アルジェリア
ナディル・ディエルムーン(アルジェリア社会主義労働者党)に聞く
マリ民衆の民主的権利と社会・
文化的発展を保障する政策を |
イナメナス事件とマリへのフランスの軍事介入を機に、日本のメディアでもアルジェリアが度々取り上げられている。石油資源の安定的確保が主要な関心であり、その観点から「イスラム勢力の活発化」が懸念を込めて描かれている。その中でアルジェリアは、「アラブの春」とは距離のある安定した地域とみなされているのだが、以下に紹介する二本のインタビューは、実態はそうではないことを伝えている。一本目は、アルジェリア現政権によるフランスのマリへの介入に対する支援やイナメナス事件への対応の背後にある国内事情を明きらかにしている。二本目は、その国内事情を具体的に照らしだすものとして、ある地方の住民管理的状況(アルジェリアの同志たちの闘い)を伝えている。(「かけはし」編集部)
ディエルムーンは、PST(社会主義労働者党、第四インターナショナル・アルジェリア支部)の全国指導部の一員である。以下は、彼がフランス反資本主義新党の第二回全国大会に出席した際に、聞いた。
仏のマリ介入
は権益の維持
――マリへのフランスの軍事介入に対するPSTの立場は?
マリへのフランスの軍事介入は、植民地主義の臭いをただよわせている。それは、この地域における他の大国、とりわけこの地域に新たに参入した中国と競ってこの地域における自国の権益を維持したいと望むフランス資本主義の意志を表現している。それは、この同じフランスによって実施されたチャド、ブルキナファソ、さらにはモーリタニアに対する軍事的措置を強化することになった二〇一一年のリビアへのNATOとフランスによる軍事作戦の続きである。
PSTは、いぜんとして、各国の主権を尊重し、各国の内政に対する外国の全面的な介入に反対する立場に立っている。PSTは今回の介入を非難するとともに、マリ民衆の民主的権利と社会・文化的発展を保障する政策だけが緊急に必要であるとみなしている。
――フランスのマリへの軍事介入にアルジェリアの政権がどうして追随しているのか
国内の大衆にはほとんど秘密にしたまま、アルジェリア政府は今回のフランスの軍事介入を実質的に支援している。政府は、アルジェリア領空をフランスの戦闘機に開放することを認め、マリとの国境を閉鎖した。
これは、貴重な代償を払って勝ち取られた独立に熱い思いを抱いているアルジェリア人民にとって国の主権を台無しにするものだ。ブーテフリカ政権は、確固とした勝利の展望が見えない大統領選挙を前にして、政権の安定と自己の政治的延命を確かなものにするために、アルジェリアを帝国主義列強との同盟のもとに追いやっている。その結果、この政権はアルジェリア経済を新自由主義の懐(ふところ)に飛び込ませているのだ。
イナメナス事件と
人質解放の実際
――イナメナス事件(日揮プラントでの人質救出作戦)後の世論の反応は?
イナメナスの出来事は、イスラム原理主義派のテロに反対する闘いという旗印を前面に出すことによってマリに対するフランスの介入を事実上正当化することになっている。それは同時に、この植民地的支配の再生のエスカレーションの中に軍事的にも金融的にもアルジェリアをよりいっそう巻き込むために、アルジェリアに対する圧力を強めることにもなっている。
イナメナスの人質解放のためのアルジェリア国軍の軍事介入は、アルジェリアの民衆からは、帝国主義勢力の耐え難い命令と干渉に対する最小限の主権行使の反撃であるとみなされている。アルジェリア政権は、自らのイメージを塗り替え、自らが尊重されてこなかったこの主権を保障する存在であるかのように振舞うために、この正しくて正当な民族主義感情の上に巧みに乗っかっているのである。
だが、実際には、イナメナス現地が石油企業とそれらの企業が属する各国の治安上の管理下に置かれた地域であることをアルジェリアの民衆が知る時、政権がアルジェリアの富、とりわけエネルギー資源を実際には売り渡しているのだという真実をいつまでもうまく隠し通すことはできないだろう。
各地で拡がる
ストライキ闘争
――政権に対する自らの怒りを表現する手段を民衆は見出せているのだろうか?
外国から観測している人々にとって重要なこと、それはこの国が同地域の一部の諸国が経験したような革命的危機の情勢を経験したことがないということである。だが、それでもやはり、民衆は社会的な抗議や労働組合による抗議を通じて自らの怒りを表明し続けているのだ。政権に対するある種の反抗が、街頭での抗議やさまざまな公共と民間の経済部門(地下鉄、郵便、病院、民間企業セヴィタルなど)でのストライキという形を取って展開されている。こうした抗議行動を展開した人々が権利を勝ち取ったり、一定の要求を実現させるにまで至っていることも多い。
この問題で顕著なことは、労働組合の指導部が不在であったり、指導の一貫性が欠如したりしているという点である。ストライキは地区ではしばしば労働者自身によって展開される。しかしながら、政治だけが、このような抗議に対してオルターナティブを唯一練り上げることができる防衛的闘争の形態を提供できるのだが、この政治の場でも同様の指導部の空白が存在する。
PSTは、アルジェリアの政治情勢の中では小さな存在ではあるが、社会のこの沸騰に対してひとつの方向を提起し、それを政治の場にまで拡大しようと活動している。ベジャイヤ地域の人口二万五〇〇〇人の都市、バルバシャで(この町の前市長がPSTの同志であった)現に進行している出来事(この闘いについて詳しくは本号の記事を参照)は、われわれのこうした活動の内容を明らかにすることになっている。
地域権力が押し付けようとする少数派連立を拒否するための政治・裁判闘争と住民の大衆動員は、PST前議員たちによって展開されている活動への住民の全面的な参加を示している。だが、この政治・裁判闘争の向こうでは、アルジェリア社会に貫徹している骨の髄までブルジョア的官僚である行政の下にあって、さまざまな社会階層と社会部門の間でありとあらゆる社会的、経済的闘争が展開されている。
バルバシャの闘いの例は、この町の境界を飛び越えて発展していく可能性をもっている。アルジェリアの社会主義活動家の前途に提起されているのはまさに、この活動の帰趨であり、その広がりである。
『トゥテタヌー』(一八一号、二〇一三年二月七日)
アルジェリア
マムード・レシディ(PST・社会主義労働者党)書記長に聞く
聞き手:アラン・クリヴィンヌ 真の社会的沸騰が生まれている
PSTが自治体
の選挙で躍進
――PST(アルジェリア社会主義労働者党)は、地方選の選挙結果からどのような総括を導き出しているのか?
地方選挙に参加する目的は、PSTの政策とその観点をよりいっそう人々に知らせるということであった。反響はよかった。社会的で国際主義的なオルタナティブを提起するわれわれの綱領は、多数の労働者の期待に応えるものであった。地方選では、PSTは六つの地方自治体の選挙に立候補し、そのうちの五つの町で全部で二二人の議員を当選させた。最後に、四八のウィラーヤ(アルジェリアの行政区)のうちの三つのウィラーヤで立候補し、約三万票を獲得した。これは、二大政党RND(民主国民連合)とFLN(民族解放戦線)によって支配されている国における党建設の展望にとって積極的な評価ができる経験である。
アルジェリアは、特恵的待遇にもとづく契約を通じて外国の金融的支配を受けていて、化石燃料から得られる利益を管理している。この利益によって、アルジェリア国家はIMF(国際通貨基金)に資金を預け、大衆動員に対して一定の社会的恩恵を振り向けることができている。今回の選挙で注目すべきは、イスラム主義派勢力とブーテフリカ現大統領の擁護の運動に大いに積極的に組したルイジア・ハヌーンのPT(労働者党、フランスのランベール派と歴史的につながりをもってきた)が凋落したことである。
大衆の自主的な
組織化が始まる
――バルバシャの情勢のあらましについて説明してくれませんか?
それはベジャイヤ県に近い人口二万七〇〇〇人の町で、市長はPSTの同志セデク・アクルールであった。地方選挙前、県知事はPSTの立候補者名簿の登録をすでに拒否するという措置を取ったので、それを撤回させるために住民の大きな大衆動員を行わなければならなかった。昨年一一月の選挙では、PSTは三九%――これは絶対多数ではないが、全政党の中で最大党派――の票を獲得した。その結果、われわれは六議席を得たが、他の四つの政党が協定を結び、八対七の票決で別の市長を選んでしまった。この市長選出は、得票率三五%以上を獲得した候補者名簿の政党が新市長の提案を行うという規定があるにもかかわらずそれを無視して、しかもPSTの議員に対して選出の通知がなされず、PST議員が出席しないままでなされた。
町の住民は、この押し付けを拒否し、市の前執行部を支持する運動に決起した。前執行部は、その任期中に可能なあらゆる手段を駆使しようと試みた。それ以降、すべての人に開かれた総会が毎晩開催されるようになり、住民の真の自主的な組織化が出現した。祝賀行事用会場や他の建物が占拠され、市長舎が閉鎖され、誰一人入庁できなくなくなった。総会は行うべき政治的行動を決定するだけでなく、町の運営のための取るべき決定をも同時に行った。
すでにベジャイヤ県のウィラーヤでは二つの総会が出現しており、そのうちのひとつの総会が一月五日に一〇〇〇人以上の住民を集めて開かれ、新たな選挙の開催を要求してベジャイヤ県の幹線道路を封鎖した。この行動の参加者の中には地方選挙の時にPST以外の党派の候補者名簿に投票した人々もいたが、これらの人々は、PSTに投じられた多数派の票を尊重することを要求したのであった。
現在、この問題をめぐる裁判が行われている。市庁舎の封鎖は人々の非難を招くからという理由でわれわれに反対する人々が一部にはいることは確かである。そうではあるが、裁判所は一月八日には新たな選挙をすべきかどうかの決定を下さなければならない。いずれにしても、これは議会主義ではなく、大衆動員と大衆の自主的な組織化に依拠するPSTにとってはかつてない特別な経験であり、他の町にとっての真の模範となるものである。
――アルジェリアでは大衆動員はどのような部門でなされているのか?
それは、確かに防衛的だが、真の社会的沸騰がまきおこっており、その闘いは、アルジェリア郵便(郵便労働者はこの一週間、ストライキに入っており、一月三日にはグランド・ポストに向けてデモを行った)、造船部門(ERENAVの解雇労働組合員への支援)、ETR社の車の運転手(この一〇カ月間、ストライキを続けている)、アルジェリア地下鉄などの部門に及んでいる。失業者の運動も忘れてはならない。失業者たちは最近、共闘会議を結成したばかりだが、ウアルグラでの失業青年の逮捕などの弾圧を受けている。今のところ、新しい成果を獲得する闘いにはなっていないが、これらすべての闘いの戦闘性はすばらしいものである。PSTは、これらすべての大衆動員を支え、それを大衆化し、PSTの活動家の力量に応じてそれらの闘いに参加している。
▼マムード・レシディはPST(社会主義労働者党)書記長
『トゥテタヌー』(一七七号、二〇一三年一月一〇日)
ギリシャ 経済危機の進行に対して
右翼は反ユダヤ主義を利用
欧州のファシズム台頭と対決を CADTM
CADTM国際ネットワークは、CADTMギリシャの創立メンバーの一人であるモイシス・リチス(注一)に対するナチ政党の「黄金の夜明け」による直接的レイシズム的脅迫への対抗として、ファシズムの台頭がいかに深刻な危険となっているかに、またそのような展開が、債権者が公債返済が基本的人権よりも重要と主張しながら強要する社会的諸条件の崩壊の直接的結末であることに、はっきりと光を当てることを訴える。
ネオナチの雑誌『ストホス』は、モイシス・リチスに関する「伝記ノート」を掲載し、過去二〇年にわたる彼の労組活動と政治活動すべてを数え上げた。「ESIEA(ジャーナリスト労働組合)には収入役を務めるユダヤ人がいる」との標題の下にこれらのレイシズム抽象文はさらに続ける。「彼はヘブライ語を完全に話し、アンチシオニストだと主張(しかし誰が彼を信じるだろう)しつつもイスラエルを愛している!……ESIEA総会ではモイシス・リチスが、ギリシャ人ジャーナリストが直面している諸問題について語る代わりに、ホロコーストと黄金の夜明けを厳しく非難する必要について言い張るだろう……」と。
社会的かつ経済的危機の歯止めなき悪化は、極右が外国人(移民、難民)を悪魔化することを可能にしている。この勢力は、スケープゴートをを見つけ出すために、またギリシャ人が向き合わなければならない諸問題の真の原因を煙幕の陰に曇らせるために、反ユダヤ主義を利用している。ギリシャの人々にトロイカが強いている残酷な緊縮諸方策が多くの人々を導き、対抗のための新しい方法を探させている。しかしそれは、ファシズムという暗黒の道から身を遠ざけるというものには必ずしも限らない。
しかしながら、思い起こさなければならないことは次のことだ。つまり、レイシズムと暴力と人種差別的虐殺扇動の組織である黄金の夜明けの目標は、全ての労組や労働者の政治的、文化的団体の破壊であり、市民的抵抗すべての粉砕であり、違う権利の否認、違う人々、より弱い人々の、肉体的根絶を含む抹殺だ。
このレイシズム的、反動的、権威主義的かつ差別的な逆戻りは、もっとも懸念されるべき進行中の成り行きだ。それを通して債権者たちは、その多くが正統性を欠いている債務に対する返済のために、われわれの社会を破壊している。
CADTM国際ネットワークは、主権を求め、緊縮諸政策に反対し、その諸権利の断固とした主張と不正かつ殺人的な債務の取り消しを求める闘争を行っているギリシャの人々との、完全な連帯を再度明らかにするよう訴える。われわれは、今や議会に席を占めているナチ政党の、殺人的、威嚇的、扇動的行為を許すことはできない。
われわれは、欧州におけるファシズムの台頭に反対し世界中で上げられている多くの声を結び合わせる。公的債務の返済を強要する緊縮諸方策に反対するわれわれの闘争は、欧州におけるファシズムと対決するわれわれの闘争と切り離されてはならない。
モイシス・リチス、CADTMギリシャ、緊縮諸政策とそれらを育て上げているシステムと闘っているすべての左翼諸勢力との連帯を!
(二〇一三年二月二五日、CADTMインターナショナル)
注一)Eleftherotypia新聞の労働者による八カ月にわたる闘いの指導者の一人。彼はまたAIS(債務反対ギリシャ委員会―CADTM)の創立メンバーであり、反ファシスト欧州宣言の主な主導者の一人。
▼CADTMとは、第三世界債務帳消し委員会。ベルギーを本部とするこの委員会は、欧州、アジア、アフリカ、ラテンアメリカに存在する。(「インターナショナルビューポイント」二〇一三年二月号)
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