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    かけはし2013.年11月25日号

生存権を奪う生活保護法改悪


11.13

参院可決を糾弾し院内集会

前例なき攻撃に反撃強めよう

 



親族扶養義務で
上がるハードル
 一一月一二日、参院厚生労働委員会は、生活保護法の改悪案と生活困窮者自立支援法案を、わずか二日間、計八時間半というまったくおざなりな審議のまま強引に可決、両法案は同一三日、本会議でも可決された。反対は、共産党、社民党を中心にわずか一六人だった。
 この二法案には、当事者や支援関係者から強い反対や不安の声が上げられ、多くの問題点が指摘されてきた。それは今回の二法案が、もっぱら生活保護への財政支出圧縮という目的に貫かれ、そこに向けて、生存権保障という戦後憲法理念そのものの否定につながる重大転換を内包させていることが透けて見えていたからだった。
 たとえば生活保護法改定内容では、申請手続き厳格化と称し、申請書提出、申請時の関連書類の提出が義務づけられた。それに加えて、扶養義務の強化と称し、扶養義務者への報告要求、扶養義務者の収入・資産等などへの調査権限強化、さらに生活保護受給決定権限者には、保護開始決定以前に扶養義務者に申請があったことを通知することが義務づけられている。しかも扶養義務者の範囲が広い。先の通知義務づけは、自動的に生活保護申請が広い親族に知れ渡ることを意味するのだ。このいずれもが、生活保護申請のハードルを上げるものになることは容易に推測できる。
 一方生活困窮者自立支援法案では、本来生活保護を受給すべき人をそこから遠ざけるために使われる危険が極めて大きいと指摘されている。実際そのような趣旨の奈良市長発言が明らかになっている。またこの法案で事業化が想定されている中間就労なるものには、最低賃金適用を免除する規定があり、この事業への人材ビジネス参入が可能であることと合わせ、とんでもない低賃金派遣に道を開く可能性まで危惧される。
 まさにこうした問題ゆえに、生活保護法改悪案に反対する研究者共同声明には、わずかな時間の内に一一〇〇人以上が名を連ね、さらにこの法案には、日弁連からも廃案を求める会長声明が出されている。したがって参院可決に際しても、法案の運用にいくつも注文を付けた付帯決議を必要としたのであり、それ自体、この二法案に重大な欠陥があることを裏書きしている。

大阪地裁で原告
全面勝訴の判決
 拡大一途の貧困を前に政府責任を放棄し、民衆に自己責任、家族責任だけを押し被せるこのような法案を、このまま成立させてはならない。今後の審議の場となる衆議院の勢力配置を直視すれば、状況は確かに非常に厳しい。
 しかし、もはや黙って引き下がれる状況にはないという当事者の切実な声は、ともすれば自ら負い目を感じ自制することが多かった段階を超え、また卑劣な生活保護バッシングにより声を上げにくくされてきた壁を破り、そのような状況に高をくくって攻撃に出た政権に挑む具体的な運動へと姿を変えている。
 昨年八月に開始された首相官邸前スタンディングは継続されている。数々の院内集会も重ねられた。そして、今年八月から強行実施された制度史上前例のない大幅な(平均六・五%、最大一〇%)、しかも詐欺的な(当事者の生活実態とはほとんど無縁なデフレ効果をもっぱらの根拠とした)生活保護基準の切り下げに対する不服審判請求の呼びかけには、わずか二カ月の取り組みでも全国で一万人以上が参加している。
 また生活保護申請受理の不当な拒否(いわゆる「水際作戦」)に対する法的闘争も行われ、今年一〇月三一日ついに大阪地裁は岸和田市の申請不受理に対し、申請者の労働意志を形式だけで否認することは許されないと断じ、第三者の申請同行も正当と認めた上で、原告全面勝訴の判決を下した。この判決は、今回の生活保護改悪案の趣旨(申請手続き厳格化など)を否認するものに他ならないが、岸和田市は一一月一四日控訴を断念、原告勝訴が確定した。
 しかも岸和田市はこの控訴断念にあたって、厚労省との協議を経たもの、と公表している。これは、今回の改悪案の提案者である厚労省自身がその法案の誤りを認めたに等しいことを意味し、今回の改悪案はその足下から崩れ始めている。

障がい者、生活
困窮者と共に
 このような数々の立ち上がりをつなぎ、法案成立阻止に向けあらゆる可能性に食らいつこうと、一一月一三日正午から、院内集会「どこまでやるのか!? 弱いものイジメの生活保護『改革』〜生活保護基準引き下げ+生活保護法『改正』にNO!〜」が参議院議員会館講堂を会場に開催された。主催は、「STOP!生活基準引き下げ」アクション。
 生活保護受給者、元受給者を始め支援関係者、生活保護基準切り下げでさまざまに影響を受ける関係者など一五〇人がかけつけたこの集会では、まず弁護士の小久保哲郎さんが基調報告し、今回の法案提出にいたる生活保護締め付けの流れに位置づけて法案に込められた狙いを簡潔に浮き彫りにすると同時に、前述した不服審判請求の闘いや大阪地裁判決を例に挙げ、前例のない攻撃には前例のない反撃ではね返そうと呼びかけた。
 そして作家の雨宮処凛さんと弁護士の河邊優子さんの司会の下に当事者を始め、社民党の福島みずほ参院議員、無所属の山本太郎参院議員、日本共産党の辰巳孝太郎参院議員を含む各方面からの発言が行われ、法案の問題点が具体的な経験に照らしてあらためて全体で確認された。
 中でも特に、扶養義務者への通知を含む扶養義務強化が大きな問題として取り上げられた。たとえばある当事者は、自分の場合として申請が通知される親族は三〇人にもなるとし、これは当事者にとって苦しい踏み絵になると訴えた。またDPI日本会議事務局長の尾上浩二さんは、障がい者虐待の八〇%は家族からと実情を示し、家族依存は障がい者にとって大きな問題であり、扶養義務強化は障がい者自立に大きな打撃となると訴えた。
 これらを通じ、直前の参院本会議における二法案可決に屈することなくあくまで廃案を求める、との強い思いが共有された。そしてもやい理事長の稲葉剛さんの、すべての人の生存権を守る闘いとしてさらに大きくつながり合おうとのまとめを全体で確認し、さらなる行動の積み上げが意思統一された。
 安倍政権の民衆切り捨てはまさに全面化している。民衆の生存権そのものの問題として、安倍政権に反撃する広い連帯をつくり出すために共に全力をあげよう。     (谷)
 

11.7

派遣法改悪ノー厚労省前行動

解雇し放題社会が現実だ

規制解体ではなく厳格化が必要



マスメディア
の報道はウソ
 一一月七日午前九時三〇分から、派遣労働規制の解体を狙う労政審審議に対する雇用共同アクション呼びかけの抗議・要請行動が、審議が行われる厚労省前で雨を突いて展開された。雨はチラシの配布を難しくしたが、厚労省前には、厳格な規制を不可欠に必要とする現実を一切見ようとしない安倍政権の姿勢に対する労働者の怒りの声が響いた。
 引き下がることなく抜本規制を求める訴えは、遠藤一郎全労協常任幹事を口火に、自治労連、ネットワークユニオン東京、首都圏青年ユニオン、コミュニティーユニオンネット首都圏、全労連、全労協女性委員会の各代表から次々に続いた。そこでは特に、メディアが無批判に垂れ流す、日本では労働に関わる規制が厳しすぎるなどという大嘘とは正反対の現実を具体的に指摘した怒りが、それゆえに規制解体など決して許さないとの意志が、決然と表明された。
 たとえば遠藤さんは、年間一〇万件以上にのぼる労政事務所に対する解雇に関する相談のうち斡旋にまでたどり着いているのは四〇〇〇件にすぎず、残りは泣き寝入りになっていると指摘、日本ではそもそも解雇し放題だと現状を厳しく批判、社会の維持のためにも規制の厳格化こそ必要であり、そこに向け全労働者の結集にさらに力を注ごうと力を込めた。
 また首都圏青年ユニオンの代表は、景品水増しという不正を内部告発した労働者を、景品窃盗などというとんでもない濡れ衣を着せ解雇した秋田書店に対する闘いを紹介しながら、蔓延するパワハラの実態を批判、おかしなものを規制するのは当たり前だと怒りを叩き付けた。
 審議の状況については、現在届け出制と許可制の二本立てとなっている派遣会社に対して許可制での一本化が合意されたものの、その他の規制内容に関しては依然対立が解消していない、と報じられている(一一月八日、朝日新聞)。にもかかわらず、次回の一一月一四日では中間とりまとめが提示されるという。安倍政権の狙いをたたきつぶすために、さらに多くの結集で連続的に立ち上がろう。          (谷)

コラム

喉元の腫瘍

 
 「当病院は甲状腺専門病院であることはご存知でしょうか」。「××医院からの紹介状を持参して来たのですが」・・・。病院の受付がなぜそんな質問をしたのか、すぐにその意味を理解させられた。患者でごった返す病院内には、男性患者などほとんどいないのである。
 九月中旬に受けた骨折の手術から一ヵ月半ほどが過ぎた十月下旬、骨折治療の方はなんとか収まりがついてきていたのだが、突然のめまいや脱毛が気がかりになっていた。そしてたまたま喉元に手を当ててみたところ、首の右側に梅干の種ほどの腫瘍があることに気がついた。「癌か!」……。私もこのコラムを引き継いだ電通労組初代委員長の菅野さんのように、六〇代そこそこの命なのか……。ひとり娘も巣立ち、明日死んでもいいような生き方をしてきた私ではあったが、少なくとも母や世話になってきた叔母よりは先に死ぬわけにはいかないだろうとは思っていた。
 しかし、グダグダと無知なる思いをめぐらせていてもらちが明かないので、職場近くの内科で受診することにした。そこではMRIによる画像チェックと血液検査を受けた。
 その結果、「癌ではない。甲状腺の腫瘍のようだ。脳下垂体から甲状腺ホルモンの分泌を促す刺激ホルモンは多量分泌されているが、甲状腺ホルモンの値が低い。」という診断を受けた。それで専門病院への紹介状を出してもらったのである。
 表参道にある甲状腺専門のI病院は、午前中だけで一〇〇〇人を超える受付番号が掲示されるほどの大混雑。診察室は一〇室以上あり、採血室もU字型の内側で五〜六人の看護師が次々と採血をこなし、三〜四台のエコーもフル回転。しかし診察の順番待ち番号を見ると、患者の七〜八割は定期的な血液検査だけのようだ。しかも患者は女性ばかり。男性用トイレなど無く、女性と車椅子患者との併用だ。その病院では診察、採血、エコーを受けて、一週間後の結果待ちとなった。
 そして最終結果は「橋本病(慢性甲状腺炎)」だった。
 橋本病とはどのような病気なのか。それは血液検査で何を測定するのかわかれば理解できる。血液検査では二種類の甲状腺ホルモン濃度、脳下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモン濃度、そして甲状腺で作られる特定の蛋白質と酵素を攻撃する二種類の自己抗体濃度を測定する。ポイントは自己抗体濃度で、私の場合(検査時で)蛋白質への自己抗体濃度は基準値上限の二二倍、酵素のそれは二・六倍だった。要するにアレルギー反応と同じメカニズムで、甲状腺が炎症を起こすというわけだ。女性に多い病気で女性の二〇〜三〇人に一人が橋本病で、男性では稀だという。
 医者からは「甲状腺ホルモンはほぼ基準値内にあるので、二ヵ月後に再度の血液検査をしましょう。ただしその間はヨウ素が多く含まれている海藻類(昆布・わかめ・海苔・ひじきなど)は食べないように」と言われた。
 癌でもなく奇病でもなくホッとはしているのだが、「甲状腺がんの子八人増え二六人に」という福島県の「県民健康管理調査」検討委員会の発表を知らせるベタ記事を目にして複雑な気持ちになってしまった。   (星)

 


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