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    かけはし2012.年4月30日号

不公正な現状を放置しただけ

改正労働者派遣法を批判する

広範な力の結集で派遣法抜本改正の扉を必ずこじあけよう

たった4時間の審議

 労働者派遣法改正案が三月二八日の参院本会議可決により成立した。民・自・公三党合意に基づく修正により、元々不十分さが多々指摘されていた当初案からも無惨なほどに姿を変えていた。しかもその上、違法派遣摘発の手控えを要請するなどという、昨年一二月の臨時国会会期末にどさくさ紛れのように急きょ提案された破廉恥極まりない付帯決議案も、そっくりそのまま採択された。
 両方に反対したのは、共産党、社民党などごく少数。与党からは、亀井亜紀子国民新党政調会長(当時)のみが反対投票した。みんなの党は、派遣労働完全自由化という反動的立場から改正案に反対し、先の付帯決議案には当然のごとく賛成した。この結論を導いた参議院の委員会審議はわずか四時間。ついでに付け加えれば、衆議院の委員会審議時間も大同小異と言ってよい。
 詳細は後述するとして結局のところ、生活の安定と権利の確保を可能とする抜本改正という派遣労働者の背に腹を変えられない要求は、その最も肝心なところが、議会の圧倒多数によってろくな議論もなく先送りあるいは骨抜きにされた。今回の派遣法案決着に込められた野田政権、そして議会多数派の意志は、派遣労働者が置かれた理不尽で不公正な現実に正面から取り組みそれを変えることにではなく、ただそれを放置することに向けられた、と言わなければならない。
 日比谷年越し派遣村が社会に与えた衝撃、さらにリーマンショック後の大企業による派遣切りの頻発が、たとえば岩手県北上地域のようにそれら大企業進出先地域社会の社会的崩壊状況に帰結した事実、これらが派遣労働の根本的是正を社会の意志として政治に求めた事実は、あっさり頬被りされた。それどころかおりあらばさらなる自由化を、との目論見がそこに隠れていることも、付帯決議ははっきり示している。
 派遣法抜本改正の課題は、何としても達成されなければならない課題としてなお厳然と提起され続けている。非正規雇用の労働者が全労働者の四割にも達しようとしている今、それはむしろ一層不可欠な課題となっている。怒りをもって、まず何よりもこのことをはっきり確認しよう。
 まさにそれゆえ全労協は即座に、「今後も真に労働者保護に役立つ抜本改正に向けた闘いを続けていく。今国会で審議が始まる労働契約法改正案やパート労働法の見直しなどと連携させ、有期労働契約規制を実効性のあるものにし、偽装派遣の摘発強化、非正規労働者保護を拡大する闘いを強化しよう」と呼びかけた(三月二八日)。また日弁連も同日、「改正労働者派遣法成立に当たって、引き続き、真に労働者保護に値する抜本改正を求める」とする会長声明を発している。
 これらの呼びかけに率先して応え、それを、政治を押し切る力をもったもう一段底深い全社会的闘争、として実現することに挑戦しなければならない。それを自らの任務として引き受けることを第二の確認としよう。

すべて骨抜きにされた


 先の挑戦に向かうに当たって、成立したばかりの法がどのようなものであるのかを、具体的にいくつかあらためて確認してみたい。まず今回の修正点の主な項目を挙げれば、次の四点だ。

@製造業派遣や登録型派遣の原則禁止規定の削除。法施行一年経過後をめどに労政審で議論を開始。
A違法派遣に対する「みなし雇用制度」導入の三年先送り。
B「六〇日以内」とされていた日雇い派遣禁止期間を「三〇日以内」へ半減する規制緩和。
C日雇い派遣禁止の例外規定に「雇用確保の機会が特に困難な場合など」を追加。

 いずれも、当初改正案の核心部分を無惨に骨抜きする変更だ。派遣切りや細切れ雇用など、非正規労働者が困難の中から問題を突き出し可視化させ、是正すべき問題として社会に認めさせてきたやりたい放題の労働者使い捨てを、あらためてそのまま放置すると言うに等しい。
 Cにいたっては、実のある雇用創出政策が何もない中では、「三〇日以内」という日雇い派遣禁止期間すらも無にするものだ。この部分に関しては、特に「高齢者」、「昼間学生」、「副業として従事するもの」、「主たる生計者でない者」が例示規定として上げられているが、実はここにも問題がはらまれている。最後の例示は現実には、共稼ぎ世帯の収入の低い方を指すことになり、それは多くの場合女性となる可能性が高いからだ。つまりそこには、女性を日雇い派遣に追いやり縛り付ける論理が潜んでいる。まして現在、二人合わせてかつかつの収入、という若い世帯は少なくない。そこで女性が日雇い派遣に縛り付けられれば、最も不安定な生活を強いられている労働者ほど文字通りの明日の知れない境遇に落とし込められるのだ。
 以上に加えて、当初案にあった問題点がそのまま引き継がれていることも忘れてならない。
 まず三年後に先送りされたみなし雇用規定の導入だが、その実効性のはなはだしい弱さはそのままだ。みなし雇用義務が生まれる違法認識の要件、義務化される直接雇用の条件、このいずれにも、派遣先が義務履行を逃れる対抗余地が大きく残されている。
 その余地を狭めるためにも、派遣労働者が要求実現を迫る足場として、派遣先責任の強化がどうしても必要とされる。しかしその派遣先責任強化は、労働組合に対する団交応諾義務を含めて、今回の修正で完全に消された。
 また、派遣先企業には、同種業務の正規雇用募集を行う場合派遣労働者に対する直接雇用の優先申込義務が発生するが、「専門職」派遣労働者に対しては、その義務を免除する、とする規制緩和規定はそのまま引き継がれている。あるいは、日雇い派遣禁止に対して政令により例外業務を認めるしり抜け規定もそのままだ。
 要するに、どのような言い訳を取り繕うとも、今回の法が現状の追認、放置、つまりは現状から利を得ている者の防衛に貫かれていることは隠しようもない。これを派遣労働者の保護などと偽ることはとうてい許されない。
 今回先送りされた究極の雇用責任逃れである登録型派遣の禁止、並びに製造業派遣の禁止を抜け穴を塞いで復活させることを含め、ここに見てきた骨抜きを許さない抜本改正を必ず実現しなければならない。

二重、三重の裏切りだ


 ここまで見てきた今回の法改正の無内容かつ裏切り的な性格は、審議経過もはっきり物語っている。まさに、実のある審議は全く行われなかったのだ。当初案が国会上程されたのは二〇一〇年三月二九日。それ以降昨年一一月まで、時間はたっぷりあったにもかかわらず、衆議院での委員会審議はわずかの時間ぽつりぽつり形ばかり行われただけだ。法案は事実上店ざらしされた。
 二〇一〇年夏の参院選での参院与野党逆転が派遣規制反対派に好機を与えたことは間違いないが、審議を行わない理由は何も説明されていない。当事者の参考人招致など、現状に正面から向き合う充実した審議を、という派遣労働者の切実な願いは、理由も明かされないままただ無視された。まさに、厚労省、自民党、公明党、要するに派遣労働を導入しその拡張をもっぱら推進してきた者たち、そして民主党内抵抗勢力共謀によるサボタージュだ。それはそのまま、派遣労働にまとわりついた「不都合な真実」の隠ぺいにもなっている。彼らは、審議を通して明らかにされる現実に即して実効性を高める、という至極まっとうな回路が作動することを恐れ、あらかじめ封じたと言ってよい。
 そしてだめ押しのように、消費税増税に向け自民党との大連立あるいは連携に期待する野田政権の下、昨年一一月、派遣法改正案修正の民・自・公三党合意が突如浮上した。計ったように連合も即座にゴーサインを出した。臨時国会会期末のどさくさをついて超特急で衆参を一挙に通過させるという暴挙の画策だったが、それはさすがに果たせず、修正案はいったんは廃案となった。しかし野田政権が消費税増税を閣議決定し、自民党との連携が彼らにとっていよいよ切羽詰まった命綱となるに及んで、この修正案には再び息を吹き込まれ、今回の強行成立が演じられた。
 この一連の経過は事実上、派遣法改正の課題が消費税増税のための道具とされたことを意味する。消費税増税が派遣労働者をはじめとする非正規雇用の労働者にとりわけ重い打撃となることは言うまでもない。派遣労働者はまさに二重三重に裏切られた。この事実を、そしてそれを行った者たちを、われわれははっきり心に刻まなければならない。

あきらめず再組織化へ


 派遣法抜本改正を実現する闘いを、上に見た裏切り、抵抗を打ち砕く力を備えた闘いとして、必ず再構築しなければならない。議会の中に真に味方となる代表が極めて弱体だという現実を突破する水路を、創意を尽くして開かなければならない。
 個々の現実を見ればそれは確かに困難が待ち受ける道のりだが、しかしゼロから始める闘いではない。およそ二〇〇六年秋から本格的に始まった第一段の闘いは、今回の苦い結末をひとまずの区切りとしたとはいえ、それは事実として、政治と権力を激しく揺さぶる運動として実現された。運動がそのような力を持ち得ることとして、たとえば日比谷年越し派遣村や垣根を越えた共同などの具体的な形で、重大な成果と経験を残した。敵が誰であるかも一層明らかにした。
 何よりも、非正規の仲間の個々の闘いが固い岩盤をうがちこじ開け、自らに押しつけられた不正義を社会の表面に引き出し、その不正義の回復を社会の課題として認知させたという事実は、もはや何者も消すことのできないものとして今ある。派遣労働や非正規雇用を「新しい時代における新しい働き方」などと軽く片付けることはもはやできない。それは、新自由主義の破綻が世界経済総体の危機的混乱へと転化した現実を背景に、多くの労働者民衆にとって今後一層重い真実とならざるを得ない。オキュパイ運動はまさに起こるべくして起きているのだ。それへの敵対は今後、社会総体に対する利己主義にまみれた醜悪な敵対として、人々に一層くっきりと焼き付けられるだろう。
 この新しい現実の中に第一段の闘いの教訓を生かし発展させることが求められる。全労協の呼びかけにあるように、運動の強大化に向けて、共同と連携の多重的な展開、新しい組織化への挑戦、そしてそれと一体的な現場で直接的に不正義を変える闘い、さらに今や抑圧機構としての姿をさまざまな側面であらわにするにいたった連合を下から食い破る闘いなど、これらを基底に据えることがより一層重要なものとなるだろう。
 そして政治の壁を溶かす課題は、野田民主党の全面的な裏切りがあからさまとなった今、障害者自立支援法のいかさまでない撤廃、脱原発、TPP阻止、消費税増税阻止など、あらゆる課題をめぐって共通に問題となっていることも確認されなければならない。まさに現実が、互いに学び合い交流し合流することを促している。
 それらをしっかり見つめながら、労働者派遣法の抜本改正を確かなものとしてつかみ取る闘いにあらためて挑戦しよう。  (神谷)

 


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