インド
原発反対の漁村に大弾圧
ソウミク・ムカルジー
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インドの最南端タミル・ナドゥー州に建設中のクダンクラム原発に反対する住民に対して異常なまでの弾圧がかけられている。住民まるごと「国家に対する戦争」を仕掛けているとして「治安妨害罪」が適用されているのだ。この六月にはアジアの反原発運動ネットワークによる原発建設と住民弾圧に対して抗議する呼びかけが発せられた。以下はインドからの報告である。クダンクラム原発の原子炉はロシア製であるが、日本もまた原発輸出戦略の一環として日印原子力協定の締結に向けて動いており、インドへの輸出の機会をうかがっている。この闘いに注目し、アジアへの原発輸出に反対する運動を強めよう。(「かけはし」編集部)
未来への権利
のための戦争
クダンクラム原発への抗議行動は、幾千人もの暮らしがかかっていると訴えている。しかし行動参加者には、でたらめな告発と占拠活動への制限が科せられている。
タミル・ナドゥー州ティルネリブーリ県のインド洋沿岸に位置する小さな村落イディンタカライは、見渡す限りの地平線に風車が点在している。この村では小規模な漁民が、ギリギリの暮らしを営んでいる。しかしクダンクラム警察署の記録によれば、この村はこの国で最も悪名高い場所なのだ。村民たちは国家に対する戦争を行っている。かれらは全員が反乱分子なのだ。一つの警察署だけで八〇〇〇件が治安妨害罪に問われ、国家に対する戦争を行っているという事例が記録されているなどというのは、この国の歴史で初めてのことだ。
しかしイディンタカライを訪れれば、こうした治安妨害の謎はぬぐい去られる。近いうちに二〇〇〇メガワットの原発が稼働することになっているこの村は、まさしく戦争を行っている。国家に対する戦争ではなく、核事故のない未来への権利のための戦争なのだ。
村からわずか数キロのところに位置する原発は、クダンクラムの人びとの存在そのものへの脅威である。かれらの主要な生計手段である漁業は、消滅に直面している。核エネルギー反対民衆運動(PMANE)のリーダー、SM・ウダイクマルは「なにごとかあったとしても、それは治安妨害罪違反という重さを、ありきたりのものにしてしまうだけだ」と語る。
「私たちはこの地で一年以上、民主主義的で非暴力の抗議を行ってきた。そして奴らは八〇〇〇人を治安妨害罪で告発した。私たちが治安妨害をしているのなら、原子力政策で不法なことをしている原子力エネルギー調査局(AERB)は、何百万人もの生命をもてあそぶという、もっと大きな罪をおかしている」と彼は語る。治安妨害罪以外にも、この間、六万六〇〇〇人に達する人びとに、犯罪に関わったとして告発状が提出されている。
国旗掲揚拒否も
国家への戦争?
治安妨害で告発状が提出されている事件のほとんどは、三つの件に関してである。二〇一一年一〇月、原発敷地内で座り込みが行われた時、クダンクラム警察署は抗議活動参加者を排除するために暴力的手段を行使し、三〇〇〇件の告発を行った。二〇一一年一一月、近隣の村落の漁民たちが海の傍で平和的なデモを行ったことに対し、さらに多くの治安妨害事件が記録された。三つ目の治安妨害罪での大量告発は最近、今年の独立記念日に起きたことだ。抗議のしるしとして、原発周辺地域の村民たちは国旗掲揚を拒否した。かれらはその代わりに黒旗を掲げた。しかし地域の行政当局は、この抗議を治安妨害と見なした。
ウダイクマルの同僚プシュパラヤン・ヴィクトリアは「この日、国家に対する戦争という告発が数千件も提出された」と知らせてくれた。最高裁弁護士のプラシャント・ブシャンは、この訴追を「あまりにもくだらない」とさえ述べて軽く一蹴する。彼は「一九六二年の評決で、国家を転覆しようとする行為だけが治安妨害というに値する、と最高裁は述べている。今回の件は、まさにこうしたでたらめな立件によって平和的運動が弾圧された一例だ」と語った。
おかしなことにティルネリブーリ県警察は、自らの以前のあらゆる残虐行為を帳消しにしている。警視監のヴィジャエンドラ・ビダリは、警察は決して抗議活動に参加した人たちに「反民主主義的やり方」で対処していない、と語っている。「さまざまに伝えられ広がっている数字はウソだ」とビダリは述べる。「われわれが捜査ファイルに記録している人数は二〇人に過ぎない」と彼は語る。名前のほとんどが「その他」で記録されているのだから、村全体が今や司法手続きの脅威にさらされているのだ。ビダリは「われわれは告発状にもとづいて仕事をしており、こうした人びとの一部に対しては十分な証拠を持っている。その証拠は法廷に出されるだろう」と主張している。
運動の後退狙い
生活の糧も奪う
全国の市民社会が、平和的な運動に対する国家の対応に抗議してきた。カシミールの市民社会活動家クラム・ペレベスは述べる。
「これは何も新しいことではない。インド国家は暴力を独占している。カシミールでも北東部やここクダンクラムでも、あらゆる異論は、国家にとっては治安妨害に見えるのだ。われわれは、小さな漁村の住民が、原発に抗議したという理由で治安妨害として告発されたことにショックを受けた」。
事件の結果、クダンクラムの人びとは基本的諸権利を拒否されている。「新しいパスポートは発行されない。実際、届いたパスポートの一部は戻されている」とヴィクトリアが知らせてくれた。ティルネリブーリ警察署はすべてのパスポートが申請を通っていると述べているが、「TEHELKA」(訳注:インドの週刊ニュース誌)の調べでは、この一年間村民にはパスポートが発行されていない。
「私はサウジアラビアに職を確保してきた。私の代理人も私に対してビザの発行を確認している、しかしこの一年間私はパスポートを待たされている」と二四歳のジョイハールは語る。「私の名前は、どの告訴ファイルにも記載されていない。しかし私は攻撃にさらされている」と彼は語っている。こうしたことはクダンクラムの多くの若者たちも同じ状況であり、家族たちは、海外に働きに行って家族の追加収入を得る機会が拒否されることを嘆いている。
抗議行動のためにこの一年間、生活をかき乱された小規模漁業は、もはや稼ぎを得ることができない。
「エビの季節は終わり、今年は何も漁獲がない。原発当局が繁殖地域を『立ち入り制限地域』と宣言したからだ」とクダンクラムの村民であるフランシス・レオンは語る。彼は「今では漁民は、小さな手巻きタバコを作る僅かな収入でやりくりしている」と嘆いている。
この運動は地域で運営されており、そのためにかれらは自分たちの個人的生活を犠牲にしている。「政府は、われわれの闘争がカソリック教会系のNGOから資金援助を受けていると言いふらしているが、実際には住民が自分たちの運動のために自分でカネを作っている」とウダヤクマルは述べる。
五〇代の主婦ロザリは、思いを語る。「この経済的苦境は、昨年の私たちの生活をめちゃくちゃにしてしまった。私たちは子どもを学校に行かせられない。私たちはお祭りを祝うことをやめた」と彼女は語る。
三八歳のベルシは「この原発は私たちへの罰だ。カルパッカム(訳注:インド南部チェンナイから七〇キロのところにあるインディラ・ガンジー原子力研究センターの所在地。ここでは住民に多くの放射能被害が出ていることが報じられている)で起きたことのように、近隣の村落すべてをゆっくりと殺していく。獲れる魚などもうない」と語る。
今、住民たちはマドラス高等裁判所の評決を待っている。「抗議行動はややその勢いを失っている。人びとは生活していかなければならないからだ。しかし必ずわれわれに敵対的なものであるだろう評決が出るや、われわれは勢いをつけはじめるだろう」とアムリスライは語る。彼はドキュメント写真家で、運動の初めから記録を撮ってきた。
計画の違法性と
矛盾は日々露呈
抗議活動の参加者たちは、毎日のように明るみに出る核政策における違法性が、運動の大義と団結を強めるだろうと確信している。全国災害管理局はRTI(訳注:市民からの要求に応じて政府の情報を伝えるシステム)での回答において、インドは核災害の可能性について公共的注意を広げる政策を持っていないことを、最近明らかにした。「それは事故が起きてはじめて対処することができる。国家はこの問題を、開発という名目でもてあそんでいる」とウダヤクマルは述べる。
クダンクラム原発が稼働にむけて準備を整えるまで、村民は追いつめられた状況にある。「全国政府への信頼もない」とウダヤクマルは言う。「ジャヤラリタ(訳注:ドラビダ進歩同盟の党首、タミル・ナドゥー州政府の現首相)は野党の指導者として私たちを支持していた。しかし彼女は今や権力の座につき、何もしていない」と彼は述べる。ケララ州のような近くの州からも支援はない。「かれらはこの原発からの五〇〇メガワットの電力を望んでいるが、災害については忘れている、かれらは同じやり方を認めているのだ」と彼は述べた。
実に奇妙なことだが、タミル・ナドゥー州エネルギー局の二つの風力発電施設が、この原発施設の敷地内に建っている。当局はこの供給施設だけで風車から三五〇〇メガワット、すなわちもっと高度の技術を要する原発のほぼ二倍の電力を生みだすことを知っているのだろうか?
(「TEHELKA」誌Vol 9 ・26号 二〇一二年九月八日付)
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