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    かけはし2012.年1月30日号

消費税増税、社会保障費削減

「税と社会保障一体改革」批判

財界・官僚・マスメディアによる
「国家破綻」宣伝に便乗した政府

 
解散―総選挙を
要求する自・公
 昨年の一二月二四日、政府は一二年度予算案を閣議決定し、一二月三〇日には政府税調が財政再建方針の中心となる「税と社会保障の一体改革」案を発表した。この案の軸は一%増で二兆五〇〇〇億円の税収増を見込む消費税を二〇一四年四月八%へ、二〇一五年一〇月には一〇%に引き上げるというものである。
 これを受けて民主党は一月一一日、自民・公明両党に対し、消費増税法案などに関する与野党協議に向けて幹事長会談を開くことを要請する一方、政府は参院で問責決議を受けた一川防衛相と山岡消費者相兼国家公安委員長らを退任させ、岡田克也元幹事長を副総理兼税と社会保障一体改革・行政改革担当に起用し、一月下旬から始まる通常国会に「最善かつ最強の布陣」で臨むことを決定した。
 しかし、もともと「消費税一〇%」を主張してきた自民・公明両党は「国民の信頼を問い直すという前提であれば、いろいろ話ができると思う」と「話し合い解散」をちらつかせていたが、自民党は「素案ではなく政府としての法案を議会に提出してほしい。議会の外で裏取引きのようなことはできない」と態度を変え、比例区八〇議席減案に怒った公明党もそれに同調した。野党の中で唯一協議に積極的に立場であったたちあがれ日本も「民主党以外の政党は全部反対……やる気がないとしか思えない」と協議を拒否することを決めた。このように今や「税と社会保障の一体改革」は、衆院の解散―総選挙も含んだ二〇一二年前半の最大の政治的課題へと浮上し始めている。

バラ撒き財政
の行き詰まり
 野田政権は鳩山、菅政権と同様に長期債務の拡大と社会保障費の増大によって締めあげられ積極的な政治的イニシアチブを取れず、マニフェストを次々に反故にし、支持率を低下させてきた。普天間問題やTPPではオバマ米大統領に尻を叩かれ、一二月一六日には未だ燃料棒の場所や現状は不明で、放射性物質の放出が続き、多くの人々が避難を強制されているにもかかわらず、福島第一原発の「収束」を宣言しひんしゅくを買う始末。
 こうした政権の行き詰まりと袋小路の打開のために野田政権が選択したのが「税と社会保障の一体改革」による「財政再建」の方針である。野田首相は政権の延命と浮揚をかけて歴代政権ができなかった「財政再建」を選択したのである。野田首相に「決意」をうながした第一の政治的要因はEUの経済危機である。
 ギリシャを頂点としてポルトガル、スペイン、さらにイタリアと拡大する「国家破綻」の危機は、日本のブルジョアジーに対して「国家破綻」は最早他人事でないことを突きつけた。日本の国家財政は歳入の半分を借金・赤字国債に依存しており、国と地方を合わせた長期債務残高はGDPの二年分に相当する一〇〇〇兆円にも達している。発行されている国債の圧倒的多くを国内の金融機関が所有しているといっても、危機は確実に波及する。一度でも国際的約束を反故にすると信用は大きく揺らぎ、いかに回復しがたい重い犠牲が伴うかということをEU危機は鮮明にした。「国家破綻」の危機の回避を財界・大企業のみならずマスメディアまで合唱し始めた。野田政権はこの流れに乗ることを決めたのである。
 第二は、バラ撒き財政の行き詰まりである。政府は二〇一二年度予算の中に一時は凍結してきた八ッ場ダム建設の再開や新幹線工事の着工などまたぞろ大型公共工事を復活させた。そればかりか原発推進のために四二〇〇億円も予算を計上し、普天間基地の移転費用や米軍への思いやり予算も手をつけることなく存続を決め、一兆七〇〇〇億円にも達する法人税減税を続けることを明らかにした。旧来の財政活動にメスを入れることなしに予算を組むためには、消費税の増税しか道は残っていなかったのである。民主党の税制調査会で野田首相は「社会保障のため、埋蔵金をあてる、公共事業を削る、いろいろな努力をしてきたが限界だ。国民に負担をお願いする以外にはない」と発言している。大企業を防衛し、官僚どもの権益には手をつけず、公共事業を全面再開したツケを消費税増税という形で国民に押しつけるとを決めたのである。
 第三は、こうしたすう勢の中で自民・公明両党は「税と社会保障一体改革」に対して、最後は反対できないだろうという「読み」であり、もし反対して国会解散になっても一定の反撃は可能だと判断したといえる。「ネバー、ネバー、ネバー、ネバーギブアップだ」とチャーチルを引用したり、「党のためではなく、国家のための決断」と野田首相が繰り返し発言するのは国民を「税と社会保障の一体改革」に引きつけるためのパフォーマンスに他ならない。
 政権交代がなされる直前の二〇〇九年夏、消費税、所得税、法人税、自動車関係諸税の抜本的改革とその方向性、スケジュールを定めた二〇〇九年度税制改正法と「附則104条」を決定したのは自公政権であった。野田政権は「税と社会保障の一体化」案は、自公が作成した「附則104条」を踏襲したものであり、消費税の値上げを二〇一四年四月にすることで「四年間は消費税を値上げをしない」という民主党のマニフェストを反故にしていないと開き直っている。

「福祉目的税」の
数々の欺まん
 社会保障財源の確保と消費税増税は二〇一〇年一〇月に菅内閣で「社会保障改革の推進について」という形で閣議決定され、二〇一一年六月自公政権で「附則104条」を担った与謝野財政経済担当相の主導で「社会保障・税一体改革案」として政府方針化された。この案では民主党内の反対派に妥協して「消費税率を一〇年代半ばまでに段階的に一〇%まで引き上げる」と記されただけで、執行期間を具体化しなかった。
 だが時期を別にしてこの「閣議決定」と「政府方針」が強調していた「財政再建の核心」として明記されていた二つの点はそのまま踏襲されている。第一は基礎的財政収支の赤字の割合を二〇一五年度に半減させ、二〇年度には基礎的財政収支を黒字化する。第二はこれを消費税の増税を中心に税制全体の見直しによって実現するという二点であった。この基本方向はG7、G20などで「新成長戦略」とともに日本政府の一種の「国際公約」として世界に向かって発信・報告された。その意味で野田政権のもとで押し進められようとしている「税と社会保障の一体改革」案は、小泉自公政権の新自由主義的財政政策の破産を修正しようとした「附則104条」以来の日本ブルジョアジーの意を体現したものであることは明らかである。
 政府の一体改革案と呼ばれる二〇一二年度税制改革案は次の七つの骨子からなっている。
?基本的方向性
?消費税
?経済への配慮
?個人所得課税
?金融所得課税
?資産課税
?政治・行政改革
 一見すると明らかなように増税は消費税だけではなく個人所得税も含め、相続税など全般に及んでいる。赤字国債の発行によって賄っている社会保障部分と一般財政に組み込まれている年金の支出分も含め、消費税による税収で代替し、歳入と歳出のバランスをはかる形になっている。だがこれは「バランス」と呼べるものではなく、歳入のほとんどすべてを税金という形で国民に負担させようとする攻撃そのものである。
 民主党税調会長の藤井裕久は「大平内閣は増税を財政赤字の穴埋めに使うと言って失敗した。完全な福祉目的税にしないといけない」と折にふれ発言しているが、それが見事に教訓化され、オブラートで本質が隠されているに過ぎない。 「税と社会保障の一体化」とは、一方で消費税率を上げ、他方ではその財政的枠内に社会保障費を削減するという二重に反動的政策に他ならない。
 この一〇年間で二〇〇兆円もの内部留保金を貯めこんだ大企業に対しては消費税増税の見返りとして法人税減税として応え、その上第三項では「経済への配慮」という形まで取っている。そもそも消費税は逆進性が大きく、大企業に有利で中小企業や圧倒的多数の低所得者には大きな負担を強制するものであるにもかかわらず、法人税減税までプラスされているのである。これに便乗して一月五日、経団連の米倉弘昌会長は企業が半分負担している年金や健康保険料も「給付の効率化・重点化を一層進めてほしい」と負担分の縮小まで言い出す始末。資本や大企業はことあるたびに「消費税は社会保障費の財源にふさわしい」と発言しているが、大企業は増税分をそのまま価格に転嫁できるし、輸出部分は免除され、連結決算などで逃れることができる。この事実は「税と社会保障の一体化」がなんのために、誰のためのものか雄弁に物語っている。
 かつて消費税を導入したり、増税した歴代の政権は、同時に所得減税などの「アメ」を用意し、世論の不満を和らげようとしたが、今回の減税は自動車重量税などの小幅なものと年収一五〇〇万円以上の税率を四〇%から四五%に上げるというものだけである。かろうじて世論の批判をかわすために出されているのが、骨子の最後に記されている「政治・行政改革」であり、これとて「議員定数削減や公務員総人件費削減など」と抽象的に書かれているだけで前記したように単なる議会内取り引き材料として出されているに過ぎない。
 さらに注意しなければならないのは、昨年一一月に決定された復興財源確保のための臨時増税には一言も言及していない。所得税の臨時増税は二〇一三年一月から二五年間であり、所得増税に対して二・一%の付加税が加わる。二五年間という時間は「臨時」と呼べるのではない。それと比較して法人税の臨時増税は一二年度から三年間であり、それも法人税額に一〇%付加されるだけであるから、法人税減税の枠内に収まり、大企業は一切復興のための資金を出さない計算になる。


政府のねらいは
消費税一五%
 現在の消費税率五%での税収は一三・五兆円であり、単純計算すると二〇一五年に税率が一〇%になった時の消費税収は、二七兆円に達することになる。だが図表を見てもらうと分かるが、五%の増税のうち、所得の低い人の年金の上積みや子育て支援などの社会保障の「充実」に当てられるのは、わずか一%に過ぎない。残りの四%は高齢化による社会保障費の自然増や基礎年金の国庫負担分の引き上げ分、元もとの社会保障財源不足の穴埋めに使われ、「一体改革」にはほど遠い。
 一九九〇年度の税収は六〇・一兆円で社会保障費は一一・六兆円であった。しかし二〇一二年度の税収は四二・三兆円に減少し、逆に社会保障費は一般会計から外した年金の国の負担分を含めると二八・八兆円に増えている。つまり増税により社会保障費が二七兆円となっても最初から一兆八〇〇〇億円が不足している。これを穴埋めするために厚生労働省と財務省は「一体改革」案には明記されていないが、年金支給額を減らし、さらには年金の支給開始年齢を六八歳から七〇歳に繰り延べすることを画策し始めている。また一度は撤回した病院の窓口負担の増額を復活させ、高齢者の負担率の引き上げる案を隠していない。
 また経済アナリストや経済研究所の試算によると図にもあるように消費税が増税された場合年収三〇〇万円の四人家族の所得は二四万円も減少し、年収五〇〇万円の四人家族では所得が三一万円も減少するとはじき出されている。年金世帯でも年収二四〇万円の家族で所得は一六万円も少なくなり、そのうち一〇万円が消費税増税の影響だと述べている。
 この重税による打撃は子育て家族に一層重くのしかかる。来年六月から始まる住民税の年少扶養控除が廃止され、子ども手当も制度変更も追い討ちをかける。これだけでも民主党政権が柱の一つとして掲げてきた「子育て世帯支援」に逆行する形であることは明白。その上、震災復興費をまかなうための所得税の臨時増税分七二〇〇億円がプラスされる。
 「一体改革」案で「経済への配慮」にされた「景気条項」は、経済成長率や物価の動きを総合的に判断し、場合によっては「税率引き上げを停止」するとなっているが、成長率が何パーセント未満なら増税しないなどの具体的数値は設定もされていないし、言及もされてはいない。逆に素案には「二〇年度に基礎的財政収支を黒字化」の次に「五年後をめどに次の改革を実施する」と明記されている。この点に触れて五十嵐文彦・副財務相は「将来的に消費税は一七%程度が必要」であると述べているし、財務省官僚は「急激な景気悪化がない限り、将来二二%にする以外ない」とも述べている。つまり消費税の一〇%への引き上げは、一五%、二〇%へと引き上げるための布石に過ぎないのである。
 「国家破綻」の危機に直面する野田政権は旧来の財政構造にメスを入れることなく労働者大衆に一層負担を押しつける「税と社会保障の一体化」という消費税の増税、社会保障の削減の道を選択した。われわれはこの攻撃を許してはならない。   (松原雄二)

 


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