日米「2プラス2」は何を示したか
通すな 国家安全保障会議設置法案
STOP辺野古新基地建設 |
姿を現す改憲
ロードマップ 一〇月三日、日米外交・防衛担当閣僚会合(2プラス2)が岸田文雄外相、小野寺五典防衛相、ケリー米国務長官、ヘーゲル米国防長官が出席して東京で開催された。二年ぶりに開催された「2プラス2」だが、米国の国務・国防両相がそろって来日して行われた会議は初めてという。
一〇月一五日から始まる臨時国会を前にして開催されたこの「2プラス2」は臨時国会の大きな焦点となる「集団的自衛権」行使の合憲化、国家安全保障会議(NSC)設置法、特定秘密保護法、さらには新防衛大綱と日米防衛指針の改定(新防衛ガイドラインの策定)に向けた日米両政府間の意思一致をしていくねらいがあった。われわれは臨時国会の中で、解釈改憲プラス「立法による改憲」ともいうべき事態が進み、それを通じて明文改憲の動きがいっそう加速されることに警鐘を乱打しなければならない。安倍政権の下で、自民党の改憲戦略は着実に実行過程に入っているのだ。
安倍政権の
能動的突出
「2プラス2」の「共同発表」の主な内容は以下のようなものである。
?日本の集団的自衛権行使や防衛予算増額をめぐる取り組みを米国は歓迎。
?北朝鮮(朝鮮民主主義共和国)の核・ミサイル計画などへの対処。
?中国に対しては、地域の安定・繁栄において責任ある建設的役割を果たし、国際的な行動規範を順守し、軍事面での開放性・透明性を向上させるよう引き続き促す。
?一九九七年の日米防衛協力のための指針(ガイドライン)の変更に関する勧告を作成し、作業は二〇一四年末までに完了。
?日米サイバー防衛協力の強化促進を任務とするサイバー防衛政策作業部会の新設、情報保全をいっそう確実にするための法的枠組み構築への日本の取り組みを歓迎。
?オスプレイの沖縄における駐留・訓練時間の削減(いわゆる「沖縄の負担削減」?)。
?普天間飛行場の代替施設を辺野古崎・同沖に建設することが唯一の解決策。米海兵隊部隊のグアム移転を二〇二〇年代前半に開始。
ここで注目すべきは、日米新ガイドラインの策定である。これまでの日米防衛協力指針(一九七八年の第一次ガイドライン――@日本への侵略の未然防止A日本への直接攻撃への対応B極東有事の際に日米協力、一九九七年の第二次ガイドライン――いわゆる「周辺事態」への対応)が米国の戦略に基づいた日本への強い要請という形で作成されたのに対し、今回は日本からの要望が背景にあった。
朝日新聞は次のように述べている。「背景には、北朝鮮の核・ミサイル問題に加え、尖閣諸島問題をめぐる中国との緊張関係がある。東アジアの安全保障に米側を深く関与させ、自らの軍事的役割も拡大したいという日本側の意向が強くにじむ」と(一〇月四日朝刊)。
その一方で、日本が打ち出していた「自衛隊の敵基地攻撃能力の獲得」は今回の「2プラス2」では盛り込まれなかった。「日本による敵基地攻撃能力獲得」については中国との軍事的緊張に「米国が巻き込まれ」、米国の同盟国である韓国との関係悪化にもつながりかねないという米国側の懸念があるというのだ(米戦略国際問題研究所【CSIS】のマイケル・グリーン日本部長の言。「朝日」同上記事)。
つまり、米国戦略への日本の側の一方的追随という構図ではなく、日本の側の軍事的役割強化への能動的・前のめり的姿勢に米国が抑えに入るというこれまでとは異なった姿勢が表に出ている。われわれは民主党・鳩山政権時代の、日米関係の「相対化」の志向と「米中・日中」の「二等辺三角形関係」に基づく「東アジア共同体」構想が、中国への軍事的牽制・対抗を重視した米国の「新国防戦略」の圧力によって、あらためて米国の軍事戦略と一体化した「動的防衛力構想」に収れんされていく経過を見てきた(二〇一〇年一二月、菅政権の下での新防衛大綱)。
それは軍事的にも急速な拡大を見せる中国の海洋進出とアジア諸国との領土的あつれきの中で、米国が中国との経済的・政治的な関係を決定的に重視し、そこに依拠しながらも、同時に中国の軍事的進出に対抗し、抑え込むイニシアチブを確保し、同盟諸国(日本、韓国、フィリピン、オーストラリアなど)をその戦略的配置の中に組み込もうとするものであった。
しかし、安倍政権による「新ガイドライン」の要請については、米国の側は一方で日本の側の軍事的役割分担の強化として歓迎しつつ、同時にそれが中国や韓国との間で対立気運を醸成させ、ひいては東アジアの安定という米国の国益を傷つけかねないことを危惧しているのである。オバマ政権には、安倍政権の右翼「歴史修正主義」に対する警戒感が見られる。「敵地攻撃能力の獲得」という安倍政権の軍事的突出は、この点で米国側の不安を引き出した。こうした動き、矛盾についても、われわれは十分に注意を払うべきだろう。
辺野古基地建設
へ強まる圧力
次に沖縄の基地問題について見ておこう。「2プラス2」発表文書では「普天間代替施設」の建設について「県外移設」という「オール沖縄の選択」をあくまで排除し、辺野古移転が「唯一の選択」という強硬姿勢を貫いた。自民党沖縄県連など保守層も含めたオール沖縄による「県外移設」の意思を正面から押しつぶそうとする決意の表明と言うべきだ。
「沖縄の負担軽減」についてはどうか。
まずそれが第一に、オスプレイの日本全国での日米共同演習のために「本土」で運用するための口実として使われていることに注意すべきである。あいば野での日米合同軍事演習を皮切りに、米軍参加の各地防災訓練へのオスプレイの使用まで「沖縄の基地負担軽減」の宣伝に利用されている。しかし「本土」に派遣されるオスプレイは沖縄から飛び立ち、沖縄に戻ってくるのだ。騒音被害と事故の危険性が、「本土」への往復の度に広がることに変わりはない。
他方、具体的な「負担軽減」として持ち出されてきたのは、沖縄本島東方沖の米軍の訓練区域「ホテル・ホテル」の使用制限を一部解除する取り決めを一一月末までに作成するということである。また一〇月八日に岸田外相と小野寺外相が訪沖し、仲井真知事に改めて辺野古移設に「理解」を求めた際、沖縄への「お土産」として、日米地位協定の「運用見直し」を発表した。どの点での「見直し」だったのか。米軍人・軍属の犯罪の取り調べや第一次裁判権に関わる「見直し」か。違う。在日米軍人が刑事事件を起こした場合、「裁判や処分の結果を被害者側に通知する」ということだけだ。これでは「そんなことも被害者には知らされていなかったのか」と地位協定の不平等さに怒りを新たにするだけであって、およそ「お土産」と言えるようなものではない。
まさにこうした「茶番劇」を演じながら、安倍政権は「辺野古沖公有水面埋め立て許可」の圧力を仲井真知事にかけ、さらに沖縄選出の自民党・島尻安伊子参院議員、西銘恒三郎衆院議員を先頭に「辺野古移設推進」の運動を進めている。その目標は言うまでもなく来年一月一九日投開票予定の名護市長選で、現職稲嶺市長に代わる「移設容認」派を当選させることだ。
今回の「2プラス2」での「辺野古が唯一の選択」という確認は、まさに来年一月名護市長選での移設容認派市長当選への「決意表明」なのである。
国家緊急事態
の司令塔構想
これまで「2プラス2」をめぐる日米両政府の思惑のズレや、沖縄・辺野古新基地建設をめぐる攻防について概略的に見てきた。同時に「新ガイドライン」「新防衛大綱」をめぐる「2プラス2」の論議が、安倍政権が一〇月一五日からの臨時国会で成立させようとしている「国家安全保障会議(日本版NSC)設置法案」「特定秘密保護法案」と密接な関連を持っていることを明らかにする必要がある。
さる六月七日に提出され継続審議となっている国家安全保障会議設置法案は、第一次安倍内閣の二〇〇七年四月にも「安全保障会議設置法」の改正として提出された法案と基本的骨格は同じである。
国家安全保障会議設置法案は、これまでの安全保障会議の九大臣会合(総理、副総理、官房長官、総務相、外相、財務相、経産相、国交相、防衛相、国家公安委員長)を存続させつつ、新たに付け加えられた審議事項である「国家安全保障に関する外交政策及び防衛政策の基本方針並びにこれらの政策に関する重要事項」を四大臣(総理大臣、官房長官、外相、防衛相)会合の審議事項とする。四大臣会合は「国家安全保障政策に関する外交防衛政策の司令塔」である。
四大臣会合に常に出席して影響力を行使すると目されているのは国家安全保障担当総理大臣補佐官であり、国家安全保障会議が軍事政策を立案・推進する中枢機能を担うことになる。内閣官房国家安全保障局が新設され、「国家安全保障会議を恒常的にサポートし、内閣官房の総合調整権限を用い、国家安全保障に関する外交・防衛政策の観点から必要な提言を実施する」とされる。
なお法律案では「守秘義務の徹底」が特記され国家安全保障会議の「議長又は議員(それらの経験者含む)に加え代理出席する副大臣、関係者、事態対処専門委員会委員長にも守秘義務」が課される。また会議には「官房副長官、国家安全保障担当総理補佐官の出席、意見陳述可能」とされ、「統幕長等の関係者は議長の許可を得て出席、意見陳述可能」とされており、実質的に「司令塔」としての「国家安全保障会議」において自衛隊制服組の担う役割は非常に大きくなるだろう(引用は内閣官房・国家安全保障会議設置準備室発行の「『国家安全保障会議』について(説明資料)」)。
この法案は、自民党改憲草案の先取りとも言うべき「国家緊急権」を前提としており、まさに改憲のための立法と言えるだろう。そしてこの国家安全保障会議設置法案は特定秘密保護法案を前提としており、この二法案は表裏一体の関係にある。違憲の法律の制定を通じた明文改憲への回路は、「集団的自衛権の合憲化」という「解釈改憲」を通じた明文改憲と一体のものである。
まさに戦争を実際に行うための国家作り=戦争を想定した国家体制と法制整備が安倍政権の下でピッチを上げて走り始めた。この綿密かつ危険きわまる戦略と対決する運動の大衆的形成が焦眉の課題である。
(平井純一)
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