ギリシャ
5月6日総選挙に対する声明
メモランダムも債務もユーロも
EUもないもう一つの道がある
ANTARSYA |
フランス大統領選挙と並んで、おそらく欧州情勢の今後に大きな影響を与えるギリシャの総選挙が五月六日に行われた。、以下はその選挙に向けたギリシャの同志たちの声明。本紙が読者に届く時にはすでに結果が判明しているが、その結果を考える上でも一つの素材としていただきたい。(「かけはし」編集部)
「統制不可能」こそ希望だ
もう一つの道がある!
債務もユーロもEUも、そしてメモランダムもない形で! 連立政権とトロイカの打倒、そして労働者による富の支配を! このシステムとの断絶と革命を基礎とした戦線――強力な反資本主義左翼を!
トロイカのオウムがわれわれに何を語ろうとも、「暗黒の戦線」が遂行する「散髪」(債務削減)が意味するものは、銀行の救出と民衆の社会的惨害でしかない。メモランダムナンバーツーは、労働者階級多数に対する皆殺し戦争に帰着している。EUは、欧州全域で破壊的な緊縮計画を強要し続けている。銀行家たちは五〇〇億ユーロを補償されたが、社会保障と他の公的基金は盗まれ続けている! 貸し付け協定は、帝国の権力が植民地に課したものと同種の諸条件を作り出している。民衆の主権の全面的な欠落が、そして自然環境と共に公共的な富の、売り渡しがある。一方で債務はそれ以上に増大した。新民主主義党(ND、注一)、PASOK(全ギリシャ社会主義運動)、トロイカそして裏切り者のメディアは、「統制不可能性」という妖怪でわれわれを恐れさせようと、懸命に努力している。しかしこの「統制不可能性」が実際に意味するものは、現在の政権がその行動をやり通す能力を欠いているということだ。しかしそれは民衆にとっては、希望であるにすぎない! 彼らはわれわれに麻酔をかけようと試みている。しかし彼らが成功することはないだろう! もう一つの道がある。すなわち、資本主義の暴虐さを超える、メモランダム、ユーロ、EUのない道だ!
?貸し付け協定、すべてのメモランダム、そしてすべての関連諸方策の即刻停止を。
?債務を承認するな、債務の取り消しと返済凍結を。
?システム並びにユーロ/EUとの断絶を。
?銀行並びに企業の、労働者管理の下での補償なしの国有化を。
?賃金と年金の即時引き上げを! 人頭税廃止、並びに資本課税引き上げを。
?解雇を禁止し失業者への全面的な保護を。労働時間の短縮並びに退職年齢の引き下げを。
?数百の閉鎖工場の収用、並びにその従業員が管理する下での再稼働を。
?農業協同組合と中小農民を通した――仲買人と大生産者を通さない――安価かつ良質な食料品供給を。
資本主義との断絶へ道を開こう
権力と富を労働者の支配下に!
これこそが、われわれが社会の破綻を避けることのできる唯一の道だ。われわれの道は資本主義との断絶にいたる――現在の権威主義的政治システムの打倒、そして労働者の権力と民主主義での置き換え、労働者と民衆が行使する最も幅広い統制での置き換えによって――。労働者と知識人と創造的な人々の統一戦線が指導部を引き継ぐならば、われわれは、尊厳の中で生き、社会的な生産力を集団的に使用し、利潤、市場の「競争性」、環境破壊というこれらの論理と関係を断つことができる。
われわれには彼らを倒す十分な強さがある
われわれは、大ゼネラルストライキや諸省庁の占拠や民主主義における独特な訓練、また公共広場の諸闘争を通して、われわれの強さをはっきり示してきた。われわれはそれを日々、大小の衝突の中に、チャリヴルギア(鉄鋼産業)の英雄的な闘争の中に、市民的不服従運動(「われわれは払わない」)の中に、見ることができる。それは、連帯や自己組織や自己決定の新しい形態の開発によって、諸闘争の調整と組織化の数多い形態によって示されている。それらは、下部大衆によるものであり、GSEEとADEDY(注二)の制度化された労働組合主義に対決しその外側で実践されたものだ。民衆の蜂起、その強さを増しつつある継続的な民衆と労働者の戦争は、勝利にいたるだろう!
五月六日の選挙でわれわれは、二者択一を前にしている。すなわち、
?無慈悲なメモランダム、ユーロの徒党、「貸し主」そして資本の勢力が「安定した政府」を形成できるまで強化されるのか、
それとも、
?われわれが、抵抗の、「不安定化」と攻撃を逆転する、暴虐なメモランダム、EU、資本に対決する真の闘争の、そのような勢力を強めるのか、
だ。
第一の場合には、サマラス(注三)、ベニゼロス(注四)、プロボポウロス(注五)、そしてダスカロポウルス(注六)の暗黒戦線と一体となったトロイカ勢力が「承認」され、その後民衆を真性の畜殺場へと導くだろう! つまりその結果は、賃金と年金の切り下げ、貧困と失業、公共の財産の売り払い、そして諸闘争に対する「鉄のヒール」となるだろう。第二の場合に道は、暴虐に向かう行進の減速に向かう可能性に開かれ、大衆運動は前進への飛躍を得る可能性を獲得し、こうしてわれわれは、われわれから奪われたものを取り返し、新たな専制政治を振り払うだろう。
暗黒戦線の盟友たちを拒絶せよ
NDとPASOKは総選挙に先立って、トロイカとメモランダムの政府を共に形成することですでに合意している。悪徳と危険に満ちた彼らの盟友は以下の者たちだ。
?極右のLAOS(注七)。これは、メモランダムに責任を共有し、パパディモス(現首相、元中央銀行総裁・訳者)政権に早々に参加した。
?ネオナチの「クリシ・アヴギ」(「黄金の夜明け」、注八)、ヒトラーと売国奴の治安大隊(「タグマタスファリテス」、注九)の復古主義的心酔者。彼らは、鉄鋼労働者の果敢な闘争に反対し敵対者を支援してきた。また社会的蜂起を攻撃し、警察部隊と協力し、さらに労働者階級と民衆を分裂させるために、人種主義の毒薬を使おうとしている。われわれは統一した闘いをもって、これらの反民主主義的攻撃を打ち返し、ナチの徒党に打撃を与えることができる。
……しかしそれらにはさらに以下のような松葉杖もある
?NDやPASOKのどちらかから生まれたさまざまな「反メモランダム」諸党。彼らは今、選挙後の連立への参加を目的に票を釣り上げようとしている。そのようなカツセリ(注一〇)、カメノス(注一一)は拒絶されなければならない。同じことがDIMAR(注一二)にも当てはまる。これらの党に投票してはならない!
?この地の搾取者、メモランダムを熱烈に支持しているSEV(注六)やギリシャの銀行家について語ることを回避している「愛国戦線」。
回答は反資本主義の強力な左翼
左翼の議会諸党は彼らの歴史的な責任を果たしていない。SYRIZAは「左翼政権」を提案している。しかし、ユーロとEUに対決する何ものかを敢えて語る意志をもち合わせていない。この勢力はますます、債権者との協定を通した債務問題への「解決」を追い求めている! 共産党(KKE、注一三)は今、債務の承認を拒否しEUの地位に反対する姿勢を取っている。しかしこの党が指し示すものは「人民権力」の極めて抽象的な表現だ。それは、議会の回路を通して、選挙における議会多数の獲得を通して、実存にいたるとされている。この党は、あらゆる公然とした政治的対立を回避し、労働者と民衆の蜂起に向けた統一戦線に参加することをなお拒否している。そのような姿勢は諸闘争に対するひとつの障害だ。共同行動はかつて以上に必要となっている!
必要なものは、動員であり、また、今の現実それ自身によって日程に載せられた目標と諸要求(債務取消、ユーロとEUからの離脱、国有化と労働者管理)を保持する組織だ。これは、システムと関係を断つこと並びに革命を欲するすべての者たちの統一戦線によって、ストライキ、占拠、デモと組み合わされた労働者と民衆の蜂起の段階的拡大によって、さらに反資本主義的綱領を基礎とした草の根のレベルにおける諸闘争の調整と組織化によって、達成可能だ。これは、勤労民衆の権力、社会主義と共産主義の展望と組み合わされた真の民主主義に達する道だ。
諸運動すべての共同と統一を
ANTARSYAが生み出すために今闘っている左翼こそこれだ。われわれは、この左翼――システムと関係を断ち反乱を目指す左翼、反資本主義の革命的左翼――が今回の総選挙からより強力に現れることを確実にするために今専心している。
今回の選挙においてわれわれは、ANTARSYAにわれわれの声と支援を与える!
ANTARSYAは、過去二年間メモランダム、トロイカ、ユーロ徒党のテロと対決し闘っている諸運動と共闘組織すべてに対して、連帯の中で理解し合い、選挙前、その最中、またその後共同するよう訴える。このアピールは、ストライキと衝突の中で血を流した、ひろばを生気で満たした、労働者運動の反乱を強化しようと思っている、政権の連合、EU、IMF、そして資本主義の暴虐の打倒を目標としている、そのようなすべての諸勢力に向けられている!
彼らがわれわれに何を語ろうとも、われわれは、歴史は権力の回廊の中でではなく真の闘争が起きている街頭で書かれる、ということを知っている。強力かつ戦闘的な反資本主義左翼と結びついた、システムと関係を断つ必要と革命に基礎を置く戦線をもって、われわれは戦闘に勝利することができる!(二〇一一年四月二一日、英訳と注はA・クロークによる)
▼ANTARSYAは、ギリシャにおける反資本主義の革命的左翼連合。第四インターナショナルギリシャ支部のOKDE・スパルタコスと国際主義社会主義潮流(英SWP系のIST)の一員であるSEK(社会主義労働者党)をその構成メンバーとしている。
注
一)NDは、K・カラマンリス首相(二〇〇四〜二〇〇九年)の下で政権党であった指導的な右翼ブルジョア政党。この党は直近の世論調査で明瞭にPASOKに先行している。現在の党首であるA・サマラスは、五月六日の総選挙後に、PASOKの参加がほとんど確実と見られている新連立政権で、首相となることが予測されている。問題は、メモランダムの政策を現在支えているこの二党が、いくつもの予想に従えば、合わせたとしても議会多数とはならないだろう、ということだ。
二)GSEE組合は私企業部門の、ADEDYは公的部門の労組連合。この二つの連合は、統制の下での抵抗を維持することに利害をもっているPASOK官僚によって支配されている。
三)一)参照。
四)PASOK政権で二〇一一年以来財務相をつとめ、現在は同党の党首である彼は疑いなく、この国の最も無慈悲なメモランダム政治家の一人。
五)ギリシャ国家銀行、「ギリシャ銀行」の総裁。
六)ギリシャ産業家連盟、SEVの代表。
七)企業家のG・カラツァフェリスが率いる極右政党。ND離党後にカラツァフェリスが二〇〇〇年に創立、二〇〇七年以来議会に議席をもっている。この党はその基盤に多くのファシスト的要素を抱えてきたが、より多く議会主義的姿を示している。党は始めから(二〇一〇年五月以来)最初のメモランダムを支持し、二〇一一年一一月、銀行家のL・パラディモスが率いる連立政府をPASOK並びにNDと共に形成した。二〇一二年二月、第二のメモランダム、いわゆるPSI協定に関する投票の前に、カラツァフェリスは約束を破り連立を離脱した。その後、運輸相としてLAOSに仕えた若い時からの活動的なファシストであるM・ボリディスはA・ゲオルギアディスと共に離党し、NDに合流、そうすることで閣僚ポストを維持できた。LAOSは二〇一〇年以来、世論調査で急速に支持を落としている。これは疑いなく、この党がメモランダム政策の主唱者であることが主な原因だ。われわれが特に昨年秋以来見てきたネオナチ組織のクリシ・アヴギの台頭は、当世流行の政策に起因するプチブルジョア層の貧困化が原因だが、明らかに、LAOSの欠陥並びにその信用の低落にも原因がある。
八)ここ二、三カ月世論調査で四〜五%を集めているネオナチテロリスト集団。こうしてこの党が議会に席を占める可能性は非常に高い(政党あるいは選挙リストは、得票率三%以上でギリシャ国会に選出される)。この党は、アテネ下町にある、「不法移民」住民比率の高い、同時に犯罪率の高いいくつかの落ちぶれた居住区域に、ギリシャ警察との良好な関係を使うことで一定の足場を築くことに何とか成功した。左翼は、議会外の組織とグループの一部をいくつかの少数例外として、これらの発展に対応する意志も能力も持っていなかった。クリシ・アヴギは、徐々に発展し、ギリシャにおける潜在的な未来のファシスト大衆運動の基本的な中核となっている。すべての主要な「伝統的」(特に、一九二八〜一九三三年におけるドイツの例にしたがった場合)必要条件は、そのような発展に向けて満たされている。主なところでは、一見して歯止めのない大量失業と貧困の広がりを伴った悲惨な社会状況、プチブルジョア層の底深い没落、そして、このような脅威に挑むために統一した方法で対応することのできない労働者運動並びに左翼の諸組織と諸政党の構造的弱さだ。
九)忌まわしい「治安大隊」は、占領軍への協力者であったI・ラリス「政府」によって、一九四三年に制度化された。彼らは共産主義者を「消す」ことを専門としたが、手段が何であれドイツ軍とナチス親衛隊に抵抗を試みた他の人々すべてをも対象とした。これは確実に、当時の諸条件の下で発展した最悪の部類の利敵行為だった。
一〇)ルカ・カツセリは、二〇一〇年九月から二〇一一年六月までの、PASOK「労働社会保障」相。二〇一二年二月彼女は、第二メモランダムに反対投票することを決め、PASOKを離党、「社会的合意」と称する新たな社会民主主義グループを設立しようと試みている。
一一)古くからのND議員であり明確に常にこの党の(極)右翼に所属してきたP・カメノスは、二〇一二年二月、第二メモランダム支持を拒否しNDを離党、「独立ギリシャ人」という名称の新党を形成した。この新たな政治グループはここ数週間、八%内外の高支持率を達成した――明らかに右翼の変種であるが故に、しかし幾分かは論理的に(あるいはむしろ論理的外観として)、メモランダム政策の拒否を理由に――。数少ないPASOKの「裏切り者」の一人――始め(二〇一〇年五月)からメモランダム政策を拒否し、それゆえPASOKから除名された議員――であるI・ディマラスさえも、二日前に「独立ギリシャ人」支持を表明した。SYRIZAリストでの候補者になるという彼のそれ以前の交渉は明らかに失敗に終わった。
一二)この党(「ディモクラティキ・アリステラ」、民主左翼)は、SYRIZAの主要メンバーであり、ユーロコミュニズムから登場した左翼改良主義政党、SYNから右に分裂した組織。KOEやDEAのような議会外極左のいくつかのグループもSYRIZAを構成している。DIMARもまた、八〜九%という良好な世論調査結果を得ている。しかしこの党はカメノス陣営に加えられる形で、連立政権のNDとPASOKに対するもっとも重要な潜在的連携相手と見られている。それは、先の二党が予想通り、議会の多数を得られなかった場合のことだ。
しかしSYRIZAは共産党と共に、今回の選挙における反対派左翼の主要な代表だ。その主な提案は、メモランダム政策拒否を基礎とした左翼政権だ。予想可能な議員数の不足と共に、共産党によるそのような展望に対する厳しい不同意を理由として、この提案には現実化のいかなる見通しもない。
一三)おそらく今も、この国における最大の改良主義議会左翼政党。同時に高度にセクト主義的であり、スターリニストの過去に順応している。この党の指導部が最大の重要性を置いているものは、他の左翼のあらゆる政治グループを、「客観的方向は資本主義システムの防衛」として非難すること、および同様の告発だ。
(IV二〇一二年四月号)
アルゼンチン:スペイン多国籍企業の株式収用について
政治的主権の行使であり進歩的な決定だ
第四インターナショナル執行ビューロー
アルゼンチン政府は、一九九〇年代に完全民営化されていたアルゼンチンの歴史的石油企業ヤシミエントス・ペトロリフェロス・フィスカレス(YPF)の株の多数を握る共同経営企業である、スペインの多国籍企業レプソル社の株の五一%を収用した。アルゼンチンを代表する航空会社アルゼンチン航空(AA)においては、YPFは民間資本によってその資産を奪い去られていた。したがって、高価につくエネルギー輸入が必要となる、石油備蓄と生産の急激な低下に直面する中では、これは必要な措置である。しかし同時に、それは不十分かつ限界を持った措置である。それは石油産業全体をカバーするものではなく、収用は費用の支払いを伴うものだからである。
スペインの政府とメディアは、これは国家と企業との間の対立であるという印象を作り出そうと願っている。
第四インターナショナルは、こうした措置の最終的結果がどうなるかに関わりなく、それは多国籍企業との国家との関係で、主権国家による政治的な主権の行使であって進歩的なものであると考える。自らの結論を引き出す資格を持っているのは、アルゼンチンの労働者・民衆のみである。
第四インターナショナルは、資本家、スペイン国家、欧州連合(EU)による圧力を拒絶し、民衆とその政府の自己決定権を守るよう呼びかける。第四インターナショナルは、この措置は、不十分な点や限界を持っているとはいえ、ラテンアメリカ諸国が企業や超国家的パワーからの独立を主張するためにエネルギー統合の促進を呼びかけている中で、あらゆる諸国にとって戦略的な国家資源を取り戻す上での突破口になると理解している。
二〇一二年四月一九日
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