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    かけはし2014.年3月31日号

「正義」を忘れた検事や判事たち


不法も法なのか―英陽ダムと密陽送電塔

間違っていても国策事業は容認



 生涯、農作業だけをやって暮らしていた住民たちが損害賠償請求訴訟の被告となり、被疑者・被告人になっている。
 数日前、慶尚北道英陽で推進されている英陽ダムに反対している住民たちから知らせがきた。昨年2月、住民たちと工事下請け業者との間で繰り広げられた衝突の状況について、業者側が住民らを相手に損害賠償請求訴訟を提起したが、その判決が出たというのだ。3つの業者は住民らを相手に2度にわたって5600万ウォンを請求する損害賠償を出した。住民らの妨害によって作業ができなくなったために損害を賠償せよ、というのが訴訟の内容だった。ところで、裁判所は3500万ウォンを賠償せよとの判決を出したというのだ。
 民事訴訟だけではない。業務妨害罪で告発された住民らは刑事裁判も受けている。民事訴訟であれ刑事裁判であれ、裁判所は実定法の視角から形式的要件だけをつきつめている。はたして今、推進されている事業は正当なのか、適法な手続きに従っているのかは問いつめない。

工事に環境部もブレーキ

 それでは住民らがいたずらに意地を張っているのだろうか。そうではない。英陽ダム事業は深刻な問題のある事業だ。我々は、ダムだと言えば大きな川をせき止めて作る巨大な構造物を考える。ところで英陽ダムはチャンパ川という小さな流れを阻み高さ76m、長さ480mの構造物を築くという事業だ。現場に行ってみれば水量も少なく、谷間を流れている川だ。どうしてこんな所にダムを作ろうとするのだろうかという考えが思わず出てくるような所だ。
英陽ダムは余りにもでたらめな事業であるがゆえに環境部(省)がブレーキをかけもした。「環境影響評価法」によれば、国土交通部(省)がダム建設長期計画を作成する時には環境部の意見を聴き、それに従うべき義務がある。ところで環境部は明示的に「英陽ダムはダム建設長期計画から除外せよ」との意見を出した。
環境部によれば、英陽ダムは事業自体に妥当性がなく、かつ必要性もない事業だ。ところが国土交通部はこのような意見を無視して事業を強行しようとする。そこで下請け業者を動員して測量を押しつけ、住民らはこれに反発して業者の装備やその職員らを阻止したのだ。
事情がこうであってみれば、はじめに間違いを犯したのは国土交通部と韓国水資源公社だ。彼らは環境影響評価法を無視し、かつそれに違反した。ところが彼らはいかなる制裁も受けてはいない。反面、住民らは損害賠償請求訴訟や告訴・告発に苦しめられている。
このようなことは英陽ダムだけの話ではない。慶尚南道密陽の送電塔についても住民らは仮処分の申請を受け、連行や拘束、警察の呼び出しで苦しめられている。60歳を超えたハルモニ(おばあさん)、ハラボジ(おじいさん)たちが、生まれて初めて警察署や裁判所から呼びたてられている。ここでも業務妨害罪が適用された。韓国電力がやろうとしている送電塔の工事を阻んでいるのは不法だというのだ。

目立つヘリの不正使用


ところで最近、韓電がやっている密陽送電塔工事が環境影響評価法などの法律に違反した事実が明らかになった。韓電は2007年、密陽送電塔工事のために環境影響評価を実施したものの、現在やっている事業面積は環境影響評価を実施した時よりも2倍以上、増えたというのだ。この場合、環境影響評価法に従った変更協議をしなければならないが、韓電はこのような基本的な手続きさえ経てはいない。
密陽送電塔の工事現場で資材を運ぶために使用するヘリ機についても違法行為のあったことが露わになった。韓電は当初、環境影響評価をする際に5カ所でのみヘリ機を使用すると言っていたが、実際には30カ所以上でそれを使用した。
こうしてみると、住民らが妨害したという韓電の業務自体が法に反した不法行為だったわけだ。ところが不法工事を阻んだ住民らは拘束・連行されて裁判を受けているのに、不法をしでかした韓電関係者は、いかなる責任をも取ってはいない。
現場に行ってみると、住民らはやりきれなさを訴える。政府や韓電がやっていることは間違いであり、彼らが法を守っていないのになぜ我々だけがこんな仕打ちを受けなければならないのか、というのだ。
このような訴えは英陽、密陽からのみ出て来ているのではない。わが国の至る所でこのようなことが繰り広げられている。不法に許可が出たゴルフ場に反対している住民らが前科者となり、妥当性が検証されていない済州・江汀マウル(村)の海軍基地に反対している多くの人々が拘束された。政府が推進している事業は内容や手続き上の瑕疵(かし)があったとしても一応正当な業務とみなされる。それに反対すると公務執行妨害や業務妨害という縛りにかけられる。
早い話が、いかに間違った事業であっても国民は無条件に従え、ということだ。検事や刑事たちは「国策事業」というお墨付きさえあれば、その事業が間違ったものなかどうかについては目をつぶる。形式的で実体に合わない実定法の論理だけがあてはめられる。彼らが法を学ぶ時に聞いていた「正義」という単語は跡形もなく消え去る。端的に言えば法が間違った政策を擁護し、住民らを抑圧する手段に転落してしまったのだ。
恥ずべきことだ。このような状況にあって住民らはどのようにすべきなのか。ただあきらめ受けいれなければならないのか。だがダムや送電塔によって、一朝にして暮らしの場を失うことはできない。だから住民らは抵抗の道を選ぶほかはなかった。そして今、このように苦しみを受けているのだ。

弁護士ガンジーの抵抗


先週末、ガンジーに関する本を読んだ。仮にガンジーが現在の大韓民国にいたとするならば、そして英陽や密陽の住民らの訴えを聞いたならばどう行動するかを考えてみた。
弁護士出身のガンジーは、間違った法に意図的に違反する市民不服従運動を展開した人物だ。南アフリカでインド人を差別している法に意図的に違反したし、インドにやって来てインドを植民地として支配していた英国の悪法に違反した。そうして彼自身も数限りなく監獄に出入りした。ガンジーだけがそうしたわけではない。ガンジーと志を同じくしていた多くのインドの弁護士たちは、生計を投げ打って市民不服従を実践した。そういう次第で、監獄に入った弁護士が少なくなかった。
実に困惑する。現在の司法システムは正当とは言いがたい国策事業をけん制することができない。住民らの訴えに冷淡だ。正義の観念にも冷淡だ。機械的な法解釈によって権力と資本の側だけの肩を持つ。このような事業は国家の利益にも反するものであることを明らかにしても、大部分の検事や判事たちは真実を暴く意志がなく、政府の過ちを指摘する勇気もない。
このような状況にあって、どのようにすべきなのか。今日も英陽や密陽の住民たちはもどかしい胸をかきむしっている。胸から涙があふれ出ている。これらの人々と連帯しようとする人々も悩ましい。過ちを見ても「合法」の枠内にとどまらなければならないのか。それとも市民不服従を行わなければならないのか。
しかし明らかな点は今、繰り広げられている不義に沈黙しながら「正義」を論じたてることは難しいということだ。(「ハンギョレ21」第1000号、14年3月3日付、ハン・スンウ/緑の党・共同運営委員長)

証拠なくとも推論だけで有罪

検察が捜査中なのに地裁が先取り

まず50点をつけ、30点を上乗せし判決

 「大学を卒業して韓電の試験を受けた。韓電労組を掌握し、ソウル市の明かりをすべて消すという決心をした。電気がすべて断たれればソウル市に大混乱が起きて革命が起き得るだろう、と考えた」。
 ソン・ハッキュ民主党前代表(67)が2011年9月、韓国電力がもたらした大規模停電の事態を皮肉って語った言葉だ。実際に1980年まで労働運動、貧民運動をやりながら革命家を夢見ていた青年ソン・ハッキュは韓電に合格までしたが出勤はしなかった。どこか子どもっぽい妄想家の回顧談とされていたこの話には、今では「内乱陰謀罪」というおどろおどろしい罪名が被せられるかも知れない。2月17日、イ・ソッキ統合進歩党議員(52)らに対する水原地裁1審判決以降であったならば、だ。

革命組織だか
ら一糸乱れず?

 今回の判決は@細部の計画はなかったものの、ARO(革命組織)は体系を備えた一糸乱れぬ組織なので、B実質的な危険性がある、という論理で構成される。有罪判決を支えている核心的前提は「ROは体系的で組織的な団体」だという命題だ。この命題が成立して初めてROは恐ろしい内乱の主体となることができる。
裁判所はROの存在を認定した。根拠は国家情報院の情報提供者イ某氏(47)の陳述とイ氏がホン・スンソク(50)、ハン・ドングン(47)氏らと共にやっていた小さな集まりの活動、5月10〜12日の集まりでの発言が、そのすべてだ。そして「集まりへの参加者たち130人余は、いずれもがROの構成員たちだと見る理由が相当だ。したがってROは内乱の主体である、組織化された多数人の結合と見るのに不足するところはない」と語った。
ところで組織の綱領、組織員の名簿など組織の実体を立証する具体的な証拠はない。推論による結論だ。「ROは、そもそもいつできたのか、安着した組織なのか。内乱陰謀の主体だと言うが、この組織の始まり、途中経過、その終わりについての説明がまるでない。それにもかかわらずROが既に安着した組織だという前提を敷いて判決を下した。その前提が揺らげば一切が崩れる」(現職部長判事K)。
当初、ROの「団体性」を立証するのは検察の目標だった。けれどもROの結成時期や北韓(北朝鮮)との連係性、北韓からの資金流入の有無などを明確にすることができず、起訴をすることができなかった。検察は今回の判決の後になって初めて「反国家団体構成の嫌疑については、なお捜査中だ。完了したら、追加起訴する予定」だと語った。統合すれば、検察も今なおROの団体性についての捜査を完了できていないのに、裁判所がこれを受け入れた訳だ。
裁判所は、ROの一糸乱れぬさまを認定するために、5月の集まりでのイ議員の指示調の発言などに言及している。「昨年5月の集まりで、イ・ソッキは再び集まることを指示した。強制性を帯びた「それでもいいですか」という発言のほかには、参加者たちに集まりの解散の了解を求める発言はなかった。(それにもかかわらず)大部分の参加者たちがわずか2日後の日曜日の夜に、その通りに参加した」。命令調で語ったのに反発がなかったし、指示した通りに2日後に集まったのだから一糸乱れぬありようだ、という趣旨だ。
けれども判決文には「ホン・スンソクは組織レベルの指針をキチンと理解できなかったり、やむを得ず付き従う態度を見せたりもした。幹部と総責任者間の情報認識の不一致が本事件の集まり開催の原因となったと考える余地もある」という部分もある。「イ・ソッキが5月12日の集まりでの講演で『10日の集まりを急に取り消したのは幹部たちに深刻な問題があると判断したからだ』とも言った」とも語った。主要幹部たちの間に意見の違いがあり集まりを開いたけれども、その後も意見の統一ができず、苦労して集めた130人余の人々を解散させるほどに、幹部たちに『深刻な問題』があったのに内乱を準備することができたと見たのだ。

陰謀の具体性が
ないまま有罪に

 内乱陰謀が成立しようとするならば、具体的陰謀がなければならない。「奴を殺そう」という言葉を語ったとしても、その言葉と関連した前後の行動を探ってみて実行の可能性を判断しなければならない。裁判所はイ・ソッキ議員らが2カ月間、ち密な事前準備をしたと考えた。根拠は言葉だけだった。
「キム某は5月12日の集まりで『釜山国際市場で銃を購入することができるということを聞いて調べてみたけれども求めることができなかった』と語った。イ・サンホは2010年の軍事訓練の資料を引用して、京畿道平沢にあった油類貯蔵所の壁の厚みと材質に言及した。また『検討したところによれば基幹施設の警備が厳しくはない』とか、『検討されたところによれば、火薬を生産している所は主として北部に位置しており、南部には2カ所しかない』とか、『調査したところによれば武器庫や化学薬品がある所の住所がインターネットに公開されているが、実際とは異なる』と言うなど、あたかも事前調査があったかのように語っている。イ・ソッキもまた『インターネットサイトにボストンでのテロに使われた私製爆弾のマニュアルが掲示されている』と言及した。このような各発言は事前の情報収集なしに即席で出てくることはありえない」。
インターネットの検索で知ることのできる内容が大部分だが、このようなレベルの言及だけで内乱陰謀が適用できるのかという反論が強勢だ。発言を行動に移そうとしたのかもはっきりしない。公安検事出身の、ある弁護士の指摘だ。「集めてみれば具体性があるかのようだが、個別の施設側に切り離してみれば各施設に対する打撃計画の具体性が減じる。打撃計画が具体化されてこそ、危険性が発生する。施設ごとの防御体制などがあるはずだろうに、それを調べる水準はなされなければならない」。
イ・ソッキ議員は懲役12年、資格停止10年を宣告された。裁判所は残りの被告人らにそれぞれ懲役4〜7年、資格停止4〜7年を宣告した。K判事は「80点になれば有罪と書くことができると仮定した場合、『ROが存在する』という判断によって取りあえず50点を配点し、それ以外の状況によってその上に30点を上乗せした判決」だと評価した。(「ハンギョレ21」第1000号、14年3月3日付、キム・ウォンチョル〈ハンギョレ〉法曹チーム記者)


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