経営効率の名の下に振り回される郵政事業の現場
DOSSシステムとは何か? |
「業務効率化」と
労働者の機械化
デリバリー・オペレーション・サポート・システム=DOSS、ディーオスと呼ぶらしい。正式名称は「集配業務支援システム」。六月一日、全国の郵便局の集配部門に一斉に導入された。すでに一年前から全国一四局で試行されていたものだが、その試行局の現場でさえ、それが将来現場にどのような影響を及ぼすのかの認識は誰も持っていなかったろう。
実はこのシステムは来年春から導入予定の「新人事給与制度」とリンクしている。この間のJP労組の交渉情報に逐一目を通していればその資料の片隅にこのDOSSの文字を認めることができるのだが、一般組合員はおろか現場の組合役員もそのことを知るものは少ない。JP労組本部から降りてくる資料は膨大な量で、中央委員会付属資料として配布されたそれは三五〇ページにも及ぶ大冊。ある支部では組合員に配布される前に段ボールごと処分されるという事件も発覚している。(「伝送便」二〇一二年一二月号より)
会社の説明も、「配達担当者が携帯端末機により区分機データ等から当日の配達物数を自動取得するとともに、作業項目別の実働時間等を携帯端末機に記録し、区別・個人別に日々の作業量等を蓄積することにより、集配業務におけるムリ・ムダ・ムラの削減を目的としています」と、これが「新人事給与制度」にリンクしているという説明は一切なされていない。しかし、それも一理ある。五月一〇日、JP労組本部はこの「新人事給与システム」に関わるすべての交渉について大綱妥結したが、八月二〇日から開催される全国大会で承認されるまではこの「新人事給与制度」の導入は正式決定事項ではない、はずだから。
六月一四日、共同通信社発として各新聞には以下のような報道がなされた。
「日本郵政グループが、勤務地を限定する代わりに賃金を抑える、限定正社員の制度を二〇一四年四月に導入する方針を固めたことが一三日、分かった」。
実は、伝送便の事務所にはすでにJP労組が交渉を大綱妥結するかなり以前からいくつかのマスコミから取材依頼が入っていた。「来年春から導入される新人事システムについて……」と。
いつもの出来レースである。会社は二月に開催されたJP労組第一一回中央委員会での議論を見た上で、すでに一部のマスコミにリークし始めたものと思われる。この中央委員会ではほぼこの間の本部の交渉経過を評価する意見で占められ、一部にさらなる補強意見が出た程度だった。次期大会承認を危惧する意見はわずかに二つの地本のみ。
大会承認を待たずマスコミにリークし始めた会社だが、「限定正社員制度の導入」という共同通信報道には少なからず驚いた。会社はこれまでそのような言葉は一つも使ってはいない。周知のように「限定正社員」という言葉は安倍政権成立後の「産業競争力会議」の中で始めて出てきた言葉だ。これまでのJP労組交渉の中では会社はそれを「新一般職」という名称で提案している。ただし、その中身はなるほどこの「限定正社員」という制度とうり二つである。詳細はまた後に述べるが、この「新一般職」という職階の内容を聞いた記者がそれを流行の「限定正社員」に結びつけて勝手に報道したのか、それとも会社の口から直接その言葉が言及されたのかは、今はまだ明らかではない。
一挙手一投足
をデータ蓄積
「新人事給与制度」について詳細を検討する前に、まずは今全国の郵便屋さんを悩ましているこのDOSSシステムについて少し報告したい。
簡単にいうとこれは、仕事の始まりから終わりまで、職員の一挙手一投足をデータ収集しようとするものである。職員には各自携帯端末が配備されているが、それに始業時間から始まって、勤務体系、作業種別、担当区名をまず登録、その後「体操・ミーティング」の時間からその日配達する郵便物の抜き出し時間、配達区分から各区分口のバーコードを入力した上での個別組み立て時間等々。それに終わらず出発登録、配達(営業時間も入力)、帰局登録、休憩・休息登録と、これが午前中の手順。午後はそれに加えて資料整備の時間などが加わる。
会社の説明にあった「集配業務におけるムリ・ムダ・ムラの削減を目的」という説明にみな苦笑している。これは一過性のデータ収集ではない。これから毎日延々と続くのである。
すでに集配現場に限らず郵政の現場ではここ一〇年ほどでこれまでになかったこまごまとした様々な事務手続きや段取り、手順が膨大に増えてきている。日常の携帯端末への入力回数も増える一方で、その煩雑さに辟易しているところに、些細な入力ミスであっても始末書を求められる。ゆとりのない過密業務のなかうっかり交通事故などを起こした日には「事故事例研究会」という名のつるし上げ糾弾会までもが待ち受けている。営業ノルマも年間を通じて尻を叩かれ、年間数十万円も「自爆」しているという例は今や珍しくもない。仕事のゆとりが全くない。昼休み、みんなと談笑しながら食事をするなどという風景は今や懐古話し。休憩時間になっても職場に職員の姿はない。サービス残業は当たり前で、三六協定違反の事例は、ユニオンなどがきちんとチェックしているところは表沙汰になるが、それも氷山の一角でしかない。たまらず個人で密かに労基署に通告する職員や有期雇用社員が後を絶たないのだろう。全国で毎日のようにどこかの局所に労基署の指導が入っているという状況だ。
それに加えてさらにこのDOSSシステムの導入である。導入後一月も経たずにすでに三六協定を越える残業があちこちで発覚し始めている。
このDOSSシステム、入力されたデータは翌日その詳細が各個人ごとにグラフ化された資料がプリントアウトされることになっているのだが、上局より厳しく残業規制を指導されている現場管理者にとってはこれは悩ましい選択になる。まともにこのシステムを消化していたのではとても残業を減らすことなどできはしない。DOSSシステム手順のどこかで手を抜くか、ということになる。局所によってはこの毎日のデータのプリントアウトをサボっているところも少なくない。ところが、このデータが、ゆくゆくは「新人事給与制度」の業績評価に響いてくることになるのだが。 IT関連企業
は濡れ手に粟
六月二〇日、日本郵政の株主総会が開催され、現社長の坂篤郎(さか・あつお―元大蔵官僚)はわずか半年という短い任期を終える。次期社長は現東芝相談役(元社長・会長)の西室泰三。氏は郵政民営化委員会委員長でもある。さらに社外取締役には、キャノンの御手洗不二夫、三菱地所会長の木村恵司、JXホールディングス(新日本石油と新日鉱ホールディングスとの統合会社)の渡文明、新日鉄住金の三村明夫といった名前が並ぶ。
さらに今回の人事では社外を含む取締役総数一八人の内一七人が退陣。取締役総数そのものも一三人に減らすとする。退陣した取締役の中にはトヨタの奥田碩という名前もある。トヨタシステムによる労務管理施策はすでに公社時代に完全に破綻し、これまでその名称をJPSとして細々とその対策室が一部に残っていたが、それも今人知れずその看板ははずされようとしている。
二〇〇七年に郵政事業が民営化されて以降、この五年間に四人も社長が交代したことになり、政権交代の度に経営陣の陣容が様変わりするという異常な「民営会社」である。
そして新経営陣の顔ぶれからはそれが郵政の利権に絡む業界がずらっと並んでいることにあきれ果てる。
IT産業にかかわらず、三菱地所は先の東京駅前に建った超高層ビル「JPタワー」の施工主である。そこには「KITTE(キッテ)」と呼ばれる商業施設が併設された。
東芝の元社長がトップに就いたというのも現場の誰もが苦笑せざるをえない。
去年、一部の局に試行的にタブレット端末が配備された。道順組み立て用の資料として「紙やフォルダーが不要になって経費削減と環境保護になる」との触れ込みだったが、一月も経たずこれはたなざらしになってしまった。ソフトウェアの不具合とかで使いものにならなかったという。これが東芝製。このタブレット、この七月からはさらに一〇局ほどに拡大配備されるというが、先行配備された局では未だにほこりを被ったままなのだが。これにかかわらず現場のPC端末は東芝製が多くを占める。
現場の転居情報データなどを入力するPC端末などはOSとしてLinuxを採用しているが、経理や総務などの端末はまだまだWindowsが大半。このOSのヴァージョンがWindowsXP。Microsoftは先日このXPのサポートを来年四月九日付で打ち切ると表明。XPを使用していた端末はそれで一斉にWindows7へと更改中である。会社の落札情報によればこの更改に絡むソフトウェアライセンス費用として毎月のように一〇〇〇万円ほどを計上している。
因みにDOSSもそのシステムソフトウェアはWindows上でプログラムされているという。
現在進行中のIT関連投資はこのDOSSだけに止まらない。この四月からは「次世代郵便情報システム」なるものも先行して稼働してるのだが、実はこれ、初日からプログラムバグによる不具合が生じており、現在に至るまで未だ完全復旧の目途が立っていない。これも本来はDOSSシステムと連動するものだったのだが。これだけで一〇〇〇億ほどの費用がかかっていると言われている。このシステムを請け負ったのは日立。
IT関連投資は莫大である。例えばこの六月一一日付け落札情報には「次世代PC基盤システムのサーバ等構築作業等の委託一式」として野村総合研究所がそれを一一七億四七四〇万円という額で落札している。野村総研はその他にも「郵政総合情報通信ネットワークの移行管理・調整業務の委託一式」を一七億一〇〇万円で落札。毎月の落札情報には東芝や日立にかかわらずNTTデータから伊藤忠テクノソリューションズ、日本ユニシスなどといったありとあらゆるIT関連企業の名前がその事業契約書の中に並ぶ。丸紅などという名前も。
郵政事業は今やIT産業の利権の刈り取り場である。これまでのIT関連の設備投資は金融二社のそれを併せると、年間三〇〇〇億円以上という市場をこのIT産業に提供しているのだ。(丸池忠努)
6.5生活保護法改悪を許さないぞ
衆院通過に抗議し国会
省庁に請願行動とデモ
生活保護費の切り下げに続き、六月四日、生活保護法の改悪案が、ほとんどまともな審議もないままに衆議院本会議を通過した。
保護申請の手続きに際し、今まで口頭でも受け付けていたものを、書面での申請を義務づける、親族による扶養を事実上義務化する、またジェネリック医薬品の使用を義務づけるなど、これまでも申請者に対して行われてきた「水際作戦」を合法化し、保護を必要とする人々を切り捨てようとするものである。保護を申請された実施機関は、扶養義務者(親族)の「銀行……雇い主その他の関係人に報告を求めることが出来る」などと書かれているというのだ。
申請の書面での手続きの義務化については、自民、民主、公明、維新、みんな、の五党の合意で口頭でも可能なように修正されたが、それ以外はそのままで、社民党、共産党の二党のみが反対する中、衆議院を通過した。
翌五日には生活保護法改悪に反対する様々な取り組みが行われた。STOP生活保護引き下げアクション呼びかけの緊急行動は厚生労働省への個人請願行動と国会請願デモ。
午後一時半から行われた厚生労働省への個人請願行動では集まった人々がそれぞれの思いを請願用紙に書いて提出。役人に手渡す際にはマイクで一言ずつアピール。
二時一〇分より、約二〇〇人の参加者は国会に向けたデモに出発。衆議院の議員面会所では共産党の笠井議員、参議院では社民党の山内徳信さんと共産党の二議員が出迎え、デモ隊とエール交換、これから始まる参議院での審議に向けて最後まであきらめずに闘い抜くことを確認した。
夕方、六時からは、毎月一回水曜日の夕方官邸前でのスタンディングアクションを続けている、このまま進むと困っちゃう人々の会主催の官邸前での抗議行動。
山谷争議団の中村さんや、首都圏青年ユニオンの河添さん、など参加者の発言の他に、もやいの稲葉さんのラップや、ジョニーさんの歌など盛りだくさんの内容で、八時までの約二時間、元気に、にぎやかに抗議行動を行った。次回は七月三日に行われる予定。
(板)
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