寄 稿
齋藤和歌子さん、仙台地裁で
全面勝訴、賃金減額も回復
宮城合同労組執行委員長 星野憲太郎 |
企業再建の名目で
何でもやれるのか
齋藤さんが働いていた仙台市の測量会社写測は、二〇〇七年当時業績不振であったため、東京のフリージア・マクロス株式会社の翼下に入り経営支援を受けることになった。そしてフリージアの役員佐々木ベジが写測を統括し、会長として絶対権力を振るっていた。
会長の手法の一つは、人権侵害の精神教育である。 グループ化した企業の労働者全員に「日報」と称する作文を毎日提出させ、自ら添削してグループ企業の全社員に閲覧を義務付けるというものであった。中には「頭大丈夫か?」「君は私の弟子に向かない」というコメントを付されて社内にさらされる者もいた。もう一つは、「賃金体系の減額変更」であり、社命で賃金を減額することであった。
人権侵害と賃金の
一方的減額に抵抗
齋藤さんは、二〇〇一年アルバイトとして採用され、契約社員を経て二〇〇八年四月に念願の正社員となった。この時初めて、諸手当込みではあるが月給二〇万円に届いた。しかし二〇〇九年四月からは賃金体系の変更が行なわれ、彼女の場合、約一八万円に減額され、さらに二〇一〇年九月からは一六万円に減額された。さらに、「日常生活の心の動き、うれしかったこと、悲しかったこと」を書いた作文を毎日会長に提出することが義務付けられ、彼女にとって苦痛の日々となった。
企業秩序を乱し
たから懲戒解雇
二〇一〇年一一月九日、会社は齋藤さんに対し、「作文不提出」と「会長との面会拒否」と「賃金減額に対する抗議」と事実無根の「無断欠勤」という四つの理由で懲戒解雇を通知した。「企業秩序を大いに乱した」とされたのだ。
齋藤さんが組合に相談に来たとき、彼女は「自分がとった行動が間違っていたのではないか」と自問していた。私は、周囲が沈黙する状況で若い彼女が必死で権利を守ろうとしたことに心を打たれ、「けっして間違っていません、一緒に反撃しましょう」と励ました。
裁判で被告会社側は、「再三の注意にもかかわらず一年間で日報を一〇回しか提出していない」、「企業再建のために不可欠な賃金体系変更にクレームをし続けた」と主張した。原告側は、人権侵害の作文を提出しないことも、賃金の不利益変更に同意しないことも労働者の権利であり処分できない、ときっぱり反論した。証人尋問では地域の仲間が満席で支援した。
2月 日、全面
勝訴の判決が
一年二カ月の闘いを経て、今年二月二七日、ついに判決が下った。
(主 文)
1 原告が、被告に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する。 *解雇無効
2 被告は、原告に対し、10万2315円ならびに平成23年1月25日から本判決確定の 日まで毎月25日限り20万円及びこれらに対する各支払期日の翌日から支払済みまで 年6分の割合による金員を支払え。 *解雇無効のバックペイ
3 被告は、原告に対し、95万2287円及びこれに対する平成23年6月15日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 *賃金減額とサービス残業のバックペイ
齋藤さんの
闘いの意義
齋藤さんは、企業再建の名の下でおこなわれる人権侵害と生活破壊に屈しなかった。その結果,「反企業人」のレッテルを貼られ極刑に処せられた。しかし地域・全国の仲間の支援に支えられて闘いぬき勝利を手にした。
労働者が現場で声を上げない限り、企業再建のためだから我慢せよ−つべこべ言うな、という企業支配がまかり通る。労働者が声を上げられない状況と今日の労働運動の弱体化は表裏一体のものである。齋藤さんの勇気ある行動と闘いの勝利を教訓に、自由にものを言える労働現場の復権を実現させたい。
全国の皆さん応援あり
がとうございました
2月27日 齋藤 和歌子
「全ての解雇理由を撤回させ勝訴する」という私の目標が今、実現しました。
宮城合同労組へ相談するまでは、「自分自身の主張が間違っているのかもしれない」「家族に迷惑がかかる」「自分の力で出来ることはもう無いのではいか」闘う意思の半面でこうした思いに押しつぶされそうになりながら日々を送っていました。
相談してからしばらくの間は、会社という大きな力に立ち向かう勇気が、今ほどなくて、どう対処するかを、毎日葛藤していました。
しかし振り返ってみるとこの一年間は、宮城合同労働組合を通じ、全国各地で活動を続ける多くの仲間に出会い、意見を聞かせて頂いたことで、裁判で主張しなくてはならないことや、認めなくてはならない自分の短所を見直すことができ、裁判での経験や得た知識以外にも、多くの意味を持って有意義だったと実感しています。
今後、会社側が控訴した場合、もうしばらくは自分のことで手一杯になるかもしれませんが、懲戒解雇通知書を渡された時の気持ちを忘れず、闘い抜きたいと思っています。
これからもどうぞよろしくお願いします。
第23回国賠ネット交流集会
権力犯罪・人権侵害への謝罪
と補償を必ず実現させよう
一つでも勝訴を
獲得するために
二月二五日、国賠ネットワークは、スペースたんぽぽで「第二三回 国賠ネット交流集会」を行い、五四人が参加した。
ネットは、一九九〇年二月、国家権力の犯罪を許さず、尊厳をかかげて闘いを挑み、被害・損害の完全な補償と謝罪、そして権力犯罪の抑止と人権の確立をめざして第一回交流集会を開催した。すでに五八団体、OB、原告と支援者たちの参加のもと、粘り強くネットを作り、各国賠裁判が取り組まれている。集会は、昨年の活動を集約し、各国賠の現状報告と交流が行われた。
土屋翼さん(ネット代表世話人)からネット総括の提起で集会が始まり、「『やられたら、倍やり返す』ような『明るい国賠』には勿論、勝訴したいと、二二年闘ってきた。いまだ国賠裁判の先のほうには灯りは残念ながら見えません。一方、再審事件は、証拠開示がすすみ、ゴビンダさん事件、福井女子中学生殺人事件、狭山事件、袴田事件、名張ぶどう酒事件、東住吉放火事件など、再審の扉は音を立てて開かれようとしています。この間蓄積した、知恵・知識・情報等を駆使して一つでも勝訴を獲得するよう活動を強化していこう」と強調した。
各国賠事件から
の報告がつづく
各国賠からの報告。
沖田痴漢えん罪事件(一九九九年、九月不当逮捕)は、「事件は、電車内で携帯電話を注意されたことによる女性の逆恨みから虚偽申告した女性と警察官による痴漢でっちあげ事件だ。不起訴となったが、〇二年四月に国賠の提訴をした。再上告して一月一二日、棄却となり、敗訴が確定した。だが判決は、痴漢行為否定の二審判断を認めたが、賠償請求は認めなかった。結局、裁判所は警察・検察の違法性、責任追及を放棄した。今後は、国連人権委員会に対して提訴し、闘っていく」と報告した。
大河原宗平・元群馬県警警部補の懲戒処分分取消訴訟とデッチ上げ逮捕によるえん罪国賠は、「大河原さんは群馬県警の裏金作りを批判したため、県警はもみ消しのために公務執行妨害罪をデッチ上げ不当逮捕し(〇四年二月)、懲戒免職となってしまった。果敢に闘ったが、一審敗訴。控訴審を闘っている。テレビ東京でこの事件が取り上げられ(一二年一月二一日)、片桐警察庁長官が『法廷の場で県警が適切に対応していく』などと異例の言及をしたほどだ。今後も支援を御願いします」と決意を表明した。
護衛艦「たちかぜ」イジメ自殺国賠は、「判決(一月二六日)は、先輩隊員の加害行為と隊員の自殺との事実的因果関係を認める内容であった。しかし、隊員の自殺について、先輩隊員にも幹部自衛官らにも予見可能性はなかったとして、先輩隊員の加害行為により被った精神的苦痛の範囲でしか損害賠償を認めなかった。控訴審における争点は、先輩隊員の加害行為と隊員の自殺との間に相当因果関係が認められるかという一点に絞られている。加害者や国に、隊員の自殺について法的責任があることを判決で明確にさせなくてはならない」と訴えた。
さらに報告は、富山(氷見)国賠、築地署公妨国賠、新宿署違法捜査国賠、渋谷事件(星野再審)国賠、入江憲彦・元長崎県警警部補国賠、よど号国賠、東電シイタケ損害賠償、麻生邸リアリティツアー国賠から行われた。
証拠の全面開示
こそ勝利の鍵
第二部は、富山・氷見冤罪国賠弁護団代表である前田裕司弁護士が「えん罪国賠裁判における証拠開示」をテーマに提起した。
富山・氷見冤罪国賠は、富山県氷見市でおきた強かん事件(〇二年)で柳原浩さんが不当逮捕され、服役に追い込まれ、満期服役後、真犯人の出現(〇六年)により発覚した冤罪事件。〇九年五月、国賠を提訴。富山県警察及び富山地方検察庁高岡支部による違法な捜査や公訴提起の全容の解明、冤罪の原因を究明、および違法な捜査や公訴提起を強行した中心人物である警察官の被告N
、検察官の被告M の責任を追及していく闘いだ。
裁判の過程で原告と弁護団は、事件の全貌を明らかにしていくために検察に証拠開示を求めたが、一部は開示されたものの、そのほとんどがマスキングされたものだった。被告が開示を頑なに拒否してきたため文書提出命令申立てを行った。
前田さんは、証拠開示の攻防の取り組みなどを紹介しながら@刑事事件における弁護人の証拠開示請求権A民事訴訟における国の手持ち証拠の開示の方法B検察官に対する証拠開示請求以外の書類等の入手方法C捜査機関が捜査過程で作成する書類の存在―などについて説明した。
そのうえで「国と県は、告訴状と被害者の供述調書の一部を任意に開示し、その余は不開示だ。この対応をどうするかが問われている」と今後の方向性を提起した。なお第一三回口頭弁論(二月一日)で被告の国は二五通の証拠を新開示してきた。裁判所の原告の文書提出命令申立てに対する判断前の幕引きをねらっていることは明らかだ。「事件の真相」に迫る闘いが攻勢的に展開されている。
集会の最後に交流集会恒例の国賠ネットワーク大賞に布川事件の桜井昌司さんが受賞。
最悪賞は、東電代理人の「長野・大野・常末法律事務所」。受賞理由は、福島の二本松ゴルフ倶楽部が東電に「除染せよ」と訴えた裁判で代理人は「放射線は原発から離れた無主物ともいう存在であり、もはや東電のものではない」と反論したことだ。ネットは、弁護士法第一条の「弁護士の社会正義追及義務規定違反だ」と断罪した。 (Y)
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