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    かけはし2013.年10月28日号

サマラス政権を追いつめる民衆


ギリシャ

攻撃を受けはじめた黄金の夜明け

アンドレアス・サルツェキス

 右翼政権による暗黙の容認の下で勢いを増しつつあったギリシャ極右に対し、その政権が突然姿勢を急転させ、それら組織をかなりの規模で攻撃し始めている。以下はその現状とそこに働いている要因、そして問われているものを現地から伝えている。(「かけはし」編集部)

 警察部門責任閣僚の頭には何がとりつくこととなったのか、デンディアス(ニコラオス・デンディアス、公安・市民擁護相:訳者)よ? 首相のサマラス同様彼は、九月一八日のパヴロス・フィサス殺害の後でさえ、黄金の夜明けというナチスとSYRIZAを同じレベルに置き、「二つの過激派」といった話を続けていたのだ……。これが暗示することは、そのような規模になることをわれわれが予想しなかった九月二八日土曜日朝の警察の大作戦は、いくつかの要因に起因している、ということだ。

支配階級内部の
諸対立と動向
 第一点として、反ファシストラップ歌手フィサスの死後に起きた大衆的反応の強さがある。彼の記憶はすでに多くの若者たちにとっては生きた伝説になっている(米国のグループもまた、黄金の夜明けの殺人者たちに対する嫌悪を表明し始めている)。衆目が認めているように、九月二五日の集会は、この場合はサボタージュと呼ぶことのできる策動のいわば被害者となった。すなわち別の場所での集会に向けたKKE(ギリシャ共産党)の呼びかけがあり、この集会からのデモすべてに対するSYRIZA指導部の前もって出された非難があった。しかしそれにもかかわらず、その集会には一万五〇〇〇人から二万人が結集し、その多数は、ナチス本部に向けたデモへと進んだ。人々はその日ギリシャ中でデモに立ち上がった。反レイシスト運動はこの日を、日毎に展開される長い戦闘に正当性を与えるものとみえた。
 多くの欧州の政治家とビジネスリーダーたちは、反トロイカの抗議、それゆえ反資本主義の抗議を制御する試みとして黄金の夜明けのような武装ギャングを使用する、という事態を興味津々に追いかけていたが、一方で欧州ブルジョアジーの一部はそれを、歓迎できないまた危険ですらある準国家グループの成長と見ていた。そうしたものは後で、火遊びをしてしまったとして伝統的ブルジア諸政党を後悔させることもあり得るのだ。ギリシャがEUの次期大統領職に予定されているという事実は、この点で明らかに、サマラス政権への何らかの圧力に導いていた。
 同じ矛盾はギリシャの雇用主たちの間にもある。「手に負えない者たちの大群」が工場主や船主たちから資金提供を受けてきた、しかもいくつかの例では長期にわたって、ということはずっと明らかにされてきていた。とはいえギリシャの雇用主リーダーのフィサス殺害後の声明、すなわち、黄金の夜明けとSYRIZAを同じレベルに置くことは受け入れがたく反民主主義的だという声明は、政権への命令のように響いた。この者たちとSYRIZA指導者のアレクシス・チプラスの間で数カ月前一つの会合があったという事実とは別に、ギリシャの雇用主指導部はこの段階では、それ自身のための、また部分的にはただ大企業のための実質のあるマフィア行為が発展することを拒否している。

さまざまな逮捕
理由とその背景
 土曜日、ナチスの指導者たちとこの党の幹部何人かが、手錠をかけられ対テロ部隊に護送され警察本部に到着した。これを見ることはわれわれの喜びだったが、しかしまたそれは怒りにもなった。なぜならばそれは、あまりにも多くのよく知られた犯罪が行われた後のことだったからだ。同時にわれわれは夢を見ないようにしよう。逮捕された指導者の一人であるナチスのならず者は、彼の子分に指図するために、拘留中にもかかわらず携帯電話を使用することができたのだ。
 そうであっても、この逮捕に裁判所が整えた基礎となる罪状は、ギリシャ政府がその欧州の同僚を安心させようと行ったまさに宣伝臭ぷんぷんの人目を引く振る舞いよりも、はるかに深刻だ。ギリシャは三日間にわたって、この殺人者ギャングが紛れもないマフィアであること(店舗を中心とした用心棒代の強要、武器密輸、様々な商業形態での移民の搾取……)を、また実体のある小さなテロリスト組織であることを発見し続けてきた。対テロ部隊は現在、この犯罪的なネットワークがこの国の中に組織し始めてきた武器貯蔵所を探索中だ。
 そしてわれわれは、ナチスに対する今回の作戦の規模を決定したあり得るもう一つの理由を知ることができる。つまり弾圧部隊は、軍事キャンプでの秘密訓練を伴って、ナチ同調者によって汚染され始めていたのだ。そして政府は、政権がやがては国家機構に対する統制を失うことになるかもしれない、と恐れたのだ。この暗殺者一団の真の強さを――そしてもちろん、黄金の夜明けに対して自由な宣伝の場を提供することから情勢を過剰に劇場化する形をとったほとんど反ナチの立場へと、主流メディアが突然姿勢を変えたという事実を――過大評価しないとしても、数多くの警察官の共謀と一体となって一つの動きが進行中だったということは明白だ。まさにこの共謀が、労働者と移民に対する暴力を主唱する者たちすべてを鼓舞し、彼らが実際に殺人を行ったように、彼らには行動に対するフリーハンドがあると信じ込ませたのだ。

犯罪グループを
最後まで監視せよ
 黄金の夜明け指導者逮捕から三日経って、提起され得る問題は、政府と司法はその道を最後まで進む決意をしているのかどうか、さらに、逮捕された殺人者たちが重投獄刑を受けることになるのかどうか、ということだ。極右という彼の過去を基にサマラスが何者かを知っているからには、われわれはそれを疑ってよい。もう一つの問題は、黄金の夜明けがその組織という側面で致命的な打撃を受けたのかどうか、だ。この二日間でわれわれが知ったことは、あらゆるところでの決起というナチ指導部の呼びかけにはただ一五〇人から二〇〇人の愚か者たちしか応えなかったということだが、それはよいことだった。犯罪グループとして特徴づけられつつあるこの党の可能性には、その禁止もあり得るという道へドアが開かれている。しかし当面、その議会メンバーは彼らの地位を持ちこたえつつあり、今はいわゆるトロイカ反対の戦闘といった口実を使って政治的危機……を引き起こしたいと考えている。
 それ以上に何よりも、明らかにされた事実を、パヴロス・フィサス殺害、諸々の殺人、多くの移民と左翼活動家に対して行われた殺人未遂を、今後に行うべく予定されていた少なくとも三〇〇件と共に忘れるわけにはいかない! われわれが今語っている話は犯罪グループに関するものであり、ここまでもみ消されてきた犯罪すべては最終的に裁かれなければならない。
 ナチスと政権のレイシズム宣伝により汚染を受けてきた民衆居住区における反応のいくつかは、一つのものごとをはっきりさせている。つまり、運動の自立的な行動を組織するためには、トロイカの諸政策と対決する労働者運動の闘争が基本であり、それに失敗すれば行動はナチスの影響下に落ち込み得るということだ。大衆的規模での反ファシズム運動の建設がかつて以上に課題となっている。悪の根源は明らかに、その名に値する生活諸条件に対する権利すべての、ギリシャブルジョアジーおよび国際ブルジョアジーによる情け容赦のない破壊なのだ。
 しかしギリシャにおける労働者の決起にとどまらず、欧州ブルジョアジー――特にドイツとフランスの――の社会政策によって燃料を注がれたファシストギャングの台頭を前にすれば、欧州プロレタリアートの責任が決定的だ。欧州を横断する、反労働者階級プランに対決する、またファシズムに対決する決起――調整を緊急に必要とする――が課題となっている。

▼筆者は第四インターナショナルギリシャ支部であり、反資本主義左翼連合のANTARSYAの構成組織であるOKDE・スパルタコスの指導部メンバー。(「インターナショナルビューポイント」二〇一三年一〇月号)

ギリシャ


 国際主義労働者左翼(DEA)の声明

サマラス政権の緊縮計画を打ち破れ

ネオナチ・黄金の夜明けを粉砕せよ

 

 首相サマラスおよび新民主党とPASOKの連立政権は、犯罪的やり方でとんでもなく長い間何もせずにいた後で、ネオナチの黄金の夜明けに対する攻撃を強制されることになった。このUターンを政権に強制した要因は明らかだ。昨日までの彼らの戦術がネオナチのために覆いとなることであったということを、われわれすべてが覚えているからだ。

反ネオナチに
転換した政府
 第一にあるものはパヴロス・フィサスの血だった。彼の殺害は極めて深刻な大事件だった。それは労働者と若者多数の琴線に触れ、そして彼らを動かした。それは、移民たちに対する何百という殺人的襲撃では通例とされてきたようには、絨毯の下に消され得ない事件だった。ちなみに移民たちへの襲撃は、ブルジョア諸政党、国家機構、マスメディアの関与の下に軽視された。
 さらに反ファシスト運動や反レイシスト運動があった。この殺人直後に爆発した反ファシストデモは、ストライキや社会的怒りを背景にして、新たな反政権闘争の戦線を生み出す勢いを見せた。
 政治的かつ社会的側面では、サマラスが追い詰められているという事実があった。彼は、教員のストライキ、また病院職員と自治体労働者のストライキが新たに生まれるという見通しに対処を迫られていた。彼は新緊縮諸方策の実行、並びにトロイカと債権者の要求に従って、この主題に関する新メモランダムへの署名をも迫られていた。
 そして政権を支える政治的基盤はぼろぼろに崩れつつあった。黄金の夜明けは、右翼の社会ブロック内部で新民主党のヘゲモニーに疑問を突き付け始めた。新民主党の指導部は彼自身の党内部で、またこの指導部に賛意を示していたメディアからも批判を浴びた。
 最終的にサマラスを黄金の夜明けに対する攻撃へと導いたものはこうした要素だった。ネオナチは、右翼の社会ブロックを大衆的な反労働者、反ストライキ、反左翼潮流として再編する戦略体系の中で昨日までは彼の主な顧問たちによって「兄弟的政党」として扱われていたのだが、彼はそのネオナチを攻撃するよう強制された。

ナチには自由と
権利の資格なし
 労働者と若者の抵抗運動は、特に反ファシスト、反レイシストの運動は、ネオナチを具体的かつ決定的に粉砕する目的に向けた圧力を引き出すために、今回の政権の作戦を利用しなければならない。この目標達成のために、警察、軍、司法システム、教会さらに黄金の夜明けに資金を提供してきたビッグビジネス内部にナチスが作り上げた結びつきを解体することが極めて重要となっている。
 あらゆる領域に明晰さを確保するという要求は、民主的諸権利並びに労働者階級と全体としての民衆大衆の民衆的自由を守り前進させるための、いわば前提条件だ。
 われわれがそこで一つの要素を強調しなければならない国民的論争が目下進行中だ。そしてその一つとは、ナチスには民主的権利を主張する権利などない、ということだ。彼らはそれを、移民に対して、「違う者」すべてに対して、労働組合や左翼にたいして、もっとも反民主的やり方で、陰に隠れて行動する政治的軍事部隊を作り上げるために使い、また使おうと思っているからだ。その本性が中でもパヴロス・フィサス殺害によって明らかにされたこの決定的な脅威を、軍事独裁の崩壊に続く年月におけるわれわれの諸戦闘を通してわれわれが獲得してきた諸権利、民主的諸権利という「イチジクの葉」の蔭に隠す正当性などまったくない。ちなみに先の比喩は彼ら自身が言っているものだ。
 現在の時期すべてを通してわれわれは、労働者、民衆的大衆、そして若者たちの社会的獲得物の粉砕という狙いと一体となった、支配階級と債権者の残忍な攻撃並びに緊縮政策に発する政治的発展すべての背景、全体構図を忘れてはならない。
 サマラスと新民主党、ヴェニゼロスとPASOKは、新メモランダムを強要するために彼らが必要としている政治的強さを得るために、民主主義の守護者のふりをしようとしている。彼らが「二つの過激派」に対する攻撃という下劣な戦術を使い続けている理由こそがそれだ。そしてこうした姿勢こそが昨日まで、左翼とさらに特別にはSYRIZAと同じ台座に黄金の夜明けを置くことにより、黄金の夜明けに正統性を与えたのだ。ストライキ中の諸大学の管理スタッフに対する政権による犯罪的な脅迫は、先の姿勢に関しわれわれに警告を与えるものとして理解されなければならない。われわれは、民主主義という想定上の名目での、闘争中の社会的多数が保持している実際の民主的諸権利を引き下げる動きを許してはならない。

政府の「ワナ」
を避けて闘おう
 これらすべてのゆえに、この間約束されてきた新たな戦略は極めて危険だ。黄金の夜明けを孤立させるとする名目で、有名な「憲法の弧」を確立するための、全政党の「政治的統一」創出に向けた一つの努力がある。左翼の全潮流はこのワナを避けなければならない。ナチスを孤立させる闘い、並びに黄金の夜明けを有効に解体する闘いは、メモランダムを取り消し、緊縮政策に反対する労働者と社会的諸権利を守る闘いの、切り離せない一部を構成する。
 ナチスに対する偉大な勝利は、右翼ブロック並びに親緊縮諸勢力に対する勝利となるだろう。それは、社会の社会主義的解放に向けた道を準備することになる左翼の政治的勝利となるだろう。
 それは、今日ネオナチの実質のある完全な粉砕を要求する中で、われわれが確固として取り組む必要のある方向だ。(九月三〇日)

▼DEA(国際主義労働者左翼)は、SYRIZAの左翼政綱メンバー。(「インターナショナルビューポイント」二〇一三年一〇月号)


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