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    かけはし2013.年4月29日号

安倍政権の教育破壊にNO!


国家主義による締めつけ許すな

「教育再生実行
会議」提言とは

  安倍晋三首相の極右思想と国家主義を実現していく演出装置である教育再生実行会議(座長・鎌田薫早稲田大総長)は、新自由主義教育政策と愛国心教育の徹底に向けて国家主義的統制を強めた「いじめの問題等への対応について」(第一次提言)(二月二六日)、教育委員会制度改悪(三月一五日)提言をまとめた。下村博文文部科学相は、今後の@教職員管理と統制機構A「国力」としてのトップレベル大学の強化と学長権限の強化B「国定教科書」―教科書検定制度改悪提言を受け中央教育審議会に制度作りを諮問し、来年の通常国会で改悪法案を提案する。憲法改悪の先取り攻撃として押し出してきた。
 会議は、グローバル派兵国家建設に貢献する教育施策を提示していくために佃和夫(原発・兵器産業の三菱重工業会長)、加戸守行(「新しい歴史教科書をつくる会」、前愛媛県知事)、河野達信(「日の丸・君が代」教育推進の全日本教職員連盟委員長)、曽野綾子(歴史偽造・右翼作家)、八木秀次(日本教育再生機構)など極右派を含めて一五人で構成されている。会議時間は、事務局官僚が事前配布するペーパーにもとづいてたったの一時間だ。
 一月の第一回総会から第四回と開催しているが、第一次提言、第二次提言が次々と出てくるように教育問題に対するていねいな討議をしていく姿勢さえもない。会議の土台を自民党「教育再生実行本部」(二〇一二・一〇)の「中間取りまとめ」(@基本政策A教科書検定・採択改悪B教育委員会制度改悪Cいじめ問題対策D大学教育の強化)にしているからだ。提言は、これとほぼ同様の中味となっている。

「いじめ防止」
と道徳教科化


 第一提言の「いじめ・体罰対策」は、現在、小中学校で指導している「道徳」を教科化し、国と教育委員会に対し教員の指導力向上、愛国心教育を強化することだ。「道徳の教科化」は、第一次安倍政権が設置した「教育再生会議」(二〇〇六年一〇月)で提言していたが、「道徳教育に成績評価をつけるのか」と教育界や学校現場からの批判で断念せざるをえなかった。安倍は、当時の「中途挫折」からの復活をかけて「道徳の教科化やいじめ対策の徹底にスピード感を持って取り組むよう指示したい」と述べ「いじめ防止対策基本法案」の制定を公言しているほどだ。
 だが提言は、いじめの背景と原因を分析することなく「心のノート」を使った道徳教育での対応でしかない。国が検定した「道徳」教科書の押し付けであり、「規範意識」の外部注入という安易な手法だ。しかも学習指導要領で道徳内容を列挙し、成績をつけるというのだ。
 そもそも会議は、第一次安倍政権以降の新自由主義教育破壊と愛国心教育の破綻である教育状況の現在があることについてまじめに総括をしていない。だから提言は「先の安倍内閣において改正された教育基本法の理念が十分に実現しておらず、国の未来を担う子どもたちの中で陰湿ないじめが相次ぎ」などと責任を棚上げし、掘り下げるのではなく改悪教基法の「不十分性」で方向づけようとするのだ。
 いじめ自殺でクローズアップされた大津市立中学校は、文科省指定の「道徳教育実践研究事業」推進指定校であった。大津市の第三者調査委員会が「道徳教育や命の教育の限界」があったと指摘しているように「道徳の教科化」は、事態をより深刻化させてしまうのだ。いじめの背景には、「貧困と経済的格差」「差別・選別と学校間格差」「子どもの人権否定とストレス」など重層複雑であり、「不登校・引きこもり」なども含めれば「道徳教育」だけで克服することはできない。これらの指摘は、教育労働者、教育専門家たちが繰り返し問題提起してきたことだ。
 ところが「道徳の教科化」によって困難性のハードルが越えられるなどと勘違いしているのが会議なのである。委員の加戸は「戦前の修身教育を思い出させるなどと批判はあるが、今はそんな時代ではない。文科省にはできない道徳の教科化を、政治主導で方向づけできる」と居直っているほどだ。
 要するに、ここにはいじめる子の指導・排除を目的とし、子どもの人権、子どもが主体の観点からのアプローチがまったくない。この延長に「警察との連携」や「加害生徒の出席停止」「毅然たる指導」などが必要としている。体罰対策も一般的な禁止の確認でしかなく、国が部活動指導のガイドラインを策定することまで提言している。教員配置の充実と多忙解消、少人数学級の実現は最低前提条件だ。予算措置も含めた具体化こそ求められている。改悪教基法の愛国心教育の強化ではなんら克服の一歩に踏み込めないのだ。

教育委員会
制度の改悪


 第二次提言「教育委員会制度」改悪は、大津市の中学生いじめ自殺や大阪市立高校の体罰自殺問題での教委の隠ぺい体質・事なかれ主義・責任曖昧・後追い対応という批判を利用して「教育行政の権限と責任を明確にするため、地域の民意を代表する首長が、連帯して責任を果たせるような体制にする必要がある」と提示した。
 教委制度は、戦前の天皇制と侵略戦争のための動員装置だったことの反省から政治的中立性の確保のために首長からの独立、合議制(首長の任命する原則五人の有識者らで構成。教育長以外は非常勤)を維持してきた。しかし提言は首長の教育行政への関与強化にむけて議会の同意を条件に教育長の任命・罷免権を与え、予算の編成・執行などでも連携を強めさせるとともに教育長に責任と権限の一元化へと改編しようとねらっている。
 提言は教委の役割を「地域の教育のあるべき姿や基本方針などについて審議を行い、教育長に大きな方向性を示し、教育事務の執行状況をチェックする」、「教育長が教育の基本方針や教育内容に関する事項を決定する際には、教育委員会が審議するなどの制度上の措置を講ずる」と提起しているが、首長―教育長の圧力に対して修正・指導権などを具体的に保障することを明記せず、実質的には単なる諮問機関へと形骸化させていくつもりだ。つまり、首長の交代のたびに教育施策が変わることが可能となってしまうのだ。天皇制右翼の日本会議などの右派勢力の地方自治への制圧戦略を背景にしながら首長―教育長の権限集中を押し出してきた。教育現場、子どもたちへの混乱を発生させることの危険性について触れることもしない。
 国の地方教育行政への関与についても建前として地方自治体が責任を負うとしたが、「自治体に法令違反や(いじめ自殺など)子どもへの人権侵害があった場合は、最終的には国が是正、改善の指示を行えるようにする」と強調し国家統制権の貫徹を盛り込んだ。教科書の採択権を教育長の権限にすることもねらっている。例えば沖縄県八重山地区(石垣市、竹富町、与那国町)の中学公民の教科書採択問題(教科書採択地区協議会が二〇一一年八月に育鵬社版公民教科書の採用を答申したが、竹富町教委が不採択し、九月の全教育委員協議で不採択)で義家弘介文部科学省政務官が天皇制と侵略戦争賛美の育鵬社教科書への一本化への指導の全国化をねらっているのだ(一三年三月)。
 さらに教科書検定制度改悪について安倍は、国会(四月一〇日)で「前回の(第一次)安倍内閣で教育基本法を改正し、教育の目標に伝統文化の尊重や愛国心や郷土心も書いたが、検定基準では改正基本法の精神が生かされていない。検定官(教科書調査官)自体に認識がない」とどう喝しながら、中国や韓国などのアジア諸国に配慮するよう求める「近隣諸国条項」の撤廃を主張している。会議は、安倍と極右派連中の意向を反映した教科書検定制度改悪を提言してくることが予想される。制度改悪に向けた攻撃を許さず、反対の取り組みを強化していこう。
 なお第二次提言では自民党「教育再生実行本部」―教育委員会制度改革分科会「教員の質を確保するための改革」について触れていないが、「中間取りまとめ」では「首長が任命する教育長を教育委員会の責任者」とすることとセットで「教員の質を確保するための改革」(@教育公務員倫理規定の制定A政治的行為制限違反への処罰規定B教員の勤務評価・処遇反映を教育長・校長に義務づけ)を提示していた。
 とりわけ教員政治活動禁止については、すでに自民党が北海道教職員組合に対する政治資金規正法弾圧(二〇一〇年二月)に便乗して教育公務員特例法改正案(公立学校の教員が政治活動の制限に違反した場合、国家公務員と同様に三年以下の懲役または一〇〇万円以下の罰金を科す)を衆院に提出していた(二〇一〇年三月)。制定は頓挫しているが、この法案の推進者が下村博文、義家弘介など文教族の連中だった。会議は、教員政治活動禁止法案の再提出を提言してくる可能性がある。厳しく監視しなければならない。
 会議による国家統制権強化のための提言の反動性を暴きだし、安倍政権の教育破壊政策を許さない全国的包囲網を構築していこう。
 (遠山裕樹)

 


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