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    かけはし2012.年2月20日号

不起立免職条例強行する橋下

「君が代」不起立裁判最高裁不当判決について(下)

橋下・大阪維新の会の新たな
攻勢を労働者の力で跳ね返せ


 「君が代」不起立処分最高裁判決のあと、橋下大阪市長は「同一の職務命令違反には三回で原則として分限免職」という「教育基本条例」「職員基本条例」案のさらなる改悪を打ち出した。そして、二月八日の府市統合本部での議論で、府教育委員会の「違法の恐れが強い」との反対意見を押しつぶして、この改悪案を決定したのである。二月二三日からの大阪府議会、二八日からの大阪市議会において、橋下市長と大阪維新の会は、最高裁判決をも徹底して無視しながら、一気に条例案を通そうとしている。議会内の力関係を揺さぶり、ひっくり返す闘いが作り出されなければならない。

「府市統合本部」
で条例案を決定

 橋下市長、松井知事と大阪維新の会は、「教育基本条例」「職員基本条例」案の作成を「府市統合本部」の所管事項にした上で、一月二五日、三〇日、二月八日のわずか三回の議論で、条例案を強行決定した。この「府市統合本部」は、「大阪都」構想をにらんで、大阪府、大阪市双方にまたがる問題について決めていくとされているが、法律、条例上の裏付けが全くない組織である。しかも、すでに選挙で「民意」は出ているという立場の橋下市長らは、新たに府民や大阪市民の意見を聞くこともなく、府教委や府総務部の反対意見や慎重意見をほとんど無視して、最後は「政治判断だ」の一言で条例案の内容を次々と決めていったのである。一応公開されていた「府市統合本部」での議論は、この「政治判断」を引き出すためのショーでしかなかった。
 しかも、ダブル選挙前には「条例が通れば総辞職する」と言っていた府教育委員たちは、この茶番劇とも言う「府市統合本部」での議論に積極的に参加し、自らが作成した対案を示して、条例案の修正作業に加わっていった。その結果は「ほぼ一〇〇点満点」と橋下市長が満足げに語ったように、現在大阪府議会にかけられている大阪維新の会の条例案とほぼ同様の内容での決着だったのである。にもかかわらず、「(修正協議を経て)意味合いは非常に変わった」(生野照子教育委員長)、「ホッとした」(陰山英男教育委員)など、府教育委員たちは完全に橋下市長の土俵に載せられてしまい、当初の総辞職の意気込みはどこかに吹き飛んだかのようだった。

二分割された
教育基本条例案

 府教委が「府市統合本部」に提出した条例案は、「教育基本条例」を「教育行政基本条例」と「府立学校条例」の二つに分割し、教職員の人事評価、分限・懲戒処分については「職員基本条例」で定めるという内容だった。それは、府教委として従来から批判していた部分をほとんど書き変えるなど、大阪維新の会提案の条例案とは確かに一線を画していたものではあった。しかし、「府市統合本部」での議論の中で取り入れられたのは、条例案の分割という形式的な部分を別にすると、「校長の公募・任期制の導入は、定年退職した校長の枠から順次実施していく」という部分と教職員の人事評価くらいで、あとは府教委案の文言は残しつつも、最終的には知事が判断できるようにして、ほぼ橋下市長と大阪維新の会が思い描いていたものと同じという結果になった。
 現時点(二月八日)では、条例案の確定した条文が示されていないため、逐条的な紹介はできないが、新聞報道などによれば、その内容は次のとおりである。
?教育目標の設定
 知事は教育委員会と協議して、教育振興基本計画の案を作成し、議会の議決を得る。協議がまとまらない場合には、教育委員の意見を付して、議会に提出する。(府教委案にあった「教育振興基本計画」の中に教育目標を位置づけるという表現は取り入れられたが、知事案で強行できるようにした)
?教育委員の罷免権
 知事は、教育委員の自己評価に基づいて、その評価結果が法律上の罷免事由に当たるかどうか判断する。(府教委案の「教育委員の自己評価」は残されたが、「知事と府教委が教育振興基本計画の達成状況を評価して、議会に報告する」という条文との関連で、罷免権それ自身は否定されていない)
?校長の公募(前述)
?高校の統廃合
 三年連続して定員割れした高校は、再編・統合の対象校とする
?学区の撤廃
 二〇一四年度入試から学区を撤廃する。(橋下は、この学区撤廃に伴って、中学校での府下統一学力テストの導入、および中学校から高校に提出する調査書の評価をこれまでの一〇段階相対評価から絶対評価に変えることを決めたとしている。この二つの措置により、入試が受験学力偏重となり、高校の序列化が進むとともに、学力的に厳しい生徒の進路選択がますます狭められることになる)

 学区の撤廃をめぐっては、経済的に困難な家庭の子どもの遠距離通学について記者から質問され、橋本市長は「本当に家庭の事情で苦しいというなら通学定期代くらいバイトして稼ぎゃあいい。授業料までただにしてるんですから。通学代が出せないから地元に高校を残さないといけないなんて、そんな理屈は通らない」と強弁した(「しんぶん赤旗」による)。しかし、そうした生徒たちの多くはすでにアルバイトをして、学校で必要な経費の一部を稼いでいることは周知の事実である。それに加えて、さらにアルバイトをしろというのだろうか。
 大阪市では、市教委がこの条例案をもとに市独自の規定を盛り込んだ条例案の作成を始めていると報道されており、その中に小中学校の学校選択制を導入するものと思われる。

不起立3回で
クビを切る

 人事評価や懲戒・分限については、「職員基本条例」案に府職員と一括して規定されることになったが、その内容は教職員の人事評価が相対評価から絶対評価に戻ったこと、「最低ランクの評価を二年連続した場合は分限免職の対象」を除いたこと以外は、ほとんど大阪維新の会提案の条例案と同じである。
?人事評価
 教職員については、生徒や保護者の評価を反映させた上で絶対評価とする一方で、府職員については二〇一三年度から相対評価とする。
?部長級以上の公募制の導入
?同一の職務命令違反三回で免職
 一回目と二回目の指導研修を受けた後で三回目の違反をすれば、分限免職を標準的な処分基準とする。
?組織改廃などによる分限免職
 組織改廃などで余剰人員が生じた場合は分限免職できる。

 「同一の職務命令違反三回で分限免職」については、府教委が「最高裁判決から考えても、不起立の回数だけで加重処分するのは問題がある」と主張したのに対して、橋下市長は「繰り返し違反するものが公務員であってもいいのか」などと最高裁判決をも無視する姿勢をあらわにして、強引に押し切った。また、府職員の人事評価についても、「国家公務員は絶対評価」などと反論する府総務部に対して、これも法的裏付けのない特別顧問らが「悪しき国に準じるな」「競争がなければ組織は停滞する」などと集中攻撃を浴びせ、最後に橋下市長が「嫌なら民間企業に勤めてほしい」と議論を打ち切り、これまた強引に決めたのである。

新自由主義教育
改革の集大成

 橋下市長が「ほぼ一〇〇%」と評価した条例案は、彼と大阪維新の会による新自由主義的な教育改革の集大成とも言うべき性格を持っている。その基本的内容は、公立学校教育の縮小とエリート教育への集中、規制緩和をすすめる一方で知事を頂点とする教育・学校秩序を確立していこうとするものである。これは一見矛盾するようだが、新自由主義的教育改革をすすめるにあたっては、批判勢力を根絶やしにしようとしているのである。アメリカでも、教職員組合への徹底した攻撃と教育の民営化・公立学校教育の縮小がセットになっていることを見本にしているかのようである。
 橋下府政下での教育改革は、府立学校の非常勤職員(学期雇用で、年間の賃金は一〇五万円程度)三四六人を二〇〇九年三月、一斉に解雇したことから始まった。交渉で「非常勤補助員の雇用よりもイルミネーションが大切なのか」と問い質されると、橋下知事(当時)は「私のビジョンではそうだ」と返したのはよく知られた話である。
 その後、「エリート育成」をめざして学区を撤廃して設けられた「文理科」のある府立高校一〇校に一五〇〇万円ずつの予算を配当したり、海外のエリート育成教育視察に五一七二万円(一三五人を派遣)支出するなど、エリート教育には大盤振る舞いする一方、全体の教育予算は減少が続いたのである。
 そして、今回まとめられた「職員基本条例」案には、公立学校民営化の際には教職員を解雇可能にするとの条文が盛り込まれている。「当該事業に再就職する機会が与えられている場合」には分限免職することができるというのである。

公務員労働者
の団結権否定


 二月九日、橋下市長は自らのサイン入りの業務命令を発し、「労使関係に関する職員アンケート調査」の実施を強行してきた。この調査は、アンケートと称しながら、提出しない場合や「正確な回答がなされない場合」は処分の対象にするという代物である。しかも、「自らの違法行為について真実を報告した場合、懲戒処分の標準的な算定を軽減し、特に悪質な事案をのぞいて免職とすることはありません」などと、通報・密告の奨励をおこなっているのである。
 その内容たるや、不当労働行為と思想調査のオンパレードである。組合による選挙活動の詳細な報告を求めているだけでなく、たとえば、「組合が行う労働条件に関する労働運動に参加したことがありますか」という問いでは、活動内容、誘った人、誘われた場所、誘われた時間帯まで記入を求められている。「誘った人」の名前は、アンケート用紙にではなく、通報窓口に無記名で情報提供してもよいと付記する念のいれようである。また、組合加入の有無、組合未加入・脱退による不利益などを答えさせる項目もある。まさに、労働者の団結権すらあからさまに否定しようとする攻撃である。さすがに、大阪市労連も不当労働行為だとして大阪府労委に訴えたが、こうした労働組合への不当な攻撃に対しては、労働組合運動の存亡を賭けて反撃していかなければならない。    (大森敏三)

 


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