人権委設置法案の閣議決定について
政府から独立した委員会の権限確立が必要だ
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差別もたらす
行為を禁止
野田政権は、九月一九日、新たな人権侵害救済機関「人権委員会」を新設する人権委設置法案を閣議決定した。次期国会に法案を提出する。
法案は、人権擁護施策の推進主体を「国の責務」とし、人権委員会を法務省の外局であり国家行政組織法上の「三条委員会」として設置する。人権侵害の定義となる「人権擁護の基本原則」の第一項が「特定の者に対し、不当な差別、虐待その他の人権を違法に侵害する行為をしてはならないものとする」、第二項には「人種、民族、信条、性別、社会的身分、門地、障害、疾病又は性的指向についての共通の属性を有する不特定多数の者に対して当該属性を理由として政治的、経済的又は社会的関係における不当な差別的扱いをすることを助長し、又は誘発する目的で、当該不特定多数の者が当該属性を有することを容易に識別することを可能とする情報を文書の頒布、掲示その他これらに類する方法で公然と摘示する行為をしてはならない」と明記した。
さらに法案は、@政府が国会の同意を得て委員長と委員四人を選任し、首相が任命するA全国の法務局や地方法務局に人権侵害行為に対する調査の委任や救済措置を行う。対応状況は毎年、国会に報告し、公表するB調査は相手側の同意に基づく任意であり、調査拒否に対する制裁規定はなく、人権侵害をした人に対する勧告や告発など救済措置を講じるC紛争解決の方法として調停委員会や仲裁委員会を設け、当事者の合意による解決を促していくことを任務設定した。 法務省による
統制は残る
人権侵害を許さない社会的取り組みの前進のために人権委員会の設置は重要な第一歩である。だが人権委員会が法務省の外局では、事務局の事務を法務局長又は地方法務局長に委任するのだから実質的に法務省の内局である法務局職員が兼任することになる。これでは、実質上、法務省の統制下に委員会が置かれることになってしまう。
法務省は、「Q&A(人権委員会設置法案等について)」で「法務局・地方法務局を窓口として既に60年以上人権擁護行政に携わってきた」ことを踏まえ「新制度への円滑な移行を図る」ために「外局」にしたと居直っている。
しかも「法務省は,行刑や入国管理などの権力的な作用に携わる部門があって人権救済機関を設置することは適当ではないとの指摘がある」ことをわざわざ取り上げ、「三条委員会は,各省の大臣の指揮監督に服することはなく,独立して職権を行使する機関ですから,法務省に置かれた委員会が,その職権行使について法務大臣から指示を受けることはありません」と官僚的に突き放し、人権委員会直属の事務局職員配置を否定した。だから法務省「法案概要」(二〇一一年)では、「人権委員会直属の事務局職員(現地担当官)を配置し、公務員による人権侵害事案の調査及び法務局・地方法務局の指導監督等の事務を行わせる」と明記していたが、この文言をこっそりと削除してしまった。これでは刑事施設や入管施設などの人権侵害の隠蔽の温存の危険性が続いてしまうのだ。
二〇〇二年に小泉政府が提出した「人権擁護法案」は、人権の定義がなく、人権委員会が法務省の影響下のまま、報道を巡る人権侵害に対するメディア規制条項、調査を拒否したら過料など制裁規定を設けていた。当然、各界から猛烈な批判が集中し、〇三年一〇月に衆議院の解散で廃案になった。
その後も法務省は、メディア規制を盛り込んだ法案提出を策動してきたが、今回、旧法案で問題となった規制条項を削除して提案してきた。しかし、法務省の最大のねらいであった委員会の外局を引き継いだものだった。日本弁護士連合会は、「パリ原則の求める独立性が危うくなり、これまでの法務省人権擁護局による人権擁護行政との実質的な違いも定かではなくなる」と批判し、修正を求めている。国際人権規約委員会は、「行刑や入国管理などの権力的な作用に携わる部門」の人権侵害も救済対象にするから公的権力から独立した機関の設置の必要性を強調し、日本に強く勧告してきた。国際的流れに逆行する法案の欠陥を批判し、修正を求めていく必要がある。 人権擁護団体
の申し入れ
野田政権による新自由主義政策とナショナリズム扇動による社会的分裂と格差の拡大、差別排外主義が強化されつつある。必然的に人権に対する著しい軽視、深刻な侵害が続発している。入国管理施設や刑務所など法務省管轄の機関でも繰り返されている。人権諸団体は、長年、新たな人権委員会の設置の実現を取り組んできた。
すでに部落解放同盟が支持する「人権侵害救済法」案(部落解放・人権施策確立要求中央実行委員会/〇四・五・一七)があり、日弁連も「国内人権機関の制度要綱」(〇八・一一・一八)を提案し、その実現に向けて運動を進めてきた。
その柱は、一九九三年の国連総会で採択された国内人権機関の設置に関する
「パリ原則」(@政府からの形式上ならびに実際上の独立性A委員の構成などにおける多元性B国際的な人権基準にもとづいた広範な責務C調査のための適切な権限D十分な財源を確保することを規定している)、
日本が締結した国際人権規約や人種差別撤廃条約、女性差別撤廃条約などの具現化だ。
国内人権機関と選択議定書の実現を求める共同行動、反差別国際運動日本委員会(IMADR-JC)など七団体も法務大臣に要請書(@国内人権機関の構成員は社会の多元性を反映するよう選出し、その任期は明確に定め、独立した財源をもつものとするなど、国内人権機関の独立性を確保すること。A公権力による人権侵害事案を検討し対応する強い権限を確保すること。B国内人権機関は、憲法及び日本が締結した人権に関する条約に規定されたすべての人権を扱うものとすること。C現行法や法案、行政措置に関し、国際人権基準に基づく実効的な勧告や提案を出せる機能と権限を保障すること。D人権委員会の構成において、多様な市民社会を反映し、ジェンダー・バランスを確保し、差別を受けやすいマイノリティが積極的に活かされるような枠組みを確保すること)を提出している(一一・七・二〇)。
右派からの反対
キャンペーン
法案に対して自民党、天皇主義右翼、産経新聞、読売新聞などが一斉に反対キャンペーンを開始した。
自民党は、総裁選の中で「言論の自由の弾圧につながる」(安倍晋三元首相)、国会閉会中の「なぜこのタイミングなのか」(林芳正政調会長代理)などと批判した。産経新聞が「選挙向けの実績作り 言論弾圧につながる恐れ」(社説/一二・九・二〇)、読売新聞が「理解に苦しむ唐突な閣議決定」(社説/九・二三)と押し出し、「衆院解散・総選挙をにらみ、支持基盤である人権団体へのアピール」がねらいだと罵倒している。
法案に対する批判は、救済対象となる人権侵害の定義が「不当な差別、虐待その他の人権を違法に侵害する行為」「特定の人の人権を侵害する、民法や刑法に照らして違法となる行為」が「あいまい」だとして、強引に「憲法二一条の表現の自由が侵される恐れがあり、言論統制につながる」という主張だ。
しかしここには「人権擁護の基本原則」条項を「意図的」に無視し、「あいまい」だと言っているにすぎない。人権侵害に向き合うための最低限の水準さえも認めようとしないのだ。本来求められていることは、「パリ原則」や国際的な各人権条約の具体化なのであり、反対派は国際的な流れへの敵対でしかない。
産経は、事例として弁護士会が行った人権救済勧告を引っ張り出し、なかでも「学校の生徒指導や国旗・国歌に関する指導」、「警察官の職務質問が『人権侵害』とされた事例もある」などと批判する。つまり、「日の丸・君が代」強制による人権侵害賛美、警察権力強化の観点から法案の制定に反対していることが明白だ。
第二は、「新設される人権委員会が偏った思想・信条に基づく申し立てに公正な判断を下す保証もない」と断定する。事例として「法案は人種や信条などを理由に『不当な差別的取り扱いを助長・誘発』する目的での文書配布なども禁じているが、これでは北朝鮮による拉致問題への抗議活動も『不当な差別』とされかねない」という手前勝手な解釈で批判し、差別・排外主義扇動容認の立場から暴論を展開しているにすぎない。
同様のレベルで「市町村に置く人権擁護委員には日本国籍の有無について規定がなく、地方参政権が付与されれば外国人でも就任できる」と外国人参政権反対の立場からの主張だ。「多文化共生社会」プロセスの一つである永住外国人への地方参政権付与法の実現は必要だ。
自民党などの差別・排外主義政策推進派、天皇主義右翼、外国人排斥主義者などの反対策動を許してはならない。「国内人権機関の地位に関する原則(パリ原則)」に基づく政府から独立した人権委員会設置法を実現しよう。 (遠山裕樹)
声明
滝法相の死刑執行に抗議する
死刑廃止国際条約の批准を求めるフォーラム90
九月二七日、滝実法相は八月に続いて二人の確定死刑囚の死刑執行を強行した。内閣改造直前の「駆け込み執行」を糾弾する。死刑廃止の国際的流れに逆行するこの暴挙を許さず、死刑制度の廃止を求める世論を広げよう。「死刑廃止フォーラム90」の声明を転載する。(編集部)
本日(9月27日)、松田幸則さん(39歳:福岡拘置所)、江藤幸子さん(65歳:仙台拘置支所)に死刑が執行されたことに対し、強く抗議する。
滝実法務大臣は、去る8月3日に就任後わずか2ヵ月たらずで2名を執行し、しかもその1人にあっては、わざわざその誕生日を狙って死刑執行をするという非人間的な行為を行ったうえ、その反省もないまま、それから2ヵ月も経っていないにもかかわらず、2ヵ月連続で今日の執行を行った。この連続的な執行は、年4回という大量執行をなし崩し的に実現しようとするものであって、死刑廃止の世界的潮流に真っ向から反するものであり、また死刑の執行は慎重でなければならないとする刑法・刑訴法の精神に反するものであって、厳しく非難されなければらならない。とりわけ、滝実法務大臣は引退を表明しており、その政治家としての無責任さに憤りを禁じ得ない。
松田幸則さんは、200
9年に上告を自ら取り下げており、三審の裁判を受ける権利を保障されていない。江藤幸子さんは、弁護人が裁判で心神耗弱を主張し責任能力を争っていた事件で、再審に向けて弁護人が準備をしていた矢先の執行だった。
死刑は、国家による殺人を肯定するものであって極めて危険なものであるばかりか、応報感情を社会に蔓延させ、極めて有害なものである。死刑には犯罪抑止の効果がまったくないばかりか、被害者の救済や社会の平穏にも資するものではない。死刑は直ちに廃止されなければならない。
私たちは、死刑の廃止を願う多くの人たちとともに、また、滝実法務大臣に処刑された松田幸則さん、江藤幸子さんに代わり、そして、死刑執行という苦役を課せられている拘置所の職員に代わって、滝実法務大臣に対し、強く、強く抗議する。
2012年9月27日
死刑廃止国際条約の批准を求めるフォーラム90
9.22供用してもいいのか新石垣空港
滑走路陥没の危険を無視
緊急集会で抗議の意思
来年三月開港を
食い止めよう
九月二二日文京区民センターを会場に、長きにわたり新石垣空港建設に反対し粘り強く闘ってきた「八重山・白保の海を守る会」呼びかけによる緊急集会が開かれた。同会が六年間続けてきた「新石垣空港設置許可取り消し訴訟」の中で、この空港の基礎地盤中にある洞窟が崩落し滑走路陥没にいたる、という危険がいよいよ否定できないものとなったのだ。同会が指摘してきたその可能性について、空港設置者である沖縄県が調査委託した洞窟専門家までもが、裁判証言として認める事態となっている。
ところがこの危険については、沖縄現地でさえ人々にまったく知らされていない。この日の集会はこの状況を危惧し開かれた。同訴訟の控訴審判決は一〇月二六日に予定されている。これを前に、石垣島を訪れる観光客にも及ぶこの危険を改めて確認した上で広く訴え、来年三月ともされている供用を何としても食い止めたい、開会にあたって同会事務局長の生島融さんはこのように呼びかけた。
崩壊を起こす
特殊条件が存在
この後、日本洞窟学会会長を務める大阪経済法科大学客員教授の浦田健作さんが、内外を通じた自身の現地調査、これまでに得られている科学的知見に基づき、映像を交えながら問題を解説した。そこでの要点は三点。第一は、洞窟は石灰岩が水で浸食されることで形成されるが、その顕著な発達はあらゆる石灰岩台地で起きるわけではなく、石灰岩ではない、つまり水の流れが地表にできる地質領域に石灰岩領域が半ば囲まれるような特殊な条件下で起きる現象ということ。その点では石灰岩台地上の空港がすべて危険ということではない。しかし新石垣空港の場合はこの特殊な条件にあたり、現に地下河川と洞窟が密集している。沖縄では、普天間にも同じ条件がある。浦田さんは、したがって普天間も実は危険な空港だ、と指摘した。
第二は、洞窟および地下河川の所在、長さ、深さ、形状を、地表から正確に知ることはできないという点。入り口を見つけ実際に入って調査する以外にない。そのような事情があるため、世界の有名な洞窟に関するデータも、年毎の新発見に基づき年々更新されている。要するに新石垣空港の地下にある地下河川と洞窟については、まだ知られていないものがいくつもある可能性が高い。新石垣空港の建設では、既知の洞窟を対象に滑走路の乗る盛り土部分中に保護ドームなる構造物がつくられているが、それだけでは未知の洞窟はカバーできない。また、ドームを支える基礎構造の下部に洞窟があれば、ドーム自体が用をなさない。
第三に、地下河川と洞窟は始終変化し発達するということ。日々の流れが洞窟を成長させるだけではなく、大量の雨が降れば洞窟を一杯にするような水量が流れ、一緒に地表の土砂なども持ち込む。それがまた流れを変え、つまり洞窟形状を変え崩落の原因になったりもしている。浦田さんは、そのようにして新たにできた陥没や穴の例を、日本各地の石灰岩地帯で映した写真で紹介した。また先に触れた沖縄県が委託した専門家の証言も、この第三点を理由に危険があるとした。彼の表現によれば、地下河川や洞窟は「生きている」のだ。生島さんは、この証言に対し沖縄県側は何もコメントしていない、と補足した。
10月26日の裁判
に結集しよう
この説得力ある説明に誘われるように、会場からも活発に質問が出された。そして、アメリカの小さな空港で陥没が起きた事例があること、南海地震の際に秋吉台の田んぼに多数の陥没が起きた事例などがさらに明らかにされた。
浦田さんはこれらをまとめて最後に、洞窟の拡大、崩落に関する研究はまだ進んでいるわけではなく、それを考えれば、カルストの上に空港を作ってはならないというのが科学的結論、と明快に述べた。
新石垣空港に関しては当初、希少種のコウモリや赤土流出による珊瑚への影響が大きな問題だった。それらの問題が何らかの形で回避されたわけではない。たとえばコウモリを見れば、この日の集会でも現在まで急速に数を減らしていると報告された。そして今や空港自体の危険性が明らかになった。
この事実にフタをしたままの供用は許されない。そのためにどうするか、集会でも課題となったが、さしあたって一〇月二六日の裁判へ結集が呼びかけられた。 (谷)
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