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    かけはし2012.年6月4日号

貸し手に従うことを拒否
主権を守り、生活を改善

ギリシャ危機

2001年のアルゼンチンが一つの手本

エリック・トゥサン

 ギリシャは二〇〇一年のアルゼンチンのように、トロイカと縁を切り債務返済を棚上げしなければならない。ギリシャ民衆に対する活動的かつ実践的な連帯を示すこと、また、不法な債務の帳消しを獲得することを目的とした緊縮策に対する欧州共通の抵抗の政綱を確立すること、これが欧州の社会運動にとっての緊急の必要事だ。

債務返済は権
利破壊の口実


 二〇一〇年五月の最初のメモランダ以来ギリシャ民衆の大きな層はデモを行い、トロイカとギリシャ当局が強要する緊縮策に対する反対を強めてきた。ゼネラルストライキ、公共広場占拠、街頭デモ、サービス価格と交通費上昇に対する抵抗運動などがそれであり、職場で働く人々による一定のサービスの再開も忘れてはならない。最後のものの例としては、マケドニアにあるキルキス病院や、労働者管理下でのEleftherotypia日刊紙発行の再開(二〇一二年二月一五日)がある。
 トロイカに対するギリシャ政府の服従と協力は、この国の経済情勢をただ悪化させ、住民の経済的社会的権利を侵害するだけだ。
 不正直にも「救援」と名付けられた最後の計画は、EU並びに貸し手との関係におけるギリシャの主権の放棄という点で、もう一歩の踏み込みを表している。すなわち、新しい貸し出しのすべては、極めて高度に不法な、かつその全経過が貸し手によって直接管理される、そのような債務の返済に充てられるだろう。
 南の諸国の民衆は二〇年の間(一九八二年から二〇〇〇年代始めまで)、この種の政策の下に置かれてきた。その政策は、基本的な経済的社会的権利を構成する一連の社会的獲得物を破壊する武器として、債務返済という口実を使う。

返済凍結により
経済回復を実現


 アルゼンチンは象徴的な事例だ。新自由主義政策の二五年(一九七六〜二〇〇一年)、そしてIMFによって指揮された緊縮計画の継続を経て、二〇〇一年一二月に民衆的反乱が勃発した。そして政権崩壊に行き着いた。新当局は、総額九〇〇億ドルまで金融市場に売却された債券形態の国債返済の凍結を一方的に指令した。それは今日まで、史上最高額の返済凍結として記録を留めている。
 返済凍結から三年後、そして政府はその間経済回復政策を実施し、IMF勧告に従うことを拒否したのだが、アルゼンチンは、その貸し手に六五%の債務削減を押しつけた。二〇〇一年一二月末アルゼンチンは、二国間債務(総額六五億ドル)の返済をも凍結した。スペイン、フランス、ドイツ、イタリア、英国……など、パリクラブに結集する国々に対してのことだ。この返済凍結は一〇年間続き、そしてアルゼンチンは極めて良好な状態にある。二〇〇三年から二〇一二年にかけて、その年成長率は平均八%だった。アルゼンチンが債務返済を凍結せず、IMFと他の貸し手の指令を拒否しなかったとしたならば、アルゼンチンは、この国が世界市場に輸出している産品価格の上昇を、二〇〇四〜二〇〇五年から利用する、ということができなかったと思われる。これらの歳入すべては、債務返済によって呑み込まれていただろう。民衆の圧力の下で、アルゼンチンの当局は、外国の多国籍企業とIMFが押しつけようと思っていた、電力、水、通信その他の料金値上げを拒否した。アルゼンチン人の生活条件は顕著に改善された。そして今日では欧州の市民が、まともな職を求めてその国に向かおうとしている。

緊縮ノーの全
欧州的戦線を


 アルゼンチンの例が示すことは、不法な債務の返済のために貸し手とIMFに従う、というようなことを拒否することによって、人は顔を上げることができ、住民の生活条件を改善できる、ということだ。
 この論文の始めで指摘したように、ギリシャの人々の闘争を孤立に留めてはならない。幅広い連帯運動を建設し、欧州の全民衆を結集して、不法な債務の帳消し、並びに真に民主的な憲法制定過程を通じた民衆の欧州の完全な再創出をめざす、そのような抵抗の戦線を建設することが必要だ。

▼この論文は、Eleftherotypia労働者新聞向けに書かれた。
▼筆者は、政治学教授、CADTM(第三世界債務帳消し委員会)ベルギー代表、創立以来の世界社会フォーラム国際評議会メンバー、またATTACフランスの科学委員会メンバーでもある。

声明

左翼はSYRIZAの反資
本主義的綱領の下に団結を

「ソーシャリスト・レジスタンス」(英)編集部

SYRIZAの
勝利を歓迎する


 ソーシャリスト・レジスタンスは、堅固な反緊縮政綱に基づいて第二位につけた、ギリシャ総選挙においてSYRIZAが達成したすばらしい得票を強く歓迎する。それは、ギリシャと欧州の支配階級を震撼させ、来月の次回選挙において最大の単一党としてSYRIZAが浮上する可能性を切り開いた得票だ。
 われわれはまた、SYRIZAの五つの要求(注一)をも強く支持する。それは、反緊縮の統一した闘いに向けた行動綱領だ。それらには、トロイカが三月に押しつけた銀行への財政支援諸条件と緊縮策に対する拒絶が含まれている。それらは、債務返済の一時凍結、並びに精力的な債務帳消しと一体的に、ギリシャ債務を監査する国際委員会を求めている。それらはまた、富裕層への課税、所得と富の抜本的な再配分、銀行の国有化、さらに製造業部門を再活性化する新たな産業政策を求めている。これらの諸方策は、親緊縮諸党とのいかなる取引をも排除し、緊縮という破壊に対決する反攻を始める上で必要とされているものだ――とはいえ、緑の回答に対するもっと強い圧力があれば、その方向はさらに強められると思われる。

ギリシャ左翼
の統一が必要


 しかしながら、次の選挙を前に、避けてはならない深刻な問題がある。それは、ギリシャ左翼の統一という課題だ。選挙以前SYRIZAは、最も明白な物事――統一した反緊縮政綱と、左翼が勝利した場合の統一した反緊縮政権を求めるという――を求めた唯一の組織だった。現在情勢はさらに悪化している。来る選挙において、KKEとANTARSYA双方とも(KKEがより声高だとはいえ)、彼ら自身の候補者を立てるだけではなく、SYRIZAが勝利した場合のSYRIZA率いる政権に対して一切支持を与えない、あるいはそれを支えない、とすでに語っている! 彼らの言うところでは、これは、SYRIZAの政綱が十分に革命的な綱領ではないということが理由となっている。しかしさらに広範な綱領は、今後討論されるべき、また闘争の前進の中で発展させられるべき、そして今日展開中の闘争の差し迫った必要に対抗的に提起されてはならない何ものかだ。
 これは極めて危険な状況だ。われわれは、任務につくことを拒否されるか――そして緊縮策はその結果すべてを引き連れて継続する―― 、それとも一端任務についた後、別の左翼によって反対されるか、そのどちらかの反緊縮政権を見ることとなる可能性があるのだ! それゆえわれわれは、ギリシャ左翼のすべての部分に向けて、来る選挙ではSYRIZAの下に統一するよう、そしてそれが選出された場合は、SYRIZAが率いる反緊縮政権の下に統一するよう、可能な限り強く訴える。これこそ、SYRIZAのような幅広い組織を建設する――この種の情勢において労働者階級を統一する目的で――ための良識だ。

EUエリートと
対決する闘争へ

 世論調査上ではSYRIZAの継続的な伸長があるとはいえ、次回選挙の勝利が左翼のものであると当然視するべきではない。EUのエリートたちは、次回選挙をユーロに関する国民投票にするということだけではなく、再度の反緊縮投票はユーロからのギリシャ排除を意味すると、すでに明確にした。現在と投票日の間では、この最後通牒を強化することに向け、最大の圧力が行使されようとしている。
 この最後通牒が拒絶され、緊縮攻撃に反対が示されることが極めて重要だ。SYRIZAは、自身がユーロ離脱を求めているわけではないが、それが緊縮圧力を敗北させたことから起きるEUエリートの行動を原因とした結果であるとすれば、その時はそうなる、と明確にしている。それは、ギリシャの労働者が何の責任も負う必要のない債務の場合も同じだ。債務返済の拒否を効果的に主張するためには、人はあり得る結末としてユーロ圏からの排除に向け準備が必要だ。この取り組み方は、有権者が彼らが直面する最後通牒と脅迫に対して武装すべきだとすれば、選挙運動におけるきっぱりとした正直さを必要とする。
 ギリシャ労働者階級の闘争は欧州を貫く労働者運動に向けた闘争だ(注二)。

▼ソーシャリスト・レジスタンスは第四インターナショナルイギリス支部。
注一)以下が五つの要求。
×年金や賃金削減のような、ギリシャ人をさらに貧困化する間近かに迫る諸方策すべての即時取り消し。
×団体協約の廃止のような、基本的な労働者の権利を掘り崩す差し迫った諸方策すべての即時取り消し。
×議員に訴追免責特権を与える法の即時廃止、選挙法改革、政治システムの全般的点検。
×ギリシャの銀行に対する査察、並びに、ブラックロックによってギリシャの銀行部門に対しなされた監査の即時公表。
×全貸し付け供与に関する、監査で発見されたものの公表までの返済一時棚上げと一体となった、ギリシャの財政赤字の原因を査察するための債務監査委員会設立。
注二)ソーシャリスト・レジスタンスは、労働組合指導者、議員、また運動家が後援する、ギリシャ民衆との連帯声明への署名を呼びかけている。

 


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