かけはし重要記事

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日出生台日米共同軍事訓練              かけはし2002.12.2号より

陸自西部方面隊松川総監(陸将)が反対集会に介入し中止要求の暴言

反戦派を「非国民」視する有事体制の象徴だ

 十一月十八日午後四時ころ、大分県の日出生台(ひじゅうだい)演習場前で、十一月十一日から同演習場などで行われていた日米共同軍事訓練に抗議する集会を約三百人で開こうとしていた日出生台対策会議(社民党、平和運動センターなどで構成)や地元住民有志に対して、訓練視察中に車で通りかかった陸上自衛隊西部方面隊の松川正昭総監(陸将)が突然車を下りて詰め寄り、反対集会の中止を求めるという許しがたい事件が起こった。
 迷彩服姿の松川総監は、反対集会の主催者に対して「なぜ訓練に反対するのか、主旨を明確にせよ。私は責任者の松川だ」などと激しい剣幕で言いがかりをつけた。主催者側が抗議すると松川総監は「日米共同訓練はわが国への侵攻やテロに対するもので北朝鮮への抑止力になる」「反対集会があると報道が集まり、訓練内容が明らかになって敵国に知られる」などと述べ反対集会の中止を求めたのである。この間、松川総監はいっしょにいた部下の自衛官の制止を振り切って反対集会の主催者に五分間にわたって居丈高な暴言を吐きつづけた。
 この日の日米共同訓練抗議集会はこの松川暴言に対して激しい怒りを表明した。十一月二十日には日出生台対策会議、社民党大分県連合、県平和運動センター、部落解放同盟大分県連が連名で松川総監への「発言撤回、謝罪及び早期会談を求める申し入れ書」が提出され、二十二日には日出生台対策会議が大分県に対して「総監発言撤回を求めよ」と申し入れた。また十一月二十一日の日米共同訓練終了日には「米軍基地と日本をどうするローカルNET大分・日出生台」がゲート前で集会を開き、松川正昭西部方面隊総監の「謝罪、釈明、辞任」を求める申し入れ文を小泉首相、石破防衛庁長官宛に提出した。
 しかし陸上幕僚監部広報室と西部方面総監部広報室は、松川発言について「日米共同訓練の概要について、反対する人たちに説明しようとしたもの」「集会の中止を求めたものではない」と開き直っている。そして「共同訓練が抑止力となる国として朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の名前が出たというが、特定の国を念頭に置いたものではない」「(松川総監の)言動には問題はなかった」として松川総監の暴言を擁護しているのである(11月19日)。
 松川総監の発言は、「反対集会は利敵行為」としてその「中止」を威圧的に求めるもので、言論・集会の自由の公然たる圧殺にほかならない。日米共同訓練の自衛隊側最高責任者がこのような暴言を吐いたことは、自衛隊幹部の中に「反戦の主張をする輩は非国民」だとする気分が広がっていることを示している。それは防衛庁の「情報公開請求者」リスト作成問題と同根の、平和の主張を掲げる労働運動や市民運動に対する情報収集と弾圧の姿勢を明らかにしている。これこそが「有事体制」なのである。
 また「北朝鮮への抑止力」発言は、この日米共同訓練がブッシュが言う「悪の枢軸」国家を攻撃対象に想定した具体的な「対テロ・グローバル戦争」のための一環であることを如実に示すものである。「特定の国を想定したものではない」という防衛庁の主張は、言い逃れにすぎない。
 地元紙の大分合同新聞(11月19日付)は社説で松川暴言を「イラクや北朝鮮問題でイライラが募る制服組の気持ちを代弁したもの」と指摘するとともに、今回の日米共同軍事訓練では「米軍の行動に関する情報が少なくなってきている」として、従来にもまして秘密主義が広がっていることを危惧している。それは戦時の緊張の高まりを反映したものであろう。松川総監の暴言や、部下の制止を振り払って反対集会の主催者に突っかかる異常な行動は、まさに今回の共同軍事訓練の性格を端的に物語るものである。
 六年ぶりに日出生台で開催された日米共同軍事訓練は、全国の陸・海で実施されている日米共同統合訓練の一環である。今回の訓練には日出生台としては初めて在沖縄米第3海兵師団第2、第3海兵大隊を基幹とする海兵隊員七百人が参加した。自衛隊側からは陸上自衛隊第4師団第41普通科連隊を基幹とする八百五十人が参加し、十一月十一日から二十一日までの十一日間、日出生台と十文字原の両演習場で共同訓練が展開された。
 今回参加した在沖米海兵隊は、対イラク戦争に派遣されることが確実視されている部隊であり、この訓練が海兵隊にとっては対イラク戦争の実地訓練でもあることは明らかだろう。
 十一月十三日に報道陣に公開された共同訓練について大分合同新聞は次のように報じている。
 「午前中、十文字原で陸自第4師団第41普通科連隊(別府駐屯地)の隊員六十八人が『戦闘地域の日出生台と後方の補給施設との間にある十文字原村が敵の特殊部隊五人に占拠された』との想定で、掃討作戦を展開した」「隊員は顔を黒や緑のドーランで塗り、迷彩服に防弾チョッキ、小銃、機関銃の空砲を撃ちながら、建物に近づき、内部に突入し、約三十分間で建物を奪還した。陸自幹部は『補給ルートの確保が大事』と説明した」。
 「午後、日出生台で、米海兵隊の実弾射撃と通信訓練があった。二個中隊約六十人が参加、山間部での戦闘を想定し、81ミリ迫撃砲や重機関銃が援護する中、歩兵が草むらに姿を隠しながら前進。約一・二キロ先の敵陣地を機関銃や対戦車火器で攻撃、演習場に激しい実弾射撃の音が響いた」「両演習場では、日米双方がそれぞれの訓練を見学し、熱心にメモを取っていた。『攻撃、通信など手法の違いを学ぶのも訓練の目的』と陸自幹部。陸自、海兵隊員が武器や食料などを見せ合い、英語や日本語で情報を交換する光景も見られた」(11月14日付)。
 このような実戦訓練の中で、先の「反対集会が報道されることで、訓練内容が敵に知られる」という松川総監の暴言が飛び出したのである。
 われわれは、アメリカによる対イラク侵略戦争の開始が迫ろうとする中で行われた日米共同訓練で自衛隊制服組の最高幹部の一人から飛び出したこの暴言はなんら偶然ではないと考える。彼らにとって「気分はもう戦争」なのだ。そしてそれは、労働者・市民の民主主義的権利は踏みにじってしかるべき、という雰囲気を醸成しているのである。
 部下が必死に制止したのを振り切って暴走した松川の姿は象徴的である。自衛隊の一般兵士は、こうした自制心を失い常軌を逸した最高幹部の命令で死地に追いやられようとしているのだ。
 松川西部方面隊総監をただちに解任し、防衛庁は謝罪せよ。北朝鮮を「仮想敵国」とした日米共同軍事訓練をただちに中止せよ。イラクへの侵略戦争をやめろ。自衛隊の「対テロ戦争」への参戦阻止。有事3法案を廃案へ!(11月24日 平井純一)       

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