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    かけはし2013.年8月5日号

TPP交渉への公式参加抗議


グローバル資本の搾取・収奪にNO

民衆の権利を守る国際的闘いだ

貧困・格差に抗し、平和で公正な社会を

強まる反対・懸念の声


 七月二五日、マレーシアのリゾート地、コタキナバルで開催されていた環太平洋経済連携協定の一八回目の会合が終了した。日本政府は一〇〇人に上る交渉団を率いて二三日午後から正式に交渉に参加した。
 日本では農産品や工業製品の関税の撤廃や引き下げ(市場アクセス)交渉が注目されている。日本ではこれまで全貿易品目の九〇一八品目のうち、コメ、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物の五分野、五八六品目について関税を撤廃してこなかったことから、一〇年以内に関税を撤廃する品目数の割合である「自由化率」の原則一〇〇%を謳うTPPへの参加は、これらの五分野五八六品目に大きな影響を及ぼすことになる。
 これら五分野については衆参の農林水産委員会において関税撤廃に応じないよう求める決議があげられており、政府・自民党はこれを事実上の「国益」「聖域」としているのである。だがTPPは関税に関する交渉(市場アクセス)だけでなく、知的財産、サービス貿易、金融サービス、電気通信、投資、環境、労働、政府調達など、生活や経済活動に影響する二一分野を、自由貿易の原則にのっとって規制を撤廃する協定であることから、農家や酪農家はもとより保険業界や医療業界、消費者団体などからも反対や懸念がだされている。

資本家の語る「国益」とは


 政府・与党は「しっかり日本の国益を守っていかなければならない」(安倍晋三首相)、「国益にかなう最善の結果を追求していく」(菅義偉官房長官)、「攻めるものは攻める、守るものは守る」(甘利明経済財政相)と述べる。
 だが全ブルジョア階級の共同事務を処理する委員会にすぎない国家権力にとって、これら五分野の「国益」「聖域」は、単なる交渉のコマに過ぎない。ブルジョア国家の「国益」とはつまるところブルジョアの利益にすぎない。そして「ブルジョアジーは、生産用具を、したがって生産関係を、したがって全社会関係を、たえず変革しないでは生きてゆくことができない」「自己の生産物にたいしてたえず販路をひろげなければならない必要は、ブルジョアジーを駆って全地球をかけまわらせる。かれらは、いたるところに巣をつくり、いたるところに住みつき、いたるところに取引先をつくらなければならない」(『共産党宣言』)。

 日本ブルジョアジーの機関紙である「日本経済新聞」はTPP交渉が終了した翌日の社説で「TPP交渉で目指す国益とは何か」と題して次のように述べている。
 「交渉を通じて目指すべきは、関税をめぐる攻防だけでなく、日本経済を全体として最適な構造に変え、成長の底力を高めることである」「マレーシア会合では、日本政府の交渉団が『コメや麦など農産品五品目の関税を維持したい』と安倍政権の方針を各国に説明したという。『守る』を前面に出した初舞台とは情けない。ここは自由貿易の原点に返って考えるべきではないか。市場開放によって、長期的に競争力がある分野にヒト、モノ、カネなどの生産要素が移るからこそ、国の成長力が高まるはずだ。国内の構造改革を伴って、初めて通商政策は力強い成長戦略として役立つ」「新しいルールを築く作業こそ安倍政権がまず追求すべき『国益』に他ならない」(日経二〇一三年七月二六日朝刊)。

 日経新聞の社説は、先にあげた『共産党宣言』の文言を、ブルジョアジーの言葉で語ったものに他ならない。
 TPP交渉は二〇一〇年から始まり今回で一八回目となる。昨年遅れて交渉に参加したメキシコ、カナダは交渉参加にあたって合意事項については再議論しないこと等を約束して交渉に参加したことから、日本の交渉参加も同じような条件が課せられたと考えられる。今回の正式参加によって日本政府が受け取った各国の主張が詳細に併記されている交渉中の条文案は数千ページにわたり、次回八月二二日のブルネイでの会合までに分析し、戦略を立てることが必要とされている。日本政府は、米政府が自国経済界と結んだ守秘義務を伴う情報提供の仕組みを模倣して、「守るべき」五分野だけではない、「攻めるべき」その他の主要産業分野における交渉状況の情報提供の仕組みを作るかもしれない。

民衆の声の共有化が必要


 TPP交渉参加国のなかで最大の経済規模をもつ日米両国はすでに四月一二日に事前交渉を終えている。自動車関税、かんぽ生命、食品安全基準、知的財産などの分野である。それは日本の交渉参加によって影響が懸念される米国産業界の意向を重視したものになっている。たとえば日本車の対米輸出において現在、乗用車には二・五%、トラックには二五%の関税が課せられており日本の自動車業界は関税ゼロを求めたが、事前協議の結果、将来的に関税を撤廃するという合意に落ち着いた。撤廃期限については今後の二国間交渉にゆだねられているが、最短でも一〇年以上の期限になるとの見方もある。
 かんぽ生命については、政府関与が残る間は事業拡大は認められないとする米保険業界の圧力があり、日本郵政は学資保険やがん保険の開発販売を延期してきた。しかしTPP交渉への正式参加を受けて、提携を予定していた日本生命との商品開発を撤回し、日本のがん保険契約件数で七四%を占める独占大手のアフリカンファミリー生命保険(アフラック)と提携し全国二万カ所の郵便局で共同開発商品を販売することになった。「政府関与」を早期に解消するため、政府関与で社長に就任した元東芝会長の西室泰三日本郵政社長は、日本郵政グループの株式上場計画を半年前倒しして二〇一五年春に実施する方針を明らかにした。
 共同通信のアンケートによると参院選後に非改選を合わせて議席が確定した二四二人の議員のうち一九六人が回答し、TPPへの参加に「賛成」「どちらかといえば賛成」の推進派は合わせて四七・七%。「反対」と「どちらかといえば反対」の反対派は合わせて三〇・一%。自民に限って言えば推進派は三七・九%、反対派は二三・二%、に達する。
 自民党は重要五品目の「聖域」を確保できない場合はTPP交渉からの脱退も辞さないと意気軒昂であり、コタキナバルの会合現地に赴いた自民党の西川公也TPP対策委員長は「日本の農産品の関税は守る」と米商工会議所の職員との意見交換の場で主張。組織内候補を自民の比例第二位で当選させたJAグループも幹部を現地に派遣し、政府交渉を「監視」させた。またTPP交渉参加反対の運動の側も「公約を守れ」と主張する。自民党はさきの参院選ではTPPについて「国益にかなう最善の道を追求する」と主張しており、反対運動の「公約を守れ」は突き詰めれば「国益を守れ」という主張になる。
 しかし前述の通り、ブルジョア国家の「国益」とはブルジョアの利益が最優先されるのであり、「公約を守れ」という主張は間違いである。同じように、TPP参加やそれに象徴される新自由主義的政策が、アメリカによる押しつけあるいは対米従属がもたらしたものであると訴え、新自由主義や金融資本主義、あるいはグローバル資本主義ではなく「人間の顔をした資本主義」「地域循環型資本主義」を主張することも間違いである。
 TPP交渉など貿易交渉における労働者民衆の主要な敵は、国内のブルジョアジーおよびその利益を代表する政府である。
 その際に、大国と小国という関係において抑圧される側の声に耳を傾けると同時に、大国内においてもブルジョア国家の「国益」の生贄として交渉のコマに差し出される産業に従事する生産者の利益、多国籍企業の利益のために知る権利・選択する権利を奪われる消費者の権利、そして闘争によってかちとられてきた労働者の権利、資本の利潤実現のフロンティアのひとつとして食い荒らされている公共サービスの防衛など、富める国における貧富の格差、家父長制への抵抗など、およそ国内的な課題を国際的に広げて連帯する取り組みは、資本のグローバル化に対抗するために決定的に重要である。
 日本では意識的な農業団体、労働団体、消費者団体などが緩やかなネットワークのなかで連携を続けており、国際的なネットワークにも注目が集まっている。
 TPP会合二日目の七月一六日、首都クアラルンプールの国会前では、マレーシア社会主義党(PSM)はじめ四六の運動団体がマレーシアのTPP交渉参加の凍結を求める請願行動を行った。請願は多国籍企業の利益のためのTPPに反対し、マレーシアの医療サービスや労働者の権利を守るよう訴えている。
 請願では次の点に注意を促している。マレーシアでは八四%の処方箋でジェネリック薬が使われているがTPPによってジェネリック薬の輸入や製造に制限が課せられる可能性がある。貿易立国であるマレーシアでは関税の役割は依然として高く、それが撤廃されると多数の中小企業と労働者への影響は必至である。マレーシアに投資する外資に対して労働者保護や技術育成のための費用を課すことが困難になる。マレーシアから輸出される木材への輸出関税の撤廃はいっそうの森林破壊をもたらす。公共の利益のために制定された法律に対して投資企業の利益が損なわれたとして多国籍企業がマレーシア政府を訴えるISDS条項の危険性などである。
 このような各国の民衆の声をTPP反対運動の中で共有化していかなければならない。

どのように闘うべきか?


 戦後資本主義システムは、ケインズ主義の終焉ののちに新自由主義によって生き延びてきた。
 「新自由主義は、世界を、その中で商品と資本が制限なく運動することのできる一個の大市場と考えているのである。WTOと各国および経済地域間のさまざまな協定(TPP!:引用者)は、この理念を実現することへと向けられた。・・・国内市場を保護する障壁がなくなったため、競争がシステムの最高規制者となり、そして競争力を改善し資本の収益性にとってのよりよい条件を確保するために普遍的な闘争が解き放たれた。これは各国の諸条件に関して政府が操作する余地を著しく狭め、労働者の生活水準の引き下げにもとづいた経済政策を採用することを余儀なくされた。このことは需要を低迷させる傾向をもった。新自由主義にとって、有効需要の成長を推進するべき基本的動力は輸出でなければならない。…しかし問題は、各国政府の国際化にともなって輸入もまた急増したことであり、相手の市場を侵食することの犠牲のもとに自国の危機を解決しようとする各国の試みが、およそ矛盾したものであることを明らかにしたことである。新自由主義の成長モデルは失敗した」(「後期資本主義――マンデルの現代資本主義論」、『トロツキー研究』25・26合併号)。
 そしてこのような新自由主義=自由貿易体制の失敗への批判が、どうであってはならないか、どうでなければならないかについて、われわれは基本に立ち戻るべきである。
「諸君、われわれが通商の自由を批判するのは保護貿易制度を擁護するつもりなのだ、などと考えてはならない。…保護貿易制度は、一国内に大産業を樹立する、いいかえればその国民を全世界の市場に依存させる一手段にすぎない。そして全世界の市場に依存するようになるやいなや、すでに多かれ少なかれ自由貿易に依存するものである。それだけでなく、保護貿易制度は一国内部の自由競争の発達に寄与する。…一般的には、今日では保護貿易制度は保守的である。これにたいして自由貿易制度は破壊的である。それは古い民族性を解消し、ブルジョアジーとプロレタリアートのあいだの敵対関係を極端にまでおしすすめる。一言でいえば、通商自由の制度は社会革命を促進する。この革命的意義においてのみ〔「のみ」だ!:引用者〕、諸君、私は自由貿易に賛成するのである」(マルクス、一八四八年)。
 そしてこの社会革命の鬨の声はこうである。「万国の労働者、団結せよ!」
 この鬨の声の内容を、TPP反対闘争の新たなステージという現実の闘争の中で具体化しなければならない。

二〇一三年七月二九日 (早野一)

 

「原発反対全インド民衆大会」
への日本からの連帯アピール

二〇一三年七月二五日

 ここに掲載する声明は、インドで開催される原発反対全インド民衆大会に向けて、ノー・ニュークス・アジア・フォーラム日本が呼びかけ、日本の三一一団体が賛同した連帯アピール。日印原子力協定によるインドへの原発輸出の動きをやめさせ、核兵器・原発のないアジアを共に作り出そう(編集部)。

 「原発反対 全インド民衆大会」に、日本から連帯し、「憲章」に賛同するアピールを送ります。

 日本メディアも、クダンクラム原発の「臨界」を報じました。私たちは、インド政府が、クダンクラム周辺住民たちの強い反対運動、そして多くのインドの人びとによる原発の危険性への告発を無視したことに抗議します。
 クダンクラムのみなさんが七〇〇日に及ぶ長く激烈な闘いを続けてこられたことに、心から敬意を表します。みなさんの勇気ある行動が、福島原発事故後に日本で原発に反対する人々にどれだけ力を与えてくれたことでしょう。クダンクラム原発反対運動は、核のない世界に向けた歴史の中で、非暴力での粘り強い戦いとして、重要な位置を占めています。たとえ稼働が開始されたとしても、クダンクラムの皆さんに対する私たちの連帯の思いは変わりません。あの反人道的で危険な怪物を止める日は、きっと来ると信じます。その日まで、私たちもあなたがたに恥じることがないよう、核のない世界をめざして日本で全力を尽くします。
 二〇一一年三月一一日のフクシマ原発事故では、約15万人の人びとが避難を強いられ続け、廃炉への計画もできていません。しかし、日本政府は停止中の原発の再稼働をめざし、さらに、原発の輸出を推進しています。輸出対象国の一つがインドであり、「原発反対 全インド民衆大会」の開催地グジャラート州のミティビルディが候補地です。
 私たちは、ヒロシマ・ナガサキにおける戦争被爆国として、フクシマ事故を発生させた国として、原発と核兵器に強く反対します。そして、日本の海外への原発輸出、インドにおける原発推進にも強い反対を表明します。
 インドは、3・11以降も原発推進の政策を固持し、クダンクラム原発の稼働により、フクシマ事故後に初めて原発を新設させました。原発は「絶対的に安全」とする「ニセ安全神話」は、チェルノブイリ事故やフクシマ事故だけでなく世界各地の原発事故で、すでに崩
壊しています。
 こうしたなか、広大なインドから原発に反対する多くの人が集う、「原発反対 全インド民衆大会」の開催は、まさにインド民衆の反原発運動を飛躍的に発展させるでしょう。
 私たちはインド政府に対して、民衆の声を聞いて原発推進政策を放棄することを求めます。クダンクラム原発の稼働中止とすべての原発新設計画の断念を求めます。核のない世界を作るためにインドが先頭に立つよう求めます。
 私たちは今後、日本からインドへの原発輸出を止めるため努めます。
 みなさんの大会が成功されるよう祈念します。そして、みなさんが生活の場に戻られ、活力と工夫ある反原発運動を展開され、インドが原発ゼロとなりますよう!
 みなさんが「脱原発」の新しいインドを実現できるよう、日本の私たちも共に闘います。
 クダンクラム原発反対!
 インド政府は、原発推進政策を放棄しろ!
二〇一三年七月二五日
以下、賛同団体名

 


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