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    かけはし2013.年8月12日号

社会保障制度を破壊するのか!


「社会保障制度改革国民会議」最終報告書原案批判

公的年金年金・医療・介護の解体

改憲とセット=基本的人権否定

秋の国会に
法案提出も


 安倍政権の「社会保障制度改革国民会議」は、七月二九日、年金、介護、医療など社会保障分野の負担増と給付減、不充分な少子化対策を盛り込んだ最終報告書原案を明らかにした。
 政府は、国民会議の原案をバネにして来年度予算編成において社会保障支出抑制政策を貫徹しようとしている。さっそく予算の概算要求基準(シーリング)で財界が要求していた成長戦略に関する特別予算枠を設けることを決め、同時に社会保障費に対して聖域を設けずに見直すことを宣言した(七月三一日)。秋の臨時国会に向けて報告書を土台にしたプログラム法案を提出する予定だ。これは新自由主義的構造改革の加速化であり、消費税増税の強行など剥き出しの生存権破壊攻撃だ。安倍政権による社会保障改悪を許してはならない。

ただただ企業
の言うがまま


 社会保障制度改革国民会議は、二〇一二年八月、民自公によって消費税増税法と一体で成立させた「社会保障制度改革推進法」に基づいて設置された。「自己責任」、「家族の支えあい」、「国民同士の助け合い」を基本理念として掲げ、本音は国の責任を放棄しながら国・地方の社会保障費を恒久的に削減していくこと、つまり年金・医療・介護などの公的制度の解体にある。
 この社会保障改悪を先導しているのが日本経済団体連合会だ。国民会議の設置にあたって「社会保障制度改革のあり方に関する提言」(二〇一二年一一月)を発表している。提言は、企業の負担軽減・防衛、労働者犠牲強要の観点から医療、介護、年金、子育てについて「給付の効率化・重点化」、「自助を基本とした役割分担の明確化」などと位置づけて「七〇〜七四歳患者負担の二割への引き上げ」「高齢者医療への支援金の保険者負担全面総報酬割に反対」「介護給付における軽度者への生活援助除外」などの施策を打ち出していた。
 以下のように国民会議の報告書原案は、経団連の社会保障改悪提言を下敷きにしてでっち上げたのである。

マイナンバー制度を利用し


 国民会議の報告書の「総論」は、「受益と負担が見合わない社会保障はいずれ機能しなくなり、その結果、社会の活力を失わせてしまうこととなる。このように社会保障制度改革と財政健全化は、同時達成が必須となっている。受給と負担が見合わない社会保障はいずれ機能しなくなる」と述べ、無駄な財政支出と借金を蓄積してきた結果として財政破綻をつくり出してきたこれまでの政権の責任を棚上げにし、その総括を一切せずにダイレクトに「少子高齢化の進行と現役世代の雇用環境が悪化する中で、これまでの我が国の社会保障の特徴であった『給付は高齢世代中心、負担は現役世代中心』という構造を見直して、給付・負担の両面で世代間・世代内の公平が確保された制度とすることが求められる」と決め付けるのだ。
 さらに社会保障費が毎年一兆円ずつ増加していることに加え、人口減少と少子高齢化により担い手が不足するなど、現行制度が危機的な状況にあると宣伝し、「高齢世代」と「現役世代」の対立を煽り、「世代間の不公平」論を動員して社会保障改悪強行を正当化しようとするのだ。
 そのうえで「二一世紀型(二〇二五 年)日本モデル」と称して「持続可能な社会保障を構築」するために「税と保険料の負担増は避けられない」とし、「給付の重点化・効率化が求められる」から負担の在り方を「年齢別」から「能力別」に切り替え、高齢者にも応分の負担を求める「全世代型の社会保障」を押し進めていくと強調する。
 つまり、「社会保障制度改革と財政健全化」は、消費税増税を前提とし、「公的制度への依存を減らす」ための「自助努力」の一環として「高齢世代」もターゲットにし、「現役世代」からもむしり取るということなのだ。そのために個人所得や社会保障の受給状況を一元的に管理するマイナンバーの活用を積極的に位置づけた。

医療・年金・
介護どうなる


 各論骨子は、安倍政権の自民・公明の議会内多数派を背景にして、これでまの政権と関係省庁官僚がストレートに押し出すことができなかった社会保障改悪攻撃を真正面に掲げた。
 医療分野は、七〇〜七四歳の医療費窓口負担の二割引き上げを明記した。高齢者の反発を回避するために先送りにしてきた高齢者医療負担増に踏み込んだ。同時に国民健康保険の運営主体を市町村から都道府県に移すことによって公的負担軽減に向けて舵を切った。要するに重複・頻回受診の是正と医療費適正化を名目にした医療サービス低下を促進し、公的医療のさらなる縮小のために病院機能の再編・統廃合を進めていくということだ。
 生存権破壊の極め付けが、「紹介状なく大病院を受診する際の定額負担金の導入」だ。要するに「カネがなければ病院に来るな」と言っているに等しい。こんな基本的人権否定の暴論を絶対に許してはならない。
 年金分野では、現在の年金の受給開始年齢を六五歳からさらに引き上げを準備し、生活困窮化に拍車をかけようとしている。すでに国民年金保険料の未納率が四割に達しており、支払困難な経済状況とともに将来の年金支給への不信によって未納傾向が拡大している。低賃金、雇用不安をつくり出している資本に対する規制強化が必要にもかかわらず、民衆に対する「血税」の「強制徴収」だけが一人歩きしているのが実態だ。むき出しの取立ては、所得税・住民税などに含まれる非課税措置の縮小に広げろと言いたい放題だ。
 介護分野では、現行一割の介護保険の自己負担額を二割増にすると言っている。しかも軽度の「要支援」向けサービスを段階的になくし市町村の独自事業に移すとした。こんなことをしたら自治体の財政規模によってサービス格差が発生することは必至だ。介護サービスの充実化は、介護労働者の雇用の拡大、賃金保障、労働条件の向上が求められているにもかかわらず、具体的に触れようともしない。
 報告書は、「妊娠・出産・子育てへの連続的支援」などと少子化対策を打ち出しているが、その実態は貧弱な予算配分を前提にしたものでしかなく、保育への公的責任の軽減を基本としている。保育所の待機児ゼロに対する対策の具体性もない。財界の要求に忠実に応えて「保育新制度の導入」と言っているが、つまり保育制度の規制緩和と民営化推進でしかない。公的保育サービスを削減し、金儲け市場として開拓していくことを追認しているにすぎない。報告書のインチキ性は明白だ。少子化対策などと言うならば、優先的に雇用流動化という雇用不安を蔓延化させた日経連の「新時代の『日本的経営』」路線や改悪労働法制をやめさせ、子育てを保障する制度の充実化が必要だ。給与保障がある育児休業、均等待遇と正規雇用の促進、充実した財政支援の構築などに触れることができない「貧弱」な「社会保障」ビジョンでしかないことを自ら証明してしまっているのである。

破綻のツケを
民衆に回すな


 そもそも国家財政破綻は民衆に一切責任はない。歴代の政権が貯めてきた国債や借入金などを合計した「国の借金」は、九九九兆六〇一一億円に膨れ上がっている。安倍政権は、消費税増税と社会福祉削減によって体制延命していこうとする魂胆だ。国民会議路線は、小泉政権時(二〇〇二年度以降)の社会保障費自然増を毎年度二二〇〇億円削減した政策に戻すということだ。このように民衆の生存権破壊をさらに押し進め、「格差社会」の拡大を目的意識的につくり出していこうというのが国民会議の役割なのである。
 「社会保障制度改革と財政健全化」を「本気」でやろうとするならば、原発の再稼働と推進のための予算凍結、資本・富裕層に対する優遇税制をやめ法人税と累進課税の強化をすればいいのだ。戦争のための軍事費と米軍支援費の大幅な削減、資本・ゼネコンに奉仕し環境破壊を拡大させる公共事業を中止すれば十分支えきることができる。
 二〇一三年度予算を見よ!原子力関連予算が一五六三億円、軍事費が補正予算とあわせれば四兆九六六二〇億円、公共事業費が五兆二八五三億円だ。いずれも巨額な予算をつけた厚遇配分をしている。しかも自民・公明は、ゼネコン・土木建設関連が参院選で集票マシーンとしてフル回転させた「ご褒美」として国土強靭化を名目に一〇年間で二〇〇兆円も予算配分していくことを掲げ、次期国会で「国土強靱化基本法案」を成立させようとしている。これら資本のための予算配分を民衆のために配分すればいいのだ。「持続可能な社会保障の構築」とは、このような設計図の前提がなければ建設することはできないのだ。
       (遠山裕樹)
 

7.31 新大久保駅前弾圧救援会

不当逮捕と差別排外主義糾弾

取調べ拒否を貫く意義



 6・16新大久保駅前弾圧救援会は、七月三一日、「不当逮捕と差別排外主義を許さない!弾圧報告と今後を考える集会」を渋谷勤労福祉会館で行い、七〇人が参加した。
 Aさんは、六月一六日、レイシスト・差別主義者の在日特権を許さない市民の会による新大久保周辺でのデモに抗議する過程で警察権力に不当逮捕された。当日のカウンター行動で別の三人も不当逮捕されている(在特会が四人逮捕)。Aさんは、弾圧初日から一切黙秘し、取り調べるに出ることも拒否し闘いぬいた。権力は報復弾圧として長期勾留を続けたが、獄外の弁護団と救援会による救援運動によって七月五日、奪還を勝ち取った。救援会は、Aさんと獄外の闘いの勝利の地平を確認し、今後の差別・排外主義に対する闘いと反弾圧陣形を強化していくために集会を行った。

「証拠隠滅」
ありえない
 主催者から経過報告が行われ、@Aさんの勾留理由がないにもかかわらず、二〇日間も勾留したのは狙い撃ちにされた嫌がらせであるAAさんの取調べ拒否の闘いは、取調べを強要する代用監獄の不当性を明らかにしたB裁判所・公安検察・新宿署・原宿署が一体となった弾圧に抗して勝利したことなどを明らかにし、「黙秘権、取調べ拒否は私たちの権利だ。しかし、検察、裁判所は、黙秘を長期勾留の理由にすることが増えている。このような弾圧強化を跳ね返していこう」と呼びかけた。
 Aさんは、差別・排外主義が強まるなか在特会に対する抗議行動の取り組みの重要性を強調し、6・16弾圧性格について「差別に抗する社会運動は、常に国家権力から弾圧されてきた。差別によって人々を分断させて支配を続けようとする権力は、差別する側ではなく反差別を訴える側を常に弾圧してきた」ことを明らかにした。
 さらに獄中で前田朗さんの『取調拒否権の思想』と出会い、すでに取り調べ拒否の闘いを展開している実践を学び、継承していくことの重要性を認識し、取調べ拒否を貫徹したことを報告した。また、「裁判官は、私が住所不定であることで罪証を隠滅、逃亡することを疑うに足りる相当な理由があるとでっち上げた。しかし、六月一九日には、家宅捜査を強行している。現行犯逮捕なのに何をどうやって証拠隠滅するのか」と糾弾した。
 Aさん救援のために接見など果敢に闘った弁護団から弁護活動の報告が行われ、Aさんの取調べ拒否の闘いが、権力が黙秘権そのものに対する権利否定に踏み込もうとしているなかで実践的に共有化していくべきだと強調した。

警察の本性は
レイシストだ
 鵜飼哲さん(一橋大学)は、「反レイシズムと弾圧」をテーマに問題提起し、「すべての(旧)植民地宗主国で『警察はレイシスト』であることが圧倒的な歴史的、日常的現実であり基本的認識だ。反レイシズム運動の課題として、警察をけん制するため、多少とも改善するため、何をなすべきか。それは『レイシストに甘い警察はレイシスト』『反レイシズム運動を弾圧する警察はレイシスト』という認識を流布させること、警察に意識させることが第一歩である」と述べた。
 前田朗さん(東京造形大学)は、Aさんが実践した「黙秘と取り調べ拒否の権利」について、「黙秘権を実践するためには取調拒否権が不可欠である。取調拒否権を実践するためには出房拒否が効果的である。これまで留置場収容された被疑者が取調室に行って取調べを受けることを疑わずにきた。なぜなのか。被疑者の法主体性を積極的に認めてこなかったのではないだろうか。弁護人は、被疑者が黙秘権行使を選択した場合には、取調拒否権と出房拒否権を説明するべきである。被疑者には取調受忍義務はなく、留置場に滞留するようにと、助言するべきである。捜査官の違法な取り調べを避けるための一番の方法は取調室に行かないことであり、出房拒否である。これが被疑者の防御権の核心である」と結論づけた。
 各反弾圧団体、救援会、国賠団体などから連帯アピールが行われ、警察・検察・裁判所の攻撃に抗してスクラムを打ち固めていくことを参加者全体で誓い合った。  (Y)

 


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