靖国参拝と
侵略の否定
改憲を前面に打ち出した安倍政権の極右国家主義的性格は、歴史認識をめぐる中国・韓国からの厳しい批判を受け、その挑発的言辞は東アジアの国家間関係に厳しい対立を持ち込んでいる。
対立激化の新たな引き金となったのは、これまでと同様、靖国神社への閣僚・国会議員による参拝問題だった。四月二〇日には安倍内閣の閣僚として初めて新藤義孝総務相が靖国に参拝した。二一日には春季例大祭に合わせて麻生副総理・財務相が参拝し、安倍首相は「真榊」を奉納し、神前に供えた。この閣僚による靖国参拝に抗議して四月二二日、韓国のユン・ビョンセ外相は予定していた訪日を中止することになった。安倍首相は同日の衆院予算委員会で、一九九五年の村山首相談話を「安倍内閣としてそのまま継承しているわけではない」と言いだした。それまではマスメディアとのインタビューや、参院本会議での答弁で村山談話について「歴代内閣の立場を引き継ぐ」との姿勢を示していたにもかかわらず、である。
四月二三日には、「みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会」は一六八人で、集団参拝を行った。この数は、過去最多である。集団参拝した議員の中には政府から梶山弘志副国交相、島尻安伊子内閣府政務官が入っていた。自民党執行部からは高市早苗政調会長が加わった。同日の参院予算員会の答弁では、安倍は韓国・中国からの批判に居直りながら「侵略の定義は学界的にも国際的にも定まっていない。どちらから見るかによって違う」と、アジア太平洋戦争が日本の侵略戦争であったこと自体を否定した。
翌二四日の参院予算員会の答弁で、安倍は「歴史や伝統の上に立った、私たちの誇りを守るのも私の仕事。それをどんどん削っていけば(外交)関係がうまくいくという考えは間違っている」「国のために命を落とした英霊に尊崇の念を表するのは当たり前だ。わが閣僚はどんな脅しにも屈しない」といきりたった。加害者は批判されると自分こそが被害者だと思ってしまうのだ。
米国からも
公然たる警告
安倍内閣は、こうして「尖閣」「竹島」などで煽った領土ナショナリズムを背景に、「東京裁判は戦勝者の裁き」などとうそぶきながら、「自虐史観見直し」の持論を、あらためて公教育・マスメディアの中に浸透させようとしたのだった。しかしそうした歴史観を認知させるなどということは二一世紀の国際政治の中では、全く非現実的な幻想の産物に過ぎない。
二〇〇六年に成立した第一次安倍政権が無残に倒壊した要因の一つは、「従軍慰安婦の強制連行はなかった」とする安倍の主張だった。この見解は、米国の主流メディア、上下院の有力議員、そして米国務省などから厳しく批判され、ついに安倍本人が当時のブッシュ大統領に「謝罪」しなければならないという事態まで引き起こされた。
安倍の「歴史修正主義」的ビジョンは、昨年の政権発足時点から、有力な米国メディアによって不安要因として指摘されており、朝鮮・韓国人「従軍慰安婦」への謝罪と公正な補償を求める幾つかの州議会決議が上がっていた。とりわけ四月二三日の「侵略の定義は定まっていない」答弁を契機に、「ワシントンポスト」「ウォールストリート・ジャーナル」などを含む米国の主流メディアはこぞって、安倍の歴史認識の危険性を批判した。
五月一日に発表された米議会調査局の日米関係に関する報告書は、安倍の歴史認識について「侵略の歴史を否定する修正主義者の見方を持っている」と批判し「歴史問題での安倍首相や閣僚の言動は、地域の関係を混乱させ米国の国益を傷つける恐れがあるとの懸念を生じさせている」と述べている。
つまり二月の安倍・オバマ会談をもって、安倍首相は民主党政権によって危機に陥った「強力な日米同盟」は「完全に復活」したと興奮気味に宣言したのだが、当の安倍首相の言辞が東アジアにおける米国の「国益」にとって危険なものであることが、同報告書で指摘されているのだ。
これは米国にとっては当然のことだ。米国にとって戦後日本国家は、第二次世界大戦の「枢軸国」としての天皇制日本帝国主義の敗北の結果である「東京裁判」の判決を受け入れることを前提としたものだった。米国の覇権的軍事・外交戦略に日本を従属させる日米安保体制は、米国の死活的な「国益」を決して犯してはならないという枠組みの下で、日本を米国の「同盟者」とするものである。したがって米国の戦略にとっては東北アジアの米中日韓の国際関係の中で、日本が中国・韓国との間で不安定と緊張を持ち込むことは、米国の「国益」を脅かす要因とならざるをえない。日中・日韓関係の不安定と対立の深まりは、アメリカにとっては他のアジア諸国――アジア太平洋戦争で日本の侵攻を受け、多くの被害を受けた地域でもある――との関係にとっても決して望ましいことではない。
自己を裏切る
幻想的国粋主義
アメリカの危惧は、日本の主流的ブルジョア支配階級にとっても危惧するところである。日本の財界は、中国や韓国との政治的関係のこれ以上の緊張を望んではいないはずだ。
しかし安倍内閣の閣僚や、安倍のお手盛りの教育再生実行会議の面々には、「大東亜戦争はアジア解放の闘い」「南京大虐殺はウソ」「従軍慰安婦強制連行はなかった」などの侵略・植民地支配正当化の極右デマゴーグの面々がならんでいる。
安倍の悲願とする憲法改悪の内容とは、新自由主義と復古的国家主義・排外主義の接合なのであり、それは相互補完的な関係にあるものの大きな矛盾をも抱えている。自民党改憲草案に色濃く貫かれた極右ナショナリズムのイデオロギーは、現実の国際政治の壁にぶつかってはねかえされる。「ウォール街型の強欲資本主義」とは違うと安倍が特徴づける「瑞穂の国の資本主義」は、雇用規制を緩和して不安定雇用に置き替え、最低賃金制そのものを撤廃し、生活保護をさらに切り下げ、貧困と格差がさらに普遍化する新自由主義の論理そのものでしかないことが日を重ねるごとに明らかになるだろう。
かつて一九三〇年代の「天皇制ファシズム」の嵐と立ち向かい、一九四五年八月九日に獄死した戸坂潤は次のように述べた。
「国粋主義の横行は実は却(かえ)って『国粋』の危機を物語るインデックスに他ならないわけで、国粋主義なるものは即ち自分自身を裏切ることをその本質とするもののことに他ならない。一般にこれは反動イデオロギーの『宿命』なのである」(『日本イデオロギー論』、岩波文庫)。
現在の改憲運動、侵略戦争の歴史を肯定する歴史修正の執拗なまでの登場は、一九九〇年代の冷戦構造の終焉とソ連邦の崩壊、アメリカ帝国主義の覇権の衰退、そしてグローバルな金融資本主義の危機の進行、日本資本主義の没落プロセスの深化とからまりあっている。このとき現実の東アジアの国際政治の中に極右国家主義の日本が位置を占める位置はまったくない。しかしそのイデオロギーが現実化しないということは、逆に幻想の中でそれが肥大化していく危険性を排除できないのである。
われわれは戸坂の語るように、安倍らの「現代国粋主義」が、絶対に実現不可能なものであり、自らを裏切る結果しかもたらさないと確信している。しかし、それが幻想であればあるほど逆にいっそう猛威をふるう可能性を持つことを過小評価すべきではない。(純)
4.29「昭和の日」反対デモ
天皇制はいらない沖縄
の闘いと結び新宿デモ
4・28との連続
行動を取り組む
反「昭和の日」実行委員会は、四月二九日、天皇制への統合に向けて昭和天皇裕仁の誕生日を「国民の祝日」とする「昭和の日」に抗議する集会(一一〇人)を新宿・柏木公園で行い、渋谷一帯にわたって「天皇制解体!『昭和の日』反対!」デモを貫徹した。実行委は、反安保実とともに連続闘争として4・28「主権回復の日」記念式典抗議集会・デモ(主催:沖縄・一坪反戦地主会関東ブロック)に参加し、午後の「誤った戦後国家のスタート『主権回復の日』を今こそ問う」集会を取り組んだ。憲法改悪攻撃を強化する安倍政権と対決する陣形を強化していかなければならない。
「主権回復の日」
と「天皇陛下万歳」
集会は実行委のあいさつから始まり、「昨日の政府主催の『主権回復の日』式典で安倍首相など参加者は、『天皇陛下万歳』の三唱を行った。式典に天皇が参加することによって、式典の政治性格がよりいっそう鮮明になった。沖縄民衆の怒りと連帯し、反天皇の闘いを取り組んでいこう」と呼びかけた。
「高校無償化」からの朝鮮学校排除に反対する連絡会は、「安倍政権が真っ先にやったのは朝鮮学校無償化適応を認定しないと通知してきたことだ。この不当な決定に抗議して大阪、名古屋で裁判となり、東京も裁判に入る。みなさんの支援を訴える」とアピールした。
反安保実は、「政府の『主権回復の日』式典が戦後国家を規定した象徴天皇制と日米安保を前提にした沖縄の切り離しと米軍の直接支配の強化を再確認するものとして強行された。同時に憲法改悪攻撃と一体のものとして打ち出してきている。この攻撃に対して沖縄民衆は、『主権回復の日』反対集会を一万人を越える結集で取り組み、東京でも沖縄・一坪反戦地主会関東ブロックが呼びかけるデモに四〇〇人が参加した。午後の集会には、新崎盛暉さんを招き、一四〇人の参加者があった。沖縄連帯・憲法改悪反対をともに闘っていこう」と報告した。
東京国体・銃剣道問題を考える会は、「一九八〇年代から銃剣道が国体競技として行われてきたことがあまり知られてない。銃剣道は、自衛隊で行われてきた『戦技』であり、選手も自衛隊員が多い。子どもたちを動員するだけでなく、『少年の部』を設定し、子どもたちに銃剣道を押しつけている。障害者スポーツ大会も行われるが、障がい者を健常者並みに能力主義で分断し、取り込んでいこうとしている。天皇行事の国体の問題点を広く知らせ、反対していこう」と発言した。
「日の丸・君が代」の法制化と強制に反対する神奈川の会は、「第一次安倍政権で教育基本法を改悪し、このときにやれなかった『道徳の教科化』、教育委員会の改変を通した統制強化、『近隣諸国条項』の見直しをねらった教科書、教員の政治活動禁止などを教育再生実行会議で今回やろうとしている。極右派を委員にして、矢継ぎ早の提言をして教育破壊を強行しようとしている。神奈川では君が代不起立個人情報保護裁判を取り組んできたが、最高裁で上告棄却となったが今後も『日の丸・君が代』強制反対の声を上げていきたい」と訴えた。
園良太さん(二・九竪川被弾圧者)は、野宿者排除の自治体行政とそれを防衛する東京地裁を糾弾し、4・18不当判決を許さず闘っていくと決意表明した。さらに、右翼の挑発を利用した権力の嫌がらせが準備されていることが報告され、仲間たちとともに反撃していくとアピールした。
やってる場合か!「スポーツ祭東京」実行委員会は、「安倍政権によるナショナリズムの煽りに天皇制が寄り添いながら強化していくシステムが成立している。三月三一日、国体を推進している日本体育協会に対して抗議デモをやった。権力は三〇〇人も動員してきた。不当な圧力をはねかえし、国体に抗議していこう」と発言した。
自由と生存のメーデー実行委員会から五月四日の「自由と生存のメーデー2013 気をつけろ!雑民の敵がいる」への参加が呼びかけられた。
右翼の敵対は
やりたい放題
集会終了後、渋谷デモに移った。権力は、機動隊、公安政治警察、刑事らを大量配置し、天皇主義右翼、在特会の妨害に便乗して不当なデモ規制を繰り返してきた。さらに数十台におよぶ右翼街宣車の違法駐車、交通妨害を容認し、騒音規制も捨て去り、やりたい放題を黙認する始末だ。まさに権力と右翼が一体となった反天皇闘争敵対をしかけてきたが、デモ隊は力強く抗議のシュプレヒコールをたたきつけていった。(Y)
テント撤去訴訟取り下げろ
5.16経産省前でハンスト突入
福島、全国と共に脱原発を
経産省前テントひろばは五月一六日午前一〇時から五月二二日まで、一週間のハンスト行動に突入した。五月一六日、ハンストに入った仲間たちの第一の要求は、言うまでもなくテント撤去訴訟の取り下げだ。そして「原発再稼働反対、福島の子どもたちを守れ」の要求をも掲げて、安倍政権・経産省の原発依存政策を糾弾している。
ハンストに加わった福島の黒田節子さんは「私はこのテントひろばで福島から避難してきた女性と再会し、涙を流してともにここにいることを喜んだ。テントを撤去して私たちをバラバラにさせることなどできない」と訴えた。なお六月一〇日に不当逮捕されたテントスタッフのBさんは、接見禁止の上、一〇日拘留をつけられた。こうした弾圧を許さず、テント撤去阻止の裁判闘争を大衆運動として作り出そう。 (K)
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