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    かけはし2013.年1月21日号

選挙結果・「領土問題」と
新しい闘いの方向を探る


12.24新時代社・労働者の力社よびかけ討論会

 一二月二四日、新時代社・労働者の力社呼びかけで「新たな東アジア情勢と領土問題」をテーマとする学習会を都内で行った。 
 総選挙と東京都都知事選の結果、安倍極右政権、猪瀬都知事が誕生した。日本維新の会などの新たな政治勢力の登場なども含めて当面する政治情勢に立ち向かうために集中した討論が求められている。また、海外では米・オバマ大統領、中国・習近平体制、韓国・パククネ大統領、北朝鮮・金正恩体制の始動による政治・軍事再編の分析と評価も急務だ。さらに、この間の「尖閣列島」「竹島」をめぐる領土問題やナショナリズムに抗していくために論点整理も行った。以下、報告する。(Y)

〔1〕衆院選挙、都知事選について

平井純一―「総選挙結果と日本政治情勢について」

 投票率は戦後最低だった衆院選挙のデータから次のことが見えてくる。今回の自民大勝は民主党への怒りと不信、絶望感の現れである。「変革」への期待は、日本維新の会、みんなの党に表現されていた。維新の比例区得票は、一二〇〇万を超え、民主党を上回り二位となった。共産党、社民党の得票率は、八・四%、議席占有率が二%しか獲得できなかった。「左翼」の崩壊的現実が進行している。このように政党関係の配置地図は、改憲・新自由主義の側に大きく移行した。
 安倍・自民党の政策は、改憲・教育政策などを見れば極右的本質を押し出すものだった。しかし、選挙期間中の政策上の重点は「金融・大型公共投資」による景気回復・日本経済再生に比重をおいた。つまり、当面の自民党・公明党政権の政策は、改憲・「領土」問題などについては対中国関係などを慎重に見極めていくことになるだろう。安倍は、原発政策について民主党政権時の政策見直し、再稼働、増設の可能性にふれている。原子力規制委員会の新安全基準が七月に公表される予定だが、ここが一つの攻防となる。いずれにしても本番の攻撃は、七月参院選後に設定している。結果次第であらたな政党再編が本格化する。
 新たな政治情勢と対決するために第一は、選挙結果が脱原発運動の広がりがありながらも「不発」「巨大なギャップ」を示したが、被災地・福島の取り組みと連帯し、安倍政権の「原発推進」政策と対決する闘いの構築である。第二は、「連合」支配に抗する労働運動の根本的再組織化だ。生存権・社会的公正、所得再配分、資本への規制・環境政策を軸にした過渡的諸要求の実現の闘いだ。第三は、沖縄闘争の「反ヤマト反米」の「島ぐるみ」の闘いと連帯し、「軍事植民地的差別支配」を許さない闘いの強化である。
 原発、貧困・社会的公正、憲法、沖縄・東アジアの問題を軸に据えた総合的アプローチが必要であり、国際主義的な「反資本主義」左翼のための闘いの可視化の蓄積が問われている。

神谷哲治―「労働運動の課題」


 連合は、野田政権下で反動的役割を担いつづけた。だが連合支配を打ち破るにしても、労働組合の組織率が継続的に減少している。パナソニックなどは業績不振で電機産業全体で一三万人リストラを強行し、自動車産業も生産調整に入っている。そのシワ寄せが中小下請企業にも及んでいる。公務員職場でも人員削減が行われ、「左派組合」と言われた自治労も組織防衛の対応でしかない。
 つまり、労働者解雇と闘えない連合といつまで一緒にやっているのかとして問われている。労働組合運動の建て直しは避けられない課題だ。要求と闘争の具体的設定が重要だ。全労連、全労協も含めて個別の争議はたくさんある。小さな闘争だから可視化できない。例えば、キャノン争議の長期の闘いが勝利和解を勝ち取った。宮城合同労組でも勝利を実現している争議もある。こうした成果を労働者の共有財産として資本との闘いにむけた反転攻勢へのバネの一つとする可能性があるにもかかわらず、ほとんどの労働者に伝わらない現実がある。
 可視化を実現したのは、この間で言えば派遣村だった。非正規労働者運動とホワイトカラーエグゼンプション(労働時間規制適用免除制度)反対運動の成果を土台に、〇八年リーマンショック時に反貧困ネットワークと共に派遣村を実現し、連合なども引きずり込んだ。派遣法抜本改正運動も作り上げた。この延長に民主党政権を押し上げたが、結局、統制することはできなかった。連合と民主党内旧同盟系議員グループの暗躍を許してしまった。人々の「変革」の期待をことごとく裏切った。その結果が今回の衆院選挙だ。
 労働組合運動の再建は、可視化できる闘争をどう作るかが問われている。新自由主義の中で社会の分断と分裂は深まっていく。維新の会とみんなの党の得票が一七〇〇万票だった。新自由主義派であり、社会の分断を是とする勢力だ。こことも対抗しなければならない。分断を拒否し、連帯する闘争の可視化を目指し、階級対立として表現していくことが求められている。


参加者の発言整理

 @―前回の選挙では、民主党に「期待」して投票した部分が、今回は日本維新の会に新自由主義とトップダウンで「変革」してくれるという「期待」で投票した傾向があったのではないか。脱原発運動の活動家は、未来に投票したという人が少なくなかった。また脱原発統一候補を出すことが弱かったから自民党に負けたという感想もあった。投票した政党が未来からみんなの党まであって、政治的にはあいまいだ。かつて民主党を押し上げた人たちが分解してしまった現われだろう。小選挙区制度は、四〇数%の得票で自民党が八割近くの議席を取ってしまう非民主主義について、もっと批判すべきだ。
 A―猪瀬候補が四三〇万票の史上最高得票だった。宇都宮候補は、九六万票であった。この間の都知事選において一番共同戦線的に成立した候補だったが、前々回の都知事選での浅野候補の一六〇万得票と比べてかなり減った。連合東京は、官僚的な手法で猪瀬支持を決めた。ポスター貼りも連合がやっていたほどだ。
 共産党、市民は、分担してポスター貼りなども行ったが、宇都宮候補の知名度は、かなり低かった。時間もなかったし、実質的にポスター貼りの分担までだった。若者層に対するアプローチ、草の根で支持組織を作っていくことも不十分だった。勝手連的に宇都宮選挙をやったが、時間がなくて地域市民運動を全部結集させることができなかった。結果として体力が落ちていると言わざるをえない。それでも善戦したと言えるのではないか。選挙で動く組織の作り直しが求められている。
 宇都宮候補を支持した共産党、社民党、新社会党、未来、市民などの統一戦線構造は、今回の選挙結果、参院選を考えた場合、この構造を強化していく必要がある。
 B労働者階級が資本家と対決して統一して闘うのではなく、バラバラにされている状態が続いていることを示した。例えば、連合傘下の組合が民主党支持を決定しても、下部組合員などは維新の会に投票してしまう傾向もあったりした。下からの共同戦線作りを粘り強くやっていくしかない。組織労働者の組織率減少、高齢化傾向を克服していく発想の転換も含めて必要だ。連合の労使協調・原発推進・非正規切捨て政策支持は、結局、組合離れ、魅力ないものとして人々を遠ざけてしまっている。
 宇都宮候補を支持した共同戦線構造は、そのまま参院選に移行するわけではない。七月に都議選もある。猪瀬都政と議会勢力がどうなるかも重要なメルクマールだ。

〔2〕領土問題とナショナリズム

早野一―「尖閣問題から考えるプロレタリア国際主義」

 一九七二年の日中国交回復では尖閣問題を「棚上げ」と位置づけた。良心派のなかに「棚上げ」論を支持する傾向がある。右翼ポピュリストによる領土ナショナリズムよりも何千倍もましであるが、プロレタリア国際主義はそこにとどまっていてはならない。第二インターは「搾取と大衆的殺害の資本主義世界に、諸民族の平和と友好のプロレタリア的世界を対置せよ!」というバーゼル決議をあげた。レーニンは世界大戦のさなかに「労働者には平和を、資本家には戦争を」と呼びかけた。尖閣問題は、尖閣の日本の領土編入が沖縄、朝鮮、中国への侵略の歴史と一体であるという歴史認識をふまえつつ、戦後サンフランシスコ条約体制のもとでアメリカの軍政支配のひとつとして現在の沖縄米軍基地問題につながる現代的な課題として認識するとともに、現在の中国や台湾の民衆との関係では階級的観点が重要である。
 香港、台湾をはじめ世界各国の中国系住民が「釣魚台を守れ!」という運動を展開していた。香港においては英植民地政府に対する民主化闘争ともあいまって大きな運動となっていた。尖閣問題の棚上げは、中国の毛沢東・周恩来指導部による「ソ連社会帝国主義への対抗」としての「平和共存」という、中国的にゆがめられたスターリニズム外交である。われわれは官僚的に堕落した労働者国家としての中国における政治革命=民主化を支援する立場をとってきた。「労働者国家は防衛しなければならないから尖閣も中国のものだ」と考えるのではなく、「帝国主義との経済的(石油)軍事的(日米安保の適用範囲)焦点となっている尖閣の領有権については、当然、中国の領有権を認めるべきだ」という立場であった。中国官僚支配体制による「平和共存」政策に対する先鋭な対抗軸としての労働者国家防衛の具体的スローガンであったと言える。
 その後も中国では民主化を求める運動が波状的に続いた。一九七六年の第一次天安門事件、七九年「民主の壁」、八〇年代には一定程度の自由化のなかで学生らによる民主化運動などが、「改革開放」政策の大状況のなかで続いた。それは一九八九年の「北京の春」でピークを迎え、六月四日の天安門事件とその後の取り締まりで徹底した弾圧が行われる。九〇年代中ごろからは労働者や知識人の自立した運動が完全に抑圧される中で、経済一辺倒のさらなる改革開放が進められた。国有企業民営化が全土を席巻するが、官僚支配体制に対する最大の抵抗勢力である労働者による抵抗力はあらかじめ摘み取られていた。尖閣問題を棚上げした中国官僚体制は、それ以上に中国国内における階級闘争を「棚上げ」し、押しつぶしてきた。両者は一体である。
 資本主義グローバル化に合流した中国の大国化とそれに対抗する日米右翼勢力の挑発が日中間の激しい摩擦を引き起こしている。
 しかしそれ以上に激しさを増しているのが資本と労働者の階級衝突である。日本の労働者市民は、日本の侵略の歴史を反省し、戦後補償や真摯な謝罪を求めるアジアの人々の声に応え、その実現のために奮闘し、右翼政治家や右翼的言論の台頭を許さないネットワークを強化するとともに、中国の労働者が日々直面する問題――日本資本を含む資本の搾取と抑圧にある中国労働者たちのさまざまな声や動きに注意を払い、可能なかぎりプロレタリア国際主義を発揮するための呼びかけを発するべきだろう。
 中国の新たな社会革命の主体は、グローバルな資本主義のなかで模索を続けている。その主体の形成と発展のための闘争、そして国際連帯は、一分一秒たりとも「棚上げ」されてはならない。
 マルクスの『フランスにおける階級闘争』に寄せたエンゲルスの序文にある次の一文を胸に刻みたい。「軍備拡張の直接の原因となったアルサス=ロレーヌの合併は、ドイツとフランスのブルジョアジーのあいだでは相互の排外熱をあおりたてたようだが、両国の労働者にとっては、それは団結の新しいきずなとなった」。

宮本明―「領土問題について ノート」

 領土問題の考え方、態度のとり方の事例を紹介しておく。
 一九二四年、ソビエト指導部は、ロシア・ツアー体制の帝国主義利権である東支鉄道について中国との関係で基本的に返すが、とりあえずは革命ロシアが管理するとしていた。これに対してフーゴ・ウルバーンスらの極左的反対派は、この対応に対して赤色帝国主義だ、なぜすぐに中国に返さないのかと批判した。
 トロツキーは、この主張に対して『ソ連邦の防衛と反対派』(「ソヴィエト国家論」から/一九二九年九月七日)で強調したのは、中国革命にとって何が必要か、中国の民衆(労働者と農民)にどう呼びかけるべきか、という観点に貫かれていた。単にソ連邦が労働者国家か否か、それを防衛するか否かという抽象的議論の脈絡で提起していたわけではなかった。
 今日の問題も同様だ。ストライキ権不在の中で闘っている中国労働者や官僚の腐敗に抗し、「民主主義」を求めて闘っている中国の民衆にどう呼びかけるか、が問題だ。石原、橋下、安倍とは異なる「世論」を伝えることが重要である。中国民衆は、日本の侵略に対する記憶が存在する。この問題を解決しないと対等の立場で国際的協力を通じて問題に取り組む出発点ができない。グローバリゼーションの時代にも、依然として民衆にとって領土問題の壁は存在し続けている。
 「領土問題とナショナリズム」を捉える場合、旧ユーゴスラビア解体から民族浄化戦争へという悲惨な歴史的過程の教訓がある。ユーゴスラビア連邦の崩壊の中で各共和国で「自由選挙」を取り組んだ。共産党前指導者たちは、いずれも排外主義的選挙キャンペーンで支持を獲得しようと試み、ポピュリズムの手法も使った。同じ職場で働いていたセルビア人、クロアチア人の間でナショナリズムが高まり、敵対関係を発生させた。以前は同じ労働者仲間だったからそんなことはなかった。だが、この悪循環が拡大し、民族浄化の戦争へとつながった。カトリーヌ・サマリが『ユーゴスラビア解体を解く』(柘植書房新社)で詳しく説明している。

論点整理
 討論に入る前に司会からこのテーマに関するこの間の論議において、以下のような三傾向の意見について紹介した。
 a―尖閣は日本のものではないとはっきり言うべきだ。日本の労働者・市民が領有権を主張しないことによって、西沙、南沙諸島などでの中国政府の領有権拡大の主張に反対するわれわれの主張の真意が中国労働者人民に伝わり、この問題の解決、国際連帯を促進する。
 b―領土をめぐる争いはデタラメで、労働者はそんなことで巻き込まれるなというのが大前提だ。尖閣は日本の侵略戦争の過程で盗み取った。日本は日米安保、米軍との関係などもあり、実効支配している。中国は、周恩来、毛沢東含めて黙認してきた。いまさら中国に返すとなったら合意ラインが動いてしまい、日本のナショナリズムを煽り、日中両支配体制を利することになってしまう。
 c―領土問題に対する原則的立場として高島義一は、尖閣が中国のものであることを歴史的に証明しながら結論的にアジアのプロレタリア権力による管理と主張していた。そこには中国が労働者国家だという把握が前提としてあった。現在、その前提は成立していない。現在の情勢下でのわれわれの立場を提起する必要がある。
 この三傾向をふまえ、継続した論議を深化させていくために発言整理を紹介する。

参加者の発言整理
 @サンフランシスコ条約は、米帝国主義が決めた国境線であり、中国革命をはじめとしたアジア革命を封じ込めていく意図があった。アジア革命の中途挫折の結果として受け入れていた国境線が不安定化している。尖閣問題の背景は、資源があるなどの経済的な問題を超えて、国家と領土問題としてある。ナショナリズムがぶつかり合っている。
 A日帝の侵略戦争の膨張で尖閣など略奪した過程があるのだから返すのは当然だ。中国人民にどのように呼びかけるのか。日本の排外主義者とどう闘うか、同時に問われている。
 B今日の情勢下、どこの国の領土か、ということは無意味だ。はっきりさせるべきことは、日本の領土ではないということだ。民衆からのオルタナティブが求められている。
 C中国政府の領土問題に対する転換があり、拡張主義的な対応を強めている。日本と中国の領土ナショナリズムはだめだと言うべきだ。
 D尖閣、竹島は日本のものではないと言っただけでは半分しか言ったことにしかならない。侵略戦争の責任と謝罪、清算をきちんとやったうえで民主的な共同管理の方向性があるのではないか。
 E尖閣が歴史的に日本の固有の領土であるという主張に対して、日清戦争の過程で最終的に日本が併合した土地であり、このような主張は放棄すべきだ言うべきだ。
 F「反日」をかかげる中国労働者は、工場で賃上げと労働条件のために闘っている。だが日本の労働者による連帯の闘いが弱いから、領土問題のみが飛び交っている。日本の労働運動がどう連帯するかが決定的だ。

 


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