かけはし重要記事

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日弁連が九百人で国会デモ             かけはし2002.11.11号より

有事3法案の廃案を

内田雅敏さん(日弁連有事法制対策委事務局次長)に聞く

 十月二十三日、有事三法案の廃案を求めて、日弁連(日本弁護士連合会)の弁護士約九百人が、東京・霞が関の弁護士会館前から国会へ請願デモを行った。日弁連は全員加盟組織であり、政治的立場の違いを超えて法案の廃案を一致して要求し、全国から集まって国会へデモすることは、まさに「日弁連始まって以来」の画期的出来事である。それは、有事三法案がいかに乱暴に基本的人権を踏みにじるものであるかということを、逆説的に語っている。日弁連有事法制対策委員会事務局次長の内田雅敏さんに話を聞いた。

日弁連は政治的行動には慎重だった

 個々の弁護士や個々の集団が憲法問題に取り組むということは、これまでにももちろんあった。ただ弁護士会総体としては、全員強制加入の団体だからそういう政治的行動はできなかった。憲法上の問題についても、とりわけ安全保障問題、九条関係についてはほとんど発言できてこなかったといういきさつがある。
 かつて日弁連が国家機密法に反対する活動をした時に、検察官や裁判官を辞めた人が多く所属する第一東京弁護士会の百人余りが、「日弁連がそういう政治的活動するのはおかしい。かかった費用を会に戻せ」という訴訟を起こしたことがある。
 もちろんこれは、一審も二審も最高裁も、「法律家団体としての日弁連が、法律の当否を議論して意見を言うのは当然だ」ということで訴えの請求は棄却されている。それにしてもそういう政治的活動をすることについては日弁連は慎重だった。
 ただ今回は、有事法制は国民の権利の問題に直接関係するということで、安全保障の問題というよりも、基本的人権の侵害のおそれがあるということから、弁護士会としても声を上げるというのは当然ではないかということになった。

流れはどこから変わってきたか

 こういうような流れは、一九八〇年代から九〇年代にかけての戦後補償問題に弁護士会としても取り組んだことで一歩前へ進み、さらに九〇年代の半ば以降の沖縄問題を契機として、こういう安全保障の問題についても積極的に取り組むようになってきたということがある。
 それと、弁護士会のなかの年配者で、自由法曹団などのかつて左で頑張ってきた部分は、弾圧された経験などのいきさつから、弁護士会員としての活動にはあまり無理をしないということがあった。それに対してこの間、新しい世代の活動家が生まれてきて、そういう人たちはそんなことにこだわりなく「これは憲法違反じゃないか。人権侵害じゃないか」ということで大胆に問題提起をして、こういうことをやろうじゃないかということになっていった。
 直接的な契機は今年の六月、大阪弁護士会が昼休みに五百人ぐらいで有事法制に反対するデモをやったことだった。それなら日弁連もするべきではないかということになった。この日は日弁連の理事会をやることになっていて、全国の各単位会から出てきている。そういうことで国会デモが実現した。

前のめりになって運動を進めている

 有事法制問題について日弁連の中に対策本部を作ることができるのかどうかということがまずあった。それができた。これは従来よりも一歩進んだことで、しかも法案の上程前から「法案の上程には問題があるから上程するな」という理事会決議をし、上程後は廃案の決議をし、日弁連人権大会でも廃案の決議をするという形で運動が進んできた。
 そして十月二十三日のデモでは、議面前で日弁連の本林会長が「今回の法案は人権侵害のおそれが非常に強い。国家総動員法の再来の危険性もある。日弁連としては廃案まで闘う」と言い切った。これは非常に大きいと思う。
 特にいま、全国の五十二単位会のうち、四十四単位会で反対する決議や会長声明を出している。単に決議をあげるだけではなく、弁護士会が主体となってあちこちで市民集会を開催している。弁護士会としては、この問題について、ある意味では前のめりになるような形で、積極的に運動を進めている。
 また、日弁連として民主党と公明党に個別に懇談会をやって働きかけたり、民間放送連盟や各テレビ局の報道局長クラスとの懇談会をやったりしている。ただ、今回のデモについてはNHKの五時のニュースでやっただけで、新聞は東京新聞に載ったくらいだった。今回の国会では成立しないだろうという状況があるのかもしれないが、さらに働きかけを強めていきたい。
 もう一つ、今回のデモを 指揮していて感じたのは、自由法曹団系の年配の人たちが足を引きずったりしながら参加していた。彼らにはよって立つ組織があるのかもしれないが、持続力がある。それに比べて、人権や政治問題で頑張ってきた僕らの仲間たちの側は引退が早いんじゃないかと感じたね。もっとふんばってほしいと思う。(文責編集部)。


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