっては、結論的正義として、ウクライナ国家が存続できる能力あるいは無能力が、不幸なことだが、あらゆる民族性をもつウクライナ労働者階級の労働者の諸権利よりも大きな重みをもっている。ウクライナとロシアで権力から資本家新興財閥を取り除く戦略に代わって、ウクライナ国家の創出は「誤解」だったのかあるいは「歴史的失策」だったのか、に関する現在進行中の論争がある。

東部の武装急進
派には民衆不在


東部と中央部のウクライナにある大工場の労働者は全般的に大衆的抗議運動に参加してはいないが、それは少しも驚きではない。反マイダンと親マイダンの諸行動は概して参加者が少なく、それらは、今年一月と二月のユーロマイダン期間中の一〇万人に上る強力なキエフの決起とはまったく比べものにならない。スロビャンスク(ドネツク州)においてすら、武装急進派は、冒険主義者の小集団にとどまっている。彼らはそこでは権力を確保したが、明らかに、まったく論理的に政府の反テロ作戦の犠牲者とはなりたくないと思っている当地の住民を脅迫することによってのみ、その権力を今も保持し続けている。
スロビャンスク住民の多数が「一つの分割不可能なもの(ロシアのこと:英訳者)」を再興するという君主制論者の理念を、そしてそれはドネツク人民共和国「最高司令官」のロシア当局者であるステレルコフ・ヒルキンによって公然と宣言されたのだが、それを支持しているかどうかはまったくのところ大いに疑問だ。同時に、彼らがスロビャンスクでのステレルコフの「ちっぽけな緑服の男たち」も、どのような他の兵士たちも見たくないと思っていることもはっきりしている。結局のところ彼らは、反テロ作戦の戦闘継続が人が現に住む町の住宅地で遅かれ早かれ始まるということ、彼ら――平和な当地の住民たち――が苦しみを受ける最初の者になるということを、唯一十分すぎるほどに理解している。
スロビャンスクとクラマトルスクの労働者は全体として検問には参加していず、毎日チェックポイントを通って自動車で仕事に通い続けている。ここではゼネストの問題は提起すらされてこなかった。当地の下層の犯罪的ギャングと愚かしくも郷愁でソ連邦に思い焦がれている老人たちが、「スロビャンスク軍事独裁」の主な支持者だ。

労働者、自身の
マイダン形成へ


同時に、大衆的な組織された労働者運動はウクライナに疑いもなく存在している。それは、「ティツシュキ(当局と雇用主が雇ったならず者:英訳者)」による当地のマイダンを襲撃する試みに際し、その市内での暴力のエスカレーションを鉱山労働者の自衛部隊が阻止した時に、クリビイ市で姿を現した。労働者たちは、リビウ州のチェルボノフラードでも自身を見えるものとした。そこでは彼らが政治の進行に介入し、さらに事実上、当地の発電所、つまり新興財閥のリナト・アクメトフが掌握している発電所を国有化した。
労働者運動は、ルガンスク州のクラスノドンではもっと強力に自身を明らかにした。鉱山労働者はここでのゼネストを通して市を彼らの統制下に置いた。重要なこととして彼らは、ルガンスクの分離主義「反マイダン」と連携することを望まず、キエフマイダンの新興財閥ブルジョア指導者への支持を明らかにすることもなかった。
彼らは、社会的公正を求めるスローガンとこれらのスローガンを実現する真剣な意志に基づいて武装した、キエフマイダンとは異なる、労働者の、彼ら自身のマイダンを形成した。労働者は、賃金の引き上げだけではなく、鉱山の補助的労働の外部委託を取りやめることをも要求していた。こうしてそれは、狭い経済的ストライキだったのではなく、様々な職能を持つ労働者間の連帯の必要を提起した運動、市全体をその支配下に置くだけの十分な強さをもった運動だった。
さらにその行動の中では暴力はまったくなかった。一人の死傷者も、犠牲者もいなかった! 市の掌握には、たった一発の銃撃も必要としなかっただけではなく、気乗りのしない抵抗を示す者すらもいなかった。

最後のチャンス
握る労働者運動


理解できることだが、全国規模で組織された労働者運動はまだ非常に弱い。真に活動的で階級意識のある労働者の組合は、鉱業の二、三のセンターに集中している。しかしながら、排外主義の病的興奮を静め、大量の死傷者を避けることを可能としている事例が、労働者が衝突に実体的に介入しているところのみだ、というのもまた事実だ。
実際、今日のウクライナ国家の生き残り、そしてまさにわれわれの眼前で広がろうとしている内戦の阻止にとっては、独立した階級的労働者運動の政治領域への登場が、おそらく最後のチャンスとして残っている。
ウクライナ国家分割のシナリオがもし現実のものとなるならば、暴力の爆発と大量の死傷者をわれわれが避けることはできないだろう。それと共に、衝突は、階級的特性のまったくない、国家間、民族間という特性をさらにさらに帯びることとなるだろう。
ユーゴスラビアでの戦争がまだほんの始まりだったとき、極右勢力もまた極めて弱体で周辺化されていた。それらには、顕微鏡的支持率としてヤロシュ(極右の右翼セクターの指導者:訳者)やティアニュボク(スヴォボダ党の指導者:訳者)が今もつ以上の社会内部の支持は、まったくなかった。しかしながら、セルビアとクロアチアのナチは、戦争突入から一年も経たないうちに、ユーゴスラビアの政治舞台で優勢を占め始め、自身を大きな大衆組織へと変えた。
ルガンスク、ドネツク、リビウ、またドニプロペトロフスク地域の鉱山労働者が彼らの合同した努力によってこの戦争を止めることがもしできなければ、われわれすべては戦争という肉挽き機に引きずり込まれることになるだろう。そのような事態では、ウクライナの左翼運動は今後何年も本当に破壊されることになるだろう。それがロシアで生き残るかどうかも疑わしい。
クラスノドンとクリビイ市の労働者はみなさんの連帯と支持を必要としている! クラスノドンのストライキはまだ終わっていないが、交渉の中で保留されているに過ぎない。鉱山労働者はクリブジュ市で、彼らの諸要求が満たされない場合に向けストライキも準備中だ。

その下に彼らが決起している旗が何であれ、排外主義者を支持するな!
独立し統一した労働者のウクライナのために!
独立した労働者運動と社会運動のために!
(「インターナショナルビューポイント」二〇一四年五月号)

エジプト

大統領選に対する声明

反革命の指導者にノーを

「革命的社会主義者」



 現在エジプトでは大統領選が進行中だ。昨年六月事実上のクーデターで実権を握ったシシ将軍が軍籍を離れ立候補し、権力を追われたムスリム同胞団が選挙をボイコットする中、当選を確実視されている。民衆の自立的運動に厳しい抑圧が加えられる中でのこの選挙に対し、エジプトの「革命的社会主義者」が四月二七日に声明を発表した。明日の反対勢力に向け、サバヒへの批判的支持の下に闘いを続けるよう呼びかけている。以下に紹介する。(「かけはし」編集部)


シシの目標は
革命の圧殺だ
 全国家機構――軍、警察、政府、司法、さらにメディア――は、アル・シシを押し立てて決起しつつある。六月五日に大統領としての彼の戴冠を準備するためだ。彼らは、今年のナクサ(敗北)に対する悲しむべき記憶の記念日を、反革命連合候補者の就任発表の日付けにしたいと思っているのだ。
 こうしてアル・シシは、彼らが九ヵ月の間、国民の救済者として、またテロとの戦争の司令官として、しかしまたサダトや時にはムバラクと同様アブデル・ナセルの継承者としても売り込んできたこの者は、あらゆる問題に解答をもち、C型肝炎という何百万人もの人々が感染させられた病を、それを診断し治療する(想像上の)装置の軍による発明を発表するという手段で利用することもいとわない、そうした男として今いる。
 アル・シシは、一〇〇万のアパートを建設するためのアラブ首長国連邦との契約書の、住宅相の場所に頭文字で署名し、これを、共同墓地の住民の夢を利用するために行った。現暫定政府はアル・シシの就任前に、ガス価格を引きあげ、諸商品への補助金を廃止したが、それもまた彼のためにということであり、その目的は、彼の権力到達後に行われることになる場合のそれらの決定によって、陛下の人気に傷がつかないようにすることだ。
 大衆内部の革命状況の衰え、反革命の攻撃と前例のない殺戮を行うほどのよりひどい残忍さを伴った警察国家の復帰、数千人にも上る逮捕と拷問、諸大学に対する包囲と襲撃、デモを禁止する法令のような自由を制限する諸法令の採択、労働運動と労働組合の独立性の取り上げ、大統領選挙はこうしたことを背景に行われようとしている。そして反革命はそれらを通して、革命諸勢力に対する圧倒的な勝利をもぎ取ろうと構えている。そしてこれはその勝利に、革命と諸々の自由に対する残忍行為と攻撃を遂行する、という意味を与えるだろう。

明日勝つために
サバヒに投票を
ハマディン・サバヒの立場はわれわれとは根本的に異なり、われわれが原則的に批判するものだ。それは特に、内務省と軍による諸自由への侵害、殺戮、逮捕、拷問、諸大学への襲撃に関する彼の沈黙をはじめとし、警察国家の復帰を可能とする口実として国家が使用した「テロとの戦争」という嘘に対する彼の支持にいたるまでの立場、のことだ。
それにもかかわらずわれわれは同時に、何百万人ものエジプト人がアル・シシの演説や空想的綱領を疑い始めつつあり、オルタナティブ探しに入っていることに気づいている。こうした条件の中でわれわれは、ハマディンへの投票を訴える。なぜならば、アル・シシから奪い取る票各々には、もし今日ではないとしても、明日のために、日毎に急進化する幅広い真実の反対勢力を築き上げるそれだけの価値があるからだ。
来る大統領選挙は、革命の諸要求と諸目的すべてを取り入れた候補者の不在に終わった、エジプトの革命の行き詰まりを映し出している。われわれはこうした基盤の上で、ハマディンと彼の運動に、現在のシステム内部にとどまる彼らの怠惰な立場を再考するよう求める。まさにその立場がムバラクの国家を復活させているのだ。またわれわれは、彼らの支持者、およびこの選挙で彼に投票するつもりになっている人々に、彼が公言している綱領が一月の革命の目標である自由と社会的公正と人間的尊厳にしっかり向けられるよう、そして彼が以下の諸点を取り入れるよう、圧力をかけることを求める。
その諸点とは
1.一月二五日から今日までの殉教者の暗殺に対する裁判を可能とする暫定法廷。
2.拘留者の解放と自由を制限する法令の廃止。そこには、デモに関する法令と市民に対する軍事裁判、そして組織する権利に焦点を絞ること、が含まれる。
3.新たな税制の賦課による富の再配分、そして公共部門と私有部門に対する最低所得と最高所得の適用。
4.専制国家の廃絶、および参加型大衆的民主制並びに労働組合と労働運動の自由と独立に対する不可侵制の確立。
5.民族的独立性を確保するための従属性の廃絶。

 われわれは、反革命のメディアに大衆を渡すつもりはない。そして、その根拠はわれわれも尊重するとはいえ、選挙ボイコットによって純粋性を守る、という立場はとらない。そしてわれわれは、アル・シシにまつわる幻想を厳しく批判し、建設されようとしているムバラク国家の復帰の聖像を打ち壊すために、選挙の戦場に参加するだろう。

革命は続く!
殉教者に栄光を!
人民に権力と富を!
二〇一四年四月二七日
(「インターナショナルビューポイント」二〇一四年五月号)


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