10.14 9条世界会議・関西に五〇〇〇人
国境を越えて真価発揮の時
平和のうちに生きる権利の宣言採択 |
【大阪】実行委員会主催の「九条世界会議・関西二〇一三」が一〇月一四日、大阪市中央体育館で開かれ五〇〇〇人の市民が参加し、世界会議に先立つ一三日関西大学で開かれた九条国際会議には五〇〇人が参加した。
一四日の世界会議の午前の部は、三つのワークショップ@戦争のない世界へ Aアジアの中の九条 B若者が伝える九条、が開かれた。ワークショップAの報告行う。
下り坂すべり
落ちる日本
五人のゲストが発言した。アン・ライトさん(米国、元米陸軍大佐、イラク侵攻に反対し辞職、その後平和運動を続ける)は次のように述べた。
「米国は、戦費の財政負担を日本に背負わせ、インド洋での給油、イラクでの米兵輸送などを担わせたが、これは名古屋高裁で日本国憲法違反との判決が下った。アフガン戦争・イラク戦争はブッシュの戦争として始まったが、オバマの政策も変わらない。米国は、自衛隊の再軍備をしようとする日本を支持している。九条により戦争に反対してきたのは日本人の功績だ」。
「しかし今、日本は下り坂を滑り落ちている。オバマはアジア回帰戦略をとっている。二〇一〇年には、米・カナダ・日・韓・豪が参加した史上最大の軍事演習が行われた。また同年、米海兵隊九〇〇〇人を太平洋で展開させ、沖縄の海兵隊五〇〇〇人をグアムに移転することで日米が合意した。韓国済州島には米国海軍基地を建設しようとしているが、激しい反対運動がある。マリアナ諸島では米軍の空爆訓練が行われており、環境保護団体が米軍の自然破壊に対して抗議運動を展開している。間もなく、イラク戦争に反対したキャロライン・ケネディ(ケネディ大統領の娘)が在日大使としてやってくる。彼女による軌道修正に期待したい。日本は九条を守るだろうと確信している」。
9条はアジア
民衆の安全保障
君島東彦さん(立命館大学国際関係学部教授)さん。
「連合国による第二次大戦の戦後処理の基本は、枢軸国の非軍事化。つまり、アジアの民衆の安全保障としての九条だ。戦後文部省がつくった『新しい憲法の話』にもアジアのことは出てこない。私が知っている限りでアジアの観点から憲法を理解したのは、日高六郎が初めてだ。『私の憲法体験』の中で書いている。アジアの人がこの憲法をどう理解するのか考えた、九条に懲罰的な意味があるのは当然だ、二度と侵略しないことの保障が九条だ、と彼は言っている。日本全体が加害責任に目覚めたのは一九八〇年代になってからだ」。
「日本民衆は一九五〇年代の改憲を拒否した。安保は冷戦の中で米軍を補うためのものだったから、冷戦が終わったときが安保を変えるチャンスだったが、再定義されてむしろ悪くなり、冷戦の頃より戦争へのしきいが低くなった」。
「一〇〇年間列強から侵略されてきた中国の歴史を考えると、中国が軍縮に向かうのは難しいだろう。中国は太平洋での米国の覇権に挑戦しようとしている。米国は済州島と丹後半島経ヶ岬と沖縄・グアムの包囲網をつくっている。だから民衆の闘いもつながらなければいけない。九条守ること、軍拡なのか軍縮なのかの選択は大きい」。
今こそ安全
条約廃棄を
乗松聡子さん(カナダ、平和教育団体ピース・フィロソフィー・センター代表)。
「バンクーバー九条の会で、広島・長崎・福島を発信してきた。安倍首相発言で積極的平和主義と訳されているものは、先制攻撃に近い意味だ。マスコミはウソが多い。沖縄は日本の一部と考えている人が多いが、沖縄はもともと琉球王国という独立国だった。復帰するまで日本国憲法は適用されず、今もされていない。日米安保は破棄通告すれば破棄できるのに、日本はなぜしないのか。安保を支持するなら、米軍基地は日本本土に移すべきだ。九条を守ると同じぐらい安保をなくそう」。
エコロジーと
ピースつなぐ
チョウ・ムイさん(台湾、政治科学研究所)。
「馬英九総統の東シナ海平和イニシアチブは、領土問題は棚上げして、資源を守り共同開発をしようという呼びかけ。そこで生活している人々の声を聞くべきだ。漁民にとって大事なのは、どこの国のものかではなく、生存権の保障だ。この点を抜かしてことをすすめると、害の方が大きくなる。エコロジーとピースをつないで、平和を構築していくべきだ。政府からのメッセージはバイアスがかかっているから、直接コミュニケーションをとるのが大切」。
戦争の危機が
東アジアに
キム・ジンクさん(韓国、民主社会のための弁護士会代表)。
「民弁は八〇〇人の会員がいる。一国の憲法の一カ条ひとつを巡っての世界会議は珍しい。九条は日本国民のものだが、アジアの人々、韓国への契約でもある。九条はよい役を果たしてきたが、それを変えるとなれば、世界は関心を持たざるを得ない」。
「今韓国では、朴大統領になてから、国家情報院が国内政治に関与し、北の核に対決しようとしている。一方、安倍首相の動きには恐怖を感じている。植民地の経験を持っている韓国は、隣の国が戦争のできる国になることに恐怖を感じる。中国は軍拡するだろう。北には核がある。東北アジアに戦争の危機ができつつある。韓国には、右の動きだけが伝えられるが、是非この世界会議の動きを韓国社会に伝えたい。九条は日本だけのものではない。アジアの平和の支えだ」。
少し質疑応答があった。「安保なくせ!というと、報復があるだろう。耐えられるのか?」との質問に、「日本にとって危険なことは、好戦的な米国の戦争に巻き込まれること」、「日米にも安保ムラがあり、これは手強い。日々の政治をどう変えるか、自治体の役割が重要だ」と答えた。
平和のうちに
生きる権利
午後の部は、第一部「世界に広がる九条」、第二部「若者が伝える九条」、第三部「私たちが生かす九条」の構成で始まった。
第一部「世界に広がる九条」
“うたごえ”の大合唱でオープニング。続いて、開会のあいさつした吉岡達也さん(「九条世界会議・関西二〇一三」共同代表、ピースボート代表)は、「安倍首相のアンダーコントロールについて、この首相は本当のことを言わない人だという評価が国際社会の中に広がっている。その人が九条を変えようとしている。われわれにとって今がチャンス。世界は、軍隊で平和はつくれないということに目覚めつつある。軍隊のない社会をめざし共に闘いましょう」と訴えた。
藪田ゆきえさんが国際会議報告を行い、ハーグ世界平和会議でのツツ司教の言葉「人類は戦争を廃絶できる」をかみしめながら同会議で確認された宣言を報告し、あらためて全体で採択した。
その宣言は、安倍政権の改憲の動きが、「政府の行為によって再び戦争の惨禍がおきることのないようにすることを誓い……諸国民の公正と信義に信頼し……」という日本国憲法前文がうたう誓いをないがしろにするものであることを述べ、国連憲章より一歩先を行く九条を骨抜きにすようとする解釈改憲の動きに反対し、「専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努める国際社会において名誉ある地位を占めたいという希望を共有し、恐怖と欠乏から免れ平和のうちに生きる権利が、国連において『平和への権利』として宣言されることを願う、と述べている。
海を越えて
多彩なゲスト
ゲスト紹介。アン・ライトさん、ローラン・ベイユさん(フランス、国際民主法律家協会副会長)、ベルハッセン・エヌーリさん(チュニジア、平和と人権の促進のための地中海協会)、イ・キョンジュさん(韓国、参与連帯平和軍縮センター実行委員)、ジーン・マイラーさん(米国、国際民主法律家協会会長)、レ・ミン・タムさん(ベトナム法律家協会副会長)、キム・ジンクさん、デビッド・ロスハウザーさん(米国、映画「被爆者として生きる」監督)、ロベルト・サモラさん(コスタリカ、イラク戦争を支持した大統領声明が憲法違反だと提訴、最高裁で違憲判決を勝ち取る)、ミコルサヴィアさん(伊、国際民主法律家協会国連ジュネーブ代表)、ジュリアン・オリビアさん(フィリピン、全国人民法律家連盟国民運動担当)、チョウ・イムさん、イ・ジョウンさん(良心的兵役拒否者)、乗松聡子さん、ロニー・アレキサンダーさん(神戸大大学院国際協力研究科教授)、高遠菜穂子さん、塚田薫さん。
発言は、時間の関係で以下の四人となった。
平和権宣言は
世界に広がる
アン・ライトさんの発言は先に掲載したので省略
イ・キョンジュさん。
安倍首相が七三一の番号の戦闘機に乗って親指をあげたこと、野球の始球式で背番号九六のユニホームを着て投げたこと、自民党憲法改正草案のことにふれ、「九条がなかったら日本をアジアの友にしてくれたのか。名誉ある地位を占めたいという情け深い日本国民に期待している。国連総会が採択する平和権宣言は世界に広がっている。韓国も日本国憲法の仲間になりたい」。
ベルハッセン・エヌーリさん。
「戦争は人類最悪の発明。戦争被害者には、希望を失った人たちも含まれる。平和のために動けば平和がくる。めざすのは恒久平和であり、押しつけられた平和はもろい。平和は普通の人が敬うもの。九条は普通の人が平和を守るもの。二〇一三年チュニスで九条を知り、NGOをつくった」。
ローラン・ベイユさん。
「国連人権理事会は、平和への権利を認めている。九条は国際法を守るための基本だ。国際法は平和の擁護の一点に集約できる。国際法第二条四項では、武力による威嚇を禁止している、集団的自衛権が予防的に行使されることを認めていない。沖縄米海兵隊のプレゼンスやNATOは国際法侵害だ。外国軍からの解放の手助け以外、平和的手段すべてを試みるべしとなっている。安保理でも、独立国に武力行使はできない。リビアでも検証を確保すべきだった。国境を越えて戦争に行くことになる九条改悪には反対する」。
第2部:若者
が伝える九条
イーストジャパンのダンスに続いて、若者で考える未来ネットワークのふたりが司会。どのように訴えれば若ものがわかってくれるのか、について午前中ワークショップが行われた。
高遠菜穂子さんからは、イラクでの米軍の攻撃のひどさに、これが米国の民主主義かとみんな怒っていること、日本で訓練した米兵がイラク戦争に従軍していることなどが話された。イ・ジョウンさんからは、思想良心の自由の考えから兵役拒否をしたこと、愛国心でレッテッル張りをするのは止めよ!、人間存在は道徳的に存在するということだ、との訴えがあった。塚田薫さんは、憲法の口語訳をして、自分の頭で考えることが大切だと感じたという話をした。
五人からショートスピーチ。「退院しようにもできない人々もいる」、「原発輸出ではなく九条の輸出を」、「自己責任論が言われているが、自分たちもいつ障害者になるかもわからない怖さがある」、「九条の押しつけはよい・米国のものは米国へ」、「社会的マイノリティの中でやられている暴力・生命を危険にさらす全てのものに反対」。
総合司会の小山乃里子さんとのトークによる、藤波心さん(タレント・歌手)の憲法や原発についての意見表明と、歌「ふるさと」の独唱があった。がじまるの会によるエイサーの上演へと続いた。
沖縄と福島から
憲法を生かす
国内ゲストの高里鈴代さんと武藤類子さんがアピールした。
高里鈴代さん(沖縄、基地・軍隊を許さない行動する女たちの会代表)。
「高江地区にベトナム村があったこと、村民がベトナム人に扮装させられて米兵の訓練に使われていたということを私は知らなかった。一九九五年の少女暴行事件で、県民の不満を緩和するために、普天間基地の返還と北部の訓練基地の半分を返還することになったが、訓練基地の残り半分の六つのヘリパッドは、高江を囲むように移すことになった。一九六四年頃は、枯れ葉剤を使った実験も北部でやっていた。沖縄には主権はなく、憲法の枠外だったから、人権侵害されてもどうすることもできなかった」。
「一九七二年施政権は返還されたが、主権は回復したのか。佐藤とニクソンの密約が民主党政権の時に明らかになったが、日米安保がすべてに優先するという状態だ。普天間の辺野古移設問題は、一六年経った今も再び三度辺野古移設に戻っている。思いやり予算で武器の七〇%をまかなっている。ファルージャの米海兵隊の三分の一は沖縄から派遣されていた。沖縄は人権侵害そのものだ。そのことをよく認識した上で、憲法改悪に反対していこう」。
武藤類子さん(福島原発告訴団団長)。
「原発事故が起きて二年七カ月が過ぎたが、福島の状況は何も変わっていない。空に二億四〇〇〇万ベクレル、海に六億ベクレルの放射能が今日も放出されている。暴力団に集められピンハネされる原発作業労働者が一日三〇〇〇人。汚染水のタンクの重みで地盤は沈下し、コンクリートはひび割れ、地下水は建屋に流れ、東電が金を惜しんだために汚染水は海に漏れている。除染廃棄物を入れた大きな袋が積み上げられている。稲わらや焼却灰を入れたものは線量が高く、爆発事故を起こした」。
「一八歳未満の子どもの健康診断で一八人が甲状腺癌に、二五人がその疑いがあるという結果が出た。住民の中に分断・対立・あきらめが渦巻いている。東電や政府・政治家は責任をどれだけ感じているのか。この国のありようを変えるために原発告訴をしたが、検察は不起訴処分とした。検察審査会に訴える。同時に、汚染水問題は犯罪として告発する。声を上げ続けるためには大変なエネルギーがいる。五〇人の告発陳述書『これでも罪は問えないのですか』をぜひ読んでほしい。地域と人の犠牲や差別の上に成り立つ原発・核が地球を汚した。二度と起こしてはならない。原発・差別・戦争のない社会を実現していこう」。
二人のアピールに続いて上条恒彦さんのライブで集会を終えた。木戸衛一さん(「九条世界会議・関西二〇一三」共同代表)がまとめをし、「九条の意義を再確認し、国境を越え青年とつながる視点をもち、沖縄や原発での最大多数の利益をも超えて行こう。私は心配していない、なぜなら、彼らはナチのやり方に学んでいるのだから」と呼びかけた。
(T・T)
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