安倍首相の交渉参加宣言糾弾
大資本のための「生けにえ」はゴメンだ 「食料主権確立」は世界共通の目標
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日米同盟による
安全保障の一環
二月二二日の日米首脳会談におけるTPP(環太平洋経済連携協定)に関する日米共同声明を受けて、三月一五日、安倍首相はついにTPP交渉参加を表明した。
安倍首相は次のように述べた。
「TPPが目指すものは、太平洋を自由にモノやサービス、投資などが行き交う海とすることだ。世界経済の約三分の一を占める大きな経済圏が生まれつつある」。
「……日本は大きな壁にぶつかっている。少子高齢化、長引くデフレ、我が国もいつしか内向き思考が強まってしまったのではないか」「日本だけが内向きになってしまったら、成長の可能性もない。企業もそんな日本に投資することはないでしょう。TPPはアジア太平洋の『未来の繁栄』を約束する枠組みだ」。
「TPPの意義は我が国への経済効果だけにとどまらない。日本が同盟国である米国と共に新しい経済圏を作る。そして自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった普遍的価値を共有する国々が加わる」「共通の経済秩序のもとに、こうした国々と経済的な相互依存関係を深めていくことは、我が国の安全保障にとっても、またアジア太平洋海域の安定にも大きく寄与することは間違いない」。
安倍は、このように「内向き思考」を打破し、日米同盟を軸とした「安全保障」に貢献し、アジア太平洋の成長を日本の経済発展に取り込むために「今がラストチャンスだ。この機会を逃すということはすなわち日本が世界のルール作りから取り残されることに他ならない」と危機感を丸だしにしてアジったのである。
新自由主義戦略
と「国柄防衛」 グローバルな資本主義システムの危機のいっそうの深刻化の中で、アジア太平洋経済の「成長」を取りこんだあくなき新自由主義的「成長」と、「中国の脅威」に対抗する日米同盟の「深化」に活路を見出すしかない大ブルジョアジーと安倍自民党政権にとって、TPP参加は、まさしく「待ったなし」の課題であることが改めて強調された。
しかしそれは安倍のキャッチフレーズの一つでもある「瑞穂の国の資本主義」にとって、決定的な矛盾をきたすものであることは間違いない。安倍はそのために次のように弁解しなければならなかった。
「最も大切な国益とは何か。日本には世界に誇るべき国柄がある。息をのむほど美しい田園風景。日本には朝早く起きて汗を流して田畑を耕し、水を分かち合いながら五穀豊穣を祈る伝統がある。自助自立を基本としながら不幸にして誰かが病に倒れれば、村の人たちがみんなで助け合う農村文化。その中から生まれた世界に誇る国民皆保険制度を基礎とした社会保障制度。これらの国柄を私は断固として守る」と。
この弁明は、安倍・自民党が語る「日本を取り戻す」というキャッチフレーズで打ち出されたナショナリズム的な「日本」のイメージを、「公助」を排除した「自助自立」と「共助」に集約する新自由主義イデオロギーにつなぎあわせる操作である。一方、TPP担当相となる甘利経済再生相は、日本がTPPに参加した場合の経済効果をGDP(国内総生産)の伸びにおいて三・二兆円(〇・六六%)と試算する一方、国内の農林水産業の生産額は三兆円減る、という試算も発表した。国内の農林水産業はコメや小麦、砂糖などの主な三三品目で計七・一兆円ある生産額が四・一兆円に減ることになるというのだ。つまり四〇%以上の減少であり、まさに壊滅的な事態である。
安倍は、これに対して次のように語る。
「基幹的農業従事者の平均年齢は現在六六歳だ。二〇年間で一〇歳ほど上がった。今の農業の姿は若い人たちの心を残念ながらひきつけているとは言えない。耕作放棄地はこの二〇年間で約二倍に増えた。……このままでは農村を守り、美しいふるさとを守ることはできない、これらはTPPに参加していない今でもすでに目の前で起きている現実だ」。
安倍はこのようにして自民党農政の農業破壊の責任を放棄し、危機の中から様々に模索されている地域・集落農業再生の取り組みを無視した上で、「攻めの農業政策」への転換を強調する。「攻めの農業政策により、農林水産業の競争力を高め、輸出拡大を進めることで成長産業にしていく。そのためにもTPPはピンチではなく、むしろ大きなチャンスだ」と。
農林水産業の輸出産業化と競争力の向上という政策は何を意味するか。「耕作放棄地の集約」などによる農地の大規模化がその核心になる。そのためにもTPPをテコに減反政策をやめ、生産効率引き上げによる収量増をめざし、そのはけ口を人口減少・消費量の低下が必至である国内市場ではなく、海外市場に求めるということになる。それは生産効率の引き上げ、利益の拡大を至上命題とする大資本の主導による農地の集約・生産品種の決定・支配を必然化する。
この方針が安倍の「美しい農村を守る」という言葉とは正反対の結果をもたらさざるをえないことは言うまでもない。それはただでさえ諸国と比べて低い食糧自給率のさらなる劇的な低下(二〇一〇年一〇月の農水省試算では日本がTPPに参加し関税を撤廃した場合、食料自給率は二〇〇九年の四〇%から一四%にまで低下する、とされる)に直結しさまざまに試みられている地域循環型経済づくりの取り組みを阻害する。
グローバルジャ
スティス運動
われわれは、グローバル資本主義システムの下での大資本による農業支配、農産物価格の暴騰、とりわけ「南」(グローバル・サウス)の貧しい「途上国」における食料危機・飢饉のまん延を目のあたりにしている。これに対して、ビア・カンペシーナ(農民の道)をはじめとする途上国の農民たちは小農農業の擁護と「食料主権の確立」を訴えて闘っている。
そして「攻めの農業への転換」とは、たんに日本の農業・農村破壊という問題だけではなく、大資本のイニシアティブによる途上国での「農業開発」という名目での環境破壊、農地収奪、農村の破壊、債務の重圧と農民の離散・流民化、農産物市場の投機化に、より大規模に関わることを意味する。本紙でも紹介したJICAが主導するモザンビークへの「プロサバンナ」プロジェクトはその一例であろう。この点で、TPPに反対する闘いは、決して農業問題に特化した話ではなく、また日本の「国益を守る」闘いでもない。
TPPは知的財産権、投資、サービス、技術の基準・認証、保険、環境、労働など多くの社会・経済分野に広がっている。安倍がTPP交渉参加宣言を行った同日、三月一五日に開かれた「産業競争力会議」は、今後五年間を産業構造改革の集中期間と位置づけた。その中で、解雇自由化、勤務地・職務を限定した「新正社員制度」(職務が続くかぎり期間を定めずに雇用されるが、企業がその職務を廃止すればその時点で雇用契約が終了するというもの)が論議されたのは偶然ではない。
TPPに反対する闘いは、失業・雇用破壊に抗する闘いでもある。それは弱肉強食のグローバルな新自由主義的市場競争原理に対して、環境保護・民主主義・人権・公正を求める国際主義的な共同の闘いである。それは資本の支配システムに抗する反資本主義闘争の一環であり、また安倍首相も明確にしているような「日米同盟」を通じたアジア・太平洋全域の「安全保障」=覇権的イニシアティブに抗して、民衆連帯による平和を実現するための運動である。
われわれはこの中で、環境社会主義(エコ社会主義)のオルタナティブを提示するために討論を深めていきたい。 反対の声を
さらに大きく
安倍首相のTPP交渉参加宣言に対して、自民党内の抵抗は急速に薄まっている。財界は「新たなビジネスチャンス」として歓迎し、マスメディアの論調もほとんどが支持である。
「日本経済の発展を考えるなら、外に向かい目を開かなければならない。工業製品だけでなく農産物を含む日本の産品と、日本の人材、投資資金が自由に動ける舞台をつくることこそが国益である。発想を『守る』から『築く』ことに切り替えるときではないか」(日経新聞三月一六日「社説」)。「自由貿易の原則と相いれない面がまだまだ残る中国に改革を促し、公正な貿易・投資体制に巻き込んでいくうえでも、TPPは大きな武器になる」「TPPを着実に進めるとともに、国内産業の足腰を強くする規制・制度改革を連動させて、日本経済を再生させなければならない」(朝日新聞三月一六日社説)。
朝日新聞三月一八日付の世論調査によればTPP交渉参加を「評価する」という意見が七一%に達し、「評価しない」の一八%を大きく上回った。しかしTPP参加が日本の農業に与える影響については、「悪い面が多い」が五六%で「よい面が多い」の二四%を大きく上回っている。また農業自由化で外国産の安い農産物が入ってくることについて「よいこと」という意見が三六%であるのに対し「よくない」は四八%に達した。食品の安全基準が下がることにも不安を感じる人びとは七一%にのぼっている。
人びとの判断は揺れている。労働者、市民、そして農民の中でTPP反対の声をはっきりさせていくために奮闘しよう。
(三月一八日 河村 恵)
3.15 STOP TPP経産省前行動
安倍首相は恥を知れ 若者主導でラップ調コール
安倍首相がTPP交渉参加表明の記者会見を開くと伝えられた三月一五日、昼は国会前座り込み、夜は経産省前行動として、TPP反対を訴える行動が終日繰り広げられた。農業団体、労働組合、生協や遺伝子組み換え作物に反対する市民団体など、多様な運動の共同として、三月五日の「STOP TPP!! 首相官邸前アクション緊急拡大行動」(三月一八日号参照)で呼びかけられた。
この呼びかけはこの日の記者会見を想定したものではなかった。しかし前述の報道を受け、各行動では表明への抗議と表明撤回が強く打ち出された。特に夜の経産省前には多くの市民がかけつけ、行動は、この日行われた脱原発官邸前行動を終えて参加した人たちも加えて、安倍首相と自民党に対する強い怒りを浮き立たせるものとなった。
モンサント批判
の寸劇に涌く
経産省前行動は午後七時から。次第に数を増す参加者には若者の姿が目立ち、行動も彼らの主導で進められた。起点は、この日の安倍首相の交渉参加表明に対し、自民党はオウンゴールした、ピンチをチャンスに変えることを考えようとの司会の呼びかけ。次いで、TPP絶対反対、医療を守れ、いのちを守れ、くらしを守れ、農業守れ、経済の奴隷じゃないぜ、フリーダム、国民なめるな、安倍は恥を知れなど、軽快な太鼓のリズムに乗せたラップ調のコールを適宜間に挟みながら、リレートークや寸劇、歌、また着ぐるみの猿が講釈する自由貿易が民衆の生活を破壊する仕組みの解説など、工夫を感じさせる進行に参加者の意気も上がる。
寸劇はアンチモンサント劇団。モンサントによる悪辣で暴力的な遺伝子組み換えトウモロコシ栽培強要がカナダの家族農業を追い詰めている実情が演じられた。モンサントに関しては、遺伝子組み換え作物に反対する運動団体の代表から、彼らが売り込む除草剤がすでに効かなくなりスーパー雑草が出ている、という深刻な実情も明らかにされた。
直前までシンガポールで行われていたTPP交渉を現地で追いかけていたNGOからは、たくさんの企業関係者がつめかけこの仕組みが多国籍企業のためのものであることをまざまざと見せつけていたこと、米国の交渉担当者がこれまで合意されたことを日本には覆させない、正式参加決定までは合意されたことを日本に一切教えない、と語ったことなどを明らかにした。
世界の99%と
つながる闘い
参加者に積極的な参加が呼びかけられたリレートークには多くの人が応じ、町に出てTPPの真実を知らせよう、世界の九九%とつながろう、多くの運動の共同をもっと広げようといった提案から、安倍首相を始めとする自民党や大メディアの嘘に対する怒り、またTPPに対する多様な視点からの批判など、率直に自分の思いが語られた。直前の安倍首相の記者会見放映を見てからこの場に来た人も多かったと見え、特にそれらの人たちからは、わずか三カ月前の選挙で語っていたことをひっくり返した大嘘に対する怒りや、その嘘を「国柄を守る」などという右翼イデオロギーでごまかし右をつなぎ止めようとする策略への警戒が表明された。
発言の最後は全国食健連事務局長の坂口明さん。坂口さんは「この日は、脱原発運動との合流、そして安倍が墓穴を掘った日として画期的な日となった。今後米国との間で秘密裏に済まされた合意が米議会審議などを通して明るみに出てくる。それらを暴露しながら安倍の墓穴を本当のものとし、参加が実現しないようあらゆる手立てを尽くそう」と呼びかけこの日の行動をまとめた。そして行動は、三月二五日午後六時からの日本経団連前行動、四月二日の官邸前行動への呼びかけで締めくくられた。
(谷)
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