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    かけはし2013.年2月4日号

仏・アルジェリアの「対テロ」作戦糾弾


イナメナスの「人質」殺害事件について

テロリズム反対 植民地主義的軍事介入反対

アラブ革命に
敵対する犯罪

 一月一六日早朝(現地時間)、リビアとの国境に近いアルジェリア南東部イナメナスの天然ガスプラントを、数十人の重武装のイスラム主義グループが襲撃し、日本人を含む多くの外国人を人質にとって立てこもった。「血盟団」を名乗るこのグループはフランス軍のマリからの撤退と逮捕されているイスラム主義武装グループメンバーの釈放を要求したとされる。
 しかしアルジェリア政府は国軍の主導下に、あらゆる情報を遮断した上で、施設を占拠した武装集団への攻撃をただちに開始した。人質を車に乗せて脱出しようとした武装グループにも空爆が行われ、その際人質となっていた外国人も殺害された。一月一九日にアルジェリア軍による最終的攻撃が敢行され、外国人人質の死者は最終的に三七人。そのうちガス関連施設の建設にたずさわっていた大手プラント企業「日揮」の社員、派遣社員の日本人一〇人が含まれている。
 われわれは、人質を取って自らの存在をアピールし、要求を実現しようとするイスラム主義武装グループのテロ行為を、許しがたい犯罪として厳しく糾弾する。彼らの行為は、二〇一一年にチュニジア、エジプトから、全アラブ地域に拡大した独裁打倒、自由の実現、失業・貧困・格差反対を掲げた民衆決起の大義=アラブの革命に敵対するものだ。
 そしてわれわれは、この事件によって生命を奪われた日本人一〇人をふくむすべての人びとを追悼する。

長期の内戦と
戒厳令弾圧


 同時にわれわれは、今回の悲劇がアルジェリアの強権的軍部主導独裁体制、ならびにその軍部体制によって支えられた国際石油・ガス資本によるエネルギー支配のための開発利権、そして旧宗主国フランス帝国主義が現在推し進めているアルジェリアの隣国マリへの新たな植民地主義的軍事介入と密接な関わりがあることについても指摘しなければならない。そしてそれは、アメリカ帝国主義が二〇〇一年「九・一一」後に推し進めたアフガニスタン、イラクにおける「対テロ」戦争の完全な破綻の表現でもある。
 まずアルジェリアの軍部主導体制こそ、多くの人質を無残に殺害した直接の下手人でもあることは明らかだ。アルジェリア政府は事件の当初から「交渉」に応じず、犯人に「投降」の呼びかけすら行わず、一気に武力解決の強硬方針を取った。アルジェリア軍治安部隊は、人質を連れて現場から脱出しようとした武装グループの車両を爆撃し、人質となった人びとも含めて殺害した。さらに外国人人質を盾にとってガス施設に立てこもった武装グループとの銃撃戦の中で、犯人グループと人質をもろともに射殺したと見られる。人質の生命に対する配慮など初めからなかったと言わなければならない。
 こうしたアルジェリア軍部の無慈悲な「皆殺し作戦」は、イスラム主義勢力とアルジェリア軍との一〇年以上の内戦と一九年間(一九九二年〜二〇一一年)にわたる戒厳令体制によって培われたものだった。アルジェリアの内戦は、イスラム主義政党であるFIS(イスラム救国戦線)が八〇%以上の議席を獲得した一九九一年の初の複数政党制での選挙結果を軍部がクーデターによって否定し、戒厳令を発動したことを出発点としている。このあからさまな民主主義への敵対を、イスラム主義勢力の伸長を恐れた欧米諸国は事実上黙認した。この内戦は血で血を洗う凄惨なものとなり、一〇数万人もの人びとの生命が奪われたと言われる。しかし欧米諸国は、アルジェリアの豊富な石油・ガス資源への利権への配慮から、軍部によるイスラム主義勢力へのジェノサイド的な弾圧を見て見ぬふりをした。
 この点ではビルマ(ミャンマー)においてアウンサン・スーチー率いる国民民主連盟(NLD)が八〇%を獲得した総選挙結果を否定した軍部政権に対して、欧米諸国が経済制裁を行った事例と対照的である。

フランス軍は
アフリカの憲兵


 そして今回のイナメナスの人質事件において、当初アルジェリア政府と軍の強硬路線に「憂慮」を示していた欧米諸国や日本も、結局のところ人質の死をもたらしたアルジェリ当局の対応を「是認」することになってしまった。実際のところ、アフガニスタンやイラクにおいて、多くの民衆を虐殺した「テロとの闘い」を遂行してきたアメリカや欧米諸国が、アルジェリア政府と軍部による同様の「テロとの闘い」を批判できるはずもなかった。アルジェリアのブーテフリカ政権を米国は「テロとの闘い」におけるパートナーと位置づけ、さまざまな支援を行ってきたのである。
 またわれわれは、イナメナスの悲劇が、現在フランスが主導しているマリへの植民地主義的軍事介入と密接に関連していることについても指摘しなければならない。旧植民地宗主国であるフランス帝国主義のマリへの軍事介入は、アルジェリアの社会主義労働者党(PST、第四インターナショナル・アルジェリア支部)やフランスの反資本主義新党(NPA)の同志たちが述べているように、脅かされているアフリカへの政治・経済的影響力を軍事力によって回復しようとする帝国主義的・植民地主義的行為にほかならない。
 昨年マリ共和国で起きた軍部隊のクーデター以後、マリ北部はイスラム主義勢力によって占拠・支配されるにいたった。マリ北部の反政府勢力はもともと、北部の遊牧民トゥアレグ族などの分離主義的自治運動であるアザワド解放民族運動(MNLA)だったが、イスラム主義勢力によってMNLAは追放された。主導権を奪ったイスラム主義勢力は、「イスラム・マグレブ諸国のアルカイダ(AQIM)」やその分派などさまざまなグループによって構成されており、リビア・カダフィ政権の崩壊に伴って大量の武器がマリに流出することになったと報じられている。

国連安保理決議
にも違反の派兵


 このマリでの内戦に対して、昨年一二月、国連安保理は、「イスラム過激派掃討・北部奪回」のためにマリ周辺諸国からなる「西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)」が軍を派遣することを承認した。
 このECOWAS軍のマリ北部への派兵は、今年の秋になると想定されていた。しかしそれに先立ってフランス軍が一月一一日に空軍と陸軍によるマリへの軍事介入を開始したことにより、ECOWAS軍もおっとり刀で軍を派遣することになった。アルジェリア政府はフランス軍の領空通過を認め、マリとの南部国境を閉鎖した。
 当初、フランス軍は自らの役割をイスラム武装勢力の「南進阻止」であると位置づけ、本格的掃討作戦はECOWAS軍に委ねると言明していた。しかし一月二〇日、ルドリアン仏国防相はマリ介入の目的を「北部の完全掌握である」と述べ、フランス軍が主力となってマリ北部制圧を行うと述べるに至ったのである。
 そもそも昨年一二月二〇日の国連安保理決議2085は、「マリ国防軍及び治安部隊の再構築に貢献」し「テロリスト、過激派勢力、並びに武装勢力により占拠されている北部地域をマリ政府当局が奪還できるよう支援」するために「アフリカ主導のマリ国際支援ミッション(AFISMA)」を「所定期間一年の任期で派遣」することを承認したものである。したがってフランス軍の単独介入とアルジェリアによる協力は、国連決議2085の明確な違反である。そしてECOWAS諸国による派兵も「アフリカ主導」ならぬ「フランス主導」の実態を覆い隠そうとする隠れ蓑に他ならない。
 現に、フランス軍の空爆・地上戦闘によって多くの市民の生命が奪われ、またマリ軍による「イスラム武装勢力と疑われた」一般市民、とりわけトゥアレグ族への処刑が相ついでいると報じられている(朝日新聞、一月二四日夕刊)。しかし国連はフランスによるマリ軍事介入を「歓迎」している。われわれはイスラム武装勢力による「人道犯罪」を糾弾するのみならず、「テロとの闘い」を掲げたフランス軍などによる「人道犯罪」を厳しく非難する。

欧米による武力
介入は今も続く

 多くのアフリカの国々が独立を勝ち取り「アフリカの年」と言われた一九六〇年以後も、欧米帝国主義は直接・間接的な軍事介入・圧力・侵攻によってアフリカ諸国の進歩的政権を転覆し、植民地主義的利権の維持、資源の収奪を継続してきた。旧ベルギー領コンゴでは一九六〇年の独立直後から、鉱物資源の豊富なカタンガ州の分離・独立運動がベルギーをはじめとする欧米帝国主義の支援で組織され、ルムンバ首相が虐殺された。
 熾烈な民族解放闘争によって一九六二年に独立を勝ち取ったアルジェリアでは、キューバ革命と連帯しラディカルな変革を進めようとしてきたベン・ベラの政権が一九六五年の軍事クーデターによって転覆された。一九六九年、「日揮」がアルジェリアでプラント建設に踏み込んだのは、ベン・ベラを追放したブーメディエン開発独裁体制の石油資源「国有化」政策の下においてであった。
 一九七〇年代には、ポルトガルからの独立を勝ち取り、親ソ派「社会主義」政権を打ちたてたアンゴラ、モザンビークに対して南アの白人アパルトヘイト政権の介入によって長期にわたる内戦が勃発し、国土は荒廃した。
 一九八七年には、ブルキナファソでラディカルな民主主義的変革を推進し、絶大な民衆的支持を集め、国際的にも注目されていたトマス・サンカラがクーデターによって暗殺された。

新自由主義攻撃
と「対テロ戦争」


 そして一九八〇年代から一九九〇年代にかけてアフリカ諸国は、資本のグローバル化を背景にIMF・世界銀行による債務奴隷となり、「構造的調整政策」を通じた民営化、社会的支出の削減の中で民衆の貧困・飢餓、離散がさらに深まった。民衆の抵抗、決起は厳しく弾圧された。こうした社会の分裂・荒廃、多国籍資本と結びついた政権の腐敗の中で、イスラム主義武装勢力が、ソ連邦崩壊以後の新自由主義的グローバリゼーションの席巻の中で大きく伸長することになった。それは反米・反西欧の民衆的怒りと結びつき、テロリズムをともなったさまざまな形態での宗教的過激主義が伸長する基盤となった。
 ブッシュ政権が解き放った「テロとの戦争」とその破綻、そして今日のグローバルな資本主義の危機のいっそうの深まりは、反動的な宗教的過激主義を再生産させる温床ともなっている。しかし同時にわれわれは、二〇一一年の「アラブの革命」に体現された民主主義・自由・人権・平等・公正を求める急進的な大衆的決起の可能性をも見ている。それは国際的に連動することで、新しい革命運動の可能性を手繰り寄せていく基盤でもある。
 反動的テロリズムを克服し、「テロとの戦争」に立ち向かい、「二一世紀の社会主義」をめざす闘いの可能性を、アラブ諸国の仲間たち、パキスタン、インドネシア、フィリピンなどアジア諸国の仲間たちの闘いを共有しながらともにつかみ取っていこう。

「邦人保護」へ
自衛隊法改悪

 安倍政権は、今回のアルジェリアでの「人質殺害事件」の悲劇を利用して、「邦人保護」「進出企業保護」を名目に、国家安全保障会議(日本版NSC)の新設、自衛隊法の改悪による「邦人輸送、武器使用条件緩和」、防衛駐在官拡充による対外情報収集の強化などに踏み込もうとしている。殺害された人びとを「企業戦士」としてたたえ、「国益」のために亡くなった「戦死者」として追悼しようというイデオロギー的仕掛けが作動し始めている。
 それは「人質事件」への具体的対応策というよりは、米国の「新国防戦略」と一体化したガイドライン・防衛大綱の見直しによる軍拡、海外派兵の強化、「国家安全保障基本法」制定、集団的自衛権見直し、さらには憲法改悪と「国防軍」創設という一連の動きの中に位置づけられたキャンペーンである。
 「邦人保護」「進出企業保護」を口実にした海外派兵への道を許すな!フランスによるマリへの軍事侵攻を許すな! アルジェリア政府によるフランスへの協力と、「人質殺害」作戦を許すな! テロリズム反対!
 (一月二八日、平井純一)

人質問題についての声明
フランス軍はマリから出ていけ

社会主義労働者党(第四インターナショナル・アルジェリア支部)全国書記局

 一月一〇日、アルジェリアによる異常かつ秘密裏の、許しがたい支持の下に行われたフランス植民地軍によるマリ侵攻から五日後、「片目の男が率いる約三〇人の武装したイスラム主義者」、そして「血盟団」といわれるもう一つのグループによって、イナメナスのガシトゥイユ・ガス田で人質拘束事件が起こった。それはこの地域におけるフランス帝国主義の目標と、民衆に押し付けられた新たな力関係を、さらに明らかにするものである。
 PST(社会主義労働者党)は、こうした犯罪的行為を非難するにとどまらず、それがフランス帝国主義を利することは明らかだと考える。イナメナスでのイスラム武装集団による行動は、マリへのフランスの軍事介入を正当化し、アルジェリアがいっそうの軍事的関与、とりわけ財政的プランにおける関与を行い、フランスによるこの植民地再征服の試みへの国際的合意を明確にする圧力となるものだ。
 イナメナスの事件は、NATOとフランスが二〇一一年に開始し、大規模な破壊をもたらしたリビアでの植民地主義的作戦と切り離すことはできない。マリでの「サーバル・キャット(アフリカ山猫)作戦」は、フランスが一九八六年にチャドで確立した「チョウゲンボウ(猛禽類の鳥)システム」を強化するものだ。それはブルキナファソとモーリタニアに駐留する強襲作戦ヘリコプターを使ったものである。要するにサヘル地域(サハラ砂漠以南)全体が「アフリカの憲兵」であるフランスの軍靴に踏みつけられるのである。
 マリにおける「イスラム主義の脅威」が現実のものであり、恐るべきものであったとしても、それは何よりも、アフリカと全世界の民衆を借金の山に追いやり、貧困と圧制を運命づける、フランスならびに帝国主義諸国が強制した新自由主義政策の社会的・経済的行き詰まりがもたらしたものである。
 PST(社会主義労働者党)は、イナメナスの人質を救出する軍事作戦への技術的・軍事的考慮やその是非にとどまらず、われわれが目にしているイギリス、日本、アメリカなど帝国主義諸国の耐えがたいまでの干渉や指令が、新自由主義の名の下にわれわれの富を売り払い、われわれの経済を破壊するほどまでに、われわれの国家主権を売りはらうものであることを明らかにするものである。

?マリでの植民地戦争と、それがアルジェリアにもたらした結果を許さない!フランス軍はマリから出ていけ!
?アルジェリアの空域をフランス軍に開放するな!
?マリ国民のすべての構成要素に民主主義的権利、発展の権利を保障する政治的解決を!

アルジェ、二〇一三年一月二〇日


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