パク大統領が米国を訪問
成果を性的スキャンダルが横取り |
ユン・チャンジュン前・青瓦台(大統領府)代弁人がパク・クネ大統領の訪米日程に最後まで随行できないまま5月9日、よるべなく単身帰国した。翌日、彼の性的スキャンダル疑惑関連の消息が瞬く間に国内すべてのメディアを覆いつくした。新大統領就任後、初の外国訪問についての話は、午後にパク大統領が帰国する以前から、きれいさっぱり忘れられる状況だった。数日前まではパク大統領のファッションや英語の実力を「礼讃」していた国内の一部言論は、しょげ返った。
ユン代弁人の突出行動だけは別物だったけれども、パク大統領が米国訪問で目標としていた成果は、大まかに言って2つだったと見られる。第1は韓米共助体制を明確に示すようにしつつ、いわゆる「通米封南」は不可能だというメッセージを北韓(北朝鮮)に送って圧迫することだ。
北韓に向け韓米共助を誇示
これらに先立ち5月7日、オバマ米国大統領は共同記者会見の場でパク大統領を「マダム・プレジデント」と呼び、「パク大統領は就任後の数カ月間、テストされる脅しと挑発とに直面した。けれども、あなたの人生を定義するとも言える沈着さと周到なありようを示してくれた」と語った。パク大統領の人生と対北政策について同時に讃辞を送る話法だった。
パク大統領は午餐会談が始まる時、オバマ大統領の名前である「バラク」と自分の名前の最後の文字「ヘ(恵)」がいずれも「祝福を受けた」(blessed)という意味だとし、親近感を強調した。パク大統領は議会演説で北韓の核開発放棄を促しつつ、「You
cannot have your cake and eat,too」(ケーキを持っていながら、同時に食べてしまうことができないという道理)という英語の慣用句を直接引用し、上・下院議員たちの拍手を受けた。
米国ワシントンで両首脳が和やかな姿を見せていたのに対して、北韓の対南機構である朝鮮平和統一委員会は、「おぞましいキス」と語るなど露骨な表現で非難した。同時に「正しい選択をしなければならない当事者は、ほかならぬ南朝鮮の当局者」であり、「我々は現在の南朝鮮当局に対して忍耐心をもって注視している」と語った。刺激を受けた様子と韓国との対話の意志を同時に表したものと考えれば、パク大統領は目的を達成したと見ることができる。
2番目は、米国が東アジア戦略において核心として推進している韓米日同盟体制の構築にあっては事実上、日本が妨害要因として作用しているという点についての強調だ。米国は昨年、霧散していた韓日軍事情報保護協定の必要性を再三にわたって強調するなど、韓国と日本の間に存在している「障壁」を崩したがっている。
中国の役割論で韓米が共感
だが日本が過去史に向きあう態度は、笑って過ごすことのできない「障壁」だ。安倍晋三首相が「侵略の定義は国際的に定まってはいない。国家間の関係において、いずれの側から見るのかによって異なる」とした発言(4月23日)を含め、最近の日本では執権・自民党を筆頭にして域内の反日の情緒を刺激する声が相次いで出ている。米国は外交ラインを通じて日本に「歴史認識の問題と関連して韓国や中国など周辺国を刺激するな」というメッセージを繰り返し伝えつつ圧迫する。
5月8日、安倍首相は「学問的にさまざまの論議があり、絶対的な定義は定まっていないという点を語ったものであって、政治家として(この問題に)関与することはないだろう」として1歩、引き下がる姿勢を示した。万一、今後日本が典型的な(転換の)姿を示し、韓国と日本が手を取り合う状況が来るならば(可能性が高いとは思われないが)、これまたパク大統領の外交的成果と見なすことができる。
このように韓米、韓日関係についての布石が敷かれた状況において、両国首脳は韓米中の共助を示唆したりもした。パク大統領は「北韓が認識を改めて国際社会に出てこさせるうえで中国の影響(力)が大なるがゆえに、これに中国が合流できるように(両国首脳が)努力しぬくこととした」と語った。中国の役割についての認識を共通のものとして確認しつつ、もう1つの北韓への圧迫カードを取り出したわけだ。
まるでこれに合わせでもするかのように、韓米首脳会談の直前、中国では中国銀行が北韓の朝鮮貿易銀行の口座を閉鎖して取引を中断すると発表した。米国が3回目の北核実験後、朝鮮貿易銀行を行政制裁の対象として追加し、こことの取引の際の危険を警告したのに対して、米国を主たる顧客としている中国銀行が不可避的に下さなければならない措置だった。専門家たちの間では中国銀行が国営銀行だという点を挙げて、北韓に対する中国政府の「警告のメッセージ」という性格が強いという観測があった。ただし政府レベルで北韓を制裁していくわけはないと考える見方が多数だった。
パク・クネ政府は中国政府との1・5トラック(民官合同形式)の戦略対話を始めた状態だ。4月に最初の会議を行い、5月中に2度目の会議も開く計画だと伝えられる。ともかくも韓中間の戦略対話を軌道に乗せ、中国側がOKすれば米国をも含め「3国の戦略対話」を組み立てるのが目標だ。形式も民官合同から始めて次第に政府レベルへ格上げさせ、対話のテーマも災難、環境、気候の変化への対処など「非戦闘安保の脅威」の分野から北核問題など、域内安保の懸念へと拡大していくというのが計画だ。
韓米中3国の戦略対話はパク・クネ大統領の外交安保分野の核心的公約として、年初に外交部(省)が大統領の業務報告で提示した多者協力方案でもある。北韓の核実験の局面や延坪島砲撃事件などを経つつ、中国の北韓に対する態度が変わり、もはや北韓をやみくもに面倒を見るだけではないというのが韓米中戦略対話の今後を明るく見通す前提だ。
親米、結日、連中、防俄?
旧韓末〈朝鮮策略〉には「親中、結日、連米」、すなわち中国により近く仕え、日本・米国と一方で連帯して、「防俄」、すなわちロシアを阻めという外交戦略が記されていた。この表現を借りればパク・クネ政府の外交戦略は「親米、結日、連中、防北」、つまり米国により近く仕え、日本・中国と連帯して北韓を孤立させる形式だ。孤立が長期化すれば北韓も不可避的に平和的対話に足を踏み入れるのではないだろうか、という話だ。「太陽政策」にてらして言えば、「強風政策」と言ってもそれほど食い違った表現ではないようだ。
今年は1953年7月の停戦協定から3カ月後に締結された、韓米相互防衛条約に基づいた韓米同盟60周年の年だ。パク・クネ大統領は今回の米国訪問で韓米同盟の新時代のために「60周年共同宣言」を採択したけれども、平和協定体制など、停戦協定の発展方向には言及しなかった。北韓との対話の方向についても言及しなかった。南北対話のチャンネルがあったならばどうなるのかについての想像も許されない構造だ。
そして一層やるせないのは成果もそうでないことも含め、すべて「ユン・チャンジュン・スキャンダル」が横取りしてしまったということだ。けれども、裏返して考えてみれば、これがパク大統領に与えられた新たな機会なのかも知れない。(「ハンギョレ21」第961号、13年5月20日付、キム・ウェヒョン記者)
韓国でセクハラ事件が起こったならば
被害申告はできたか分からない
「深刻な犯罪だ」と認識されていない
万一、米国ではなく韓国でユン・チャンジュン前・青瓦台代弁人の性スキャンダル事件が起こったならば?
「これほどまでに問題が大きくなりはしなかっただろう。報告が青瓦台まで段階的に上がっていくが、いずれ途中で事件にケリをつけようとしただろうさ。尻をなでた行為は処罰が可能だ。ところで被害の届け出や告訴はなかっただろう。今回の事件を見ると、米国では被害の申告者と加害者の接触を遮断したりはしない。韓国では、そのような部分が不足している」。
米国警察局、被害者保護のために捜査状況を保存
名を明かすのをはばかった捜査機関関係者が出した苦い答えだ。ホン・ソンス淑明女大教授(法学)も同じような指摘をした。「捜査機関が、はたして私を保護するだろうか、組織が『過剰反応な女』としてレッテルはりをしないだろうかなどとさんざん苦しんだ挙げ句、申告はためらうことになる」。
実際に青瓦台の訪米随行団や現地の韓国文化院が性スキャンダル事件をもみ消そうとしたという状況が出てきている。青瓦台は今回の事件を、たまたま起きた「公職者の紀綱の緩み」程度に解釈する。性的嫌がらせや性スキャンダルが「深刻な犯罪」だと認識されていないという傍証だ。被害者の告訴があって初めて起訴することのできる性犯罪の親告罪条項は最近になってやっと廃止され、今年6月から施行される予定だ。米国において性犯罪は親告罪に該当しない。
性犯罪の被害女性の身元が露出されたり、事件とは関係のない被害者の私生活報道が続くなど、2次被害も相変わらずだ。昨年、実務修習中だった検事の性スキャンダル事件当時、検察は被害女性の写真を流出した嫌疑で現職検事2人を罰金500万ウォンと300万ウォンで略式起訴した。今回の件での外信報道を総合してみると、この事件を捜査中の米国ワシントン・メトロポリタン警察局は「『軽微な性犯罪』(Misdemeanor
sexual abuse)の嫌疑についての捜査が進行中だということ」以外には、これといった事実を明らかにしていない。
性犯罪の場合、被害者保護のために捜査状況の保存に神経を使っているという分析だ。現地の事情に詳しいある米国の弁護士は、「最初に警察が申告を受けた嫌疑が『軽微な性犯罪』なので、これを捜査しているという言葉だけを話せるのだろう」し、「大部分の性犯罪被害者は申告当時、詳しい話をしないので、捜査が進んだ後の起訴段階で適用嫌疑が変わることがあり得る」と説明した。
特にユン前・代弁人がホテルの部屋で、裸で被害女性に会ったことが確認されれば、処罰のレベルは高くなる可能性が大きい。ドアが閉められていて部屋の中に2人だけがいる状況で、被害女性が男性から脅威を感じたり、付きまといがあったのであれば「重犯罪」(Felony)に該当するという分析だ。米国では懲役1年以下に該当する犯罪は「ミスディミナー」(Misde
meanor)、1年以上に該当する犯罪は重犯罪だと言う。
「韓国政府に責任を問い得ることも」
女性の被害事実が捜査機関で確認される場合、大使館や青瓦台を相手に損害賠償請求など民事訴訟が可能だとの分析もある。イ・サンドン元・中央大法学科教授は5月15日付の〈新聞ハンギョレ〉でのインタビューで、「米国は外国政府や、その公務員が米国市民に被害を与えた場合、被害の賠償を受けることのできる外国主権免罪法を持っている。この法律によって被害者は韓国政府を相手として米国連邦裁判所に損害賠償を要求する訴訟を提起することができる」と語った。
匿名を求めたある米国弁護士は「米国の社内の性的嫌がらせの判例を探してみると、被害者たちが会社にも損害賠償を請求している」のであり、「(今回のケースでは)被害者が韓国文化院や同大使館に採用されたインターンであり、事件が発生する前に被害の予防をすることができるにもかかわらず、青瓦台や大使館関係者がその措置を取らなかったのであれば、韓国政府に責任を問うこともできる」と語った。(「ハンギョレ21」第962号、13年5月27日付、パク・ヒョンジョン記者)
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