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    かけはし2013.年1月14日号

安倍政権の反動攻勢打ち砕け


労働者民衆に牙をむく政策のオンパレード

脱原発・反安保・改憲阻止・反貧困の連携を

安倍政権と対決する運動の再組織を

自民・公明
の政権合意

 一二月二六日、年末総選挙で圧勝した自民党の安倍晋三総裁は特別国会で内閣総理大臣に指名され、同日自公連立の安倍内閣が発足した。自公両党による今後一年間の重点課題として一二月二五日に確認された「政権合意」は「国民の英知を結集して国難に立ち向かい、わが国が本来持っている力と夢を取り戻し、日本再建を果たす決意である」として以下の項目を掲げている。
一、東日本大震災からの復興と万全な防災・減災対策
二、景気・経済対策
三、社会保障と税の一体改革
四、原発・エネルギー政策
五、教育再生
六、外交安保
七、憲法
八、政治・行政・公務員制度改革
 以下、この八項目の「政権合意」の内容を検討しよう。

消費増税と
アベノミクス

 一の防災・減災対策では「防災・減災のための公共投資を計画的に実施する」としている。自民党が前国会に提案した「国土強靭化基本法案」では、法案そのものには明記されていないものの、今後一〇年間で二〇〇兆円に上る公共投資を「防災」を名目に行い、デフレ脱却に貢献させると喧伝されており、「東日本大震災復興」を名目に、消費税の大増税による財政的余裕をゼネコンなど資本のためのバラマキに注ぐ意図がきわめて明らかなものだ。こうした政策が被災者のための「復興予算」を被災地・被災住民の求める雇用・生活のために使うのではなく、各省庁の予算分捕り合戦に沿って配分するあり方を、さらに大規模に展開する結果となることは明らかである。
 二の景気・経済対策は、安倍・自民党が選挙で訴えたメインの政策であった。ここでは「本格的な大型補正予算を平成二五年度予算と連動して編成・成立させ、景気対策に万全を期す」「経済財政諮問会議と日本経済再生本部を設置する。この強力な司令塔のもと、物価目標二%を設定し、大胆な金融緩和を断行することにより、デフレからの脱却を図る」「エネルギー・環境、健康・医療などの成長分野における大胆な規制緩和、新たな需要喚起・創出などにより、名目三%以上の経済成長を実施する」とうたっている。
 「アベノミクス」などとうたわれている、こうした金融緩和・財政膨張の「インフレターゲット」路線は、日銀法改正も視野に入れたものであり、すでに日銀の白川総裁は政権発足前の安倍との会談で「追加金融緩和」に踏み切り、インフレターゲットについても検討に入ることを確認した。選挙期間中に安倍は「輪転機をフル回転させて札を刷りまくる」とか「国債を日銀に直接買い取らせる」などのデマゴギー的で挑発的な発言を行っており、インフレ政策への期待感から年末にかけて株価の上昇、円安という形で金融市場が反応している。安倍政権は次に述べる消費税率の上昇のためにも、このインフレターゲット政策を展開せざるをえない。
 つまり昨年「三党合意」によって成立した消費増税法では、二〇一四年四月に八%、一五年一〇月に一〇%へと二段階で消費税率を現行の五%から引き上げることになっており、その引き上げの目安とされているのが「名目三%、実質二%の経済成長率を達成している」こととなっている。二〇一四年四月から八%への増税を実施するためには、二〇一三年九月頃から準備することが必要であり、そのためには二〇一三年第二4半期(四〜六月)の景気指標で「実質二%成長」をクリアすることが必要とされている。そのためにもこうした大幅な金融緩和が不可避なのだ。

雇用と生活の
破壊は必至だ


 しかし言うまでもなく、こうした「成長政策」はグローバル資本主義の危機の深まりと無関係に「一国資本主義」的に遂行できるわけではない。米国における「財政の崖」(とりあえずは回避されたとされているが)、欧州における依然として解決されない「債務危機」、そして中国、インド、ブラジルなど「新興経済諸国」における経済・社会危機の動向は、これら諸国での労働者民衆の抵抗闘争ともあいまってアベノミクスの「バブル再燃」路線の破綻を手繰り寄せている。それは、すでに対GDP比二〇〇%を超えた国家財政の赤字をさらに拡大し、国際金融投機の絶好のターゲットとして日本の国債が買いたたかれることを伴う。ある民間エコノミストの評価を聞いてみよう。
 「そもそも金融政策だけで、日本の経済成長を阻害している要因を克服することなどできない……。日本は東日本大震災後、原発代替の天然ガスの輸入増大により貿易赤字体質になった。無謀ともいえるリフレ政策(注:リフレ政策とは不況下での金利引き下げ、財政支出を通じた景気刺激策)による円安が現実化した場合、輸入価格上昇によるコストプッシュ・インフレが起き、不況下のインフレ、つまりスタグフレーションに陥る公算が大きい」。
 「ヘッジファンドなどリスクマネーが持つ二一世紀型危機のシナリオはこうだ。家計、企業、金融機関、政府の債務が限界まで膨張し、バブルが生成される。それが弾けて金融機関や企業が破綻、政府と中央銀行が巨額の救済資金を投じる。巨額の債務を肩代わりした格好の政府はいずれ債務不履行に陥る。中央銀行が流動性を供給するもののマネーは実体経済ではなく、リスクマネーへと向かう。流動性バブルは冷えた実体経済を尻目に沸騰し続け、圧力がどんどん高まり、いずれ爆発する。その爆発は次々と連鎖する」(『エコノミスト』二〇一二年一二月二五日号、草野豊己「日本は『制御不能の回転ドア』 危ういリフレ政策が招く爆発」)。
 すでに新たな景気後退局面に入った日本経済は、大手電機産業での一三万人リストラに示されるように経営危機による倒産・失業、不安定雇用のいっそうの拡大と低賃金、貧困の嵐が吹きまくっている。アベノミクスは、労働者民衆への犠牲をさらに深化させ破綻せざるを得ない。「円安」による輸入価格の暴騰だけがもたらされるだけで、労働者の賃金はさらに押し下げられ、雇用も大規模に失われる。
 その場かぎりの「アベノミクス」は、今日の資本主義経済・社会システムの解決不能な危機の表現であり、危機をさらに加速させる結果となるのだ。

資本のための
原発依存継続


 第三の「社会保障と税の一体改革」について。ここでは「医療・介護・少子化対策など社会保障制度国民会議における議論を促進する」ときわめて抽象的な表現にとどめる一方で、「生活保護については不正受給対策を徹底するとともに、自立・就労などの支援政策と合わせて、その適正化に向けた見直しを行う」と、「生活保護」へのバッシング、受給水準切り下げを明記している。
 そして「消費税率引上げ前の景気回復を着実に実現する」とあらためて「アベノミクス」が消費増税の手段であることを明確にする一方、「複数税率導入の検討など低所得者対策を確実に実施する」としているが、このようなあいまいな言い方で増税による負担をごまかすことはできない。安倍による「インフレ政策」は、そうした「低所得者対策」がかりに実施されたとしても、その効果を無に帰すことになるだろう。
 第四の「原発・エネルギー政策」はどうか。「原発の再稼働については、国際基準に沿って安全第一主義を徹底した原子力規制委員会の専門的知見の判断による。同時に、省エネルギー・再生可能エネルギーの加速的な導入や火力発電の高効率化の推進によって、可能な限り原発依存度を減らす」とされている。
 「安全第一主義」は安倍首相や茂木経産相のその後の発言に示されるように「原発再稼働」を着実に進めていくということであり、「可能な限り原発依存度を減らす」とは、原発新設、高速増殖炉「もんじゅ」や核燃料サイクルの推進、原発輸出の続行に他ならず、石破自民党幹事長の述べるように「潜在的核兵器開発能力」の保持のための政策を堅持することを意味する。
 「すべての原発について再稼働の可否を三年以内に順次判断」「一〇年以内に『電源構成のベストミックス』確立」という自民党の政権公約は、規制委員会の判断に基づき、再稼働・新設・輸出をドシドシ進めることである。電力産業、財界がこの政策を大歓迎しているのは言うまでもない。

教育統制と
「国定教科書」


 第五の「教育再生」では「いじめ対策、不登校対策、通学安全路対策等を充実させる」「教育委員会制度のあり方を抜本的に見直す」「幼児教育の無償化への取り組みを財源を確保しながら進める」である。
 ここで注目すべきは「教育委員会制度のあり方の抜本的見直し」とは何か、である。
 安倍・自民党は昨年九月に自民党総裁に選出されるや、直属の「教育再生実行本部」を立ち上げた。実行本部長となったのは今回、文科相に抜擢された安倍のイデオロギー的腹心ともいうべき下村博文である。
 下村が中心となってまとめた教育政策に関連する総選挙に向けた自民党「政権公約」では、「公教育における国の責任体制の確立」という項で「いじめの隠ぺいなど、地方教育行政において、法令に違反している、あるいは児童生徒の『教育を受ける権利』を著しく侵害するおそれのある場合、公教育の最終責任者たる国(文部科学大臣)が責任を果たせるよう『地方教育行政の組織及び運営に関する法律』を改正します」としている。「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」は、地方自治体の教育委員会制度、教育の地方自治に関するものである。
 したがって自公政権合意で提起されている「教育委員会制度のあり方の抜本的見直し」とは「いじめ」問題を口実に、国が地方自治体の教育行政に直接的に介入・統制すること以外の何ものでもない。自民党の公約では自治体首長が任命する教育長が教育委員会の責任者となることもうたわれており、国・地方自治体の行政機構による公教育の統制がはっきりと主張されている。
 自民党政権公約では「教科書検定基準を抜本的に改善し、あわせて近隣諸国条項も見直す」としており、さらに「不適切な性教育や、ジェンダーフリー教育、自虐史観偏向教育は行わせない」などと、「新しい歴史教科書をつくる会」などの極右「大東亜戦争肯定史観」まる出しの方針を打ち出した。これは事実上の「国定教科書」づくりだ。そして日教組などの労働組合活動への敵視・規制・解体の姿勢が鮮明である。
 たしかに自公「政権合意」では、自民党政権公約に見られるような極端な右翼イデオロギー色は表面化していないが、その真の性格は、安倍内閣が二〇〇六年に強行した教育基本法改悪を引き継ぎながら、憲法改悪と一体となった「戦後教育の全面見直し」に踏み込むことにある。
 また「高校無償化」については、所得制限条項を導入して一律無償化の方針を撤回させようとしており、さらに朝鮮学校への無償化の対象から排除する差別的方針を明言した。

沖縄を切り捨て
実戦態勢を強化


 第六の「外交安保」については「日米同盟の強化を図り、両国の関係を再構築し、中国・韓国・ロシア等近隣諸国との信頼の増進を図る」「領土・領海・領空の保全を図るため、必要な防衛・海保予算を確保する」「拉致・核・ミサイル問題に毅然と対処し、主権を守る外交を展開する」「FTA・EPAをはじめ自由貿易をこれまで以上に推進するとともに、TPPについては、国益にかなう最善の道を求める」としている。
 この点については、安倍政権の対応はきわめて明確である。安倍政権は「尖閣」「竹島」などの「領土」問題を最大限に利用しながら、「主権を守るため」と称して、日米ガイドライン(一九九七年)の見直し、防衛大綱(二〇一〇年)の見直しに踏み込む姿勢を明確にした。防衛費の増額も明言している。その核心は、菅、野田の民主党政権による米国の新国防戦略=「中国の軍事的脅威」に対抗してアジア太平洋全域で展開される「日米の動的防衛協力」の推進、すなわち事実上の米国の指揮下で進められる統合軍事作戦に自衛隊を実戦部隊として組み込む路線をさらに強化し、そのために必要な「集団的自衛権の行使」を保障することである。
 ここでは、改憲問題と同様に「政権合意」では文面上、公明党の消極的姿勢を配慮しなければならなかった。しかしその進む方向は鮮明である。
 強調しなければならないのは、「政権合意」の「外交安保」で本来、第一に触れなければならない沖縄の米軍基地問題に関する記述が一言もないことだ。そしてこの点にこそ「島ぐるみ」で米軍基地の県外移設・オスプレイ配備撤回を闘う沖縄の人びとの闘い、米国とヤマトの植民地主義的差別と支配に怒りをつのらせる沖縄に、沈黙をもってしか対処できない自公政権のアキレス腱が露になっている。

憲法改悪と
公務員叩き


 第七「憲法」について。ここではごく簡単に「憲法審査会の審議を促進し、憲法改正に向けた国民的な議論を深める」という記述だけである。しかし、自民党の「政権公約」では「日本人の手で、『日本の誇り、日本人らしさ』を示す新しい憲法をつくります。民主党の進める『夫婦別姓』・『人権委員会設置法案』・『外国人地方参政権』に反対し、地域社会と家族の絆、わが国のかたちを守ります」と明確に述べているのであり、安倍首相も総選挙キャンペーンの中では「国防軍」の創設をふくむ改憲構想を打ち出した。
 むしろ「自公政権合意」が、当面の問題として憲法審査会の審議のスピードアップと改憲への議論の深化を確認したことこそ、われわれは注意すべきである。
 第八、「政治・行政・公務員制度改革」の項では、「衆議院の選挙制度改革・定数削減については、三党合意を基本にその実現を図る。あわせて、国会議員にかかる経費を縮減する。また、国、地方にわたる公務員の総人件費を縮減する」「道州制の導入を推進する」である。
 この項目も実は、「自民党政権公約」の「政治・行政・党改革」との関連で捉える必要がある。とりわけ「衆議院の定数削減」がもたらす少数意見の排除のみならず、議会制度改革の項で「自民党政権公約」は「国会における秘密会の設置」と題して「国会において、外交・安全保障など機密保持が必要な案件の審議においては、国会議員に罰則付きの機密保持を義務付けて議論を行えるよう制度を整えます」としている。これは言うまでもなく日米安保にまつわる「密約」暴露のような事態を起こらないようにし、外交・軍事情報については情報公開の原則を適用せず「聖域化」するものであり、軍事・外交問題に関しては批判的野党に「挙国一致」を強制し、従わないものを排除・追放する反民主主義の規定である。
 さらに「公務員制度改革」については同じく自民党政権公約によれば、国家公務員については「能力・実績主義に基づいた信賞必罰の処遇と人事を厳格に実行」し、「連続三年間『不良』の評価の場合には、分限免職処分」などの統制強化を行うことを主張する。
 また「地方行革の推進」の項でも「地方公務員の地域における民間賃金と同水準となるような給与の適正化、市場化テストの積極的な活用による公共サービス事業の推進及びそれに伴う組織改廃時の分限免職等による定員削減など、地方行革を推進し、総人件費を削減」と、公務労働における徹底的な競争原理導入と民営化、賃金削減を強制する。そして「政治的中立性の保持」を口実に「地方公務員にも、国家公務員と同様に罰則を附し、一定の政治活動を規制する地方公務員法の改正」を、明らかに自治体労働運動を攻撃のターゲットにして訴えているのである。
 そのように捉えた時、自公「政権合意」における「道州制の導入」の項が、「日本維新の会」や「みんなの党」による徹底的に新自由主義的な民営化と競争原理、それによる公務員バッシングと労働組合運動解体の方向性と重なり合っていることがハッキリするだろう。
 それは「日本維新の会」や「みんなの党」をも組み込んだ改憲多数派形成の戦略の中に位置づけられている、と考えることができる。

深まる危機と
運動の再組織


 安倍・自民党は、グローバル資本主義のシステム的危機の激化、アジア太平洋地域をめぐる米中の戦略的覇権をめぐる軍事的対抗をふくんだ抗争、民主党政権三年間の迷走と混乱、そして東日本大震災と福島原発事故によって深刻化した日本帝国主義国家の政治・経済・社会全体に及ぶ「沈没」の不安の中で、「日本を取り戻す」という極右ナショナリズムのキャッチフレーズで政権を奪取した。
 安倍政権の行く手に立ちはだかる危機は巨大なものであり、自公両党の衆議院における三分の二の絶対多数にもかかわらず、決して安定的な政治支配を築き上げることはできないとわれわれは確信する。
 しかし安倍政権を取り巻く状況が困難なものであればあるほど、七月参院選を射程に入れて、世論や大衆運動の反応を探りながら原発再稼働、沖縄・安保、そして憲法改悪に向かう攻撃のレベルを加速していくだろうこともまた確かである。
 二〇一一年、一二年といっそう危機的事態が広がる福島原発事故の衝撃の中で、かつてない脱原発・反原発運動の広がりをわれわれは経験した。しかし一二月総選挙や東京都知事選が突きつけた事実は、こうした運動の発展にもかかわらず、投票結果において左翼が深い後退・敗北をこうむったという冷厳なものであった。それは言うまでもないことだが共産党、社民党にとどまらず、改良主義と一国主義を超えるラディカル左派の形成を目指してきた潮流や労働運動、社会運動のいっそうの周辺化という現実である。左派のみならずリベラル民主主義的傾向も議会政治の中でほとんど消滅するほどまでになってしまった。それは別の面から言えば、資本主義システムの根本的危機のもう一つの政治的表現でもある。
 脱原発、沖縄の反基地闘争との連帯、憲法改悪阻止、そして反貧困の運動は、この危機に立ち向かいながら社会運動としての再組織化をねばり強く押し進めつつ、相互の連携を強め、安倍政権との対決に全力を上げなければならない。七月参院選への取り組みをふくめて、戦略的討論をさらに活性化し、集中した闘いを作り出そう。
  (一月三日、平井純一)


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