もどる

    かけはし2013.年9月23日号

旧憲法から引き継がれた差別を批判


最高裁が「婚外子」差別違憲判決

民法即時改正、自民党改憲草案許すな


 最高裁大法廷(裁判長・竹崎博允長官)は、九月四日、民法九〇〇条四号の「婚外子の相続分は婚内子の半分」とする婚外子相続分差別規定を憲法一四条一項「法の下の平等」に違反すると判断した。天皇主義と家父長制を支える婚外子差別規定は一八九八年施行の明治民法に盛り込まれ、戦後の現行民法にも引き継いだが、一一五年間続いたこの規定を裁判官一四人全員一致で違憲と決定した。安倍政権の立法不作為を許さず、ただちに民法改正を行え。

差別強いられた
人たちに謝罪を


 裁判は、東京都の男性(二〇〇一年七月死亡)と和歌山県の男性(同年一一月死亡)をめぐる遺産相続分割審判での決定だ。男性にはそれぞれ婚内子(結婚した男女の子)と婚外子(結婚していない男女の間に生まれた子)がいて、二件とも一、二審は規定を合憲とした。そのため婚外子側が最高裁に特別抗告していた。二月、最高裁はこの二件を小法廷から憲法判断する大法廷に移す決定をしていた。
 最高裁の決定文は以下のような主張を行っている。
 第一は、現行民法が規定された一九四七年以来、婚姻・家族の形態や国民の意識が多様化しており、「時代と共に変遷するもので、規定の合理性は不断に検討されなければならない」とした。そのうえで「遅くとも本件の相続が開始した二〇〇一年七月当時、立法府の裁量権を考慮しても、嫡出子と非嫡出子の法定相続分を区別する合理的根拠は失われており、規定は憲法一四条一項に違反していたというべきだ」と結論づけた。
 しかし最高裁は、統治支配機構の防衛の観点から「本決定の違憲判断が、すでに行われた遺産の分割にも影響し、解決済みの事案にも効果が及ぶとすることは、著しく法的安定性を害することになるから、すでに裁判や合意で確定した法律関係まで現時点で覆すことは相当ではない」と明記した。これは司法の保身的態度の現われでしかない。補足意見で金築誠志裁判官は「拘束性を認めることがかえって法的安定性を害する時は、その役割を後退させるべきだ」と表明し、千葉勝美裁判官も「本決定の効果の及ぶ範囲を一定程度に制限する判示は、違憲判断の効力は個別的とするのが一般的な理解である以上、異例といえる。しかし法的安定性を大きく阻害する事 態を避けるための措置であり、必要不可欠な説示というべきものだ」と強調しているところにそれが現れている。
 婚外子差別を助長し、加担してきた反省は不十分でしかない。そもそも長期にわたって婚外子差別を強いられてきた人々に対する謝罪が先だ。
 だから従来の「合憲」から「違憲」判断への「変更」した理由が没主体であり、無責任なものとなっているのだ。
 「法律婚を尊重する意識が幅広く浸透していることがあると思われる。しかし規定の合理性は、個人の尊厳と法の下の平等を定める憲法に照らし、非嫡出子の権利が不当に侵害されているか否か、という観点から判断されるべき法的問題」であり、「法律婚という制度自体は定着しているとしても、父母が婚姻関係になかったという、子にとっては自ら選択、修正する余地のないことを理由としてその子に不利益を及ばすことは許されず、子を個人として尊重し、権利を保障すべきだという考えが確立されてきている」という評価姿勢を提示した。
 そのうえで法制審議会の民法改正案要綱(一九九六年)や国連の委員会から法改正の勧告を繰り返し求められていることを具体的に挙げて「子にとっては(婚外子という)自ら選択ないし修正する余地のない事柄を理由としてその子に不利益を及ぼすことは許されず、子を個人として尊重し、その権利を保障すべきであるという考えが確立してきている」と判断したというのだ。
 「婚姻・家族の形態や国民の意識の多様化」と掲げるならば事実婚、同性婚、夫婦別姓についてなぜ触れないのだ。日本政府は、自由権規約、女性差別撤廃条約、子どもの権利条約、社会権規約を批准しているにもかかわらず国内法制定をサボタージュし続けているのが現状である。やはり法律婚を社会規範として前提にしており、婚外子差別規定の違憲判断に限定していくブレーキもかけている。

民法改正への
困難な歩み


 最高裁の婚外子差別規定に対する憲法判断は、一九九五年時点では「婚内子の立場を尊重するとともに、婚外子を保護するもので、合理的な理由のない差別とはいえない」と合憲判断を示し、以後も同規定をめぐる裁判でも合憲の判断を続けていった。同時に「立法府によって可及的速やかに改正を期待する」「司法ではなく立法府が解決するのが本来の在り方だ」と表明する反対意見も存在していた。
 世界的に婚外子差別是正の流れが強まる中で国連の自由権規約委員会、女性差別撤廃委員会、子どもの権利委員会、社会権規約委員会が日本に対して婚外子差別の是正を勧告する。すでに一九七九年の時点で法制審議会が「相続に関する民法改正要綱試案」で「非嫡出子の相続分は嫡出子の相続分と同等」とする改正条項を提起していたが法案化は実現しないままだった。ようやく一九九六年の法制審議会で「婚外子と婚内子の相続分は同等」とする規定や選択的夫婦別姓導入を盛り込んだ民法改正案を答申した。さらに大阪高裁が「区別を放置することは立法府の裁量判断の限界を超えている」とした違憲判決(二〇一一年八月)、名古屋高裁での適用違憲判決(一一年一二月)を出している。しかも大阪高裁の「違憲」判決では、上告されず確定していたほどだ。
 しかし天皇主義と家父長的家族主義を党是とする自民党や右派系議員は、危機感を強め民法改正への妨害を強めていった。野党の民法改正案は審議に入れず廃案に追い込まれていた。

右派勢力の妨害
はねかえそう


 最高裁の婚外子違憲判決は、憲法改悪を目指す安倍政権と自民党にとって自民党憲法改正草案第二四条 (家族、婚姻等に関する基本原則)で描き出した家族観への打撃は必至だ。
 自民党改憲案の第二四条は、国家に奉仕するために法律婚と一夫一婦制を前提にしており、「家族は、社会の自然かつ基礎的な単位として、尊重される。家族は、互いに助け合わなければならない。 2 婚姻は、両性の合意に基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。 3 家族、扶養、後見、婚姻及び離婚、財産権、相続並びに親族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない」とする規定の瓦解を促進していかざるをえない。
 しかし菅官房長官は、「厳粛に受け止める必要がある。 立法的な手当ては当然だ。できる限り早く対応すべきだ」と述べ、谷垣禎一法相も「できるだけ速やかに検討し、対応策を講じていく」と表明した。民法改正法案がこれまで自民党も含めた右派の妨害で何度も頓挫させられてきたから、安倍政権の閣僚の発言をそのまま認めることはできない。
 しかも天皇制と侵略戦争を賛美する日本会議の先兵として民法改正反対で立ち振る舞ってきた自民党の高市早苗政調会長にいたっては、「政府と緊密に連携し、真摯に対応したい。党内で過去に一夫一婦制を危うくしかねないなどの意見もあって慎重に検討してきたが、最高裁の判断を厳粛に受け止める」などとこれまでの悪行との整合性もなく、本音を覆い隠してこんな発言をしだす始末だ。
 ネット上で一斉に婚外子違憲判決に対して反発する書き込み、反対キャンペーンが行われている。右派勢力は改正阻止にむけて水面下で動き出していることは間違いない。これまで以上に妨害勢力への監視と民法改正実現運動を取り組んでいこう。   (遠山裕樹)

資料

死刑執行に抗議する

アムネスティ・インターナショナル日本


 九月一二日、谷垣法相は確定死刑囚の熊谷徳久さん(七三歳)の死刑執行を発表した。谷垣法相の下では三回、六人目となる執行である。この早いペースでの死刑執行は、世界の流れに抗して強権主義的な統治構造をあくまで防衛しようとする意図につらぬかれている。アムネスティ日本の抗議声明を転載する。
                               (編集部)

 アムネスティ・インターナショナル日本は、本日、東京拘置所の熊谷徳久さんに死刑が執行されたことに対して強く抗議する。安倍政権は発足2カ月後の2月に3人の死刑執行を行い、その後も4月に2人、そして3回目となるこの度の執行で、6人の命を奪ったことになる。このペースでの死刑執行は、死刑廃止への世界的な潮流に逆行し大量処刑への道を開くもので、国連の条約諸機関からの度重なる勧告や国連総会決議を軽視していると言わざるを得ない。
 奇しくも日本の首都、東京は、6日、2020年のオリンピック開催都市に決定し、その直後の死刑執行である。オリンピック憲章には「オリンピズムの目標は、人間の尊厳保持に重きを置く、平和的な社会を推進する」、「オリンピズムが求めるものは、よい手本となる教育的価値、社会的責任、普遍的・基本的・倫理的諸原則の尊重に基づいた生き方の創造」とある。オリンピック開催国はこのオリンピック憲章を遵守する義務があるが、人間の尊厳を奪う死刑執行は、憲章に違反しオリンピック精神に反するものと、とられかねない。

 谷垣法務大臣は、4月26日の記者会見で、死刑執行については、「慎重に検討して判断をしている」とし、死刑囚を選んだ理由や執行間隔についても「個別の執行をどういうふうにしたか、答えは差し控えたい。間隔に特段の理由はない」と述べ、その判断基準を一切明らかにしていない。しかしながら、このような度重なる死刑執行において、法相がそれぞれの事件を慎重に精査する時間をかけているとは到底思えない。

 国連は、長年にわたり、加盟国に対して死刑廃止に向けた取り組みを要請している。そして多くの国は、死刑廃止への取り組みを着実に進めてきた。日本は自由権規約を留保なく批准しているが、国連の自由権規約委員会は、2008年、「世論の動向にかかわりなく、締約国は死刑の廃止を考慮すべき」とした。

 本年5月31日、国連の拷問禁止委員会は、日本審査の総括所見を発表した。同所見では、日本政府に対して「死刑を廃止する可能性を検討すること」と、前回(2007年)よりも一歩踏み込んだ、死刑制度廃止への取り組みを含む勧告がなされた。また、刑事司法制度や死刑確定者の拘禁状況に関し、代用監獄制度の廃止、不必要な秘密主義、長期にわたる独居拘禁の使用回避、弁護人による効果的援助の確保、死刑執行の合理的な事前通知など、死刑制度に関わるさまざまな改善点が指摘された。日本政府は、拷問等禁止条約等の批准国として、委員会から勧告された点について改善する義務を負っている。しかし、死刑廃止等に向けた努力を行うことなく、国際社会からの要請を一切無視し続けているのである。

 世界では7割に当たる140カ国が法律上または事実上死刑を廃止し、死刑制度の廃止への潮流は続いている。2012年の執行国数は21カ国で、日本はその内の1カ国として名を連ねた。昨年12月には、国連総会で全世界の死刑執行停止を求める総会決議が採択され、過去最多の111カ国が賛成した。G8で死刑執行を行っているのは日本と米国だけであり、その米国でも、本年、メリーランド州が死刑制度を法律で廃止した18番目の州となり、昨年、死刑を執行したのは9つの州だけだった。

 多数の国が死刑制度を廃止する中、日本は今なお、議論すら進めようとしていない。アムネスティは、一部の官僚が生と死を決定する絶対的権限を行使し、かつ秘密主義で制度を運用することがあってはならない、と考える。政府は市民に対して死刑制度を取り巻く情報を公表すべきであり、市民も実際の制度に関する情報を得る権利がある。政府がさまざまな情報を提供することで、市民は現在の闇に包まれた死刑制度の実情を知り、自ら死刑制度に関する議論に積極的に参画することが可能となり、社会全体として死刑に関する議論が活発になるであろう。

 アムネスティは、あらゆる死刑に例外なく反対する。死刑は生きる権利の侵害であり、残虐で非人道的かつ品位を傷つける刑罰である。日本政府は、国際人権諸条約の締約国として、死刑にたよらない刑事司法制度を構築する国際的な義務を負っている。アムネスティは日本政府に対し、死刑廃止への第一歩として公式に死刑の執行停止措置を導入し、全社会的な議論を速やかに開始することを要請する。
 2013年9月12日

 


もどる

Back