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                         かけはし2002.11.11号より

大阪集会に八百人の結集

「不正に対しては行動を!」とボベさんが闘いの呼びかけ

 【大阪】十月二十八日、反グローバリゼーション運動で著名なフランス農民同盟のリーダー、ジョゼ・ボベさんの歓迎集会がエルおおさかホールをいっぱいにする八百人の労働者・農民・市民を集め開かれた。集会は三橋秀子さん(関西共同行動)・石中英司さん(APECモニターネット)の司会で進行し、はじめにATTAC関西代表の杉村昌昭さんがあいさつに立ち、ATTACとボベさんの闘いについて紹介した。
 「ATTAC関西は昨年十一月に結成されたが、国を超えた権力に対して、日本から市民としてどのようにして運動していくか、今日に集会がそのきっかけになれば幸いである」。杉村さんはこのように述べた。
 続いて、ジョゼ・ボベさんの講演に移った。
 闘いの経過を報告したボベさんは、「七〇%もの食糧を輸入している日本は農業植民地ではないか」と指摘し、農業を破壊する日本政府の政策とWTOを厳しく批判した。
 最後にボベさんは、「農業は雇用をつくり、人々に良質の食物を供給する権利と義務をもっている。このことは国連でも決議されている。環境を守るにも農業は重要だし、文化の最初の表現である。農村も都市も農業を守り、文化を守ることを共通の課題にしよう」と訴えた。

「闘いのグローバリゼーションを」

 講演の後、日本の運動からの発言が続いた。橋本慎司さん(自給を進める百姓たち)は「日本の在来種を守り自給を進める運動を進め、アジアの農民が直接消費者に農産物を届けられるような支援も行っている。地場生産、地場消費だ。最近は消費者がおとなしくなったから、不正企業が続発するのではないか。また有機農産物の認定にはお金がかかる。自然にとっていいことをやっているものが金を払って、生態系にとって悪いことをしているものが払わなくてよい政策はおかしい」と指摘した。
 山原克二さん(APWSLアジア太平洋労働者連帯会議)は「規制緩和が進み、労働法制は企業に都合がいいように変えられた。企業が自由に活動できる経済特区を大阪につくろうという財界の声がある。女性・中高年・外国人がしわ寄せを受けている。本工のみ・日本のみの労働組合ではなく、闘うグローバリゼーションを作ろう」と訴えた。
 大戸克さん(反失業連絡会)は、「大阪城大手前広場に三百人で寝泊まりし大阪府・市に公的就労を要求している。大阪は全国でも最も野宿労働者が多い町だ。寝泊まりを始めてもう一カ月たった。闘争費用・物資カンパを!」と訴えた。
 休憩の後再開し、ボベさんに対して@WTOについてAMGOに対する闘い方B消費者・市民・労働者の連帯Cホームレスとの連帯Dなぜマクドナルドか、なぜ直接行動かE日本人に期待すること――などの質問が出されボベさんからの応答があった。
 「多国籍企業の経済に対しては政治的決定で対抗すること。基本的人権の視点から商取引を規制する。消費者に訴えることが重要だ」「不正に対しては行動で示すしかない。GMOの実験をどこでやっているかを突き止め、現場で抗議行動をする」「合法は不平等だ。使っていない土地・使っていない家を使うのは非合法だが、家を持っていないものにとってはそれは権利である」など、とてもラディカルな答えが印象的だった。
 最後に、ATTACジャパンの事務局次長秋本陽子さんから、来春一月ポルトアレグレでの第3回社会フォーラムに参加し、その成果をもってメキシコでのWTO粉砕の闘いに参加したいとの決意が表明された。
 参加者は、近日中にパリで開かれる刑事弾圧反対の集会のために日程を繰り上げて帰国するボベに渡すため、集会の最後に「ボベを投獄させるな」の要望書に署名した。
(T・T)



ジョゼ・ボベ トークライブ京都に二百三十人

会場埋める学生たちに熱い訴え


 【京都】十月二十九日午前、京都駅近傍の会場で`Jose Bove Talk Live in Kyotoaと題してジョゼ・ボベ氏の講演が行われた。平日の午前十時という時間帯にも関わらず、会場は立ち見がでるほどの超満員になった。京都の市民運動でよく見かける面々も多数来ていたが、大多数は社会運動の経験のほとんどない学生たちで占められていた。

なぜ闘うか、どのように闘うべきか

 ボベの講演は、集まった若い人たちへのメッセージにあふれていた。彼が十六〜十七歳のときに活動をはじめたこと、そしてそれはヒロシマ、ナガサキに連なる問題、すなわちフランスの核兵器に反対することだったと語り始める。ラルザックの基地建設に反対する闘い。「非暴力の農民の運動が軍隊に勝ったんだ」という言葉は熱を帯びていた。そして、その地の農民とともに暮らし始めたこと。工業的な農業に反対してきたことを語った。
 転機が訪れたのは八六年、GATTでの交渉の俎上に農業産品がのぼり、貿易において工業製品と同様に扱おうという動きが本格的になったことだ。農業は人々を食べさせるためのもので、貿易の自由化のためのものではない! `国際価格aなるものの強制で、世界中で 多くの農民が土地を失っている。輸出のための農産物がつくらされる。しかし多国籍企業にとってはそれだけでは不十分で、人々から選択の余地さえ奪おうとしているのだ、とボベは続ける。
 いよいよボベはなぜマクドナルド解体にいたったかを説明する。九九年、EUのホルモン肥育牛の輸入規制をめぐって、米国はWTOに持ち込んだ件の裁定が出た。それはEUは米国産ホルモン牛肉を拒否できないというもので、米国はEUの産品六十品目に報復関税をかけていいというもの。そのなかにはボベが生産しているロックフォールチーズも含まれていた。
 政府、裁判所、あらゆるところにどうしたらこのことに異議を申し立てることが出来るのかを訊きに行ったが、常にその答えは「WTOが決めたことだからどうにもならない」というものだった。法律を用いて抗議することができない!ボベたちはそこでマクドナルドの店舗を解体するデモンストレーションをすることにした。家族連れ、老人、子供を問わず参加したこの行動はとても平和的なものだった。しかし数日後、ボベは牢獄に放り込まれた。
 このように、ボベはわかりやすい言葉で、彼の活動の内容、スタンスを聴衆に訴えた。その中で繰り返し述べられたことは「われわれの闘いは法律に触れるものであっても正しい」ということ。「よりよい世界に住むためには法律に触れることも止むを得ない場合がある。良心が命じるなら、すべての人の賛成を得るまで待つことはないんだ」と。

学生の街に闘いの種がまかれた

 実は、主催者側で事前に大学などでアンケートを実施して、学生たちがボベらの反グローバリゼーションの闘いをどのように思うかということを調べた。その結果は、ボベのマクドナルド解体などの行動は暴力的なものなのではないか、違法なことはよくないのではないかという疑問が多々あり、また社会運動に対する懐疑的な見方も少なくなかった。しかし、その一方で若者たちは社会のために自分も何か出来ないかと考えてもいた。
 そこで、ボベには、ボベ自身が若いときにどうだったかということや、彼のとってきた行動の意味をわかりやすく、この若い人たちが勇気をもてるように伝えてほしいとお願いした。ボベは、主催者の要請に見事に応えてくれた。その証拠に、ボベが「農業をまもることは、人間の権利の問題であり、そのためにこれからも貿易自由化に対する闘いつづけていく。どうもありがとう」と結ぶと会場からは盛大な拍手が沸き起こったのだった。
 会場との質疑応答も短い時間だったが、活発に交わされた。援助の名を借りたアフリカ諸国への米国による遺伝子組換作物(GMO)の押しつけについての高度な質問が出る一方で、「なぜ農業をえらんだのですか」とか、「もしモンサントの会長と一日付き合えるとしたら、彼に何をみせたいですか」というユニークな質問が飛び出した。ボベは「それは私の選択です。自分の時間を切り刻んで生活したくなかった。農業は自由だし、私の作ったチーズを喜んでくれる人々がいる。」「モンサントの会長と過ごすなんてありえないことだけど、その場合`南aの国々の農場をみせるだろう。そこでは殺虫剤もGMOも意味をなさないよ」と快く答えてくれた。
 集会の終わりには、これから新幹線で東京に向かうボベに、アートカフェ運動 Be Good Cafe のメンバーから有機農産物でつくったお弁当が手渡された。そして鳴り止まない拍手の中、ボベは会場を後にしたのだった。
 また実行委員会からボベの取り組みに賛同する署名の呼びかけがなされると、参加者の多くが応えてくれた。会場に設置された販売コーナーではボベのインタビューを翻訳した新刊や、その他の反グローバリゼーション関連の書籍を買い求める学生も多かった。ジョゼ・ボベ氏の講演は、この大学の街・京都に、確実に反グローバリゼーション運動の種を播いたようである。        (M)



安全な食と環境めざして―新潟集会に二百五十人

全日農の農民も多数参加して


 ジョゼ・ボベさんを招いた十月三十日の新潟集会は、平日の午前九時半開会にもかかわらず二百五十人もの参加で開かれた。はじめに、NHKが今年五月に放送したクローズアップ現代シリーズ「ヨーロッパの新しい風(揺れる食大国フランス)」のビデオが上映され、マクドナルド店の解体や遺伝子組み替え作物引き抜きなどボベさんたちの闘い、フランスの小学校で行われている「味覚の授業」の模様などが映し出された。日本農民組合新潟県連合会代表の目黒吉之助さんが実行委員長としてあいさつ、「こんなに大勢集まったのは久しぶり」と、ボベさん来訪のインパクトの大きさを語り、参加者の半数が日農の関係者であること、福島や山形からも参加していることも紹介した。
 講演に立ったジョゼ・ボベさんは、ヨーロッパ農業の四十年を振り返るとともに、巨大資本によって破壊されている農業と農民の生活の現状を示しながら、輸出価格政策と一体の農業補助金など目先の利害にとらわれず地球環境や産物の質にこだわった農業、地産地消にしていくこと、多国籍資本による遺伝子組み替えや種苗の独占を許さず、十五億の農家が生きていけるように国際的な闘いを作り出していくこと、来年三月のWTOに向けた闘いなどを訴えた。
 講演の後の質疑にもボベさんは一つ一つていねいに答え、大農や減反の土地の占拠で農業をやりたい若者に農地を開放している闘いを紹介し、三割以上の農地が減反となっている日本での闘いも暗示した。
 今集会は、安全な食と環境を考えるネットワーク新潟、日本農民組合新潟県連合会、ATTAC―Japanの三者が主催、後援団体として新潟県平和運動センターや総合生協、自治労新潟など七団体がそろい、そしてテレビやラジオ局、新聞社が後援するという大きな注目の中で開かれた。「闘いのグローバル化」に向けた一歩が印されたといえよう。     (N)


「農業を人民の手に取り戻そう」

三里塚でボベさんと反対同盟が二十年ぶりの交流


 十月二十七日、反グローバリゼーションの旗手、ジョゼ・ボベさんが来日した。ボベさんは、成田到着後まっすぐ木の根ペンションに向かいアタックジャパンと実験村共催の歓迎集会に参加した。
 歓迎集会には、反対同盟の柳川秀夫さん、石井恒司さん、紀子さんをはじめ、八一年ラルザックを訪問した上坂喜美さんがはるばる大阪から駆けつけたほか、やはりラルザックを訪問した加瀬勉さんと三十人近くが参加した。
 ボベさんを一同の拍手で迎え、支援連の高橋さんの司会で集会は始まった。まず三里塚を代表して柳川さんが「農的価値を新しい価値観として育てていきたい。ボベさんのように、これから新しい物差しを創っていかなければ」と歓迎のあいさつを行った。
 これに対しボベさんが、「ここに来られて大変うれしい。八一、八二年を思い起こす」と応えた、ついでラルザックの運動や農民連合の闘いにふれ「農民らしい思考。安全な食べ物。グローバル化に反対」が重要だとのべ、「ビア・カンペシーナ(農民の道)には現在世界で八十の団体が賛同しています。日本の農業団体も加わってくれるように努力したい。反グローバリズム運動をすすめよう」と発言した。
 アタックジャパン事務局の秋本陽子さんの歓迎あいさつに続き、加瀬さんが「人間に敵対する現在の農業に反対して変えていかなければいけない。ボベさんの行動には共鳴することが多数ある」と発言。ついで上坂さんの音頭で一同乾杯し、石井紀子さんの手料理や、三里塚の郷土食である花寿司をつまみ歓談した。
 その後も三里塚からの発言が続き、石井紀子さんはボベさんの反GMO(遺伝子組換作物)の闘いにふれ「育っている作物を抜くのは、農民として本当の気持ちがあるからだと思います。GMOは他人事ではありません。よくやってくださいました」と述べた。
 後半は協同して農業を営むフランスでの取り組みや、反WTOなど多岐にわたるテーマで意見の交換が行われた。最後にボベさんからラルザックのビデオ(訪問した反対同盟もでてくる)が、アタックジャパンの田中徹二さんに手渡された。    (矢野薫)


ボベさん福岡講演会に百五十人

「私たちは三里塚に学ん だ。互いに学び合おう」


 十月三十日、「地球は売り物ではない!ジャンクフードと闘う農民ジョゼ・ボベさんと大いに語る福岡講演会」が開かれた。主催したのは、債務と貧困を考えるジュビリー九州、WOW!Japan(世界貿易機関を監視せよ!ジャパン)、チャンス福岡が呼びかけた実行委員会である「福岡ボベラーズ」。
 会場には百五十人が集まり、ボベさんの講演を聴き、パネルディスカッションと全体での質疑応答で、新自由主義と対決するインターナショナルな行動を作り出そうとする連帯を固めた。
 集会では最初に、WOW!Japanの今村和彦さんが主催者を代表してあいさつ、続いてATTACジャパンの秋本陽子さんが、不当判決と収監の迫る困難な状況の中で実現したボベさん来日の経過や、ラルザック農民運動と三里塚闘争との関わりなどについて報告した。
 ボベさんは、人類の生活基盤としての農業をアグリビジネス(多国籍巨大農業企業)に売り渡すWTOと、それに屈服する各国の農業政策を厳しく批判し、「希望をグローバル化するために闘いをグローバル化しよう!」と熱い闘いの呼びかけを送った。
 続いてパネルディスカッション。パネリストは、全国鴨水稲会世話人代表でアイガモ水稲同時作農家の古野隆雄さん、酪農家で平和と命をみつめる会のメンバーとして陸上自衛隊築城基地前で毎月二日に座り込みを行っている渡辺ひろ子さん、福岡ゼネラルユニオン書記長として生協労働運動と外国人労働者の権利のための活動を続けている川口英二さんの三人。それぞれの闘いの現場から、新自由主義的グローバリゼーションとの闘いが報告された。
 渡辺さんは「フランスの農民運動は過激で、糞尿をばらまいたりして闘っている。すごいと思うが、どのように学ぶべきなのか」と質問した。ボベさんは答えた。「闘いというのはお互いに学ぶべきものだ。かつて私たちも三里塚の農民から闘いの仕方を学んだ。だから私たちは二十一年前にラルザックに三里塚の農民を招いた」。
 会場から、「先の大統領選挙でジョスパンはなぜ負けたのか」という質問が出た。ボベさんは、「ジョスパンを中心とする左派政権は新自由主義を自ら推進した。闘いを放棄したから負けたのだ」と簡潔に答える。
 また、「さまざまの運動をどうやって結びつけたらよいか」という質問には、「運動をつなげるために、私たちはフランスでATTACを作った。日本でもATTACジャパンができたではないか」と答えた。
 福岡集会には、来日日程が急きょ変更になったために残念ながら中止になった長崎集会実行委員会の郵政全労協・郵九労の労働者が駆けつけた。ボベさんは、「私の都合で迷惑をかけて申し訳ない。広島・長崎は私が運動を始めたきっかけなので、長崎にはぜひ行ってみたかった。もし次に来られたら、必ず行きたい」と語った。
 福岡集会は、新自由主義と対決するインターナショナルな闘いの連帯を九州に広げる上で、大きな一歩を印した。     (X)


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