もどる

    かけはし2013.年2月11日号

原発のために税金を使うな


1.25東電前アクションが経産省・財務省申し入れ

輸出も核燃サイクルもNO

生命第一の予算編成を

 経産省が、二〇一三年度の概算要求を一月一一日に財務省に提出し、その原子力関連の予算要求の内容があきらかになった。
 「放射性物質が有害である期間を短縮する」という名目の新型原子炉の開発費に三二億円、原発の海外輸出のための人材育成費として約一四億円、原発立地地域の「支援」名目で五億七千万円、IAEA(国際原子力機関)への運営費負担を三千万円増額した一億二千万円、そして原子炉の廃炉技術の開発費として一一七億円などが計上されている。
 原発再稼働に反対の世論が多数を占めており、政府が立ち往生する中での今回の経産省の予算要求は、当面の原発政策維持のための人材・技術確保そして利権の確保のためのものだ。東電前アクション!は一月二五日に経産省に対しては「概算要求を撤回しろ」と、一月中に予算編成をする財務省に対しては「経産省の原子力関連の予算要求を却下しろ」と求める緊急行動を行なった。

世界に汚染を
まき散らすな
 夜の行動に先だって、経産省および財務省にそれぞれ申し入れを行なった。経産省では、四人の官僚が応対。東電前アクション!は「この『新型炉』の技術は稼動もしていないもんじゅのものの応用と言われている。政府内でさえ破たんが言われている『核燃サイクル計画』維持のためにさらなる税金を注ぎ込むな」、「原発の輸出は、福島第一原発の事故で原子力関連の技術者の流出が止まらないなかで、海外に原発を作ることを政府が推進して人材を確保しようとする愚策。そもそも原発事故を引き起こした当事国でいまも世界に汚染を撒き散らしている日本が原発を輸出するなど許されない」と主張する要請文を提出(下記に全文転載)。対して経産省側は「新型原子炉の開発はフランスなどとの協定もあり日本側だけの事情で止められない」、「原発輸出に関して震災を経験したからこそ日本の技術が世界に求められている」、「受注競争において中国の技術などより日本の方が信頼性が高い」などと反論。四〇分ほどの応答となった。
 財務省へも要請文を提出。二一日には麻生太郎財務相の「老人は早く死ねばいい」発言もあり、この発言への抗議も含めて「原子力部門に限らず、命を第一とする予算編成を行え」と求めた。

財務省にも
抗議の訴え
 夜には、まず経産省本館前で抗議行動。毎週金曜に行われている「原発・TPPに反対する命の対話集会」とジョイントする形で行われた。要請文を読み上げ、申し入れ時の経産省の応答を紹介し「原発に税金を使うな!」、「経産省は概算要求を撤回しろ!」、「経産省は恥を知れ」と八〇人ほどで声をあげた。その後、道路を挟んで真向かいの財務省に移動。麻生の「老人は早く死ねばいい」発言を糾弾する発言が相次いだ。そして、予算編成作業の最中であろう建物の中に向けて「経産省の概算要求を却下しろ」とシュプレヒコールを上げて、この日の行動を終えた。
          (F)

申し入れ書
経済産業相 茂木敏充様
東電前アクション!

      2013年1月25日

 

 私たち東電前アクション!は、貴経済産業省が1月11日に財務省に提出された2013年度の概算要求のとりわけ原子力に関連する予算要求の内容について抗議するものです。
 そして、以下の理由で経済産業省および茂木敏充大臣に原子力関連の予算要求を撤回することを求めます。

一、 「放射性物質が有害である期間を短縮する」という名目の新型原子炉の開発費に32億円が計上されています。
 この技術は「もんじゅ」のものの応用と言われており、「もんじゅ」は長らく稼働もされていない破綻した技術と施設であることはもはや明らかです。この32億円は、すでに破綻した核燃料サイクル事業の延命のためでしかないと言わざるを得ません。

一、 原発の海外輸出のための人材育成費として約14億円が計上されています。
 2011年の福島第一原発事故で日本国内の原子力事業がままならないからと、原発という危険な施設の技術を海外に輸出するなどということを政府が後押しすることは道義的に許されるものではありません。
 福島第一原発事故の当事国としてなすべきことは、原発の輸出などではなく、一刻も早く原子力事業から撤退することで世界への謝罪の証とすることではないでしょうか。

一、 原発立地地域の「支援」名目で約5億7千万円が計上されています。
 観光などのアピールのための「支援」などと称していますが、原発立地地域は原発が存在するからこそ、福島第一原発事故以降観光客の減少に苦しんでいます。また、この「支援」は、原発の再稼働のための地ならしのための「ばら撒き」と受け取られても仕方のないものと言わざるを得ません。
 私たちは、カネで地方を支配して原発を作らせ維持する手法そのものに反対します。そして、経済産業省は、原発がなくても生活水準が維持され向上する地方経済の確率のための支援を行うべきだと私たちは考えます。

一、 IAEA(国際原子力機関)への運営費負担に3千万円増額した1億2千万円が計上されています。
 昨年12月からIAEAの事務所が福島に置かれていますが、少なくない福島の人々が「被ばく隠しのための福島進出ではないか」という疑いの目で見られている組織がIAEAです。
 そもそもIAEAは核推進機関であり、世論調査によっては市民の7割が「脱原発」を求めている現在、そのような組織を福島に常駐させ多額の運営費を負担することは福島第一原発の事故が「収束」から程遠い状況を考えても許されるものではありません。

一、 原子炉の「廃炉技術の開発費」として117億円が計上されています。
 すでに54基の原発を建設した今になって「廃炉技術の開発」が必要などということも私たちは驚きを隠せません。そして、福島第一原発の収束・廃炉作業において、何よりまず必要とされているのは収束作業にあたる労働者たちの賃金・待遇面の改善、そしていわゆる「ピンハネ」を前提とする多重下請け構造の一掃です。
 また、その他の原発についても、放射性廃棄物の保管や処分方法が確立していない現状において「原子炉の解体技術」だけを新たに「開発」することにどれだけの意味を持ちうるのか疑問です。これは「開発」と称して、引き続きカネを原子力業界に垂れ流すものではないかという疑念は拭えません。
 以上の概算要求は、福島第一原発事故以降、危機に瀕した原子力業界を政府・経産省が原子力技術や人材ひいては「原発利権」を維持することで救い出そうとするためのものだと私たちは指摘します。
 そして、この原子力関連の予算計上部分を経産省自ら撤回し、原発推進の立場を撤回することを私たちは求めるものです。

 私たちは関連して、

一、 「暫定基準」で稼働させ、直下の活断層の危険が原子力規制委員会の内部から指摘されている大飯原発の3、4号機の即時停止を関西電力に促すこと。

一、 大間原発や島根原発3号機などの建設中のものを含めて、原発の増設を断念すること。

一、 核燃料サイクル事業の破綻を認めて、撤退すること。

 以上の事柄の実行を強く求めるものです

2.1「新安全基準」の問題点をつく

再稼働に道を開くな

「骨子案」を批判する記者会見


あまりにも
拙速な動き
 原子力規制委員会は、七月に確定される原発の新安全基準策定のための作業を急速に進めつつある。一月三〇日の規制委員会では、避難基準(事故後最初の数時間は毎時五〇〇マイクロシーベルト、その後は毎時二〇マイクロシーベルト)を含む原子力災害対策指針案が了解され、一月三一日から二週間パブリックコメントに付されることになった。一月三一日には原発の新安全基準についての骨子案を固めた。さらにわずか二週間という短い期限でパブリックコメントの募集を行うとされている。これもまた二週間を期限としてパブリックコメントに付すという拙速作業だ。
 二月一日、原子力規制を監視する市民の会(福島老朽原発を考える会[フクロウの会]、FoE Japan、原発を考える品川の女たち、プルトニウムなんていらないよ!東京、再稼働反対!全国アクション、福島原発事故緊急会議、経産省前テントひろばの七団体で構成)が呼びかけて緊急記者会見が衆院第一議員会館内で行われた。この記者会見は、専門家の観点から、原子力規制委員会で進められている「新安全基準」をめぐる議論が、全く福島原発事故の検証をふまえたものではなく、議論の範囲があまりに狭く、拙速であり、手続き的には電力事業者へのヒアリングにのみ時間を割き、批判的な意見の取り込みに消極的であることなどを明らかにしようとするものだった。

福島事故の
検証が先決
 記者会見では最初に、阪上武さん(フクロウの会)が「市民の会」の「原発『新安全基準』の検討について」と題する声明に沿って、以下の点を指摘した。
@「議論が煮詰まっていないにも関わらず、限られた数人だけで議論を拙速に進め、結論を急いでいる」。
A「福島第一原発事故で、実際のところ何が起こったかの検証もできていない段階で『新安全基準』について語ることはできない。地震による影響、溶融燃料の状況、格納容器破損の状況などの全面解明が先決」。
B「シビアアクシデントには移動的施設による対応としており、固定施設での対応はこれからとなっている。つまり応急的対応がとりあえず可能ならば動かしてもよい、というのは間違い。これは大飯で再稼働を強行したのと同じ論理だ。移動式施設での対応では地震や高線量下では作業が困難になる」。
C「格納容器の容量が小さいという構造上・設計上の問題が検討に付されていない」。
D「特定安全施設について航空機事故・テロ対策とされ、肝心の地震・津波への対応が目的から外されている」。
E「フィルター付ベントの効果を電力会社は強調するが、フィルターを付けたところで放射能の大量流出は避けられない」。
 次に井野博満さん(東大名誉教授、元ストレステスト意見聴取会委員)が次のように指摘した。井野さんは、「新安全基準」の問題点として、二点に絞って批判した。第一は、シビアアクシデント対策として「可搬施設」(移動式施設)でお茶を濁すのではなく〔特定安全施設〕が絶対に必要」ということだ。
 「特定安全施設」とは地震、津波や航空機落下をも想定して、原子炉建屋から離れた場所に別の建屋を新設するもの。そこに第二制御室や非常用電源、冷却ポンプを備えさせ、そこから事故の進展を食い止める機能を持つ。しかし「骨子案」では「特定安全施設」について「更なる信頼性向上のための施設」という位置付けになっており、言い換えれば「すぐには設置しなくてもよい施設」ということになる(一月三一日の検討チームでの質疑応答における更田規制委員の回答から)。更田委員は、「特定安全施設」を恒久設備とすると三、四年かかるので「ベストな選択が何かを考えなければならない」と語ったという。
 すなわち恒久施設として特定安全施設を義務付ければ、時間がかかる。「長期停止炉の再起動は新設炉以上の大きな懸念がある」(更田委員)。したがって「恒久施設の完成」を待たずに、再稼働を行う必要があるということだ。井野さんは、こうした見解を厳しく批判した。
 井野さんが挙げた第二点は、「独立な二系統の外部電源確保」という規制委員会検討チームの案を、電気事業連合会(電事連)が値切ろうとしている点だ。井野さんは「独立に二系統造るのは困難」「地震で壊れた鉄塔はない」という電事連の主張を批判し、「できる安全対策はすべて行うべき」と強調した。

「仮想事故」
の過小評価
 次に後藤正志さん(元原子力プラント設計技術者、NPO法人APAST理事長)は@「福島事故の再発防止は、継続的な事故の原因究明と抜本的な対策が必要」、A「原子力発電所の安全目標は事故の発生確率ではなく、事故の被害の規模で判断する」、B「事故の被害の規模は、理論上生じる可能性がある、最大規模の事故を想定する」、C「安全対策は、小手先の変更ではなくプラント設計の根幹から抜本的に見直す」、D「福島事故で損傷した、あるいは機能喪失した可能性がある機器やシステムの抜本的な改良」、E「過酷事故対策は確実ではない」、F「“みなし基準”や“代替基準”の原則禁止」の七項目を「新安全基準の前提」として提示した。
 そして規制委員会による新安全基準骨子案がこれらの前提を満たしていないことに注意を喚起した。
 青木秀樹弁護士は、「仮想事故」(原子力発電所の設置に先立って行う安全審査の際、その立地条件の適否を判断するための「原子炉立地審査指針」において、重大事故を超えるような、技術的見地からは起こるとは考えられない事故を「仮想事故」と定義される。「指針」では、仮想事故が発生した場合でも、周辺の住民に著しい放射線災害を与えないことを求めている。「仮想事故」に相当するのは、沸騰水型原子炉[BWR]の場合は原子炉冷却材喪失事故、主蒸気管破損事故、加圧水型原子炉[PWR]の場合は原子炉冷却材喪失事故及び蒸気発生器伝熱管破損事故)を過小評価していることが問題と述べた。
 青木弁護士はさらに確率が低い事象については柔軟に対処する、というやり方こそが一番危うい、と指摘した。
 最後に、避難基準、安全基準骨子についてのパブリックコメントに積極的に応じていくことが主催者の「市民の会」から訴えられた。
[追記]二月一日、日本原電敦賀原発直下の断層問題に関して、原子力規制委員会は原子力規制庁ナンバー3で地震・津波担当の名雪哲夫審議官が、その公表前(一月二二日)に専門家会合の報告書案を原電役員に漏出させていたと発表した。名雪審議官は二月一日付で訓告処分となり、更迭された上で出身元の文科省へ異動させられた。この事実は規制庁が依然として電力業界と密接な連絡を取り合い、深い癒着関係にあることを暴露するものだ。        (K)

 


もどる

Back