9.19 TPPに反対する公開学習会
「農民の道」は世界につながる――
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草の根レベルのネットワークである「TPPに反対する人々の運動」とアジア農民交流センター共催の学習会「自由貿易がアジアを襲う―東北タイの村から」が九月一九日、東京都内で開かれた。昨年一一月に環太平洋経済連携協定(TPP)への交渉参加を表明したタイから二人のゲストが招かれた。
司会を務めたアジア農民交流センター等で長年タイ農民との交流を続けてきた大野和興さんは「アジアにはTPPをはじめ何重もの自由貿易協定(FTA)や経済連携協定(EPA)などの自由貿易体制が張り巡らされている。世界貿易機関(WTO)などの自由貿易体制に異議を唱え、国境を超えた交流のなかならオルタナティブな農業や経済を模索したい」と今回の学習会の意義を訴えた。
いつでも犠牲に
なるのは貧農だ
一人目の講師は、タイの首都バンコクから六〇〇キロ離れたカンボジア国境ちかくのカラシン県で農業を営みながら、農民運動のリーダーのひとりとして最近までサーイーナワン行政区機構で民選の議長を八年間務めたバムルン・カタヨさん。二〇年前に来日し水俣や三里塚の農民らと交流してきた。
「今日、バンコクではタイとEUのFTAに反対する大きな集会が行われている。農民はもちろん様々な産業に従事する人々が抗議の声を上げている。ここにいなければもちろん私も参加していた」。こう語るカタヨさんは三〇年間営んできた農業と地域運動や国際交流の経験から「自由貿易はまったく自由ではない。それはビック・ビジネスにとっては自由かもしれないが、貧しい者たちには腰を砕く政策でしかない」と静かに訴えた。
カタヨさんは地域の行政区機構の議長として、政府の開発政策の間違いをただしてきた経験からタイ政府の農業政策を次のように説明した。
「政府は貧しい農民を支援する政策として、農協を通じて市場価格を上回る値段で農民からコメを買い取っている。しかし市場に流通するのはベトナムから入ってくる安いコメだ。大量のタイ米が余ってしまっている。その一方で中国からの安いゴムによってタイのゴム農家は大きな打撃を受けている。農業大臣に支援を掛け合ったところ、コメの買い取りで資金が底をついていると言われた。タイでは誰が政権の座にあっても貧農を犠牲にする政策でしかない」。
新自由主義を進め、汚職で国を追われたタクシン元首相の娘であるインラック首相は昨年の首相就任直後にTPP交渉への参加表明を行った。タクシン時代に挫折したタイ・米国FTAも狙っているという。
「タイは一九九七年の通貨危機でIMFに支援を要請したが、その引き換えに農産物市場の開放などが進められた。その次にやってきたのがタクシノミクス、つまりタクシン元首相による新自由主義経済政策だった。通信王だったタクシンは、王室批判とバラマキ政策の典型的なポピュリズム。腐敗を重ねて結局は国から追われた。その後、赤シャツVS黄シャツの争いを経て、タクシンの娘である現在のインラック首相に至っている」。
「タクシン時代にはニュージーランド、オーストラリアとのFTAが締結され、タイの酪農家は大きな打撃を受けた。中国とのFTAでは中国から安い果物やニンニクなどがタイ市場を席巻した」。
自由貿易を進めるこのような政府の政策に対して、カタヨさんら農民運動などは異議申し立ての行動を続けてきたが、赤シャツ運動による暴力的な妨害にも遭っているという。
オルタナティブ
な実践を蓄積
同じくタイ東北部で「オルタナティブ農業ネットワーク」のスタッフとして活動するカタン・ニットン・ポンヤカンさんは、カタヨさんと活動を始めて一〇年になる。二〇〇九年にアジア学院の研修生として日本に一年間滞在し、帰国後にカタヨさんが活動する地区の委員として有機農業の普及や青年教育に従事している。
タイの農業は低収入で不安定ということもあって若者には魅力的には映らないという。
「わたしは地域の二つの村にある学校をまわり有機農業のネットワークを作ろうとしている。学生に対して有機農業の仕組みを説明している。たとえ農業に従事しなくても有機農業の仕組みを理解することは社会に出た後でも十分に役に立つはず」。
「それとは別に地域の三〇世帯の農家と有機農業のネットワークを作っている。農協が推奨する品種は、毎年タネやそれに合った農薬を購入しなければならず、結果的にカネがかかる。私たちは、それよりも地域の在来種を植えることで種の保存にもなるし、借金づけにならない農業を目指している。多国籍アグリビジネスの言いなりになるのではなく、自分達で考えながら在来種の有機農法や地域に合った養豚を営んでいる。地域で資源ごみリサイクルや水資源の管理についての話し合いも行っており、仲間も増えている」。こう語るポンヤカンさんの若々しい顔は自信に満ちている。
インラック政権のバラマキ政策にも手厳しい。「車を購入した人には初年度免税、次年度は一台につき一〇万バーツのキャッシュバックを行うと約束し、去年一〇〇万台が売れた。車を買うために農村から都市部へ出稼ぎに出る人もいる。一方で独身世帯に増税するという。将来を担う若い世代に対するこのような仕打ちに対して、多くの批判が出ている」。「一九七三年のタイ民主革命のときの中心は学生など若者だった。いまの若者は政治や社会に無関心な傾向を示してはいるが、失望はしていない。農業だけでなく、広くさまざまな社会問題について働きかけていきたい」。
ポンヤカンさんは、カタヨさんとお揃いの緑のポロシャツを参加者に示しながら次のように述べた。「これは世界的な中小農民の団体、ビア・カンペシーナのロゴの入ったポロシャツです。ビア・カンペシーナとはスペイン語で『農民の道』という意味です。これが私たちの進む道です」。
昨年のタイ中部のアユタヤで発生した洪水被害によって、日系企業を含む多くの工場が移転した東部工業団地では、工場排水などによる農業や住民生活への影響が出始めているという。カタヨさんは発言の最後にこうまとめた。
「TPPやFTAなど自由貿易協定で語られるのは投資のことばかりだ。環境や健康、人権などが語られることはない」。「私は日本の新潟の農民との交流で魂を感じ、三里塚農民との交流を通じて抵抗することのインスピレーションをもらった。その経験がのちのタイ貧民連合の結成、そして三カ月におよぶ幹線道路封鎖の闘争につながった。『パラン』(タイ語で力)を合わせてグローバルな自由貿易体制に抵抗できると思う」。
二人は今後、福島や山形を回り、農民と交流を重ねる予定だという。極東の最東端にもビア・カンペシーナ(農民の道)という闘争の道がつながっている。
(H)
9.17 スノーデン事件から見えてきたもの
秘密保全法制は何をもたらす
実態を知らせ、反対運動の拡大を
言論の自由を
侵害する圧力
九月一七日、「スノーデン事件から見えてきた監視国家アメリカ、そして日本 ―秘密保全法制と盗聴法拡大・共謀罪とアメリカの影―」が渋谷勤労福祉会館で行われ、約一二〇人が参加した。集会は、盗聴法に反対する市民連絡会、東京共同法律事務所、日本国民救援会、反住基ネット連絡会、日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)、新聞労連の共催。
エドワード・スノーデン(NSA=アメリカの国家安全保障局の技術者)は、六月、NSAが開発したプリズム(メール解読ソフト)を使って秘密裏にIT企業九社にアクセスし、全世界のメールデータを収集していたことをメディアに暴露した。米政府は、情報の収集は議会の秘密委員会の許可を得ていたとして居直り続け、FBIはスパイ防止法違反容疑でスノーデン逮捕をねらっている。スノーデンは、現在、ロシアに滞在中だ。
主催者は、スノーデン事件で明らかになった米国の監視システムを日本政府がめざしているのではないかという問題意識からテーマの一つとして設定した。そして、安倍政権が監視国家へのステップとして今臨時国会で秘密保全法を提出することが確実な状況の中であらためて秘密保全法制定阻止の意志一致を行った。
臺宏士さん(毎日新聞記者)は、「スノーデン事件からみたアメリカの情報収集網と秘密保全法制―アメリカジャーナリズムの危機と日本の報道機関に求められるもの―」というテーマで問題提起した。
とりわけ秘密保全法の危険性に関連して在日中国大使館一等書記官(外国人登録法違反容疑)による農林水産省「機密文書」漏洩事件(二〇一二年五月)をとりあげ、「各省庁の『機密』の決め方が文書を作成する担当職員か個人の判断で『機密性』を指定しているケースがあった。しかも機密性を示すランクづけがあり、意図的に高いレベルの機密の格付けが設定される傾向がある。だから情報公開法で請求しても高いランクについては非公開にする可能性が増していくだろう。秘密保全法でブロックがもっと強化される。情報公開法改正は実現されないまま、『国民の知る権利』が後退した状況にある」と指摘した。
また、「防衛省情報本部所属の航空自衛隊員が読売新聞に軍事情報を伝えたとして自衛隊法違反容疑で強制捜査が行われた事件があった。中国海軍所属の潜水艦が南シナ海で火災を起こし、航行不能になったことを、読売新聞が〇五年五月三一日付朝刊で報道した。防衛庁(当時)は、日本漁船と衝突する可能性があるから、一刻も早く情報開示すべきだったが、米軍情報も含まれていたため機密扱いにしたらしい。記者は捜査対象にならなかった。だがこのような情報が処罰対象になるのでは萎縮してしまう。内部告発も抑えこまれていくだろう。秘密保全法は、取材の自由を侵害する圧力を合法化していくことにある」と強調した。
監視の強化と
アメリカの影
海渡雄一さん(脱原発弁護団連絡会共同代表/弁護士)は、「秘密保全法制と共謀罪、盗聴法拡大に共通する監視強化とアメリカの影―アメリカ刑事司法の闇が日本に伝染しつつある―」の観点から提起した。
「NSAが収集した情報は、二〇カ国を超える国が恩恵を受けていたとロジャース米下院情報委員長が明らかにしている。日本もその中に含まれているはずだ。データは、メールの履歴だけでなく内容まで読むことができる。二〇一二年には三〇日ごとに四一〇億件以上の情報を収集、保存していたという(七月三一日付ガーディアン紙)。さらにNSAと英情報機関は、メールだけではなくネットによる商取引で使われる暗号化プロトコルの多くについてハッキングに成功し、情報収集していたことを明らかにした。国家が民衆の監視を強めつつ、情報隠しを強めている。まさに秘密保全法×共謀罪×盗聴法の拡大の先には、表現の自由を否定し、戦争への道を開く憲法改正が目指されている」と発言した。
さらに@福島原発事故でのメルトダウンとSPEEDIなどの情報隠しのケースA政府にとって都合の悪いことが「特別秘密」にするケースと予想される弾圧を明らかにし、「この法制の目的は厳罰化を図ることにより、公務員の内部告発的な情報の外部通報や報道機関や市民団体による秘密情報へのアクセスを禁圧しようとする意図が明白である。これまでは自らの首を賭ける覚悟があれば、情報の開示は可能であった。この法制が成立すれば、長期の刑務所行きを覚悟しなければならない」と批判した。
今後の反対運動の取り組みについて海渡さんは、「公明党が政府に法案の事前説明を抜きにして、九月三日からパブリックコメント(意見公募)に踏み切ったことに反発した。ある地域で創価学会女性部なども参加した集まりで法案に関する学習会を行った。とりわけ創価学会を反対勢力に巻き込んでいくことは重要だ」と呼びかけた。
アピールが日本マスコミ文化情報労組会議、反住基ネット連絡会から行われ、秘密保全法反対運動の取り組みを報告した。
(Y)
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