もどる

    かけはし2013.年4月1日号

今こそ侵略・占領の検証を


3.20イラク戦争から10年でシンポジウム

明白な犯罪行為の責任を問う

自衛隊派兵恒常化・改憲論議に道を開いた

 
違法な侵略は
何を残したか
 米ブッシュ政権が主導したイラク戦争から一〇年が経過した。アルカイダによる二〇〇一年の「九・一一」米本土同時テロ攻撃を契機にしたアフガニスタンへの侵略戦争に続き、二〇〇三年三月二〇日イラク侵略戦争が始まった。この戦争はイラクのサダム・フセイン政権が「大量破壊兵器」を所有し、「国際テロ組織アルカイダ」と結びついている証拠があるという虚偽の口実で、ブッシュ政権によって周到に準備され、国連決議や国際法にも違反して強行されたものだった。
 しかしサダム・フセイン政権の「罪状」とされた「大量破壊兵器の保持」も「国際テロ組織との結びつき」も全くの嘘っぱちであったことはすでに明らかになっている。そして米国はイラクでの作戦終了を宣言し、事実上イラクから手を引いてしまったが、戦争がもたらした国土の荒廃、社会の崩壊の中で、宗教的武装勢力間の爆弾テロの応酬などがさらに深刻化し、「平和」とは程遠い状態にある。
 「イラク・ボディカウント」の調査によれば、二〇〇三年三月の戦争開始以後現在にいたるまで、イラクの民間人の死者は一二万人、米軍・イラク軍など軍人の死者を含めれば、一七万四〇〇〇人が生命を奪われた。難民となったイラクの人びとは今なお三〇〇万人以上いる。
 
米国の戦争を
無条件に支持
 イラク戦争ではクラスター爆弾、白リン弾、劣化ウラン兵器などの非人道的兵器が一般住民に多用された。ファルージャへの包囲攻撃は、米軍による市民への無差別殺りくに他ならなかった。アブグレイブ刑務所での捕虜への凌辱は、「人道への罪」としての戦争犯罪だ。こうした侵略戦争・住民虐殺・人道犯罪を告発し、国際刑事裁判所でブッシュをはじめとする戦争責任者の罪を問わなければならない。
 そして日本の小泉自民党政権も、この不当な侵略戦争に積極的に加担し、「テロ特措法」を制定してインド洋に自衛艦を派遣し、さらに「イラク特措法」によって陸自、空自をイラクに派兵し米・有志連合軍を支援した。その責任をあらためて問う必要がある。
 イギリス、オランダではイラク戦争にいたる経緯や、「大量破壊兵器」のウソ、イラク戦争の国際法上の問題点について、独立した検証委員会が設置され当時のブレア英首相への喚問も行われた。日本でも安倍第一次内閣当時、二〇〇七年の自衛隊イラク派兵特措法の延長にともなう付帯決議(第一六六国会内閣法第八九号付帯決議)で「イラク戦争の検証を行うこと」が明記されている。しかしそれはほとんど反故になっている。
 第二次安倍政権の下で、日米同盟の下での海外派兵の質的エスカレートと恒常化、集団的自衛権の容認と、改憲・国防軍の創設への動きが現実になっている今だからこそ、この流れへの決定的な転換点となったアフガニスタン・イラク戦争と日本の参戦についての検証と批判を行っていかなければならない。

過ちを見つめ
責任を取らせる
 こうした問題意識から、三月二〇日、「イラクテン 日米イラク戦争の正体 開戦から一〇年 今、問うイラク戦争の一〇年と日本」と題した企画が早稲田大学で開催された。イラク反戦運動で重要な役割を担ったWORLD PEACE NOWも主催者である「イラク戦争10年実行委員会」の一翼を担った。共催は早稲田大学平和学研究所。この企画には五〇〇人が参加した。
 午前一〇時から始まった全体会では、実行委員会共同代表でジャーナリストの志葉玲さんが基調を提起した。志葉さんは「イラク戦争は終わったのか」と問いかけ、「戦争を起こした側が終わったことにしているだけだ。イラクの現実はこの一〇年で最も深刻だ。米国の占領以後、宗教的分裂が加速した。格差、汚職がまん延し、自由と民主主義などどこにもない。よく貧困がテロを生むと言われるがそれは正しくない。不正義・不公正こそがテロを生むと言うべきだ」とイラクの現状を特徴づけた。
 志葉さんはさらに、岸田外相が「イラク戦争の検証を行うつもりはない」と述べたことを批判し、訴えた。「二〇〇八年四月、名古屋高裁は『イラクに派遣された航空自衛隊の物資輸送が、他国の武力行使と一体化した行動であり、憲法九条1項違反である』とした判決を行った。日本は明らかに参戦し、その戦争は国際法にも国連憲章にも反する戦争だった。この過ちを見つめ、戦争を引き起こし、加担した人間に責任を取らせることが重要だ」と強調した。

イラクと英国
からのゲスト
 次に海外ゲストとして、イラクからフォトジャーナリストのアリ・マシュハダーニさん、イギリスから反戦軍人家族会のローズ・ジェントルさんが発言した。
 アリ・マシュハダーニさんは自らも米軍に拷問を受けたことを語りながら、「全く根拠のない大量破壊兵器などというものを口実に戦争・占領を続けた米国は『弱い国』なのだ、と実感している。イラクの政治は今が一番腐敗を深めている。日本がイラク戦争に関わったことは私にとって大きなショックだった。この戦争でイラクも日本も失ったものが大きい。暴力や腐敗と闘うための国家をめざしたい」と述べた。
 ローズ・ジェントルさんの息子は、イラク戦争に英軍兵士として参加し、戦死した。彼女は、なぜイラク戦争が行われなければならなかったのかを問い続け、大量破壊兵器の脅威から民主主義と平和を守る、という大義名分がウソであることを確信し、真相調査委員会の設置を求めてきたという。ローズさんは日本でも独立調査委員会の設置が必要、と語った。
 全体会の最後の発言者は、元外務省国際情報局長で評論家の孫崎享さん。孫崎さんは「日本の問題としてのイラク戦争」という視角から、イラク戦争に合理性がないことは開戦当時から把握できていた、しかし日本にとっての主体的判断はなくただただ米国に追随するだけだったから「検証」することはできない、対米追随=国益という基準を見直すことが何よりも重要と強調した。そして「国際法よりも日米同盟が重要」という基準と決別する必要性を強調した。
 孫崎さんは、パウエル元国防長官が「イラクの大量破壊兵器問題は自分の人生の汚点」と告白したことを紹介しながら、「日本にはそのように語る政治家はいなかった」と述べ、安倍内閣の下での集団的自衛権、改憲の流れを批判した。
 ランチタイムには「非戦を選ぶ演劇人の会」の皆さんが「リーディング『あきらめない2003―2013 イラク戦争の10年』を披露。午後には@イラク戦争と劣化ウランAローズさんと語るイラク戦争検証Bアリさんと語るイラク占領の現実Cイラク戦争と自衛隊・在日米軍、の四つの分科会に分かれて討論を行った。
 
9条を生かす
闘いが重要だ
  WORLD PEACE NOWが企画した「イラク戦争と自衛隊・在日米軍」分科会では、川口創弁護士の「イラク派兵違憲訴訟が実現したもの」、木元茂夫さん(原子力空母の横須賀母港問題を考える市民の会)の「米海軍との共同作戦に踏み込んだ海上自衛隊」、谷山博史さん(JVC代表理事)の「民衆支援、復興支援と軍隊」という三つの報告が行われた。
 川口さんは憲法九条の存在が「少なくとも表向きでは自衛隊は人道支援としてしか派遣されない」縛りとなっていたことにふれ、「自衛隊が米国の軍事的役割を外注化させられる」状況で、「憲法九条が危険に瀕している時代だからこそ九条を生かす闘いを」と訴えた。
 木元さんは、イラク戦争でインド洋、イラクに派兵された自衛隊員の自殺者が多いことに(防衛省の発表でも、イラクから帰国後に自殺した派遣自衛隊員は二六人に達している)示されるように「自衛隊が相当の損害を受ける」中で、自衛官人権訴訟の意味に注目すべき、と語った。
 谷山さんは「人道復興支援」という軍事作戦が展開され、援助の軍事化が進む中で、「官民連携」を通じて国際協力NGOが戦争に巻き込まれ、加担しかねない存在になる危険性を分析し、その中でどう独立性を堅持していくかの自覚性が問われている、と述べた。
 最後のまとめの会では、四つの分科会の論点がそれぞれ紹介され、最後に「イラク戦争への日本の関わりについての検証」「戦争をはじめた当事者の責任追及」「イラク難民、戦争被害者支援」などを呼びかける「イラクと日本および世界の平和を実現するために早稲田宣言」を確認した。
 安倍内閣の下で、戦争国家・改憲への道が差し迫ったものになっている今日、イラク戦争と日本の関わりの検証が改めて必要になっていることを実感させる企画だった。     (K)

3.17ファトヒ・グディラートさん講演会

ヨルダン渓谷 イスラエル
占領支配に抵抗する闘い



  【大阪】三月一七日大阪ドーンセンターで「ファトヒ・クディラートさん講演会」がパレスチナの平和を考える会の主催で開かれた。
 ファトヒ・クディラートさんたちが創設したヨルダン渓谷連帯委員会は、二〇〇五年四月に発足したパレスチナ人による草の根の団体で、ヨルダン渓谷のパレスチナ住民や住民を支援する外国人活動家がメンバーである。講演のテーマである「存在することは抵抗すること」というのは、この団体の活動スローガンである。
 講演に入る前に、清末愛砂さん(室蘭工大教員)がヨルダン渓谷の状況と連帯委員会の活動を紹介した。

存在することは
抵抗することだ
 ヨルダン渓谷は、ヨルダンとイスラエルの国境にあたるヨルダン川沿いに南北に広がる地帯であり、地下水や泉など水源に恵まれ、温暖でパレスチナでもっとも肥沃な土地として知られている。一九六七年の第三次中東戦争の結果、東エルサレムを含むヨルダン川西岸地区とガザ地区がイスラエルの占領下に置かれた。イスラエルは、この肥沃な土地を手放したくなく、六八年から入植地を建設していく。〇五年イスラエルがガザ地区から一方的に撤退した後、ガザの入植者の一部はヨルダン渓谷に移住した。
 ヨルダン渓谷のパレスチナ人の水の使用は大幅に制限され、またヨルダン川の水の使用は禁止され、井戸は没収され破壊されてきた。パレスチナ人は、使用許可がある井戸から使用限度内で水を得るか、イスラエルの水会社から購入しなければならない。土地を奪われたパレスチナ人の中には、低賃金で農業労働者として働いている者もいる。
 一九九三年のオスロ合意によりヨルダン渓谷は、パレスチナ人が行政と治安の権限をもつ地区(A地区)、行政権のみを持つ地区(B地区)、行政と治安の権限を両方ともイスラエルが持つ地区(C地区)に分けられた。ヨルダン渓谷の実に九五%はC地区である。C地区在住のパレスチナ人はイスラエルの許可なしに家屋の建築や改築は許されていない。許可なしに家を建てると撤去命令や破壊命令が出される。命令に従わないときは、実際に命令が実行される。ヨルダン渓谷は、ヨルダン川西岸地区でイスラエルの占領がもっとも深刻なところである。
 次にファトヒ・グディラートさんが「存在することは抵抗すること」と題して講演した(別掲)。講演の後、質疑応答とソーダストリームボイコット運動のアピールがあった。
(T・T)


「平和と繁栄の
回廊」の実態
 日本はパレスチナ自治政府を支援している最大の援助国である。平和と繁栄の回廊プロジェクトに資金を出していて、パレスチナに大きな影響を及ぼしている。ところがこの援助は、イスラエルの了解が得られる枠内で行われている。ヨルダン渓谷は、イスラエル占領の典型的な実例だ。住民の人権は脅かされ、土地は侵害されている。イスラエルの目的は、この地のパレスチナ人をパレスチナの真ん中に集め、周りのアラブ人の国から切り離すことだ。南レバノンでもガザでも同じことが行われている。そのために、シナイ半島はエジプトの全的支配が不可能になった。ヨルダン渓谷は、アラブ人たちがコミュニケーションをとる場だった。いま、パレスチナ人は、アラブへの出入りができなくなった。 
 渓谷はパレスチナが自立経済を作り上げる柱であり、中東最大の農業地帯であり、観光の資源でもある。この地の飲み水の八〇%をイスラエルが支配している。イスラエルは、パレスチナ北部の水源から水を取り、それをイスラエルの砂漠に引いて南部を緑化する計画を進めていて、ヨルダン川に水が流れなくなっている。渓谷が破壊されている。これはジェノサイドと同じだ。このままでは、死海は干上がり、二つに分かれると言われている。イスラエルは、紅海から水を取り、ヨルダン川を通らずに南方から死海に水を引き込む計画を、日本の一二〇億ドルという巨額の援助で進めている。イスラエルは、東エルサレムと渓谷との間に入植地をつくろうとしている。東エルサレムはパレスチナ国家の首都になる街だ。

イスラエル軍の
敷地内に学校
 第三次中東戦争前は、ヨルダン渓谷には五二のパレスチナのコミュニティがあった。今この地に住む人々は、イスラエルの水会社から水を買って飲むことしかできない。しかし、パレスチナ人は、自らの地に存在し、この地の自然を守る権利がある。昼はイスラエルの弾圧があるので、私たちの活動は夜間にやっている。子どもが教育を受ける権利、遊ぶ権利を取りもどすために。パレスチナ人が存在することをイスラエルが妨害する場所が、活動の場所だ。(パレスチナ人やベドウィンのコミュニティの入り口にあるコンクリートの杭の看板。そこに書かれているイスラエル軍射撃場・立ち入り禁止という写真を見せながら)学校をつくることを禁止されている子どもたちのために、ここに学校をつくった。
 資材を準備しておいて、夜間につくった。私たちは、ヨルダン渓谷のC地区に家や学校をつくった唯一の団体だ。
 (パレスチナ人の破壊された家と道を隔てて向こうの丘にある住宅の写真を示しながら)。これはロシア系イスラエル人の入植者の住宅で、イスラエル国家から無償で支給されたものだ。ここには、何もかもそろっている。一方、四角い形や円形ドーム状のテントがパレスチナ人のもの、家ではない。私たちはユニークな渓谷の環境、ユニークなハーブを守るために団結する。
 沖縄の人も米軍基地を追い出すために闘っている。でも沖縄の人だけではダメだ。日本全体が団結しなければいけない。私たちは敗北するかもしれないが、正義を守る闘いに終わりはない。私たちは、イスラエルの軍事的メンタリティを拒否する。彼らは、規則に従っているだけだといってパレスチナ人を殺す。立ち入り禁止区域に仔馬が入ってきたことを理由に、仔馬を殺し、その持ち主に罰金を科す。沖縄でも同じだ。米兵は沖縄県民の人権を蹂躙していても罰せられない。
 イスラエル兵は、私たちのコミュニティの可動式水タンクを没収していった。水は命に不可欠なものなのに。(水の涸れた川の写真を見せながら)近くでイスラエルが深い井戸を掘って水をくみ上げたため、この川は水がなくなった。このようなことはすべて、イスラエルの法によって行われている。歴史上の古い街ジェリコも、アパルトヘイト政策で今はゲットーになった。検問所を通るとき、怪しいとイスラエル兵に思われたら殺される。殺していいと指示されている。私もいつそうなるかわからない。
 占領で利益を得ることも犯罪だ。ソーダストリームをヨルダン渓谷の占領地で製造しているイスラエルの会社だけではなく、例えばEDOM(英国の会社)やビオリア(フランスの会社)が活動している。ビオリアはヨルダン渓谷にゴミを投棄している。言語や皮膚の色が違っても私たちは団結して共に闘う。(発言要旨、文責編集部)
 


もどる

Back