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    かけはし2012.年7月2日号

金正恩体制はどこへ

朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の新体制について

金正日・正恩の棄民化政策―
民衆連帯の立場こそ問われる

新体制をどう
見るべきか

 昨年一二月の金正日死去から今年四月の党代表者会開催、ミサイル発射、金日成生誕一〇〇周年式典と数年がかりで準備されてきた一連のセレモニーは幕を閉じ、メディアによる過剰な関連報道も終息した。その後に繰り広げられた韓国大統領イミョンバクを罵倒しつくす北朝鮮メディアの演出も金正恩新体制の歓心を買おうとする者たちの思考的退化のあり様を世界中に自己暴露するものとなった。四月の騒々しい祭りの後に訪れる厳しい現実に北朝鮮の新体制は直面することになる。
 北朝鮮は一昨年と今年に二度の労働党代表者会を開催して金日成一族による世襲システム(革命の血統)を完成させた。 「継承性の保障が党建設の基本原則」(二〇一〇年九月・党代表者会規約改正)とされ、「全社会の主体思想化」(二〇一〇年九月の党規約改正)は「全社会の金日成・金正日主義化」(一二年四月・党代表者会規約改正)へと極限的に神格化(カルト化)された。しかしその体制の下で継承される「先軍政治」とは外に向かっての攻撃的性格のものではなく金王朝の世襲システムを保守するためのものだ。「先軍政治」とは金日成一族の絶対的延命と保身を企図して金正日が導き出した統治システムであって軍の威信を内外に誇示するような概念ではない。
 当面は経済停滞と食糧難の打破に注力せざるを得ず、現在はその実情を「イミョンバク(韓国大統領)叩き」でカムフラージュしているにすぎない。一一月の米大統領選、一二月の韓国大統領選後の北朝鮮を取り巻く内外情勢の推移を見極めながら外交への取り組みは来年以降になるだろう。
 新体制の中では張成沢(チャンソンテク)国防委員会副委員長の特殊な役割について留意しておこう。金日成を頂点として肥大化する金ファミリーはその孫やひ孫まで含めると相当数になる。「革命の血統」をひく一族である限りその全体を統括できる人格とシステムが不可欠であり張成沢以外にその任にあたれる人材はいない。ファミリーを取り仕切る執事として党や軍の肩書きを超えた存在でもあり、またこうした人材を欠いた時が新体制の非常時として致命的弱点に転化することにも留意しておきたい。金正男(金正日の長男で中国在住)の証言によれば張成沢は〇六年に金正日の同意のもとで中国式改革・開放を試みた経緯があるとも伝えられている。

中朝関係のこ
れからを問う


 中国はこの数年間に対北朝鮮政策をめぐって指導部内で論議が重ねられ長期的視野に立って柔軟な対応で臨むことが方向づけられた。とりあえずは若き金正恩を北朝鮮のトップ(第一書記)として処遇する外交儀礼にのっとりながらも実際の意思決定権は側近幹部にあることも了解。金正恩を象徴的存在としながら集団指導体制がとられることを望み、長期的展望(二〇―三〇年)に立って北朝鮮を改革開放へと誘導していくだろう。北朝鮮の核・ミサイル開発には反対するが米日韓に同調して追いつめるような立場はとらない。しかし北朝鮮による情勢不安定化の行動についても明確に反対する意思を北朝鮮に通告している。
 北朝鮮は貿易の九割を中国に依存し、また中朝国境近辺での経済協力事業を推進しているが、その進出パワーには警戒感を隠さない。この重圧とジレンマが北朝鮮指導部内での葛藤と対立を孕み、また党と軍の双方が貿易や開発に絡む独自の利権を有しており、これらの要因が複合的に絡み合って矛盾が蓄積されていくだろう。一方で中朝交易拡大の中で北朝鮮でも「政商」と呼ばれる富裕層(貿易に携わる党・軍のエリート層)が登場し旧世代とは異なる洗練された商才で中国や東南アジアを行き来し、北朝鮮の今後の交易や階層形成のカギを握る存在になるとも指摘されている。
 今年一月に日本で出版された金正男(マカオ在住)独占告白本『父・金正日と私』は出版に至る経緯からして中国当局(政治局)の黙認なしには日の目を見ることはできなかった異例の書籍といえる。中国当局の北朝鮮に対する願望が金正日の長男を通して率直にあけすけに語られており、本書出版直後から金正男の中国での動静情報は途絶えている。

米朝関係進展
の可能性も


 金正恩新体制にとっては四月のミサイル発射強行によって米からの食糧支援の機会を失ったことは外交的つまずきとなった。以降、北朝鮮メディアは今後の核実験など予定していないことをことさらに強調して米国との接触再開に望みをつないでいる。新体制のもとで北朝鮮が目指すのは一二年前のあの局面、当時の米国のオルブライト国務長官が訪朝し北朝鮮のチョミョンロク国防委員会副委員長(軍のトップ)が訪米して米朝の協調が始まろうとした局面への回帰だ。
 新体制となっても北朝鮮の外交部スタッフは米国内外情勢に精通した不動の固定メンバー(外交部長・副部長・米州局長・国連代表部)で構成されており、ニューヨーク国連代表部は米大統領選情勢を見極めながら譲歩条件を斟酌しつつ米国務省との間で水面下接触(NYチャンネル)を進めていくだろう。米朝接触のすべての起点はここにあり、そしてここから始まる。

核開発は北朝鮮
民衆への脅威


 北朝鮮による核実験・核開発に対する批判は核廃絶に向けた毅然とした立場、核保有国すべてに対する批判として貫徹されなければならないし、そうしてこそ北朝鮮に対する説得力をもつことができる。
 北朝鮮核開発が加速している今日にあってわれわれは、北朝鮮での放射能汚染と被曝労働の実態についても明確にしていくことが必要だ。すでに何人かの脱北者の断片的証言からは北朝鮮の核開発施設末端現場での杜撰な核関連物質の管理や健康被害の実態が伝えられており、限られた情報の中からも追跡の調査・検証が必要とされている。北朝鮮核開発は周辺諸国にとっての脅威ではない。北朝鮮の地に生き生活を営む人々にとっての脅威なのだ。そして、北朝鮮が核開発を加速させるなら核惨事を引き起こす可能性は増大するし、それは体制自壊の決定的要因に転化するだろう。

日朝関係の今後
と私たちの課題


 昨年から日朝間の協議再開に向けた水面下接触が再開されている。北朝鮮側は日本人配偶者の一時里帰り再実施,平壌周辺で発掘された日本人遺骨の返還、よど号グループ残留者の帰国問題などでの協議を希望。四月には日本人訪朝団と会見した日朝交渉担当大使が拉致被害者の再調査を行っていた事実を明らかにするなど、北朝鮮としては拉致問題、よど号問題などに区切りをつけて新体制の下での日朝交渉再開に意欲的だ。水面下での接触は現在も進行しており、日本政府の新たな対応、そして民間レベルでの国交交渉再開を求める運動が問われている。

巨視的観点から
の構想が必要だ


 北朝鮮のこれからを語ることは容易ではない。だが金正日独裁支配下の一七年間をどのように総括するかで北朝鮮のこれからの選択肢を占うことはできると考える。この一七年間とは金日成支配下の時代からの継承性はなかったといってもいい時代だった。ソ連・東欧体制の崩壊と韓中、韓ソの相次ぐ国交樹立による国際社会からの孤立、経済破綻と食糧難、手の打ちようのないこの局面で金正日にできることは軍と治安機関への全面依存による金王朝の延命と核開発、ただそれのみであった。二〇〇〇年の南北共同宣言も〇二年の日朝平壌宣言もこの目的のために手段化されたセレモニーであったといっても過言ではない。
 金日成の時代、六〇―七〇年代の相対的安定期の北朝鮮を生き抜いた世代にとっては金正日の死去は闇の中にさしこんだかすかな光明に映るのではないだろうか。あまりにも異常な、不条理な金正日支配下の一七年間であった。そう思う北朝鮮の人々が存在することを確信しよう。金正日による徹底した愚民化政策、棄民化政策に翻弄されてきたような人々は北朝鮮にはただの一人もいない。
 今日ではあまたある脱北者の証言を俯瞰すれば、抑圧された人々こそがしたたかであり、独裁者はどこまでも孤独(協働・連帯と無縁)であるがゆえに独裁者のままで終わり、そして絶命する。
 北朝鮮がどのようなプロセスをたどるにせよ変質し自壊し中国と韓国のもとに包摂されていくことは明らかであり、革命的左翼の側がそこまで見据えた社会主義の可能性の構想をどのように提示できるのか、このことが問われようとしている。      (荒沢峻)

コラム


松下政経塾

 「民主党はどうなるのだろうね。分裂するのかね。消費税をあげるというし、先生たちは庶民の暮らしなんか知っちゃいないね」。これは行きつけのスーパー店頭で耳にした老夫婦の会話。そこには政権誕生時の輝きも期待も一切ない。失望ばかりが日々拡散していく様が実感できる情景だった。
 二○○九年七月の総選挙で民主党が圧勝した際、「これで日本は変わる」とかすかであるが未来に明るい期待を抱いた人たちは今、「裏切られた革命」を文字通り味わっているに違いない(もちろんボクもそのひとり。即物的には、高速道路無料化を信じETCを拒否したというオチがつきましたが)。特に松下政経塾出身の野田佳彦が首相になってからはひどすぎる。悪役の小沢一郎がまともに見えてくるから面白い。国会劇場とはよくいったもの。まるで漫画「花の応援団」薬痴寺先輩の名台詞、「おまえは役者やのお」の、世界そのものだ。
 野田首相になってから年金、社会保障、予算仕分け、外国人参政権など斬新な看板政策は次々と陰を潜め、沖縄、原発、TPP、安全保障分野については、かつての自民党も躊躇したタカ派政策を民自連携で推進しているから呆れてしまう。何と言ってもその象徴は、元航空自衛官で、拓殖大学大学院教授、「新しい日本をつくる国民会議」運営委員をつとめる森本敏を防衛大臣に任命したこと。「集団自衛権は合憲である」と主張する御仁を登用するとは自民党も成しえなかったウルトラCだろう。さすが自衛官の倅だけある。芸が細かい。
 極めつけは総選挙の際、マニフェストに一切掲げていなかった消費税増税。野田首相が「政治生命を賭けて」「決められない政治からの脱却」すると意気込み、民主、自民、公明三党の合意で衆院本会議に上程、成立される見込みだという。社会保障を棚上げにし、二○一四年四月に八%、翌一五年十月には一〇%と二段階で引き上げるとしている。
 六月二二日付けの東京新聞は、紙面の「核心」の中で、「消費税国民四重苦」の大見出しとともに、「消えぬ拙速の印象」という論説を展開している。抜粋すれば、「過去の政権は、世論や党内の反対を受け消費税論議には長い時間をかけてきた」「竹下内閣の下で消費税が導入されるまで十年もの時間を要した」「むしろ一国会で成立を目指すこと自体が、異例のこと」という内容だ。まさに国民不在。野田首相の一連の政策は、自民党の別働隊だと言って過言ではない。
 先に野田首相が松下政経塾出身だと書いた。同塾は周知の通り松下電器産業(現パナソニック)の創業者、松下幸之助によって一九七九年に設立された。政界再編時期に日本新党など保守系新党が卒業生の受け皿になった歴史を持つ。野田首相はその栄えある第一期生であり、どっぷり新自由主義の洗礼を受けたと言い切れる。また、民主党には前原誠司政策調査会長、樽床伸二幹事長代行など衆参合わせて二八人の出身者がおり、政権中枢の要職を占めている。
 「塾」で政治を学んだ偽政者たちよ、政治を弄ぶのはやめてくれ。 (雨)


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