もどる

    かけはし2012.年7月16日号

惨事一歩手前の着陸トラブル

安全無視の成田空港会社

空港発着枠30万回撤回せよ
操縦士に責任押し付けるな

機体が制御不能
状況に陥った

 六月二〇日、午後一時二三分ごろ、北京発の全日空九五六便(ボーイング767)が、成田空港A滑走路進入直前に突然、機体が急激にふらつき、機首を持ち上げながら通常の後輪ではなく前輪着地し、機体が二度もバウンドして着陸した。上下揺れと縦揺れで機体制御不能状態に陥るポーポイズ現象が発生していた。この衝撃により乗客乗員一九三人のうち乗客五人が首や腰の痛みを訴え、客室乗務員四人が首のねんざなどの軽傷を負った。かつての米フェデックス貨物機が風向きや風速が急激に変わるウインドシアによって着陸に失敗、炎上して乗員二人が死亡した惨事再来の一歩手前であったといえる(二〇〇九年三月二三日)。
 着陸時の天候は、成田航空地方気象台によると台風四号の影響で風速一五mの南南西の横風が吹き、高度約五〇〇m以下で乱気流発生警報を出していた。すでにこの強風のため着陸をやり直す航空機が複数あった。その後もパイロットから気流が乱れているという情報が三〇件以上も通報があった。全日空機長も「進入時から着陸にかけて断続的に気流が乱れ、横揺れや縦揺れがあった。着陸直前に機体が沈み込むように感じ、姿勢を整えたが、結果的に強い着陸になった」と報告している。機長は、総飛行時間九二四五時間のベテランパイロットだ。

定時運航維持
が絶対的方針


 このような事実から今回の事故は、全日空九五六便が乱気流に巻き込まれただけではすまされない重大な事故である。根本問題は、成田空港会社の悪天候による着陸困難状況を無視し、金儲け主義を優先した過密運航の維持強行、安全性と人命軽視の人災だ。パイロットレポートによれば危険な天候状態だったのであり、管制官は着陸許可を出す必要はなかったし、着陸準備に入っている飛行機のパイロットに天候が好天するまで他空港に向かわせる指示を出すことも可能だった。だが成田空港会社の悪天候でも定時運航を崩すことは絶対に避ける方針基準のために着陸許可を出さざるをえなかった。
 全日空機の着陸時の重力加速度は通常よりも高い一・八Gだった。そのため両主翼前方の胴体側面に半円状のしわのような大きなゆがみ、前車輪のタイヤ近くの外板にもゆがみが発見され、内部構造を支えるアルミ合金製フレームの縦方向三七本、横方向一本にも亀裂とゆがみが生じていた。国土交通省運輸安全委員会は、「ハードランディング」による航空事故と認定し、飛行機や現場検分、フライトデータレコーダー(飛行状況記録機)とコックピットボイスレコーダー(操縦室音声記録機)調査、地上気象用ドップラーレーダー装置のウインドシア記録調査、機長・副操縦士・客室乗務員・管制官から事情聴取し原因調査中だ。
 しかし、米フェデックス貨物機事故を調査している運輸安全委員会の中間経過報告(一〇・四・一六)は、成田航空地方気象台がウインドシア発生の危険性を指摘する飛行場強風警報を発していたが、ボイスレコーダーにパイロットがウインドシア発生の確認を示す音声が記録されていないことを根拠に着陸時の機首下げ誤操作による垂直荷重で左主翼に制限値以上の加重で着陸失敗事故となったとまとめている。
 最終報告は未定だが、成田空港会社の安全軽視路線を防衛するために操縦士にミスの責任を押しつけようとしている。フェデックス貨物機事故直後、国交省は「ウインドシアは予測できない。警戒のための情報は出すが、着陸するかどうか決めるのは機長」などと無責任ぶりを隠そうともしなかった。なぜならば成田空港特有のウインドシアや乱気流事故原因説を選択すると空港建設立地設定そのものが問題となってしまうからだ。
 今回の全日空着陸失敗事故も結局のところ運輸安全委員会は航空資本・業界、空港会社防衛の観点からパイロットの判断・操縦ミスに矮小化し、根本原因を覆い隠そうとする役割を忠実に果たすことが予想される。こんな暴挙を絶対に許してはならない。

乱気流が多発
する成田空港


 すでに国内外のパイロットたちは、「成田は乱気流が多くて怖い。嫌いな空港だ」と非難している。〇九年には三月の米フェデックス貨物機事故をはじめ米ノースウエスト航空の旅客機が千葉県・銚子沖上空で乱気流に巻き込まれて四三人が負傷した事故(二月二〇日)、アメリカン航空61便 が成田空港南東約七五キロの太平洋上で高度約一五〇〇mを航行中に乱気流に巻き込まれて成田空港に緊急着陸し乗客五人が病院に運ばれた(一〇月二六日)事故が連続で発生していた。だからこそ乱気流事故とセットの成田空港であるからこそ過密運航ではなく安全を優先した航空規制の強化が必要なのだ。
 空港会社は、発着枠を一二年度中に二七万回、一四年度中に三〇万回へと増枠することを掲げ、航空機離陸後の接触事故を回避するための離陸時間差、一五度以上の開きを確保しなければならない安全ルールを取っ払ってA・B滑走路の同時離発着方式によって空港処理能力の拡大に踏み込んだ。必然的に発着枠増加と安全ルール緩和は、過密ダイヤによる管制業務疲労、ニアミス・接触事故、滑走路離発着事故の多発化へと結びつき、飛行コース下住民に対する轟音・ジェット機排気ガスをまき散らしながら環境・生活破壊の拡大でしかない。
 成田空港会社の株主総会(六月二五日)で新社長となった夏目誠は、国鉄分割民営化の先兵として「活躍」し、元JR東日本副社長と関連会社長に昇った経験を「自慢」しながら「安全が最優先。利用者と航空会社の双方の満足度を高めたい。格安航空会社(LCC)については、着陸料を含めたコストの削減に少しでも協力したい」などとあいかわらずの森中前社長路線の継承でしかない。一連の航空事故を総括することもなく薄っぺらな「安全が最優先」に触れつつも、新自由主義的航空政策の強化が第一目標でしかない。

LCC優遇と
規制緩和強行


 成田空港では現在、イースター航空(韓国)、ジェットスター航空(豪)などのLCCが就航し、今後日航などが出資したジェットスター・ジャパン、全日空系のエアアジア・ジャパンの国内線が運航する。また、LCCの参入を促すために施設使用料を安く抑えた専用ターミナルを二〇一四年度中に建設する。
 そもそもLCCの「高回転高稼働」システムは、空港着陸から出発までの折り返し時間が三五分、一機の一日平均稼働時間が七・八時間という短時間で運航回数を増して機体整備・点検のコストダウンを押し進める究極の安全軽視に貫かれたものだ。この五月に「和製LCC」と言われるスカイマークが乗客向けの文書で「機内での苦情は一切受け付けません」と居直り、あげくのはてに不満があるなら同社の「お客様相談センター」か「消費生活センター」に連絡せよと通告していた。消費者基本法違反が社会的に批判されていやいや文書を回収したが、LCCの姿勢の一端がここに現れている。
 国交省は乗客の搭乗中の給油禁止を解除する規制緩和を強行した(一一年一二月七日)。政府の行政刷新会議の規制・制度改革委員会も航空機の修理や点検の簡素化を打ち出した(七月三日)。乗務員の長時間過密労働の強要も含めて、次から次へと組織的人災事故の多発化へと追い込んでいる。
 夏目は三里塚闘争に対してむき出しの憎悪を隠さずに「成田空港には長い歴史があることは認識している。これまでのスタンスを変えることなく、地域との共存・共栄を大切にして、空港運営を通して、地域の発展にのぞんでいきたい。用地問題は引き続き、話し合いによる解決に努力して行きたい」と強調した。森中前成田空港会社社長も就任時、同様のことを放言していたが、やったことは東峰地区住民をはじめ闘う農民に対する追い出し攻撃のエスカレート、一坪共有地強奪と横堀・団結小屋破壊のための提訴、北原派現闘本部撤去などだ。この悪行を引き続き貫徹していくということだ。夏目宣言を許してはならない。
 三里塚反対同盟(柳川秀夫世話人)とともに用地内拠点を防衛し、空港会社の暴挙を跳ね返していこう。成田空港発着枠三〇万回をただちに撤回しろ!諸裁判提訴をただちに取り下げろ!横堀・団結小屋破壊をやめろ!   (遠山裕樹)

?第三回現闘本部共有地裁判/八月七日、午前一一時/東京高裁第2民事部822号法廷

?柳川秀夫持分、横堀くぼ地共有地裁判判決(共有物分割請求控訴事件)/八月九日、午後四時/東京高裁第5民事部511号法廷
 
?カンパ送り先
三里塚芝山連合空港反対同盟大地共有委員会(U)/〒289─1601 千葉県山武郡芝山町香山新田131─4/ 電話&FAX0479─78─0039
?振替口座 00290─1─100426 大地共有委員会(U)
?大地共有委員会ブログ 
http://blog.livedoor.jp/kyouyutisanri/

「変えよう日本」7・21討論会呼びかけ

新しい政治勢力の形成をめざして
今、私たちはどのように、何をなすべきか

 民主・自民・公明の三党による大幅消費税増税の強行、原発再稼働、オスプレイの普天間配備など野田民主党政権は、完全に過去の自民党政治に回帰した。民主党への幻滅は、橋下・維新の会などの強権政治の台頭をもたらしている。資本主義の危機の中で、いま左翼はどう闘うべきか。討論を深めよう。(編集部)


 民自公3党「談合政治」による消費税増税の強行で民主党が分裂。わが国政界は流動化し、大再編期に入りました。原発再稼働やめろ!オスプレイ配備ノー!消費税増税反対!首相官邸前、大飯、沖縄、東北など全国各地にあがる「空前」の「民の声」をただの音としか聞こえぬ野田政権・民自公ら「駄獣の群」(与謝野晶子)の政治は、もうたくさんです!
 これら原発・沖縄・消費税・TPP問題の根源には、政官財癒着の「原子力村」「沖縄村」―日米核安保があり、世界金融危機を99%の労働者民衆に犠牲を押し付けて延命しようと暴走する資本主義の存在があります。
 今、わたしたちには、闘いの発展のためにもこの根源に向かって共に撃ち、3・11東日本大震災と福島第一原発事故が突き出したように、これまでの社会・政治・経済・生活システムを変え、原子力文明を根本より変えることが問われています。このシステム変革の闘いは、「日米同盟」ゆえの「構造的差別」のもとに軍事基地の被害を強制されてきた沖縄の人びとが、ねばり強い闘いの中で訴えつづけてきたことでもあります。
 世界では、欧州を震源とした国家債務危機=「国家破産」の危機が爆発的に拡大し、ギリシャからスペイン、ポルトガル、イタリアにいたる南欧諸国全体に波及した債務危機は共通通貨ユーロやEU統合そのものの危機へと発展しています。欧州諸国の支配階級はギリシャ危機に対して、公務員の大量解雇、大幅賃下げ、年金カット、社会福祉の切り下げ、公共サービスの民営化などの新自由主義的「緊縮政策」を押し付けてきました。しかし「アラブの革命」に触発されたスペインやギリシャの若者を先頭にした「広場占拠」の闘いに示されるように、失業・社会福祉の解体・労働者の権利の剥奪・民主主義の破壊に抵抗する闘いが大きく広がっています。
 他方で、貧困と格差の増大に対する不満の爆発を背景に、移民労働者などに攻撃を集中する極右の排外主義勢力、「ネオナチ運動」も拡大し、アメリカでの「茶会(ティーパーティー)」運動や、中国や韓国・朝鮮をターゲットにした日本での極右排外主義勢力の「草の根」レベルでの動きとして現れています。また、民主・自民の翼賛・大連立構造が登場するなかで、強権的・独裁的手法と競争万能の新自由主義政策を結びつけ、「公務員バッシング」を意図的に煽る「橋下・大阪維新の会」などの動きが強まっています。
 こうした現実に、どう立ち向かうかが問われています。 
 私たちは、今日の脱原発・沖縄など闘いの発展のために力を合わせ、社会運動の新しいあり方を基礎に、グローバル資本主義の深刻な危機に対抗し、社会・政治・経済・生活システムの変革を推進する新しい政治勢力を作り出していくときだと考えます。こうした問題意識から、7月21日討論会を開催します。みなさまの参加と活発な討論を呼びかけます。
2012年6月25日  「変えよう!日本」実行委員会

1、時 7月21日(土)午後6時――
会場 東京・御茶ノ水 旧総評会館 201号(連合会館)
会場費  800円

2、主催 「変えよう!日本 7・21討論会」実行委員会

3、発言  
田淵太一(同志社大学教授)
土屋源太郎(伊達判決を生かす会)
江田忠雄 (経産省前テントひろば)
椎名千恵子(原発いらない福島の女たちの会)
大野和興 (脱WTO/FTA草の根キャンぺーン)
国富建治 (新時代社)
生田あい (コモンズ政策研究機構)他予定

4、連絡先 
準備事務局 03―3372―9401(国富)
03―3389―0411(生田 )


もどる

Back