神奈川県教委も教科書攻撃
国家主義的教育介入はねかえそう
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実教出版教科書を排除
神奈川県教育委員会(具志堅幸司委員長)は、八月二〇日、臨時会で来年度に県立高校で使う日本史教科書から国旗国歌法の説明で「一部の自治体で公務員への強制の動きがある」と触れた実教出版の教科書「高校日本史A」及び「高校日本史B」の排除を正当化する暴挙を強行した。
すでに都教委(六月二七日)、大阪府教委(七月九日)が同教科書の排除にむけて不当な介入を行っている。県教委は、先例に見習って同教科書を使用することを決めていた二八校の校長を呼び出し(七月二四日)、「外部団体からの圧力があるかもしれない」とどう喝を駆使し、県高校教職員組合の「校長に対する依頼の撤回申し入れ」を投げ捨て、選定見直しに追い込んだ。
黒岩祐治知事は、教委の教科書見直し強要を「尊重したい」と支持表明し、「国旗、国歌に対して起立しないという教師がいるということ自体、私には信じられないことでありましてね。国旗、国歌に対して、教師がきちっと礼を尽くすというのは、当然のことだ」と述べ、「応援」していくことを表明した(七月三〇日)。
県教委のなりふり構わぬ教科書攻撃は、安倍政権のグローバル派兵国家建設の一環である教育再生実行会議路線の忠実な先兵としてその手法は悪質だ。高校教育指導課は、「四月に不起立の教職員名の情報収集は合法という最高裁判決が出て、県教委の姿勢がすべて認められた」と手前勝手に判断し、「日の丸・君が代」強制策動と教科書攻撃への暴走を強めていった。
県教委は、臨時会で市民グループなど不当介入反対の請願を全部不採択したあげく、「(実教出版の教科書には)県の考えと相いれない部分があった。再考結果も学校の希望であり、学校の使用希望を尊重する教科書採択の最終決定機関は県教委だ。文部科学省の検定を通った教科書は複数あり、どれを採択するかは教育委員会が判断する」と居直った。 右翼の妨害におわせ
これまで教科書の採択は、教委が高校から使用希望教科書の報告を受けて追認し、八月に翌年度の使用教科書を採択してきた。つまり、教委は地方教育行政法第二三条6には「教科書その他の教材の取扱いに関すること」とあるだけで採択権限を明示しておらず、学校での授業の具体的内容を最終的に決定する権限、教育課程(カリキュラム)の最終決定権は学校現場にあることを認めていたのである。
今回の不当な介入は、手続きが適正に行われているかをチェックするだけの役割を超え、教育再生実行会議路線をバネに現場の決定を優先してきた従来のシステムを真正面から破壊するものだ。教科書選定、教育編成権、教育の自由を侵害する「不当な支配」(教育基本法一六条一項)、学校教育法の違反だ。教委の「検定に合格した教科書なら何でもいいということではない。教科書の採択権が教育委員会にあることは、教育小六法に明記されている」というウソ、従来と矛盾した態度を許してはならない。
具志堅は、「すべての学校で関係教職員と協議した」と報告しているが、選定見直しありきで実教出版の教科書希望校の校長が保身を根拠にして変更を強引に決めたのが実態だ。しかも「実教出版の教科書が不採択となった場合、使用を希望していた学校名が明らかになることで混乱が起きる可能性がある」などと述べていたが、「事前調整」と称する脅しの中では右翼のいやがらせが来ることを遠まわしで匂わせながら見直しを強要していた。ある高校の会議で校長が「高校名が表に出て、街宣車が学校に来るかもしれない。学校を守らなければならない」と強調していたことが希望校の教諭たちから暴露されている。 「日の丸・君が代」強制の一環
実教出版教科書排除攻撃は、「日の丸・君が代」強制運動を取り組んでいる「教育を良くする神奈川県民の会」が教委に「実教出版教科書採択を慎重にせよ」請願提出(七月一六日)から始まったことになっている。教委は、会に意見陳述(七月二三日)させ、継続審議扱いにし、非公開の教育委員協議会で実教出版の教科書希望校に見直しを強要していくことを決定してしまったのだ。
教委が自ら作成した「神奈川県立高等学校等使用教科用図書採択方針」(「@各高等学校等の学校目標及び各教科の指導目標に基づいて教科用図書の調査研究を十分に行い、学校及び生徒の実情を考慮して…A文部科学省が作成する高等学校用教科書目録のうちから…B公正の確保に留意する)という「教科書選定・採択手続きの流れ」を突然投げ捨ててしまったのだ。短時間でこのような決定をするために教委の判断の一つとして右翼対策を大いに利用したことが推測できる。教委の宮崎緑委員が「現場が責任を持って選ぶのが望ましいが、(不採択に伴う混乱を)危惧する面があったので選定し直したということ。瑕疵はなかった」(朝日新聞/八月二一)、倉橋泰委員も「不採択は過去に一度もなかった。混乱を避けるためにやむを得なかったのではないか」(同紙)と完璧な無責任発言を放っていることで証明しているだろう。 「国定教科書」化への道 教委の不当介入に真っ先に賛美したのが、産経新聞だ。社説(八月二〇日)で「教科書採択 神奈川の判断を広げたい」などと掲げた。「誤った記述の教科書を使用しては、生徒の困惑を招くことになり、学校教育としても首尾一貫しない。教育委員会が記述に目を通し、どの教科書が生徒にふさわしいか選ぶことは、これも当たり前のことだ。公立高校が使用する教科書の採択権は教育委員会にある。神奈川県をはじめとする各地の動きは良識ある権限行使というべきもので、批判は当たらない」と強引な県教委の手法を支持したうえで、神奈川事態の全国化を叫ぶほどだ。
実教出版の高校日本史A」、「高校日本史B」には、「国旗・国歌法をめぐっては、日の丸・君が代がアジアに対する侵略戦争ではたした役割とともに、思想・良心の自由、とりわけ内心の自由をどう保障するかが議論となった。政府は、この法律によって国民に国旗掲揚、国歌斉唱などを強制するものではないことを国会審議で明らかにした。しかし一部の自治体で公務員への強制の動きがある」と事実を明記しているだけだ。いったいどこが誤った記述だというのだ。
産経は教科書検定制度改悪への踏み込みも「問題の教科書は国の検定に合格しているが、検定を通っていれば何でもいいというわけではない。むしろ、こうした教科書の記述が検定で正されなかったことが問題だ。教科書は、執筆者の自説や政治的見解を述べる場ではない」と批判する。つまり教育再生実行会議路線に基づく国定教科書化への意図をもってバックアップしていくというのである。自民党教育再生実行本部の「教科書検定の在り方特別部会」による教科書の「近隣諸国条項」の見直しと「教科書法」の制定のねらいと連動している。部会が歴史教科書を発行している東京書籍、実教出版、教育出版の社長や編集責任者を呼び出し、意見聴取と称するどう喝的指導を強行している(五月二八日)。まさに神奈川県教委は、これらの手法を取り入れ、定着させていこうとしているのだ。
神奈川県教育委員会の高校教科書採択妨害糾弾!自民党など右派勢力による教科書攻撃をはねかえしていこう。 (遠山裕樹)
福島第一原発
再稼働などできるはずがない 止めようがない汚染水
犯罪行為の責任をとらせよう
福島第一原発の汚染水漏れ、海への流出問題は、八月に入ってますます深刻な事実が明るみに出てきた。八月二一日、原子力規制委員会はタンクからの高濃度放射能汚染水漏れが三〇〇トンに達したことを受けて、国際原子力事象評価尺度(INES)で「重大な異常事象」にあたるレベル3に相当すると発表した。
東電の試算では、漏れ出た放射性ストロンチウムが一日で三〇億ベクレルから一〇〇億ベクレル、セシウム137が同じく一日で四〇億〜二〇〇億ベクレルに達し、二〇一一年五月からの総放出量がストロンチウムで七〇〇〇億ベクレル〜一〇兆ベクレル、セシウム137で二〇兆ベクレルと見積もった。タンクから漏れた放射能汚染水は確実に海に流出し、深刻な海洋汚染、海洋生物への汚染をもたらしている。
東電にはもはや一切の責任能力・対応能力がないことが明らかになったし、それは原発を「国策」として推し進めてきた国家の行政機関についても全く同様である。
こうした中で、たとえ選別的な形であれ原発の「再稼働」を行ったり、ましてや原発輸出にうつつをぬかすことは、国際的は犯罪行為であることは明白である。日本の反原発運動はあらためてこの秋、再稼働阻止、原発輸出阻止、すべての原発被災者への補償と謝罪、子ども・被災者支援法の実効化、福島原発告訴団も告訴・告発に基づく原発事故責任者への捜査・起訴、公正な裁判の実現に全力をあげよう。苛酷な状況の中で廃炉・除染作業にたずさわっている労働者たちの生活、健康、権利の完全な保障も重要な課題である。 (K)
資料(抜粋)
東京電力株式会社 代表執行役社長
廣瀬直巳 様
汚染水の海洋流出及び
労働者被曝に関する要請書
2013年8月7日
たまり続ける高濃度汚染水をめぐり、地下貯水槽の汚染水漏れ以降、政府の廃炉対策推進会議に設置された汚染水処理対策委員会が5月に出した報告書に対して、原子力規制委員会は「高濃度汚染水が滞留する海側トレンチ(作業用トンネル)からの漏えいリスクが高い」との見解を表明していました。6月以降観測用井戸から高濃度の放射能が検出され、原子力規制委員会が6月下旬、トレンチから海に流出した可能性を指摘しましたが、東京電力は参議院選挙後まで流出を否定し続け、海への流出、海洋への拡散が続いてきました。原子力規制委員会は、汚染地下水が遮水壁を上回った可能性が高く、地表にあがってくる可能性を否定できず、現在は「緊急時」と指摘しています。陸上にも溢れ出す状態になれば汚染水からの放射能により空間線量は上昇、作業員の被曝が増え、大変困難な事態も想定されます。
いま、汚染水が当面の重大問題であり、事業者は再稼働申請に奔走している場合ではありません。いまこそ、国をあげてあらゆる人的資源、施策を汚染水対策に集中させるべき時です。(中略)
東京電力が利潤追求最優先の企業体質から起こした苛酷事故から2年5カ月、15万人を越す住民がふるさとを追われて避難を余儀なくされ、放射線被曝の脅威と健康不安の中にあり、漁業者は甚大な打撃を被り生活と生業の危機に瀕しています。
あらためて、下記の通り強く要請を行い、誠意ある回答を求めるものです。
1 原子炉建屋の周囲に遮水壁を設置し地下水汚染と汚染水の漏えい・海洋流出を防止すること。
2 作業員の被曝管理データの一元管理、定期健康診断の実施、線量限度超えの作業員の仕事や賃金の補償など、原子力事業者が全体を把握し国と協力して責任を担う体制を確立すること。(脱原発福島ネットワーク「アサツユ」より転載)
コラム
「収束宣言」の結末
八月二〇日の夕方、「タンクから汚染水が漏れ、海に流出」という文字を新幹線のドア上にある電光掲示板で見た。驚くよりも「やっぱり」という気持ち。翌朝新聞を見ると漏れ出た高濃度汚染水は三〇〇トン、放射線ストロンチウムは最大一〇兆ベクレル、セシウムも二〇兆ベクレルが海に流出したという試算結果も掲載されていた。私のような素人にはこの数値の意味する本当の問題は分からないが、「通常運転時の一年間の放出管理目標値(二二〇〇億ベクレル)を一〇〇倍も超えている」というから、とんでもない数字であることは明らか。それを裏付けるように二一日にはあわてた原子力規制委員会が、この汚染水漏れの事態が「国際原子力事象評価尺度(INES)」では「レベル3相当」であるという見解を示した。「レベル3」は「重大な異常事象」であり、福島第一原発の事故のレベル7、一九九七年の旧動燃東海事業所の火災・爆発のレベル4に次ぐ日本では三番目に大きな事故。
その後東電への追及が始まるとタンクからの汚染水漏れの原因と疑われる事実が次から次へと飛び出してきた。@タンクは最初に設置した場所が地盤沈下したために現在の場所に移した使いまわしA地下水が多い場所と言いながら、きちんとした基礎工事をしないままコンクリートの上にタンクを置いたBタンクを巡視する際の点検記録をつくっていなかったC一日二回の巡視は目視で行っているので三〇〇トンに達するまで気付かなかった。
事故の根本は三・一一の震災とその後の爆発事故と同様に原子力行政と東電など原発マフィアと呼ばれる連中の体質にあるのは明白だが、直接的には二〇一一年一二月一六日、野田首相が経産官僚と東電の描いたシナリオに基づき「事故の収束」を宣言し、当面の課題を「再稼働問題」に移行させてしまったことに始まる。とりわけ新たに動き出した原子力規制委員会はその政治的評価はどうであれ衆目を再稼働に集める役割を果し続けたことは明白。
この間福島第一原発の汚染水漏れ事故は計四回もあったが重大な問題としては取り扱われず、東電に至っては「海への流出はない」の一点張りでタンクの満杯を口実として海に流す機会をひたすらねらっていたのである。
八月二六日になってようやく安倍政権は汚染水の流出を食い止めるための「凍土遮水壁」の関連費用も次年度の概算要求に入れることを決めた。だがこの「凍工遮水壁」の効果は専門家の間で疑問視されており、費用は原賠機構に対する貸し出しなのか政府の直接出資か明確にされてはいない。いずれにしろ再び約四〇〇億円の税金が投入される。漁民たちが待ちわびる漁は遠のき、収束・除染労働者はさらに多くの被曝を余儀なくされる。事故は未だ進行中であり、ますます反原発の闘いは重要になっている。(武)
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