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                         かけはし2002.12.16号より

イージス艦インド洋派遣決定を糾弾する

憲法違反の集団的自衛権行使へ政権内反対論さえ踏みにじる暴挙

小泉政権は十二月四日、「テロ対策特措法」にもとづいて海上自衛隊がインド洋で行っている米軍への支援活動に、世界最高の広範囲かつ多様な電子的戦術情報収集・伝達能力と攻撃性能を持つイージス艦を、今月中旬にも派遣することを決定した。
それは、いまや秒読みに入ったアメリカ帝国主義ブッシュ政権のイラク侵略戦争を直接支援しようとするものであり、現在インド洋で行っている米英軍などの艦艇への燃料補給を中心とした「対テロ戦争参戦体制」を、具体的戦闘行動への直接的参加へ決定的にエスカレートするものである。
イージス艦は、航空機やミサイルや潜水艦などを探知し、情報を解析し、攻撃する能力が、通常の巡洋艦や駆逐艦に比べてけた違いに高い。一隻で通常の艦の五倍にあたる直径六百キロ〜千キロの範囲の、二百以上の飛行物体を探知し、艦対空ミサイルSM\2で十二以上の物体を同時に撃ち落とし、対艦ミサイル・ハープーンと短魚雷で水上艦と潜水艦に攻撃を加えることができる超高性能戦闘艦である。
現在でもインド洋に展開する補給艦、護衛艦(巡洋艦と駆逐艦)計五隻の海自艦隊は、米軍とデータを共有している。したがって、新たに派遣される自衛隊イージス艦の探知した、これまではとけた違いに豊富な軍事情報が、いつでも米軍の作戦行動に使われることになる。すなわち、自衛隊が米軍の対イラク戦争の一翼をこれまで以上に直接担い、強化することになるのだ。
 小泉政権は、「テロ対策特措法」体制下で、これまで三回にわたってイージス艦の派遣を検討してきたが、いずれの場合もその攻撃力と戦術情報収集・伝達能力があまりにも高いため、「憲法が禁じた集団的自衛権の行使につながりかねない」という与党内の慎重論に配慮して見送られてきた。
 十一月中旬に「テロ対策特別措置法」の基本計画(アメリカのアフガン侵略戦争支援体制)を延長した時も、イージス艦派遣は見送られた。それからわずか二週間で、小泉政権は、与党公明党はじめ、野中・元幹事長や古賀・元幹事長など自民党幹部の中にも強い反対論があるにもかかわらず、強引に派遣を決定したのである。
小泉が、テロ特措法基本計画延長の時に派遣決定を見送ったのは、与党内外に反対論が強いため、そこで派遣をごり押しすると政治問題化して基本計画延長そのものが失敗しかねないと判断したからであった。そしてアメリカの戦争支援「基本計画」の延長を実現した上で、ただちにイージス艦派遣に踏み切ったのである。小泉の狡猾な策略である。
 基本計画延長からわずか二週間で拙速かつ強引な派遣決定に踏み切ったことには理由があった。十二月八日には、アーミテージ米国務副長官が来日し、十六日にはワシントンで日米外交・防衛担当閣僚会議が開かれる。この後では、アメリカの要求をそのまま受け入れたという印象を持たれかねないという危惧があり、小泉は何としても「日本政府が主体的に決めた」という形にしたかったのである。
 また、イラクへの全面的武力行使が始まってからでは、あまりにも露骨な「イラク戦争支援」の形になってしまい、国内の反対論を抑え切れないと判断したからであった。さらに、戦争が始まってから慌てて派遣しても、到着した時には終わっていたりしたら困る。このような思惑から、憲法論議もせず、「イージス艦は冷房装置が強力で自衛隊員が楽になる」「単なるローテーションだ」などということでごまかし、強引に派遣に踏み切ったのだ。(朝日新聞12月5日)。まさにそれは、対イラク戦争本格参戦のための派遣であった。
 福田官房長官は十二月四日の記者会見で、米政府当局から「水面下」で再三の要請があったことを認めている。アーミテージ米国務副長官は、日本政府がイージス艦派遣を決定したことを絶賛し、次のように述べた。
 「小泉首相の指導力を示すすばらしい例だ。特にバリ島(爆弾テロ)後の日本の努力を大いに評価する。アジアの安定を心配している人々が高く評価している。われわれは非常に興奮している」。また、フライシャー大統領報道官は記者会見で「大統領は感謝している」と述べた(毎日新聞12月5日)。
 フライシャーは、なぜ「非常に興奮している」とまで述べたのか。それはこのイージス艦の派遣によって、米軍と自衛隊の実戦における運用がこれまでの水準をはるかに超えて一体化され、「後方支援であり実際の戦争には関わらないから憲法の範囲内」などという言い訳の通用しない水準に、日米共同作戦体制が実戦的に踏み込むことになるからである。アメリカ帝国主義のグローバル戦争に自衛隊をこれまで以上に活用し、動員する突破口が作られたのだ。
イージス艦派遣を通じた対イラク戦争本格参戦は、野中や古賀など自民党幹部自身が恐れる「憲法違反の集団的自衛権行使」にとどまらない。「フセイン政権打倒」を掲げてブッシュ政権が開始しつつあるイラク戦争は、国連憲章と国際法を踏みにじる侵略戦争であり、ブッシュはアフガニスタン侵略戦争に続く戦争犯罪を犯そうとする犯罪者である。
 そして小泉純一郎は、その戦争犯罪の共犯になるために、自らが首相として順守する義務のある現行憲法が「国際紛争を解決する手段として永久に放棄する」と定めた「戦争と武力行使」に公然と踏み込む道を選択したのである。
憲法を踏みにじるイージス艦インド洋派遣決定を糾弾する! ブッシュ政権はイラク侵略戦争を中止せよ! 石油資源支配のための戦争を止めろ! 小泉政権はイラク侵略戦争に参戦するな!自衛隊艦隊はインド洋から即時帰還せよ! 戦争犯罪人ブッシュを国際法廷で裁け! 有事三法案を廃案に! (12月6日 松本龍雄)

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