現代において「過渡的綱領」の理念をいかに展開するか、実践めざす討論が始まる |
第四インターナショナル執行ビューロー声明に対する抗議と批判
闘争の中での共闘は必須だが
左翼政権への批判も不可欠だ
第四インター・ギリシャ支部中央委員会 |
本紙は、重大な局面を迎えていたギリシャ情勢に対するFI執行ビューローの声明を、六月四日の紙面に掲載した。しかしこのビューロー声明に対してはギリシャ支部から強い批判が明らかにされ、この批判にビューローが回答し、双方の文書は「インターナショナルビューポイント」二〇一二年六月号に発表された。この論争は、欧州のみならず全世界の民衆の今後を左右する可能性をもつ重大な闘争をめぐる、優れて実践的な選択に関する重要な論争だ。労働者民衆の未来を深刻に脅かしている世界的な危機からの脱却をかけた民衆自身の闘争を、現にある諸条件を厳密に見極めながら、反資本主義的な展開に向けどう具体的に追求すべきかが主題であり、そこでは必然的に、原理的な確認だけで済ますわけにはいかない問題が論争されている。それは、第四インターナショナルの骨格である過渡的綱領の考え方を実践の問題としていかに理解し適用するか、をめぐる論争でもあり、日本における闘いを進める上で、そして反資本主義左翼を準備する上で、考えるべき問題が具体性をもって提起されている。以上を考慮し重要な討論素材として、両者の文書、およびそれに加えて、六月一七日の選挙の評価と今後を論じているギリシャ支部の同志のインタビューを掲載する。(「かけはし」編集部)
反資本主義左翼建設への実害
FI執行ビューローの親愛なる同志たちへ、
二、三日前にわれわれは、「欧州の労働者の未来はギリシャで決定される!」というあなた方の声明に対するリンクを含むEメールを、ビューローメーリングリストで受け取った。その声明は「インターナショナルビューポイント」のサイトに掲載されている。
それはギリシャおよび過去二年半そして今なおこの国で起きている社会、階級闘争に関わる声明であるが、ギリシャ支部あるいは少なくともその何人かのメンバーに事前に問い合わせるという何らかの試みもないものだった。このことを実際に知ったことはわれわれには大きな驚きだった。この声明の内容や、(SYRIZAの)今では有効ではない政治的立場への言及にわれわれが不正確さを指摘できるように、これに似たことがこれまでも起きていたに違いないと思われる。この事実は、この問題に対する執行ビューローの不十分な知識を明らかにしているが、それ以上にFI内の共同性の欠落をも明らかにしている。
わが支部が公然と無視され、その中でわれわれが活動している運動や政治的環境に関する決定が、支部の立場についてわれわれに問い合わせることもなく、支部の政治的決定が何であるかについて、また支部の決定に対立する声明がどのような問題を生み出し得るかについて、何らかの関心を示すことすらなく行われたことは、今回が初めてではないということを強調したい。OKDE・スパルタコスは、その政治路線と政治計画を決定する集団的過程と指導部を備えた一つの政治組織である。いずれにしろあなた方は、この計画に関心をもつべきだ。われわれの文書を他の言語に翻訳することは、われわれにとっていつも容易なわけではない。しかしFIの役割は、誤解や間違いや逸脱を避けるためにすべての支部と協力することとしてなお残っている。
同志たち、ギリシャ支部がANTARSYAという統一反資本主義左翼構想に参加するという政治的決定を行った、ということをあなた方は知っている。われわれは今、その内部にある諸対立、政治的不一致、異なる政治的伝統に首尾一貫して立ち向かいながら、この戦線を建設する途上にある。われわれは、OKDE・スパルタコス自身が寄与してきたその計画に専念することによって、この反資本主義的左翼戦線の成功と強化に向けて努力することに、われわれの政治的かつ個人的な時間の多くを費やしている。それゆえあなた方が容易に理解できるように、IVに掲載されたような声明は、わが提携相手から見て、われわれの政治的決定とわが組織の信頼性に疑問を抱かせることに導く。それはわれわれからわがインターナショナル組織の支えを奪い取り、わがインターナショナルを、あたかも(選挙上の)風にしたがい揺れる振り子であるかのように見せる。それはこのような形で、ANTARSYAにインターナショナルに取り組ませようというわれわれの努力を掘り崩している。
SYRIZAの要求は不十分
より具体的に言えば、あなた方は、SYRIZAの五項目緊急計画に焦点を当て、それをギリシャにおける政治闘争の槍の穂先として提案している。SYRIZAの指導部は、この五項目をもって、新民主主義、PASOK、独立ギリシャ人、民主的左翼と政府形成のための交渉を行ってきた。この計画にはたとえば、訴追に対する閣僚の免責特権の廃止に関する項目四が含まれている。しかしそれは左翼から見て的を外した要求であり、ポピュリストと極右によって課題に挙げられたものだ。
ついでながらこの五項目は、SYRIZA自身によってつい最近再考されることとなった。SYRIZAは、支配階級が行使する圧力に絶えず降伏しつつある。SYRIZAは、メモランダムの一方的破棄をこれ以上は約束せず、債権者並びにEUと交渉しつつ、それを新しい国民経済計画で置き換える、これがもっとも新しい公式的展開だ。SYRIZAは、銀行の国有化(労働者管理は言うまでもなく)を語るのではなく、国家による「公的管理」について語っている。これは、SYRIZAの五項目要求の項目二とは異なる何ものかだ。そしてついでながらこの項目二は、国家からの純然たる援助をすでに受け取った銀行にのみ関する項目なのだ。
それはまさしく、われわれがどのような要求を過渡的要求と考えるべきかに関わる問題だ。すなわちそれは、SYRIZAが提案している返済の三年猶予なのか、ANTARSYAが進めてきた債務帳消しなのか、ということだ。先の三年後には、返済を求められる者として誰が予定されることとなるのだろうか。もしわれわれが、第二次世界大戦後最大の資本主義の危機の真ん中という今、そして三年間の階級戦争という条件下で生きてきた国の中で、それでも過渡的綱領はぜいたくなものであり、代わりにわれわれが必要とするものは単なるブルジョア民主主義的な「緊急計画」である、などと考えない限りは。
SYRIZAの左の存在こそ鍵
先の声明が批判的投票すらあるいは綱領的一致に向けた努力すら提案せず、SYRIZAおよびその緊急計画との全面的な提携を提案していることは驚くべきことだ!
次の選挙での社会民主主義の左に立つ政権の形成がギリシャ並びに欧州中の勤労民衆に対して帯びることとなる重要性は、われわれすべてが実感している。そのような事実は民衆の自信を高めることができ、一定の状況の下で闘争のさらなる高揚に寄与できるだろう。しかしながらSYRIZAは、勤労民衆に利益となるそのような過程の発展を阻止するために最善を尽くしている。
その過程のような何ものかが起きる唯一の希望は、SYRIZAの左に信頼に足る反資本主義勢力が存在することだ。そうでなければ、あり得るSYRIZA政権は数カ月後、欧州における他の事例(イタリア……)でのように、右翼政権に対し、あるいはもっと悪いこととして極右的転換に対し、がら空きの戦場を残して崩壊することとなるだろう。ギリシャの反資本主義左翼、特にANTARSYAにとっては、統一戦線戦術を携えて進むことが決定的であるとわれわれは考えている。しかし同時にこの勢力は、その政治的独立と、労働組合並びに職場において、また若者の中でそれをもって困難な闘いを遂行してきた反資本主義的な過渡的綱領を保持しなければならない。ANTARSYAは、改良主義的行政の幻想の後を追いかけるもう一つの左翼へと向かってはならないのだ。
同志たち、反資本主義左翼はギリシャに存在しているのだ。そしてこの勢力は、メモランダの一方的破棄、債務の帳消し、そして労働者管理下での銀行並びに大企業の国有化を脇に置く五項目要求の名の下に、それ自身を否定することなどできない。
メモランダと労働者に向けたあらゆる反動的な反改良を破棄すると想定された左翼政権を求める投票を、あなた方がギリシャの労働者に訴えているその時、SYRIZAはすでに、マスメディアと支配階級の圧力に屈服しつつ、票を失うまいとメモランダの再交渉について語り始めている。これは重要なことだ。次のことを言うだけで十分だ。つまり、SYRIZAの党首は暫定政権の首相として、PASOKの前教育相、G・アルセニスを提案したが、この人物は、勤労民衆、若者たちまた彼の改革に抵抗した大規模な運動に対する積極的な敵であり、数千人に上る教員の失業、さらに中、高等教育に進もうと挑む労働者階級と貧困層の子どもたちに敵対する障壁を強めたことに責任を負っていたのだ(これを止める目的達成の手段はどこにあるのか、まさにそれをわれわれはいぶかっている)。
もう一つ実例を挙げたい。SYRIZAはもはや全削減策の取り消しを約束してはいず、緊縮策と社会闘争の二年を経たものである二月前の水準(賃金は七五一ユーロ低くなり、義務的な基金拠出と税が含まれている)への賃金復旧を語るにすぎない。
革命は可能だとの理念の啓発を
このすべてにもかかわらずANTARSYAはSYRIZAと会合をもち、闘争の中で協力し共にデモを行うことで合意した。しかし左翼政権の件では、ANTARSYAは、進歩的な手段を支持しすべての後退に精力的に反対しつつ、批判的な立場を取るつもりだ。
われわれは統一欧州社会主義国家をめざす闘いに同意する。しかしそれは、どのようにすれば起きるのだろうか。改良主義左翼がやるように、「民衆のEU」を守りそのブルジョア的な超国家的機構によってか? それとも、EUを破壊するための欧州規模で協調した階級闘争によってか? EUは、国際資本の利益に奉仕し、その多数が依然としてそれを進歩的な制度だと見ている労働者を搾取しているが、そのことを押し隠すことによってか、それとも勤労民衆の眼前でそれを暴露することによってか? まさにその始め以来その存在と歩を並べてきたユーロ圏、ユーロ通貨、また緊縮政策は、ギリシャの、また全欧州の労働者が対決して闘うべきものではないのだろうか? EUは自ら分解することとなるのか、それとも代わりの対抗提案を掲げつつ欧州労働者階級がそれに挑む必要があるのか?
不幸なことにわれわれは痛苦の念をもって、この歴史的な時期に果たすべき役割を第四インターナショナルが果たすことをできていないということを実感している。そしてわれわれはどこに行こうとしているのか……、といぶかっている。FIは小さな革命的組織の世界をめぐる国際的協調組織だ。とはいえその言葉とその声明には相当な重みがあり、かつて以上に大衆化し政治化しようとしている国際主義的な労働者前衛の間に共鳴作用を及ぼしている。FIは、自由になるすべての力をもって、資本主義と断絶する過渡的綱領の遂行に向けて方向を示すべきである。これは、ギリシャにおいては有効以上のものである。そこでは労働者運動の高揚が、去年の一〇月に起きたように、綱領のそのような性格を日程に載せている。われわれはその時、労働者による全公共サービスの占拠を通して、雇用主の経営大権に対決する直接的挑戦の最初の兆候を確認したのだ。
FIは、革命は今日可能であるとする信念を啓発すべきである。
OKDE・スパルタコス(FIギリシャ支部)中央委員会を代表して。
右翼は勝利したとしても、
受けた傷はあまりに大きい
ディミトリス・ヒラリス
「われわれの未来の基礎としてわれわれが据えるものは、恐れではなく希望だ」。アレクシス・チプラスが、彼が率いる急進左翼連合、SYRIZAの選挙の敗北に応じたのは、先の言葉をもってのことだった。というのも、ギリシャの民衆にとって、右翼が勝利したとしてもその先には何の解決もなく、国民統一内閣を背景に統治するために呼び集められた諸政党にとっては、あらゆることがたやすくはないからだ。同時に逆説的なことだがSYRIZAの敗北は、士気阻喪ではなくむしろ希望の要素であるように見える。パオロ・ジラルディによる以下のインタビューは、スイスの雑誌「アンティキャピスタリスト」向けに行われた。(「ビューポイント」編集部)
緊縮派政権の前に
自信高めた民衆
――ディミトリス、六月一七日の選挙における右翼の勝利に関して、どれほどがっかりしていますか
それは勝利だが、犠牲が多く引き合わないものだった。選挙運動期間中メディアは、ユーロ離脱、EUとの間で署名したメモランダムを尊重しないことがもつ効果、政権の不安定性のもつ効果、これらに関する恐れにつけ込んだ。こうして右翼は、このような不安定性によって恐怖心をかき立てられた社会層の票をつかむことに成功した。右翼は、労働者と若者たちの間で票をすくい上げる一方で、中間階級と人口中の高齢者層の票を勝ち取った。しかし、二九・六六%を得票した新民主主義(ND)も、二六・八九%を得たSYRIZAも、棄権した三五%を動員することには成功しなかった。SYRIZAは、五月六日との比較で、他の左翼勢力から一〇%超獲得した。右翼の側ではNDも同じことだった。
――そして今は?
今やわれわれは、それが割に合わない勝利であることを知るだろう。ND、PASOK、そして民主的左翼を含む国民統一政府は、ギリシャ社会を横断しているものと同じ諸矛盾の中を進むことになるだろう。その上短期間を除けば、われわれはこれまで、ギリシャでの国民統一政府などというものを一度としてもったことがない。しかもこの政権は、街頭において弾圧策を講じることに責任を負うこととなるのだ。
――まさに街頭での決起が……
SYRIZAに対して示された結果は自信を与えることとなった。それは、社会的運動に対する、過去三年以上にわたる数々の決起を含んだそれらに対する自信、しかしまた、SYRIZAに刻印されたあいまいさがどうであれ、急進的左翼勢力を生み出す可能性に対する自信だ。この情勢は、オルタナティブに関する討論に力を与える。なぜならば、要求は、抗議を超えてその先に進み、代わりとなる回答を前進させるべく作られているからだ。それは政治化を刺激している。そしてそれは、政権にとってはよいことではない。
社会的かつ政治的な動力は働き続けている。そしてそれこそが今、急進左翼の強力な議会的表現への依存という誘惑、それは現に存在しているが、それよりももっと重要だ。しかしながら、抗議活動に責任を負っている諸運動間にある、また政治を実践している左翼諸政党間にある、労働者の分裂に慎重に気を配ることが必要だ。
トロイカから脅
しの道具を奪う
――闘争を選挙上に表現するものとして、SYRIZAは欧州におけるモデルとして現れている
その指導者が言うように、SYRIZAは「民主的な正常性を体現する政党」だ。しかし、SYRIZAがブルジョア的合法性を尊重するとしても、その後者はどんな形でもSYRIZAを尊重はしない。そして、物事が起こる可能性は、ここにはらまれた動力の中にある。SYRIZAのあいまいさ――その綱領は彼らが打ち出すスローガンよりもはるかに穏健だ――を非難するだけでは十分ではなく、われわれは、政治的オルタナティブをめぐる左翼の論争の浮上を刺激しなければならない。
われわれ反資本主義連合の勢力は、この経験から教訓を引き出さなければならない。われわれは、変化を熱望している社会的かつ政治的な動力に関わる必要がある。そのことは、管理ではなく断絶の政権としての左翼政権という考えを中心とする、SYRIZAおよびKKEとの統一戦線に行き着かなければならない。
それが意味することは?
EUおよびユーロと縁を切りメモランダムを取り消すことを意味する。ドラクマ(旧ギリシャ通貨・訳者)に戻るためではなく、ユーロという脅しと脅迫の道具をトロイカから取り上げるためだ。現実に、われわれがもし通貨の創出を支配していないのであれば、銀行の国有化について――あるいはSYRIZAが主張するように銀行の単純な公的管理についてであっても――どうすれば語ることができるのだろうか? 脅しに対処することが、われわれのやるべきことだ。つまり、君たちが君たちの絶対命令を継続するならば、われわれにはユーロを離脱する道もある、ということだ。そしてそこに向けてわれわれは、民族主義者の言葉としてではなく、ユーロよりも生活があるということを大衆に納得させなければならない。
欧州民衆による
国際連帯は貴重
――まさしくそれとの関係で、極右はその存在を固めた。
それこそが、対立を民族的領域よりもむしろ社会的なものへと置き換えつつ、その問題が街頭で闘われなければならない理由だ。
――いくつかの推定は、二〇一〇年の一年だけで五六〇〇億ユーロの脱税があった、と見ている。ギリシャの民衆を支援する点で、欧州では何を行うことができるのか?
われわれにとって国際的連帯は貴重なものだ。欧州内でわれわれはひとりぼっちだと支配階級がわれわれに考えさせようとしているその時に、われわれはそれほど孤立していないと感じるだろう。そして次いで、富裕なギリシャ人から預けられた貯蓄の大きさを銀行が明かすように、あなた方が銀行に圧力をかけることができれば……。
連邦評議会は、スイスに口座を持っている米国市民四〇〇〇人のリストを提供したことがあった。スイスに財産を確保しているギリシャの百万長者の名前を公にすることを、われわれは彼らに期待できるだろうか?
▼このインタビューの初出は、前述の雑誌にフランス語で掲載された。
▼ディミトリス・ヒラリスは、第四インターナショナルギリシャ支部、OKDEのメンバー。
OKDE・スパルタコス中央委員会への回答
反緊縮ブロックをPASOKと
NDに対置させるための討論を
第四インターナショナル執行ビューロー
SIRIZAの支持が必要
親愛なる同志たち、
何よりもまずわれわれは、インターナショナルビューロー声明を発表する前にあなた方に相談する義務があった、と言わなければならない。このことを確認する。
素早く対応するようわれわれの背中を押したものは、情勢の緊急性であると共に、ギリシャの民衆と全急進左翼に対するわれわれの連帯をはっきり示す必要だ。
その上でわれわれは、声明に対するあなた方の反応に同意できない。声明が扱っている問題は、あなた方の路線でもあなた方の党建設に関わる選択でもない。われわれは、SYRIZAとANTARSYAの関係も、選挙上の問題も、SYRIZAの性格付けの問題も、過渡的アプローチとは全体的に何であるべきかも扱ってはいない。これらすべての問題に関しては、インターナショナル内部で、あるいはギリシャ支部内ですら見解は分かれている。
われわれはただ一つの問題だけに取り組んでいる。つまり、これまでと同じ緊縮政策を適用することを拒否しているSYRIZAに反対する「トロイカ」のキャンペーンを前提として、ギリシャ支配階級とEUの現政策に対するその反対という点で、SYRIZAをわれわれが支持すべきか、それとも支持すべきでないのか、ということだ。インターナショナルのほとんどすべての支部の回答と同じく、われわれの回答ははっきりしている。すなわち、緊縮政策を適用する政府を支持したり作り出したりすることを拒絶することによって、これまでのところ明確にその政策に反対してきたSYRIZAを支持することが必要だ。
過渡的要求と反資本主義の関係
さてあなた方は、SYRIZAが提起した五つの主要要求の定式化にもどり、これらの要求が過渡的要求ではないと説明することによって、もう一つの問題を取り上げている。SYRIZAが左翼改良主義者が支配する連合であることを、われわれは分かっている。彼らが過渡的綱領というわれわれの考え方を共有しているわけではないということを、われわれは承知だ。SYRIZAの要求の定式がしばしば変わる、ということもその通りだ。しかし諸定式を超えて彼らは、EUの「メモランダム」を拒否し、債務に関する一時棚上げに心を砕き、すでに適用済みの緊縮諸方策を拒否し、そして特にこれまでのところ、EUの計画との合意はいかなるものも拒絶している。SYRIZAの指導者たちによる諸声明の中にある多くの変種を超えて公式に再確認されたこの立場は、SYRIZAのホームページ上に見ることができる。
その定義上、過渡的要求が明白に反資本主義的であることはめったにない(概略的であってすら)。それは、現に存在している意識水準を出発点とするからだ。それは、人口の広範な層によって正統であると見なされる出発点から始められなければならない。その反資本主義的含意を「あらわに」し、闘争と意識の水準を引き上げることを可能にするものは、公然たる危機の情勢における、要求の実行をめざす戦闘だ。われわれの観点から見た時、メモランダムと緊縮諸方策に対する拒絶は、また債務の帳消しに向けたその一時棚上げ――少なくともその大部分に関して――は、過渡的な推力が作動し始めることを可能にする分岐点を構成する一方で、現にある意識水準に実際に対応する可能性をもっている。
再度問うが、これらの諸条件の下で、われわれは先の政策を支持すべきなのか、それとも支持してはならないのか? 全ギリシャ人と国際的な急進左翼に支持されたSYRIZAによるこの拒否、並びにギリシャ民衆との連帯に、われわれは参加すべきなのか、それとも参加すべきでないのか? われわれの回答はイエスであり、われわれは連帯の中に存在しなければならない。
自己組織化基礎に労働者統一を
声明が語るものはこれであり、それ以上でも以下でもない。支配階級からの圧力は強大だ。おそらく違いはこれから現れ、左翼の再編もあるだろう。そしてわれわれはそれらすべてに対し注意深くなければならない。しかし現段階でSYRIZAはよく持ちこたえている。そして彼らは支えられるべきだ。なぜならばわれわれは、ギリシャ民衆の敵に反対し彼らを支持した程度に応じて、彼らの戦士や支持者から話を聞かれる相手となるからだ。われわれは、将来のあり得る裏切りという名目で、革命家をSYRIZAに反対するよう導く政策が良策だとは考えない。われわれはむしろ、特に自己組織化の全経験を支え鼓舞することによる、急進左翼諸組織の統一、労働組合の統一、草の根運動の統一といった、統一政策の方を選ぶ。これもまた、左翼の反緊縮政府という展望の中で、SYRIZA、ANTARSYA、そしてKKEの合流を好ましいと思うわれわれの立場に込められた意味でもある。いずれにしろ声明は、NDとPASOKに反緊縮ブロックを対置させる目的での討論を進めるための提案だ。
特にKKEの政策の故に、上述した統一政策に対する障害が巨大であることをわれわれは分かっている。しかし資本の攻撃という見通しを前に、労働者の統一に向けた手段と道を提起する以外他に道はない。
この展望は、ANTARSYA内部の、それだけではなくSYRIZAやそれ以外の一定層にも、また労働組合や市民運動内部にもいる反資本主義者すべての合流と結び付けられなければならない。
ギリシャの重要性を前提とすれば、討論は続くだろう。討論はすべての問題に取り組むものでなければならない。しかしこのような情勢においては、統一的かつ反資本主義的な政策を遂行する道を探求することが、革命家とFIの義務である。
六月六日、FIビューロー
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